新装版 密閉教室 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.22
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本棚登録 : 574
感想 : 49
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062760270

作品紹介・あらすじ

教室にあるはずの48の机と椅子がすべて消え、代わりにコピーされた遺書と級友の冷たい骸だけが残されていた。しかも密室で。自殺か他殺か。高3で、推理マニアの工藤順也はこの謎に果敢に挑むのだが…。本格ミステリの甘美な果実にして、瑞々しい青春小説。法月綸太郎のデビュー作にして、不朽の名作。

感想・レビュー・書評

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  • 初法月綸太郎。
    なんか思ってたのと違うなぁ。
    法月綸太郎氏はロジック派と聞いていたのだが、本作ではその片鱗はあまり見ることができない。
    ロジックは法月綸太郎シリーズに限り、ということなのかもしれないが。

    机や椅子が消えた理由、大神が考えたダミーの密室トリックは面白い。
    だが、最後の取ってつけたような吉沢への追及、吉沢の告白、そしてモヤモヤするコーダには賛成しかねる。

    著者本人も分かってはいるのだろうが、冗長な観念的表現を多用する芝居がかったセリフやキャラクターも気に入らない。
    ミステリーの体裁を取った芝居がかった青春小説、といったところだろうか。

    でもなぜか逆に法月綸太郎シリーズを読むのが楽しみになってきた...

  • 2024/1/21(日)~23(火)

    なんかここ数日ミステリ読みたい気分なので読み始めた。なんでだろう? 小市民シリーズがアニメ化決定したから?(それで積んでた『春季限定いちごタルト事件』を開いてみたけど文体がラノベだったのでウッ……となってすぐに閉じた。代わりにこれを選んだということ?)

    とりあえず第一部まで読んだ。 ~p.123
    序章「プレリュード」だけ三人称で、本編は男子主人公:工藤の一人称になった。高校3年の11月の話。
    文章は(ジャンル成立以前なのでとうぜんラノベとは異なるが)かなり平易で読みやすい。
    今のところ主人公の振る舞いがウザい。そういう探偵の暴力性を告発する作品らしいけど。
    担任の男性国語教師:大神(工藤は内心"ネロ"と呼んでいる)は純文学・私小説好きでミステリ嫌い(クイーン『チャイナ橙の謎』で失望した)。工藤とは正反対という示唆的な設定。他にも副担任の男性英語教師が趣味でジェイムズ・ジョイス研究をしてるらしい。なにそれ
    男子生徒の密室死が起こった7組の教室から消えていた48個の机と椅子の「謎」、めちゃくちゃしょうもなくてワロタ 警察それに気付かないって嘘だろ
    「ゼロックス・コピー」とか耳馴染みがなくて時代を感じる。今は深夜コンビニのコピー機があるので話が成立しない。
    同級生の真部くんがいきなり自殺未遂の夜の体験を語るシーンはなかなか迫真的で面白かった。

    章がマシャード並に細かく分かれていて読みやすくていい。これもトリックに使われたらどうしよう。ある章ではこっそり語り手が変わってるとか。


    1/22(月) p.124〜288
    第二部
    吉沢さん相手にいきなり敬語に切り替わるの怖すぎる
    工藤が警察に協力を要請されるのとか、何もかもがミステリとして都合良すぎて違和感がある。おそらく意図的な上滑り。

    第三部
    主人公(工藤)は吉沢さんのことが好きで、吉沢さんは殺された中町と付き合っていたけれどクラスのマドンナ梶川さんに取られていた……なんだかドロドロの痴話っぽくなってきた。副担任の八代と、海外文学趣味繫がりで梶川さんは噂を立てられていたけど事実無根だった?
    中町は実は一歳年上だったのがどれだけ重要なんだ。
    大神先生の人文学スタイルの推理(というか"批評")シーン迫力あって良かった。
    犬塚の強襲。やっぱり飛龍館事件(女子トイレ窃視事件)も関わってくるか。

    1/23(火) p.289~
    チャンドラー『長いお別れ』の引用
    第四部
    教師たち全員が密室トリックの犯人だったことで、生徒vs教師 という構図が鮮烈に立ち上がった。それによって、森警部が学生である工藤に捜査協力を頼んだ、というファンタジー展開もある程度納得がいくようになった。その理由は幾つかあり、説明が難しいが、まず、覚醒剤シェルターの件で森警部は始めから教師陣をクロだと思っているために、彼らに深い協力を仰ぐことは出来ず、したがって代わりに生徒に接近するのはまぁ妥当であること。そして、実際に工藤が役に立つか否かに関わらず、捜査戦線に学生がいること自体が教師陣への牽制になると森警部は考えていた可能性もある。この意味でもやはり工藤は道化だった。さらにそもそも、メタに見たときに、ここで生徒vs教師の構図(工藤vs大神の構図)をよりあからさまにするための展開だったともいえる。したがって、単にミステリの主人公だから、推理が得意だから、という理由でそうなっているわけではないと考えられるため、割と許せる。

    教師対生徒の構図はブラフだった…… 一度、先生たちが犯人ということで終わりそうになった話の重心が、学生達の痴情のもつれへと帰ってくる。おかえり。
    いろんな人物が推理を開陳しては空振り、何度も真犯人が書き換えられていく。ようこんな(に)トリック、話を思いついて小説としてまとめられるわ……ようやるわ〜〜
    しかし、よく出来たトリックや事件、ミステリを読んだとしても、正直なところ、「すごいけど……だから何?」と思ってしまう節もある。いっときその建造物の完成度に感嘆して、あとは立ち去って、感慨は尾をひかない。推理パズルじゃなくてヒューマンドラマを求めてるんだと思う、結局は。小学生の頃、パスワードシリーズやはやみねかおる作品に心酔してたのも、根本的にはキャラが良かったからだと思う。彼らの恋路とかに胸をときめかせていた。

    工藤と吉沢さん、めっちゃキてて草 それを工藤の一人称ではわざとぼかしたり省略してるのがまた小憎らしいですね。キュンキュン…するか?
    てか、このおはなし400ページ以上あってたった1日の話なの凄いな今更ながら。

    読み終わった!! どういうこと!?!? モヤモヤする!!!
    え、けっきょく吉沢さんの推理通り、梶川さんが真犯人でいいの!? そんなわけなくない?? なんか最終的には、聞いてた通り、工藤の名探偵面が(好きな女子でありさっきまでいい感じだった)吉沢さんから徹底的に糾弾される展開で幕を閉じた。そこだけ見たらまぁ工藤ザマァwww とメシウマだけど、しかし吉沢さんの推理にも到底納得出来ないのでモヤる。納得感を求めている時点でお前も工藤と同じ穴のムジナだよ!と言われるかもしれんが、それを言ったらこれをミステリとして書いている作者がいちばん悪いからな……
    (第四の壁系メタエロゲのプレイヤーへのダイレクトアタックに対する引っ掛かりに似ている)

    中町をナイフで殺した真犯人、降旗じゃないの? 完全に勘だけど。事件当時に校舎内にいたし、ナイフの持ち主だし……。メタ読みだけど、後半あまりにも影が薄かったのも怪しい。
    吉沢さんが根拠とした梶川さんの胸ポケットから塩が出てきた件は確かに分からんけど、それだけで真犯人だというのもオチとして弱すぎねぇ?と思うし……八代先生ともやっぱりデキてて、その恨みで擦りつけるために教官室内でわざわざ掻き切った、というのも納得がいかない。それから、翌朝クラスで死体を見た瞬間に昨夜自分が殺したことを「忘れてしまえる」というのも飲み込める訳がない。総じて、梶川さんが真犯人だとすると、そうして梶川さんというひとりの人間をヤバい奴として徹底的に外部化して終わることになるから、フェミニズム的にもミステリ的にも受け入れ難い。

    あと最後のあとがきコーダの手紙もマジで分からない。誰?

    真相をボカして仄めかしたままで終わる系ミステリ、どうせネットで「考察」を読む羽目になるから嫌なんだよなぁ。。読むけど……

    結局この事件はどういうものとして描きたかったのか、というのと、この小説はどういう狙いがあるのか、という両層でモヤモヤしている。

    さっきまで、いくらよく出来た話だとて!!と一蹴していたのが、今はむしろその事件の真相について頭を悩ませているというのは、上手く踊らされているようで悔しいなあ。そういう狙いの作品ってことかあ?

    解説よんだ。
    なんかそんなに褒めてなくてワロタ
    細かい章区切りはヴォネガット『猫のゆりかご』かぁ


    https://katzendreck.com/nori/mippei2.htm
    この小説じたいが、最後の手紙の受け取り主の創作で、工藤くんが吉沢さんに(名探偵として/求愛者として)すげなくフラれただけでなく、それをミステリ作品として愉しむひとつ上の次元のミステリ好き(≒作者/われわれ読者)もまた、高校時代の想い人にすげなくフラれるってわけね・・・。 え~~? そういう安易なメタフィクション読み、しょうもなくない???
    ん~~…………まぁこういう読みをすれば、本作の青春小説としての格(?)は上がるかもしれないけど、いち青春小説好き(兼ミステリ嫌い)としては、べつに嬉しくないなあ。。
    思春期の(ヘテロ)男子の独善的で恥ずかしい恋愛衝動と、ミステリ好きの独善的で恥ずかしい創作/読書衝動をアナロジーとして位置づけているのかもしれないが、その時点でそういうとこやぞミステリマニアめ!!!と言ってやりたくなりますね(いつもの藁人形論法)


    なんかいろいろ否定的に書いてしまったが、スラスラ読めた、それだけでかなり心象は良いです。青春モノかつラノベ的文体でない、という厳しい条件をくぐり抜けている稀有な作品かもしれない。いや、わたしが知らんだけでいっぱいあるだろうが……

  • 事件の真相がつまびらかになるにつれてスケールが拡がっていき、何もかもが中途半端になった印象

    途中支配者然とした厨二病が登場したあたりから物語が陳腐なものと感じ若干冷めた

  • 法月綸太郎のデビュー作。
    文章の表現が独特であり推理や容疑者が二転三転していくため読者によっては読み慣れないかもしれない。

  • 20年ぶりの再読。
    48組の机と椅子が教室から消えた謎はなるほど。でも工藤くん始め、高校生こんな会話するのか??とか、こんなに捜査に加わらせてもらえるのか?とかいろいろ疑問を挟みまくってしまった…
    でもすごく懐かしさを感じた作品。

  • 法月綸太郎デビュー作。ドラマチックだとは思うけど最近の作品と比べて表現がくどい感じがした。序盤は正直そこまで面白くないけど怒涛の終盤のためにも最後まで読むべき作品だと思った。

  • 初めは平坦、最後は急激。xcosxみたいな。
    推理小説のネタがふんだんで、元ネタを読みたいなと思った。

  • 好みのトリックだった。クライマックスは新聞部室とその直後は好みだったけども、いまいちスッキリしなかった。

  • 密室の中で死んだ生徒は自殺か、他殺か。机と椅子が全て移動された理由とは?
    おおっ、と驚くほどのトリックではないが、重ねてひっくり返してきて、なんだかスッキリしないところにスッキリするというか。
    ともあれ、青春時代は痛いものだっていうことか。

  • 木を見るより森を見ろという内容で、48個もの机と椅子が消失した事それ自体よりも、何故そんな大掛かりな仕掛けが必要だったのかという所を考えながら読んでいても真相は中々読めませんでして。
    しかも二転三転する真実。振り回されて疲れましたが、面白かったです。

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著者プロフィール

1964年島根県松江市生まれ。京都大学法学部卒業。88年『密閉教室』でデビュー。02年「都市伝説パズル」で第55回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。05年『生首に聞いてみろ』が第5回本格ミステリ大賞を受賞し、「このミステリーがすごい! 2005年版」で国内編第1位に選ばれる。2013年『ノックス・マシン』が「このミステリーがすごい! 2014年版」「ミステリが読みたい! 2014年版」で国内編第1位に選ばれる。

「2023年 『赤い部屋異聞』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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