虚像の砦 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 152
  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062759250

作品紹介・あらすじ

中東で日本人が誘拐された。その情報をいち早く得た、民放PTBディレクター・風見は、他局に先んじて放送しようと動き出すが、予想外の抵抗を受ける。一方、バラエティ番組の敏腕プロデューサー・黒岩は、次第に視聴率に縛られ、自分を見失っていった。二人の苦悩と葛藤を通して、巨大メディアの内実を暴く。

感想・レビュー・書評

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  • テレビ業界の報道とお笑いを取り上げた情報小説で、メディアがどういった要素で編集されているかを改めて知ることができる。
    初期の石田衣良と同様、取材力のある作者のフィクションは、言葉を選ばずに済む分、ノンフィクションよりもメッセージ性が強く明快だと思う。

  • リアル。

  • いやー。
    いやー、これはまたすごい小説を書いたなあ。
    読後、そんな感覚でいっぱいでした。
    頭の中が「いやー」で埋まってしまうほど。

    『<a href=http://mediamarker.net/u/ikedas/?asin=4062753537>ハゲタカ</a>』を書いた真山仁氏が、今度はTVを題材に書いた本作。
    『<a href=http://mediamarker.net/u/ikedas/?asin=4062753537>ハゲタカ</a>』を読んだ方に説明は不要でしょう。
    圧倒的な状況描写力と、とんでもなくexcitingなstory-telling。
    その、娯楽小説として卓越した、読者を作品に引き込む力は健在です。
    それどころか、さらにその力が増したんじゃないかとすら思いました。
    ぐいぐい引き込まれて、時間が経つのが本当にあっという間でした。

    前作を読んで、この作家さんは金融系の小説を書く人なんだと勝手に感じていました。
    そんな認識を持っている人も、たぶん少なくないんじゃないかなと思います。
    しかし、本書を読めば、その認識が引っ繰り返る事は間違いないでしょう。
    真山氏は、生粋の文章書きなんだなと思い知らされると思います。
    その空気感は、『<a href=http://mediamarker.net/u/ikedas/?asin=4167659034>クライマーズ・ハイ</a>』の横山秀夫氏と同じものです。
    ビリビリと肌を刺すかのような臨場感。
    これは、紛う方無き"documentary"です。

    本作は、大きく三つの視点を切り替えながら進んでいきます。
    「報道」「お笑い」そして「総務省」。
    現実に起こった事件とシンクロさせながら、PTBというTV局の内部を描き出します。
    取り上げられる主な事件は、<a href=http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9D%82%E6%9C%AC%E5%A0%A4%E5%BC%81%E8%AD%B7%E5%A3%AB%E4%B8%80%E5%AE%B6%E6%AE%BA%E5%AE%B3%E4%BA%8B%E4%BB%B6>坂本堤弁護士一家殺害事件</a>と<a href=http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%82%AF%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E4%BA%BA%E8%B3%AA%E4%BA%8B%E4%BB%B6>イラク日本人人質事件</a>。
    前者は背景として、後者は物語の中心として、舞台となるPTBを包みます。
    そして、それらの内部で行われていた「かもしれない」物語を、真山氏の想像力が紡ぎ出します。

    終盤、登場人物の一人である織田馨の台詞に非常に共感しました。<blockquote>私個人は、報道に人が関わる以上、客観報道などあり得ないと思っています。ですから、ある程度の主観が入るのは当然です。大切なのは、様々な角度で事件が取り上げられているかどうかだと思います。</blockquote>本当にその通りだと思います。
    いまのTVが個人的につまらないと思うのは、総てが画一的に過ぎるからです。
    報道だけではなく、あらゆる番組作りに局としての個性が感じられない。
    はっきり言って、同じ題材で横に並べれば、NHKに勝てる民放は無いと思うのです。
    だからこそ、それぞれ独自の色を出して、独特の番組を作らないといけないはず。
    そういう風にして、かつての民放は伝説の番組を作ってきたはずなのです。

    そしてもうひとつ、黒岩宗一郎が語る台詞です。<blockquote>「なあ宗佑。私はテレビというメディアを否定するつもりはない。テレビとは、大衆に理屈抜きの娯楽と笑いと感動を与えられる力を持っている。だが同時にテレビには、見た人すべてを囲い込んでしまう危ない魔力もある。音や画像処理で見る人を釘付けにし、映像のすべてを信じ込ませる力を持っている。これは危険だぞ。報道の体たらくも目にも余るが、それ以上に怖いのがおまえさんたちだ」
    「私たち、ですか・・・・・・?」
    「そうだ。バラエティと呼ばれとる番組で、やっていることは何かね。自分より弱い人を血祭りに上げて笑い飛ばす。一番ゲスな笑いだ。しかも視聴者には、今日が幸せだったらいいじゃないかという諦めを刷り込み続けている」</blockquote>これも本当にその通りだな、と思います。
    そしてその傾向は、TVという枠を超えて浸食を続けている気がします。

    ネット上では、相も変わらず既存メディアへのbashingが渦巻いてます。
    これも、結局のところは画一化に過ぎないのですよね。
    それぞれ個人が、それぞれの価値観に基づいた判断が出来なければ、ネットの長所は消失します。
    TVにはTVにしか出来ないことがあるし、新聞には新聞にしか出来ないことがある。
    総ての物事には役割があって、それは媒体が変わったとしても本質は変わることはない、と思います。
    そのことを、netizenたちが心底から理解できれば、あっという間に世界は変わる。
    Netizenの総てが理解出来なくとも、2〜3割程度が理解出来ただけでずいぶん違ってくるでしょう。
    本書の随所から、そんな未来が透けて見えてきた気がしました。

    基本的に、あらゆる表現は"Entertainment"だと思います。
    そして"Entertainment"は、発し手と受け手が同調したときに最高の面白さを発揮します。
    本書は、その事を素晴らしい物語に載せて、伝えてくれた傑作だと思います。

  • これはおもしろかった!

  • 「虚像」と書いて「メディア」と読ませる本書はあるジャーナリズムあるいはテレビの役割とはなんなのか。あるいはその根底にある日本人の在り方とはなんなのか。小説の体をとっているが、その中身は当時の、あるいは現代においてもメディアにたいするあるいは我々に対する問いかけである。

    面白きゃいい、視聴率を取れればよいといった風潮に支配されているテレビお笑い界と、政府やスポンサーの顔を観ながら買い取りニュースを配信する報道局。そこには人の温かさや笑いが人々を幸せな気持ちにさせるような真の笑いや、政界あるいは産業界からも中立独立し、国民に対し真実を伝え続ける第四の権力としてのジャーナリズムとしての気概は残っていないのか?

    そこに気骨のあるものが現れても、うまく立ち回れないと途端に左遷されてしまう。結果、無難なお笑いや報道記事が蔓延していくという構造的な問題を抱える放送業界にあって、風見や黒岩は異端児である。

    その異端児としての活躍と、業界に巣くうグレーな世界とのやりとりを真山仁独特の語り口とスピード感でドライブしていく。官界の中でも正義心を持ち、お役所仕事をこなしつつも正義感を持って仕事に踏み込もうとする官僚もまた存在する。

    本書でも何度も外の力によるテレビ局の在り方が捻じ曲げられる場面が出てくる。しかし最後の最後で少しだけやり返すような、小さくガッツポーズするようなシーンが存在する。そこで一矢報いるあるいはそこから未来が広がっていくという光を感じることができ、これこそが真山仁の真骨頂だと再認識するのだ。

  • 2018/7/15読了

  • 中東で日本人が誘拐された。その情報をいち早く得た、民放PTBディレクター・風見は、他局に先んじて放送しようと動き出すが、予想外の抵抗を受ける。一方、バラエティ番組の敏腕プロデューサー・黒岩は、次第に視聴率に縛られ、自分を見失っていった。二人の苦悩と葛藤を通して、巨大メディアの内実を暴く。

  • テレビ局を舞台にした物語。決して短くはないが緊迫感あふれる息つかせぬ展開でどんどん読めてしまう。

  • ものすごくデリケートな部分を冷静かつ客観的にすっぱ抜く真山節炸裂!な作品。
    金融系じゃないからいまいちかも、なんて杞憂でした。めちゃくちゃおもしろかった。

  • 過去に実際に起こった事件を下敷きにしてるし、作者が懸念して訴えたかったであろう「このままいくと近い将来起こるかもしれない」恐怖ももうまさに起こりつつある現状だけど、なんかややなぞってるだけでそこから掘り下がってない感じがした。お笑いと報道との絡ませ方もちょっと微妙で。

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著者プロフィール

真山仁(まやま じん)
1962年、大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科卒業。読売新聞記者を経て、フリーランスとして独立。2004年、熾烈な企業買収の世界を赤裸々に描いた『ハゲタカ』(講談社文庫)でデビュー。これが代表作となり、ドラマ・映画化された。
「ハゲタカ」シリーズのほか、『虚像の砦』『そして、星の輝く夜がくる』(いずれも講談社文庫)、『売国』『コラプティオ』(いずれも文春文庫)、『黙示』『プライド』(いずれも新潮文庫)、『海は見えるか』(幻冬舎)、『当確師』(中央公論新社)、『標的』(文藝春秋)、『バラ色の未来』(光文社)、『オペレーションZ』(新潮社)がある。

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