- Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062761055
作品紹介・あらすじ
奇妙な原稿が、ある新人賞に投稿された。"私"は友人から応募者の名が「三津田信三」だと知らされるが、身に覚えがない。そのころ偶然に探しあてた洋館を舞台に、"私"は怪奇小説を書きはじめるのだが…。本格ミステリーとホラーが見事に融合する三津田信三ワールドの記念すべき最初の作品が遂に登場。
感想・レビュー・書評
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じめじめした今の時期のようなホラー。
家自体に憑かれてしまう、現実と作品の境が溶解していく感じが怖かった。
余談ですが、
私も実はずっと気になる空き家があり、私はトトロに出てくるような家と思うのですが…、みんなは怖い感じといってるんです…
この本を読んで、あまりその家を気にするのはやめようと思いました…詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
名前はよく見てたけど、初めまして、な作家さん。
途中うだうだ長かったので、流し読みして最後もよく分からんうちに終わった…。
なんか解決した?
取りあえず、ハーフティンバーて単語は覚えた -
著者デビュー作。そして、作者が紡ぐ、“実話怪談”の始まりとなる作品。
『百物語という名の物語』という作品が日本ホラー小説大賞に応募されていると友人から聞かされた「私」こと“三津田信三”は、そのころ偶然見つけた館を舞台とした怪奇小説を書き始める。
語り手の“現実”の視点と、作中作の“虚構”の語りが入り混じり、読者を恐怖の迷宮へと誘う。傑作“メタ”ホラーミステリー。 -
・燠火(おきび)火勢が盛んで赤く熱した炭火。おこし火。薪が燃えたあとの赤くなったもの。おき。
・澱(おり)液体の中に沈んで底にたまった滓。
・嚆矢(こうし)「荘子在宥」より。昔、中国で合戦の初めに、かぶら矢を敵陣に向けて射かけたことから、物事のはじめ。最初。
・斟酌(しんしゃく)相手の事情・心情などをくみとること。
・窃視(せっし)こっそりとのぞき見ること。 -
「作家三部作」 一作目
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読んだ後、「にちゃり」が頭から離れないw
作中作の「忌む家」が家シリーズと似た構成だったので、「成る程、その後『三津田信三』氏はこの話をシリーズ化したという設定なのか!」 とか思ってしまった私は既に作者の術中に嵌まっているのだと思いますw
さて本作ですが、自身が書いた小説と現実が次第に曖昧になって行く、しかもその小説は勝手に一人歩きして行く、というのがなんとも気色悪くていいです。
もの凄く怖いわけじゃないんだけど、物語全体に「不穏さ」「忌まわしさ」「厭らしさ」が満ち溢れていて、ホラーを読んだなぁという充実感が味わえました。(ミステリー要素もありますが)
あと、乱歩をはじめとする、ミステリーやホラー作品の蘊蓄もとても面白かったです。
紹介された幾つかの作品、いずれ読んでみたいですね。 -
中盤は間延びする展開。何かが起こりそうで、なかなか事件が起こらない。
ただ、最後の方は怒涛の展開で、描写も怖い。最後まで読めば、満足できる。
ホラーっぽいミステリーかと思ったが、ミステリーっぽいホラー。 -
嘘の配合比率が絶妙。
ホラー系の編集を生業とする主人公が住んだ館は
イギリスから移築された幽霊屋敷だった。
この小説は現実から
次第におかしな出来事が起こり
ホラーへと進んでいく。
その嘘の配合比率が絶妙だ。
そもそも、小説とは
リアルに嘘を混ぜたもの。
その配合比率で以下のように分類できる。
リアル>嘘
リアル=嘘
リアル<嘘
例えば。
ある解剖学書で
骸骨の上に蠅が止まっている
細密画があった。
その蠅はもちろん、フィクション。
嘘なのであるが、
このハエがいっそうのリアルさを生んでいる。
少しの嘘はリアルを高める。
さらに嘘の配合比率がリアルと同じくらいになると
読者は今がリアルか、嘘がリアルかわからなくなってくる。
さらに言えば
リアル<嘘
は嘘がリアルを追い越していく。
アンチリアルという新たな地平を拓くものといえる。
フィクションの世界こそが人生。
今いる人生はフィクション、仮想現実。
オタクの立ち位置はここだと思う。
そういった意味でオタクが
アイドルやSF、アニメに傾倒するのは
アンチリアルへの多いなる志向だと言える。
この嘘の配合比率の順番に
一番上がノンフィクションであり
二番目が一般の小説であり
三番目がホラーやSFという考え方もできる。
さて、この小説。
作者の三津田信三は
本物のミステリー系の編集者。
さらに作家が住んだ家の周辺も
実際に存在する。
作中に出てくる作家が応募した小説も
本当に応募されたものだという。
こうしたリアルを重ねて
いつしか登場人物である作家は
迷宮魔界へと足をそっと踏み入れる。
その足の踏み出し方が絶妙で
読み終えた後でも
この屋敷は本当にあるのではないか。
あってほしいと願う自分に気づく。
「にちゃり」という笑いの繰り返し。
イギリスの木の家、その中に置かれた家と瓜二つなドールハウス。
愛読者が次第に変質していく様。
この小説は多彩なホラーとサスペンスの要素をミックスして
読者を夜眠れなくさせてくれる。