すべては「裸になる」から始まって (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062760300

感想・レビュー・書評

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  • AV女優の森下くるみの自伝です。

    偏見や差別などに直面してきた苦悩や、両親との和解についてのエピソードなど、心に響くところもあったのですが、AV女優の自伝エッセイというフォーマットにあまりに嵌まってしまっているような気がしてしまいました。

    同時代で彼女の作品を見ていたわけではないのではっきりとは分からないのですが、メディアの「森下くるみ」像を決定づけたのは、永沢光雄のインタビューだったと考えています。そして、彼女が監督のTOHJIROとタッグを組んで作品を生み出し、作品の中で涙を流した出来事が、永沢によって言葉へともたらされ、それが彼女自身を縛っているのではないかという気がします。

    著者が女優として活躍していたころの視聴者たちは、AVの画面の向こうに、ほんのわずかな女優の「リアル」を見いだそうとしていたように思うのですが、私自身も含めて現在のAVの視聴者たちは、こうした女優のリアルな暴露話にはむしろ引いてしまうのではないでしょうか。とりわけ蒼井そら以降の「セクシー女優」たちは、その「キャラクター」が徹底管理されており、視聴者の方も「幻想」を「幻想」として享受するようになっています。いわゆる「ハメ撮り」に替わって「主観モノ」作品が増えた頃から、そうした傾向は顕著なように思います。

    「解説」の花村萬月も、著者の文章から「リアル」な性と生を見ようとしていると言ってよいと思うのですが、そうした枠組みそのものが古びてしまっているのではないかという印象があります。

  • 抑制された筆致で、事も無げにハードな世界を開陳する表現方法に引き込まれた。

    著者がAV女優であること関係なしに読める本であり、その道に興味津々の読者にも、エロ以外の部分で訴えるのではなかろうか?

  • 電子書籍

  • まじめな人なんだな・・・と思った。露悪的にならず、まじめにまじめに書いているところがよい。短編も発表しているらしいので読んでみたい。

  • AV女優という生きざまを自らの言葉で語ることができる人はあまりいない。そういう意味で貴重な本。ぶっかけや汚物付きアナル舐めの淡々とした描写が逆におぞましい。卓越したプロ意識…AVという世界でトップを張るとはこういうことなのだ。

  • 職業に貴賎はないとは言えない。哲学的な事や倫理的な事を考え始めれば、自分や家族への防衛意識も働き、自分は一部の職業を差別せざるを得ない。これは仕方ない事ではないのか。別に、聖人君子を気取ったり、会ったこともない相手に分かりの良いフリをする必要はないのだ。

    いつだったか、海外に部屋を借りて日本人バックパッカーと暮らしていた頃、その友人が差入れに持ってきてくれたのが森下くるみの写真集だった。当時の日本の大学では、彼女が流行っていた。ダウンロードと森下くるみと言えば、当時を象徴するキーワードだ。

    その時、自分は何を感じていたんだっけ。思い出しながら…その時、彼女が何を感じていたのかを比較しながら。

  • あんまりエッチな内容じゃなくて残念。

  • 【本の内容】
    「荒療治ですが、裸を晒すということは、一度自分をリセットするのに打ってつけでした」

    家族の愛情に飢えて育ち、底なしの寂しさを抱えてAVという世界にたどり着いた、あたし。

    「人を好きになりたい」と過激なカメラの前に立つ。

    人気AV女優が、自らの生い立ちを繊細な筆で綴った、ソウルフルな自伝の書。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    思いを言葉にすることは難しい。

    だが、50本以上のアダルトビデオに出演した人気女優はこの自伝の中で、確かな手応えのある言葉で、自身の思いを語ることに成功している。

    たとえば中学時代、帰りぎわの学校の玄関で、好きな人とすれ違うだけで満足していた自分を、〈脳内自慰行為という安全圏からは離れられない。自分でこしらえた殻の中は温かい〉と振り返り、AV女優になって学んだことを、〈信じるには、まず先に覚悟することだ。そして諦めないこと〉としたためる。

    その感性を育てたのは、彼女のまっすぐな生き方なのだろう。

    過酷な撮影現場の描写には、目を背けたくなる部分もある。

    が、仕事に誇りを持ち、全力を尽くす姿は美しい。

    故郷・秋田で一度は決別した飲んだくれの父と東京で再会し、少しずつ許せるようになっていく様は、人生にふいに現れる希望の灯のようでもある。

    懸命に生きようとする生身の人間の声が、そこに響く。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • すくわれた気持ちになった。

  • ファン。

  • たぶんもっといろんな辛いこととか楽しいこととかあったんだろうけど、内容が薄かったなー。
    橘くるみ?のようなドロドロした感じがウケがよいんだろうけど、いい子って感じを出し過ぎている感じはした。
    まあ、本当にいい子っぽいけど、「へえ」くらいで心に響くものはなかったです。
    ファンの人とかは読んでみると良いのかもしれないですね。

  •  AV女優さんの自叙伝。文体というか感情が熱くないのに冷静でもない、不思議なポジションで面白い。
     個人的にはも少し掘り下げて……というか、時間を置いてから書くとまた別なものが見えるんだろうな、という気がします。

     解説の花村萬月さんが、いろんな意味で面白かった(笑)
     この人すごいな。

  • 胸が熱くなった。
    もっと前からファンでいたかったなと思う。
    やはりこの人、頭もいいし、文才もある。

  • 1時間ちょっとで読めました。
    ふぅん、という感想しか出てきません。
    過去と今が書かれており、どっちかだけでいいから、内容を濃くした方が…と思ってしまいました。

  • 生い立ちが酷似!

    最後の章はちょっと感動したなー。私には絶対来ない和解だもんな。

  • 物書きとして早くデビューして欲しかった。

    激動の人生だろうに、クールな書き味で
    あっという間に読み終わってしまいました。

    とてもとても好きな顔なのです。
    そしてとてもとても綺麗な人。

    本職は刺激が強すぎるので真っ向から対峙できませんが
    文才は素晴らしいと思う。
    音楽センスも渋く、なんつーか、普通じゃない感じが
    とても好感触。
    そんな魅力満載のエッセイです。
    いろいろと重たくて考えさせられました。
    小さくまとまるなよ。

  • 日頃から大変お世話になっている、森下くるみ嬢の自伝小説。
    ブック・オフで見かけ、気が付くと手に取り、気が付くとレジに並んでいた。


    非常に読みやすく、あっという間に読了。
    こんなに早く読み終わってしまっては、きちんと元が取れていないのではないか、と思えるほどに。
    同時に、古本で買っておきながら、と自分の卑しさに失望させられる。


    いい事が書かれていたので抜粋。

    「恋愛は自分の弱さをみる最高のきっかけなのだ」

    「自分しか見えなくなってしまうと、その寂しい感情っていうのは、知らないうちに人の内部をほとんど占め尽くして、そのまま侵食していってしまう」


    類稀な才能に唸らされる。

    そして、私は結局今夜も森下くるみ嬢にお世話になる。

    自分の卑しさに失望させられる。

  • 2008年47冊目

  • くるみさんのビデオは観た事はまだありませんが、
    この本を読んでプチファンになりました。(∩.∩)
    これからも新たな人生をエンジョイしていただけたらと
    そう思います。

  • 女性なんでこういう世界は全く知りませんでした。
    正直、顔をしかめてしまう箇所はいくつもあったけれど、それでも「こういう世界で生きて、仕事をしてお金をもらう人がいるんだ」ということが「分かった」だけでもよかった。

    個人的にこの本をすすめてくれた人に感謝します。

    ただし、
    この本の解説は最悪すぎる(ファンの人には悪いけれど…)。
    「……」とにかく不快感がこみ上げてくる文章だった。
    なので本書のカバーにはさんで読めないようにしています。
    ページ切ると、森下さんの文章まで切られてしまうからね…。

  • 良い。彼女には文才がある。変に世界をあきらめた目線とかじゃなくて、冷静で前向き。そして、まとも。自伝だけじゃなくて小説も読みたい。加藤鷹はやはりすごいらしい。

  • 期待したほどでは…。

  • 女性でも知っている著名なAV女優の森下くるみが自分のデビューから引退までの10年間を綴った一冊。
    彼女はなぜ、AV女優になったのか。女が、自分の意思で、AVに出演するっていうのはどういう意識の動きでそうなるんだろう。
    その気持ちを知りたくて手にとった。
    結局よくわからない、と思う。
    文筆家でないのだから仕方ないけど、文章が拙く、内容も自分の中で処理しきれておらず、未分化なままに本になってしまっている気がする。
    家族、自分、仕事。彼女自身が整理のつかない葛藤を抱えていて、それを無理に言語化しようとしているから混乱するのだ。
    結局、私が野次馬根性で知りたいと感じた理由なんてひどく個人的なことで、それを理解しよう、知ろう、とすること自体が間違っているのかもしれない。
    しかし解説で花村萬月も驚いた彼女のプレイ経験には私も驚いた。
    そんなきっついこともやってきたのか・・・・・。
    森下くるみ、すげぇよ。

  • 週刊プレイボーイの書評で薦めてあったので
    赤裸々な感情が飾りのない表現でストレートに感じることが出来る文章

  • 2008年4月 5/39

  • AV女優森下くるみの自伝小説。
    AV女優という仕事もそうだけど、性を売る仕事について何かを書くとき、あたしは決まってものすごく気を遣う。
    どんな表現をしてもきれいごとにしかならなかったり、蔑視しているように思えたり、憐憫の情をかけているように見えたりしてしまうから。
    だけど、そんなこと気にしたってしょうがないから、正直に書きましょう。

    プライドを持ってAV女優という仕事を全うした人、それが森下くるみだと思う。
    彼女の出演するAVは観たことがないけれど、とにかくそんな印象を受けた。
    ノンフィクションとかエッセイとか、あたしはあまり読まないけれど、これは良い作品だなと思う。
    AV女優という仕事だけじゃなくて、というか仕事じゃなくても、生きて行く上では必ず誰かと関わりあいになるもの。
    特に恋愛とかセックスとか、人と人とが対面して深く交わる場面では、「すべては『裸になる』から始まって」くる。
    物理的なことだけじゃなくて、精神的にも。
    それはとても勇気がいるし、難しいことなんだろうけど、そうじゃなきゃそれはただのイミテーションだとあたしは思う。
    解れたとしても、別れたとしても。
    そういうことが、とても簡単で読みやすい言葉で、きちんと書かれていると思う。

    求めて、求められて。
    与えて、与えられて。
    それはギヴ&テイクとか、そんなドライな響きの言葉じゃなくて、やはりそこにはラヴが存在するのだと思う。
    仕事も、恋愛も、友情も、家族愛も、本当はそういうふうにしかできていないんだよ。

    AV女優が特別素晴らしい職業だとも思ってないし、特別卑下されるべき職業だとも思わない。
    偏見や差別は確かに多すぎる程多い世界なんだろうとは思うけど。
    世代交代とか、新人類とか、ゆとり教育とか、アラサーとか、団塊とか、なんかとにかく細分化して年代でとやかく言われるけど、あたしたちが「若者」というジャンルに属する人間であるなら、上の世代はどうかわからんけど、少なくともあたしとか、それより下の年代の人たちからはせめて一つの仕事としてきちんと認めるべきなんじゃないかなと思う。
    こんなふうに誇りと自信を持ってこの仕事をしている森下くるみという一人の人間のためだけでも。

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