モロッコ水晶の謎 (講談社文庫)

著者 : 有栖川有栖
  • 講談社 (2008年3月14日発売)
3.40
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  • レビュー :94
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062759885

作品紹介

とある社長邸のパーティに招かれた推理作家・有栖川の目前で毒殺事件が発生!邸内にいた10人の中でグラスに毒物を混入できたのは誰か、そして動機は…。犯罪学者・火村が超絶論理で謎に挑む表題作ほか「助教授の身代金」「ABCキラー」「推理合戦」を収録。本格推理の醍醐味に満ちた"国名シリーズ"第8弾。

モロッコ水晶の謎 (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 単行本やノベルズ版を整理して文庫本に揃い変えているのだが、ぜんかい読んだのがいつなのかをまったく覚えていないくらいの再読になった。「助教授の身代金」だけよく覚えていて、他の三編はほとんどの内容が飛んでいた。気が利いているのはやはり「推理合戦」。殺人事件が起きるミステリを愛しているが、こういった作品があるとシリーズもののファンとしてはとても楽しい。「ABCキラー」と「モロッコ水晶の謎」は根気とひらめきが活躍した印象。ナイフで暗幕を切り裂くような推理だと感じるが、論理でギリギリまで積み上げたからこそ成り立つ。

  • 「助教授の身代金」
    助教授という、ヒットした出演作の役柄からあだ名される過去の人になってしまった俳優が誘拐された、というところから始まる話。奥さんが要求通りに身代金を準備して、指示された通り電車に乗ったのに、回収されることのなかった身代金。
    後日誘拐された俳優の遺体が発見されるんだけれども、世間の注目を集めた事件だっただけに、早期解決を望む警察から協力を要請される火村せんせ。
    なかなか捻くれてておもしろかったです。犯人は不仲だった奥さんなんですけども、誘拐事件を仕立て上げたのは、俳優の友人でもあり、奥さんに密かな思いを寄せていた人物。この人がまた、やばいんですよねw 奥さんへの思いが高じて、彼女らの家に盗聴器を仕掛けてるの。その盗聴器から奥さんが、俳優を殺したことを知って、助けるつもりで誘拐事件であるかのように見せかけて、遺体を別の場所に移動させていた、という。クレイジーが過ぎますねw
    盗聴器に気づいたのが、初めて火村先生とアリスにあった時に、確信を持って二人を間違えた、というところから導き出す火村先生の冴え渡る推理がすごい。

    「ABCキラー」
    クリスティのミステリよろしく、Aのつく町名で浅倉さんが、Bのつく町名で番藤さんが、という調子で連続殺人事件と思われる事件が発生。凶器は共通の拳銃、事件が起こると警察あてに挑戦状のような書面が届く。でも、被害者の共通点が見つからない中、調査を進めていくうちに、それぞれの関係者の中に意味ありげな人が浮かび上がってきて…という話。
    これもまたひねられてましたねー。挑戦状を送った人と、実際に殺人を起こした犯人は別、さらにいうと殺人犯は二人いて、最初の犯人は、二人目の犯人に殺されるねじれ現象が起こってるという。途中から挑戦状は別の人では、とは確かに思ったんですけどねー。一つつながりが見えるとスルスル解けていくように解けるの面白いなー。

    「推理合戦」
    これは箸休め的な。小休止と言いますか。
    小夜子さんと火村せんせと三人での飲み会上で、小夜子さんの新連載を読んだ火村が、最近どこどこ町に行きましたね?と突然きりだす。どうしてそれを?と不思議がる小夜子さん。最近火村せんせもその町で起こった殺人事件の調査で行ったはずだけれども…と不思議がるアリスに、答えを閃いた小夜子さんが、車はいつ戻ってきますか?と火村せんせに尋ね返す、というところで一幕が終わり、二幕目は答え探しに件の町に降り立つアリス。歩いているうちに、火村の推理の理由がわかり、さらに一捻り、意趣返しに小夜子にその小説の犯人は誰々でしょう、とあててみせると、という三人のお戯れの話。

    「モロッコ水晶の謎」
    珍しくアリスが殺人事件に巻き込まれてしまう系。
    アリスが、ある大型書店の経営者の敷地の一角に住まう占い師の元を取材で訪れたところ、経営者の息子が小説家を目指していて、ぜひ本物の作家さんに話を聞いてみたい、と言われてお呼ばれするアリス。気に入られて(だったかな…該当箇所がパラ見では発見できなかった…)、ホームパーティーに呼ばれるんですけど、そこで殺人事件としか思えない事件が発生。殺されたのは、その家の長女(姉)の婚約者で、毒物を飲んだと思われるんだけれども、毒を入れる機会が誰かにあったとは思えないのに…という不思議な状況。苦手な野上巡査部長のいる樺田班が担当になり、火村も後からかけつけて謎解きに参加する流れに。
    この話のすごいところは、トリックらしいトリックがないところですね。
    犯人は小説家志望の息子(弟)なんですけど、姉の婚約者がどうしても好きになれない、家の一員になるのは耐え難い、という理由で、家にあった除草剤を被害者の飲み物に混入させていたんですけれども。被害者がどれを取るかはわからなかったんだけど、居候の占い師先生に以前言われた、その占い師先生の元にいる、彼女の姪と結婚する未来が見えるという言葉を信じて、被害者と、犯人、姪の三人しか飲むことのないオレンジジュースに、事前に除草剤を入れておいた、という…。つまり1/3の確率で自分、またはターゲット以外の人を殺す可能性もありながら、あえて除草剤を入れていた、という狂気。すごいわ…。

    で、解説…!
    佳多山大地さんが書いているのですが、モロッコ水晶の謎の深読みがすごい…。その発想はなかった、と思いつつ、いや確かにそうも読めるな、っていうのがとても衝撃的で、真っ先に書いておかずにはいられなかったですw 動機も、犯行の方法も180度反転しますね。いやあすごい納得。
    弟が、実は占いは信じてなんかいなくて、ただの方便だったのではないか説。毒の入ったグラスは見分けられるようにしていて、被害者がそれを取らなかったら、犯行を見送ることもできたかもしれない。占いを信じてやったというのは自分の責任を転嫁する目的があったのかもしれない。そして、被害者をターゲットにしたのは、実は弟が姉に恋をしていたからかもしれない。という仮説、凄すぎます。確かにそう読めなくもないし、ある意味ちょっと腑に落ちやすいんですよね…。
    あと学生アリスシリーズと作家アリスシリーズの関係性などにも焦点が当たってて、面白いなあ、と思ったのでした。江神さんが学生を続けてる理由を予想外のところで知ってしまった感はありますがw

    時間が経ちすぎて細かいところは忘れてしまった!
    んですけど、感想書いて改めて見てたら、今回の話はねじれ現象が中心になってる話が多いんだなあ、などと思ったのでした。

  • 表題作が凄い。個人的にはクリスティのアクロイド殺し並み。賛否分かれるのでは。

  • 「国名」シリーズの短編集です。

    ◆助教授の身代金
    タイトルを見て、火村先生が誘拐されたのかと思いました。
    前に森下くんが拉致られた話があったからね。

    誘拐は成功しない犯罪なのに、何故かなくならない。
    金目当てなのか、殺害が目的なのか。

    「助教授」のニックネームで親しまれていた俳優の落ちぶれ振りが憐れです。
    個人的には、チャラい格好をした森下くんがツボでした。

    殺した夫の死体が消えて、誘拐犯から脅迫電話が掛かってきたら怖いわ。
    犯人がアリスと火村先生を取り間違えたことによって、今回のトリックがバレてしまいました。

    盗聴技術が進化していますね。
    遠く離れても聞こえるし、簡単に手に入るからね。

    ◆ABCキラー
    先にアンソロジーで読んでいました。

    「A町でAからはじまる名前の人物が殺されて…」という感じに連続殺人が発生するのでしょうか。
    Zまでいったらどうするんだと思ったけど、そこまで続く前にさすがに犯人を捕まえるよね(苦笑)

    AとBを殺したCがCの元妻に殺されて、ついで(?)にDも殺したというオチです。
    便乗殺人ですね。
    厳密に言えば、Cの妻は自殺しましたが。

    二人を追い詰めたのは予告状だった。
    予告状を書いた愉快犯のせいで、殺人が続いてしまった。

    メディアの影響力は半端ないです。
    現実に起きる事件でも、憶測が飛び交って冤罪が生まれるようです。

    今回は新キャラ・因幡に付き纏われています(笑)

    ◆推理合戦
    ミステリというよりは小話です。
    アリス、火村、小夜子の三人で飲み食いしています。
    読んでいて美味しそうだなと思いました。
    本場の串カツを食べてみたいです。

    火村先生とお食事が出来るなんて羨ましいわ、小夜子さん。
    アリスもいるけど(笑)

    小夜子さんの書いたミステリを受けて、小夜子がとある町に行ったことを火村先生が推理します。
    カラクリに気付いた小夜子は、火村先生のベンツが入院したことを見抜きます。
    ちんぷんかんぷんなアリスは、二人の言っていることについて解明しようとします。
    キャラの名前を考えるは面倒そうですよね。

    ◆モロッコ水晶の謎
    表題作。
    何故、被害者は毒殺されたのか。
    犯人はどうやって毒を飲ませたのか。

    アリスが占い師にインタビューをしていると、殺人事件に遭遇してしまいます。
    当然ながら、ガミやんにチクリとイヤミを言われました(苦笑)

    火村先生は、コンパを休講して駆け付けてきます。
    コンパといっても、合コンではありません。

    嫌いな奴が家族になるのは耐えられないという気持ちは分かります。
    しかし、「幸せに生きる」と占い師に言われたからといって、毒殺を決行するのかい。
    こちらがうっかり毒を飲んだらどうするんだろう。

  • う~ん何というかモヤモヤ感がいっぱいの終り方で、いつも通りと言えばそうなんだけどすっきりしない。

  • 国名シリーズの第8弾。短、中編の4編が収録されている。
    どれもヒネリを加えた作品、という感じがする。

    名探偵モノは、登場人物のキャラの魅力次第で、
    面白さが変わってくる…。

  • 少し以前、助教授役で人気を博した俳優が誘拐されたー助教授の身代金
    Aの町でA氏が、Bの町でB氏が殺された。凶器は同じ銃。これではまるであの有名なーABCキラー
    先輩作家朝井の行動をピタリと当てる火村。まさかついに透視能力まで備えたのかー推理合戦
    社長宅のホームパーティでその娘の恋人が毒殺された。お抱えの占い師も読み取れなかった未来、それはいかにして成ったのかーモロッコ水晶の謎

    「助教授のー」はドラマになってましたね。
    一番好きなのは「推理合戦」です。食えないセンパイと食えない友人に囲まれたアリス。がんばれ!
    表題作の「モロッコ水晶の謎」ロジックで唯一の真犯人を探し出す手法はいつも通り鮮やかですが、乱暴な印象。ただそういうこともあるかなぁと否定はしないので消極的な受け入れといったところでしょうか。
    もっと他に利口な方法が、それこそいくらでもあったでしょうがと犯人には言いたい。

  • 短編集。
    有栖川が招かれたパーティで毒殺事件が起こる。
    グラスの中に毒物を混入できたのは10人の中の誰なのか?
    常識に囚われていたら絶対にこの事件は解明できなかっただろう。
    週刊誌や月刊誌でも、朝の情報番組でも、占いは人気のコーナーだ。
    信じているわけではなくても何となく見てしまう。
    悪いことはきれいにスルーして、良いことだけは心に留めて。
    一日が気分よく過ごせるための活性剤のようなものだ。
    どうやら占いにもテクニックがあるらしい。
    心理学の応用の場合もある。
    誰にでも該当するような事柄をあげ、信頼を勝ち取っていく場合もある。
    元々占いに本気で頼ろうとする人は、何らかの不安を抱えているのだろう。
    だとすれば、その不安を取り除くことが占いの目的のひとつのような気がする。
    要は依頼者が安心できればいいのだ。
    だがそれは、あくまでも参考意見として聞く、というスタンスがあってこその話だ。
    すべてを占いに頼りきり、信じきって物事を決めるようになったら、自ら危険区域に足を踏み入れているようなものだ。
    犯人の純粋さが裏目に出たような結末は、すっきりとしないものを残した。
    未熟な身勝手さと純粋さが引き起こした事件は、犯人が逮捕されても哀しさが残る。
    「推理合戦」の物語の締めかた。
    とても好みだ。
    思わずにやりとしてしまうような、そんな終わり方は気持ちがいい。

  • 作家アリスシリーズ#15(国名シリーズ#8)

  • 『助教授の身代金』
    『ABCキラー』
    ABCになぞられた無差別殺人に何の意味があるのか。こういう題材は多分いろんなところで扱われてるよね。真っ先に思い付くのが「被害者のうちの一人がほんとの目的」だけど、今回は最初の二人が無差別で、あとからそれを利用された意味のある殺人だった。ってところか。人工芝剥がすってなかなかの労力だと思うんだけど。すげえな。『推理合戦』
    掌編。名前思い付かないときに身近なところから持ってくるってのは先生の経験からか?最後のオチがいいと思う。
    『モロッコ水晶の謎』
    主軸は「どうやったか」に見せかけて「なぜやったか」だったなー。「どうやった」の部分は結構あっさり。家政婦が実は手を出されてて相手を殺した、とか考えてたけどまあ違ったな。たまたまうまくいったからいいものを……。解説で弘俊くんの殺人理由について考察してたけども、三角関係とは思わないな……。やっぱり単純に殺したい相手がいて、自分は死なないと知ってるからこその犯行じゃないか。恋愛感情無くったって教祖様に言われたら結婚する人だっているんだもの、信じてる人から将来結婚するって言われたら「多分そうなんだろうな~」ぐらいに思うんじゃない?今はまだ自分にはそんな未来が待ってるから死なないって意味しか持たなかったけど。作家アリスの「若者」や「恋愛」に関する話は好きだと改めて思った。

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