てのひらの迷路 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 1334
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062759083

作品紹介・あらすじ

ふたりきりで、おしゃべりするように書きました。
著者初の掌篇集
石田衣良が贈るあなたのための特別な1冊

20代の頃の恋愛、作家デビュー、そして母との別れ……。川端康成の『掌の小説』に触発された著者が「ささやくように」書きつづった、美しく、ちいさな24の物語。私小説のような味わいを持つ掌篇のストーリーと切れを楽しみながら、人気作家の素顔を垣間見ることができる、あなたのための特別な1冊。

感想・レビュー・書評

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  • てのひらの迷路 石田衣良さん

    1.石田衣良さんとのあゆみ
    眠れぬ真珠、リバース、40、約束、美丘、オネスティと歩んできました。
    てのひらの迷路を読むにあたり、石田衣良さんの読了記録を振り返ってみて感じることは、描写の奥行きというものでしょうか?
    風景、人物、そして感情、いずれの描写にも色彩が見えてくるような印象です。

    2.著書「てのひらの迷路」
    石田衣良さんを好きな方に手にとってほしいです。
    石田衣良さんの原体験が綴られています。

    恋、小説家になる前、通学路の思い出、金曜日の渋谷散歩などなど。

    いずれにしても、読み手にとって関心深いのは、一般人ならばやり過ごす風景に対して、観察と描写を行いつづけていること。
    読み手と書き手の違いとはこうしたものか?と合点がいきました。

    3.読み終えて
    石田衣良さんの物語。
    2021年、割合が増えそうな予感がします。

    読書中ですが、読了前に感想を書いてしまう衝動に駆られてしまいました。

    「時間の流れをどんどん細かくしていく。
     ガラスのなかに捕われた砂よりも、
     もっと、細かく。
     100分の1秒のデジタルよりも、もっと薄く。
     何年もかけて、それを極限まで続けると、
     時間は最後にはきらきらと透明にこぼれる
     粒子になる。」

    時間という無形を有形な表現にする石田さんの観察と描写をただ美しいと思えたのでした。

    #石田衣良さん
    #小説の世界は時間を包んでくれる。


  • この本読んで、浜崎あゆみの本が気持ち悪かった理由わかった。

    石田衣良の実際にあったことをフィクションにしてショートにまとめて書いてある本なんだけど、その中に失恋話もあり、たった3ページのこの石田衣良の話のなんと面白いことかと。

    そうか、ここが違うんだ。

    20年前の恋心って20年経つうちに発酵して、カビて、それでも輝いてるのかもしれないけど、本人自体も20年経ってしまっている今の状態で振り返る大恋愛って、やっぱり視点が今なんだけど、浜崎あゆみのあの本、視点が17歳のままで、書いてるのが40すぎのおばんなんだ。そのなんとも言えない気味悪さは、

    20年前に作ったケーキを、おいしいんだよーどーぞ召し上がれ。

    とか言われてる感覚に近いのかも。
    イチゴとか原型ないくらいドロドロになってかびて何かわからないような状態なのに、本人はウキウキで

    これ超美味しくできたんだよー!

    とかいう感じの怖さ。これ。これ!!!!これだ!!!

    その点、さすがの石田衣良はたった3ページで大恋愛、失恋、切なさそんな想いがダーーーーっとこちらに流れてくるように描く。

    最初の実母の病院の話ですら、そんな感じだった。
    母が死にそうっていうのを、全く違う視点から描き出すことでめちゃくちゃ悲しい気持ちが溢れすぎる。

    たった3ページでここまでに。っていう。

    読みやすいし、石田衣良本人の雰囲気がとっても手に取るようにわかる一冊でした。

    ラストのお母さんへのメッセージで、石田衣良って、石平さんだったんだ!っていう発見が1番鳥肌たったわ。笑笑

  • 石田衣良さんの短編?です。
    何度も言うようですが石田さんの感性と視点がやっぱり好きです。
    実話が多いという半エッセイのような短編集で、15年ほど前に書かれたもの。
    私はエッセイは書き手がどんな人かよく分かるので好きなのですが、風化を持ち合わせているため昔すぎると少し苦手と思うものもあるのですが、石田さんのエッセイは風化を感じないし、むしろそれも味と感じます。まあ、所詮15年なんて昔ではないのかもしれません。
    石田さんの感性が好きだし共感するところがやっぱり多いです。共通点を見つけると嬉しくなります。今回は、横浜が大好きだということ、タクシーが同じ方向を向いて走るというよさがあること、全体が共感の多い本ですが特に印象的なのはこれらです。
    特にタクシーの話は物語もお気に入りです。
    「バブルの頃の給料はどう考えたって今より多くはないですよ。ーでも、みんなお金なくてもある振りをして、がんばってつかっていたんだね。」バブルを生きた人間ではありませんが、これでこの時の人々がどれほど楽しんで生きていたかわかります。遊びも本気とはこういう人たちのことでしょう。そりゃあバブルを生きた人からしてみれば今時の人の現実主義さに嫌味を言いたくなりますよね。

  • 短編集の集まりで、とても読み易く、面白かったです

  • 短篇ってあんまり読まないんだけど、、
    読みやすいっていう点
    話が完結せずに自分で想像できるっていう点
    では面白い。

    そして、この本は石田さんが
    読む人のことを考えずに書きたいように書いた本らしく、
    それが伝わる自由な話が多くて余計面白く感じた。

    片脚、左手(だっけ?)の話、
    不思議すぎて、
    想像したくてもできそうでできなくて。
    でも引き込まれるものがあった。

  • 24つからなるショートショート集です。おもしろいことに、最初と最後がエッセイ風で、真中がフィクションになっています。本当に短い話ばかりなので、ときどき手にとるにはもってこいの本だと思います。

  • ショートショート。

    24篇もあるので、好き嫌いは当然あるにしろ、全体的には良かった。

    他の短編集でもそうだけど、ノンフィクションベースが好き。
    無職の空、I氏の生活と意見、一人ぼっちの世界(若干泣きそうになってしまいました)。

    でも、タクシー、みたいなふわっとした、盛り上がりのないまったりとした作品も好き。

    この本では、各作品の前に講評を書いていて、それがまた読むポイントをすっきりさせたり、共感を呼んだりして、良い発想だなと思った。

  • 24篇のショートショートからなる本で、フィクションからエッセイに近いものまで
    いろいろな作品が楽しめます。

    個人的にお勧めします。特に、本が好きで、ほんのちょっと自分でも創作に携わりたいと思っているような人には。
    著者が楽しみながら書いた、という雰囲気が漂っています。ところどころにある、各話の前説のようなものも読んでいて楽しい。

    石田さんが書くと、恋愛がちょっと素敵なものに見えてきて、喜びたいような拗ねたいような気持ちになるのが不思議です。

  • 「臆面もない」の一言を捧げたいと思う、私小説風超短編集。これでもかと言いたげに、軽々と多才ぶりをひけらかしやがる石田に、クソーこんなんでやられへんぞと言いつつ、きっちりとしてやられてしまうけなげな私。作家って楽しいんやな、いい仕事やなって思っちゃうよ。もちろんどんな仕事もそれだけじゃないですけどね(笑)これ読んで、ホンマに作者は楽天家なんだなあと思った。この軽さ洒脱さが、マコトのあの性格につながるんだよな。やっぱり石田は天才だと思います。

  • 久しぶりに読み返した一冊。
    以前に読んだ時よりもより内容の理解度が深まった気がした。
    そして掌篇小説の魅力を再発見。石田さんが書かれているように、晩年にこんな素敵な掌篇集が沢山読めると良いなと思った。

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。成蹊大学卒業。代理店勤務、フリーのコピーライターなどを経て97年「池袋ウエストゲートパーク」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。2003年『4TEEN フォーティーン』で直木賞、06年『眠れぬ真珠』で島清恋愛文学賞、13年 『北斗 ある殺人者の回心』で中央公論文芸賞を受賞。他著書多数。

「2022年 『心心 東京の星、上海の月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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