子どもたちは夜と遊ぶ (下) (講談社文庫)

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  • 講談社
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レビュー : 641
  • Amazon.co.jp ・本 (569ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062760508

感想・レビュー・書評

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  • 辻村深月さんの本は、読めば読むほど感動する。本来なら、人を、しかも自分のまわりの人たちの大切な先輩や友人を殺してしまった浅葱は許されないし、憎まれるはずなんだけど、多分読者は浅葱を一番愛しく感じると思う。私もそう。
    クールで何にも動じない表の姿。だけど本当は淋しくて、狂おしいくらい月子が好き。幼い頃に虐待をされて、ずっと救われたいと願い続けてきた。
    彼自身の見る自分、周りの友人から見る浅葱。それから、月子が見守る彼。さまざまなフィルターから見える姿を知るたび、どんどんやりきれなくなった。愛しいな、という気持ちと切ないな、という気持ち。
    いつか月子と浅葱が寄り添いあえる日が来たらいいのに。
    女同士の友情も、リアル。
    紫乃との歪んでいたようで、でも求めあっていた関係や、真紀ちゃんとの思いやりをもちあった関係。
    言葉にしたくないリアルな感情がこれでもかというほど描かれている。
    だけど、温かい人の気持ちを、温かいと描く以上に伝えてくる。
    辻村深月さん、この人は本当にすごい。

  • 話やトリックは王道というか、それほど魅力的ではない。
    しかし、それを超える素晴らしい心理描写と登場人物だった。

    途中、あまりにも辛い展開で読み進めることができなかった。
    何度も、もうだめだ!と思わせるたび涙がでた。
    誰もが経験する人間関係での歯車のズレ。この物語の中では鮮明で切なくて汚くて綺麗。
    登場人物が皆リアルで、一人くらいは周りにいたなぁと思える人なんじゃないかな。

    簡単にリタイアできない。すごく響く言葉でした。

  • 上巻と下巻と最近読み返しました。辻村さんの作品の中で一番最初に読んだ本。
    ジェットコースターというより、富士急のドドンパみたく最初からMAX!で止まらない。
    脇役まで光ってる。すごいなこの人、と思った。

  • 切ないですね。浅葱が、月子が死ななくてよかったです。『i』の正体に関しては、う~ん、そうかという印象。全くの第三者が出てこられてもそれはそれで嫌だけど。どっちがどっちか軽く混乱。

    結末以上に、狐塚と月子の関係に驚きました。上巻2年前の1行目から騙されていた訳ですね、恐れ入りました。固定観念こわい。

    これを読んだ後に「ぼくのメジャースプーン」を読むという順番なのかな。
    秋先生の能力にも屈しない、好きな人を守りたいという月子の覚悟、カッコいい。この覚悟の深さを知って、真の完結という気もします。

  • 完全にやられた。p318で今まであれ?と思っていたことが明らかになった。そしてもう苦しい。悲しすぎる。辻村さんの文章はピンポイントで涙腺を刺激してくる。勝手な勘違いと思い込みから、彼女に手をかけたときはもう。欲しくて欲しくてたまらなかったものを自分で壊してしまう絶望といったら。だけど、もう本当にすごくおもしろかった。浅葱くんが好きだ。p347のそれを見たら、駄目でした~のところで、胸がいっぱいになった。月子の気持ちがわかる。

  • (ネタバレ上等な解説の引用なのでこちらに。単行本版には収録されていません)

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    解説 幾原邦彦

    辻村深月は僕の幼なじみである。
    ……というのは嘘で、僕は辻村さんんとはお会いしたことがない。だが、こうも言ってみたくなった。
    辻村深月は僕の妹だ。
    ……なんてね。
    辻村深月は、どうしてこんなにも僕たちのことを知っているのだろう。
    行方不明になった少年、赤川翼は自分のマンガ本を親に捨てられたことに悔し涙し、そして言う。
    「ここじゃない、どこかに行きたい。大人の庇護がないと自分が生きられないことが情けない」
    やばい。そう思うと、ページをめくる手が止まらない。幾つものデジャブが頭をよぎる。まさか……まさか……まさか……。そして、はたと思い出した。
    二十歳まで生きていることは無いだろう。あの頃、そう思っていたことを。何者でもない我が身を呪い、また将来、何者かになることなど叶わぬと確信していた。
    辻村深月は、そんな絶望をよく知っている。よく覚えている。まるで一緒に同じ映画を観たかのように、僕たちが知っているシーンを再現してみせる。……いや、違う。僕たちが、今もまだその渦中にいることをまざまざと思い出させる。
    同時代的な感覚。同じ風景を見て育ったとしか思えない感覚。コンクリートの匂い。灰色の風景の匂い。

    ある少年がおこした事件をテレビのニュースで見つける。
    彼は「誰でもよかった」と言った。
    ヒヤリ。彼はまるで自分じゃないか。
    髪の毛一本分が、彼と自分を分けた差。
    メディアはわかりやすい切り口で、彼の生い立ち、家族構成を紹介する。
    テレビの中の識者たちは「世界はゲームじゃない」と説く。しかし、だったらなぜ、こんなにも世界は理不尽で不公平なのか。そのことに答えられる大人はテレビの中にはいない。
    だから、テレビが言う”お決まりの言葉”に、ムカムカと吐き気をもよおす。
    「過保護な、あるいは厳しすぎる親の教育」「ゲーム、マンガ、インターネット」「虚構と現実が区別できなくなった」
    違う、違う、違う。テレビ画面に毒づく。
    すべてをあきらめてしまったお前たちに、すべてを忘れてしまったお前たちに、理解できるはずがないじゃないか。
    世界には敵と味方しかいない。そう思っていた。
    自分の味方には決してならないと思える人間には、毒を塗りこめた言葉で攻撃した。一切を認めない。相手のプライドを奪ったと確認できるまで徹底的に戦った。……なぜ?
    そうしなければ傷つきやすく脆い自分の心を守れなかったのだ。
    他者を否定することでしか、自らを肯定できなかった。
    決して誰も好きにならなかった。好きになってしまうと心を支配される。それは負けだと思っていた。求められた者だけが勝者なのだ、と信じていた。
    「お前なんかいらない」と言われるのが怖かった。
    惨めになるのが怖かった。そこに確かに”生と死”があった。

    月子は「自分は選ばれないかもしれない」と怯えている。「世界のルールでは選ばれるお姫様はひとりだ」と信じている。月子は、危うい心のバランスを保つために、自らの心に魔法をかけた。世界の中心は兄だ。兄のそばいいる限り、自分が選から漏れることはない、決して惨めになることはない。
    だが、月子は疲れている。本当は魔法から自由になりたいと思っている。月子にとって、浅葱は魔法を壊す鍵だ。
    やがて、月子は浅葱の正体を知ってしまう。王子様の弱点。契約の時。月子にかけられた魔法は解けるはずだった。
    しかし。
    浅葱は惨めになってしまうことに耐えられず、月子を拒絶する。その展開に目を見張った。
    人を愛してしまうと、同時に「求められないかもしれない」「選ばれないかもしれない」という恐怖に囚われる。それでも大方の人は「誰かを好きになることは素晴らしいことだ」と言う。なぜなら、人は誰かに「あなたが必要なんだ」と言ってもらうために生きているからだ。誰かに便利に使われてしまうための言葉じゃなく「他の誰でもない、あなたじゃないとダメなんだ」という言葉を得るために人は生きている。
    多くの人は、その言葉の在り処は”愛”だと思っている。だから「愛は素晴らしい」と人は言う。
    だが、浅葱には誰かを愛してしまうということは恐怖なのだ。「お前はいらない」と言われてしまうことを想像する恐怖が、全ての感情に勝るのだ。”生と死”の狭間で揺れる心。
    浅葱は愛(藍)の恐怖に囚われている。

    この物語で行われる”殺人ゲーム”は隠喩(メタファー)だ。
    「多くの人の心を傷つけてしまった」「居場所なんてどこにもない」「もう取り返しがつかない」と思っている僕たちの心を喩えている。
    しかし、物語はあざやかなレトリックで、浅葱と月子を救済する。
    藍(愛)の正体は”希望”だった。”自由への希望”だ。
    ひとりぼっちの僕たちに辻村深月は言う。
    「大丈夫だよ」
    僕たちはまだ終わっていない。

    (アニメーション監督)

  • まんまと作者の意図通り読まされたなって感じ。
    最後会いに来た浅葱はどっちなんだろ。

  • 『 i 』と『θ』が行う殺人ゲームでθとして参加している木村浅葱と、殺人ゲームに巻き込まれた浅葱の周囲の人々の、誰かを愛しく想う姿を描きいた作品。

    下巻は一気に読み進めてしまいました。下巻はスピード感があり、次々に真相が明かされ、読むのを止めるタイミングが見つかりませんでした。
    『 i 』の正体には驚かなかったのですが、狐塚たちの知ってる浅葱がまさか「浅葱」ではなかったのにはびっくりしました。
    倒れた月子を前に月子への愛を自覚した浅葱と、浅葱を想う月子の気持ちと行動。すれ違う二人の想いが、とても切なくて悲しくて泣かずにはいられませんでした。
    だから、恭司からの浅葱と月子の二人へのプレゼントは本当によかったなあと。浅葱は浅葱ではないし、月子は月子ではないかも知れないけれど、あのラストがあったお陰で悲しいだけのお話にはならなかったと思います。
    浅葱が月子の秘密(別に月子は隠していたわけではないと思いますが…)に、あの時まで気がつかなかったこと対しては疑問を持たなくもないのですが…。そういったことを気にならないくらい、悲しくてあたたかい素敵なお話でした!

  • すべてのことに気付かなかったし気付けなかった、辻村深月さすがである。
    この読み終わった後の空虚感/しかし悪いものではないと思える

  • ミスリーディングはなはだしい。
    もうやられた!としか言えない。確かに断言はしてないよ。

    この話でうまいなあと思ったのが、月子と月子の友人。月子は月子の友人の前ではうまく笑えない。どうしても卑下してしまう。友人はすぐにバレそうな嘘をつき、月子よりも優位に立ちたがる。こういう女はいる。

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著者プロフィール

辻村深月(つじむら みづき)
1980年山梨県生まれ。千葉大学教育学部卒業後、2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、2017年『かがみの孤城』で「ダ・ヴィンチ ブックオブザイヤー」1位、王様のブランチBOOK大賞、啓文堂書店文芸書大賞などをそれぞれ受賞。本屋大賞ノミネート作も数多く、2018年に『かがみの孤城』で第6回ブクログ大賞、第15回本屋大賞などを受賞し、2019年6月からコミック化される。他の代表作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『名前探しの放課後』『ハケンアニメ!』『朝が来る』など。新作の度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者からの熱い支持を得ている。2020年、河瀬直美監督により『朝が来る』が映画化される。

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