- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062760959
感想・レビュー・書評
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ツボを突かれまくりました。
短編集とはいえ
一冊の本から4箇所も引用したくなった本は久し振りです。
誠実な人々。
裏を返せば”堅物”と呼ばれてしまう人々の
恋愛や犯罪や隠し事などを描く、
どちらかといえばありふれた設定のヒューマンミステリーなんですが
登場人物が考えたり言ったりする言葉に何度もリアルに応じてしまいました。
一言で表すなら”底なしの浅瀬”でしょうか。
難しい書き方もしていませんし
取り上げ方も大袈裟ではないので
さらりと読み過ごすこともできそうな所々に
重要なメッセージが散りばめられているような。
読書好きな方にはぜひオススメしたいです。
心理学がお好きな方にも読み応えは充分にあると思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
面白かった^ ^人ってこういうこだわりとか、弱さとか、図々しさとかあるよなあ、って納得できる。
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最初はとっつきにくい印象のお話です。
私が今まで読んできた著者の作品とは異なり、ファンタジーではなく、現代ものだからかもしれない。
しかし、読み進むと端的な描写ながらじわじわと見えてくるのは、タイトルの通り、普段は小説に登場しないような「カタブツ」で普通の人たちの姿が。
1編読みおえるころには術中にはまり、一気にラストまで読み切りました。イイネ。 -
一応「ミステリー」のカテゴリーには入れられているけれども、私にとってはこれは、発達障害を抱える人達の物語のように思えてならない。
「誠実すぎるひとたち」と評されているが、たぶん、一般的に想定されている「誠実さ」とはちょっとずれているのだ。
融通が利かないとか、杓子定規、自分の規範に固執する、という感じ。
決して間違っているとか、悪であるというわけでもないのに、なぜか窮地へ自分を追い込んでしまう。
もちろん、発達障害をテーマにした小説ではないからそれに関する記述はないのだが、「バクの見た夢」の二人の、妙に理詰めな考え方とか、「袋のカンガルー」の双子のあり方とか、「駅で待つ人」の倫理観とか、「とっさの場合」の強迫神経症とか、「無言電話の向こう側」の幹人の性格設定など、どれをとっても、私には非常に馴染み深い思考回路なのである。
主人公の思考をたどっていると、ときどき「どうして作者は、この思考形態を知っているんだろう」と驚いてしまう。
「マリッジブルー マリングレー」の主人公が、「なんでもない会話ができなくなる」シーンは、まるで自分のことのようで、どきどきしてしまった。私もあんなふうに、変に考えこんで言葉が出なくなってしまうことがよくあるから。
ラストがミステリーっぽくて(しかもリドルストーリー的でもある)面白かった。 -
物語の展開的には「もうひと掘り!」と物足りなさを感じたけど、人物像の書き方かな?表現かな?とても好きです。沢村さんの他の作品も読んでみたいと思いました。
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バクの見た夢
不倫カップルの、行く先
無言電話の向こう側
一番とゆうか、これ以外は ちょっと
残念。 -
どうしようもなく、真面目で、不器用で、完璧でない、優しい人たち。
そんな人たちが静かに織り成す、「情」を巡る物語でした。
何通りもある愛の形、とも言えるかもしれません。
私はやっぱり、この人の人物描写が好きです!
他の本も、ぜひ読んでみたい。 -
登場人物がみんな、誠実でしたね。
1作目の「バクのみた夢」は、まさかこの結末になるとは思わなかったですね。
恐ろしかったのは、「マリッジブルー、マリングレー」。
全体的に少し物足りないと感じたのは、私だけでしょうか。 -
家庭がありながら運命的な出逢いをしてしまった二人、人の世話ばかり焼いてしまう癖を恋人に咎められる青年、息子が事故に遭遇しても足がすくんで助けられない夢にうなされる母親、隣室の女性がストーカーに殺されたのに何もしなかったと非難される男。誠実な人々の窮地を描いて共感を呼ぶミステリー集。
実のところ、全体的に好みではない。
「こだわり」を持ち、誠実ですらある人々が登場するミステリ仕立ての短編で、どこかゾクりとする読後感。
・・・といえば、決して嫌いな種類の小説ではないのだが、
なぜだろう。
もう一押しが欲しいな、と物足りなさが残るのだ。
唯一、巻末に収録されている
『無言電話の向こう側』は、読み進めるうちに予測できるうえ、思った通りに近いラストながらも、えらく暖かい気持ちにさせられた。好きな物語でした。
《2010年1月21日 読了》