魔王 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062761420

感想・レビュー・書評

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  • 購入。
    以前図書館で借りて読んで感銘を受け、いつか手元に欲しいと思っていた本だが、今手に入れて読み返してみたら記憶していたのとはだいぶ印象が変わって驚いた。
    記憶していたより政治色が強く、そうだったそこも大好きな点だった、忖度せずおかしいと思うことは具体的に描いた世界にすごく共感したんだった、自分が生きているこの世界で何かおかしいと思っていたことをこれじゃない?と見えるように差し出された気持ちだったのを思い出した。
    これは兄弟が大きすぎる敵と戦う超能力ものだが、それだけではない、超能力を持たない私たち読者に考えろと危険を知らせるメッセージなのだと思った。
    大丈夫?こんなこと書いたら伊坂さんが消されない?と思ったけれど、そういうところも好きだった。
    昔夢中になってみたマクガイバーが出てくるところも、宮沢賢治をどうもうさん臭くて好きじゃないと思っていたのが腑に落ちたところ、決め台詞や合言葉みたいなのがちりばめられているところもすごく好き。
    もう文庫でしか買えなかったけど、見つけたらハードカバーでも購入しようと思う。

  • これを読んで、嫌々ではなく自らの強い意志で選挙に行きたいと思った。扇動されることの恐怖を感じ、自分ごと化できた。

  • 愛情の対義語は無関心である、という言葉があったが、何も考えない、というのは究極の無関心かも知れない。考え過ぎだろう、とか、今考えても仕方ない、と言って、結局、何も決めず、何もせず、ずるずると周りに流されていく。指導力やカリスマのある誰かに従うのも、世間やSNSの主語がない思想に従うのも、思考の放棄という点では変わらない。
    主人公たちは、幸運にも?特殊な力を得たから、流れに逆らおうとする気を持てたのかも知れない。だからこそ、ストーリとして成立しうる。だが、現実にはヒーローも超能力者も強力な指導者もいない。ヒーローでない現実の人間しかいない現実では、皆きっかけも気力もないままで、事件もなく事故もなく淡々と終末に向かう事になるのだろう。そうなるくらいなら、せめて極端でも自分の信念を持てる方が、それが真に自分の信念であるならばどれだけ良いか。個人的には、強力な指導者を頂くのは好きになれない。思考と責任の放棄により繋がりやすいと思うから。それなら、全員で考えて全員で間違う方が良しと映る。
    いつの間にか生命を奪う魔王は、私には、無関心と放棄、ではないかと思われる。

  • なんとも歯がゆい感じ。
    想像力のない自分には、スッキリしないところが多かった。
    もっと能力をバリバリ使ってくれるのを期待していた。それならラノベ読みなさいって話ですが笑

    主人公結局なんで死んじゃったのかもよく分からず。
    バーのマスターだよね?

  • 本当に恐ろしいものは群集心理のお話。

    TVや新聞で流行ってもいないのに流行ってるかのように操ろうとすることがバレバレであるにも関わらず一向に減らない。
    日本人がメディアを信用しなくすることが目的だと思わざるを得ない。
    作戦どうりほぼほぼの日本人はメディアを信用しなくなったと言っていいでしょう。
    この次になにを目的としてるのか恐ろしくなる。

    目に見えないものに対する恐怖心と改善されない現実に辟易しつつ静かに人生が終われればと願う。
    そんな現実の恐怖を盛り込んだ一冊。

    なかなか難しく伊坂氏の考えはくみ取れてないとは思うが大人は読むべきと思う。

  • いつもの軽快な伊坂ワールドとは雰囲気が違ったけど、今回も登場人物に与えられた特殊能力が面白い。自分だったら・・・と、何度も考えちゃった。途中、千葉ちゃんが出てきた時は、目を細めました。(*^_^*)

  • 反動 ファシズム 群集心理 日本人の気質 強いリーダー 無関心 国家 平和 裕福 

  • 色んなのかけるんやなあ

  • 私はスカートを直せる人だろうか…たったそれだけのことなのに、ずいぶん刺しにくるなぁ。

  • 読み終わった後のモヤモヤとした余韻がすごい。
    結末を理解するのが難しい。

    結局安藤兄はなぜ死んだんだろう?
    バーのマスターは超能力者だったのかな?
    安藤弟は今後どんな行動に出るんだ?
    色々な疑問が湧き出てくる。

    「考えろ。考えろ。」
    "検索"するのではなく"思索"することを唱えた犬養の言葉。実際にこの本から課されているような気分。

    モダンタイムスから読んでしまったこともあり、考える順番が逆になってしまったけど、一連の作品を通して「考えろ。考えろ。」という言葉が心に残る。

  • 何作か読んできて、伊坂さんの作品は「巧い」と「熱い」の比率で成り立っていると言えるのではないかと思っていて、今作は「熱い」の比率が多くを占めている作品だと思った。エンタメというよりは文学だった。
    私は天邪鬼な性格で、集団が同じ方向に流れていくことに敏感な方なのだけど、そこで抵抗できるほどの勇気があるのかはわからない。けれど今作を読んで安藤兄弟のようにありたいと思った。

  • 伊坂幸太郎ワールドではあるんだけど、らしくないというか、キレが悪い。

  • まだ読書にハマる前に漫画で読んだことあるなぁ、と思いながら予備知識有りでの読了。

    正直めっちゃ面白い。2004年あたりに書かれたらしいけど少なくともエピグラフで言えば「時代は少しも変わらないと思う。(後略)」の太宰側の意見に賛成だな。

    色々、核心ついてると思うところはあるけど一つ挙げるなら「この国の人間はさ、怒り続けたり、反対し続けるのが苦手なんだ。」の部分。国民投票について「最初はお祭り騒ぎ」過ぎてみれば消化されてる。2回目に話が上がるとその時にはもう「前にやった」とやっかまれる。これってまんまコロナと一緒じゃん。

    終わり方はフワッとしてたけど随分と心に刺しにくる物語でした。

  • ラストが判然としないなあ。
    でも伊坂幸太郎の作品の中で、こういう雰囲気や構成は珍しいような気もして意外だった。

    とりあえず次作ということで、モダンタイムズを読んでまた考えたい。

  • お前たちのやっているのは思索ではなく、検索だ。

    いざ言われるとあぁなるほど、と思ってしまう。自分の行動は周りに流されていないか、気になってしまった。
    話としては消化不良感がかなり強い。続編(と言われる)のモダンタイムズに期待。

  • 「伊坂幸太郎」の小説『魔王』を読みました。

    『死神の精度』に続き「伊坂幸太郎」作品… 6作連続で「伊坂幸太郎」作品ですね。

    -----story-------------
    本年度本屋大賞受賞作家による最大の問題作不思議な力を身につけた男が大衆を扇動する政治家と対決する『魔王』と、それと対をなし、静謐な感動をよぶ『呼吸』。
    2000年代最注目作家が挑戦し到達した話題作
    -----------------------

    著者自身が「自分の読んだことのない小説が読みたい。そんな気持ちで書きました」と語る作品だけあって、正直、既存の枠組みではジャンル分けできないような作品、、、

    どちらかと言えば、SF的な要素やファンタジー的な要素が強く感じましたね。

    本作品は、二編の中篇で構成されています。

     ■魔王
     ■呼吸


    『魔王』は、思った事を相手に喋らせることができる不思議な能力≪腹話術≫を持っていることに気付いた「安藤」が、その能力を使って世の中の流れを変えようとする物語、、、

    カリスマ性を持った野党党首「犬養」のファシズムを連想させる言動と大衆を煽動させる影響力… 「犬養」が、将来、権力を強化することに危機を感じた「安藤」は≪腹話術≫を使って、「犬養」を失墜させようとささやかな抵抗をするが、「安藤」とは別な特殊能力を持った人間により封じ込められます。

    「安藤」が「犬養」の演説会場に向かう数日前から、「安藤」の周辺に「千葉」という男が現れるところが、「安藤」の将来を暗示していましたね。
    (『死神の精度』を読んでいる人にしかわからない内容ですが… )


    『呼吸』は、『魔王』から五年度の物語、、、

    「安藤」の死後、絶対にじゃんけんに負けないことから、ある能力に気付いた弟の「潤也」は、兄の意思を継ぐため、その能力を駆使して財産を増やす。

    その能力を使うところよりも、猛禽類の調査をしながら、兄(の心)と交流するシーン(『魔王』の中で兄の目線からも描かれているシーンなのですが… )の方が印象的でした。


    読む前は、「安藤」兄弟が特殊能力を駆使して世界を変える、、、

    というようなエンターテイメント性の高い作品を想像していたのですが、実際は全く違っていましたね。

    大きな流れに抗するため、小さな一人ひとりに何ができるのか… 難しい問題を問いかけられる、奥の深い、独特の雰囲気を持った作品でした。


    わかり難い部分もあり、作者の意図を十分に理解できているとは思えませんが、、、

    作品を通じて、大きな流れに飲み込まれず、自分の考えを信じることの大切さを感じることができる作品でした。

    自分でも理由はわからないし、上手く表現できないのですが… 心地良い余韻が残りましたね。


    印象に残る「潤也」の言葉を記しておきます。

    「兄貴は負けなかった。
     逃げなかった。
     だから、俺も負けたくないんだよ。
     馬鹿でかい洪水が起きた時、俺はそれでも、水に流されないで、立ち尽くす一本の木になりたいんだよ」

    胸を打たれましたね。


    以下、主な登場人物です。

    「安藤」
     「魔王」の主人公。会社員。
     交通事故で両親を失ってから、弟の潤也と二人で暮らしている。
     幼少期に見たアメリカのドラマ『冒険野郎マクガイバー』の影響で、「考えろ」と呟きながら考察する癖があることから考察魔と呼ばれる。
     自分が思った事を相手に喋らせることができる『腹話術』の能力に気付き、様々な要因が重なり一人の男に接近することを決意する。

    「安藤潤也」
     安藤の弟。
     明るく、自分の考えを持ち芯の強い所がある。
     「呼吸」では詩織と結婚し、仙台に移住し猛禽類の調査をする仕事をしている。
     「魔王」の話以後、じゃんけんに負けなくなった事から、ある能力に気付く。

    「詩織」
     潤也の恋人。
     「呼吸」の主人公で、その時には潤也と結婚し、ともに仙台に移住し、派遣社員として働いている。
     電気を消す音を聞くと、たとえ睡眠時であっても「消灯ですよ」と言う癖がある。

    「犬養舜二」
     未来党の党首で国会議員。
     政治に興味のない若い世代など、人を引き付ける魅力を持つ。
     テレビの討論番組で、「五年で立て直す。無理だったら私の首をはねろ」という発言の旨をする。
     「呼吸」では内閣総理大臣になっている。

    「ドゥーチェのマスター」
     安藤が通うドゥーチェというバーのマスター。

    「島」
     安藤の大学時代の友人。
     電車の中で、偶然安藤と再会する。
     大学時代は長髪だったが、営業社員をしていた再開時には「暑いから」という理由で短髪になっている。
     「呼吸」にも登場し、未来党の党員活動をしている。
     その時には、再び長髪になっている。
     巨乳と女子高生が好き。

    「満智子」
     安藤の同僚。
     安藤の隣の席を使用している。

    「平田」
     安藤の勤める会社の先輩。
     四十代前半で離婚歴のある独身男性。
     気が弱い。

    「アンダーソン」
     安藤の友人。
     日本人のOLと恋に落ち結婚。
     会社を辞め、英会話教室を営んでいる。
     アメリカ出身だが、日本に帰化している。
     日本名はあるが、誰もその名では呼ばない。
     妻とは帰化が認められた半年後に死別している。

    「田中」
     サッカー日本代表の中盤の要と言われる選手。
     日本対アメリカの親善試合の後、アメリカ人によって殺害される。

    「蜜代」
     「呼吸」に登場。
     詩織の同僚。
     詩織からは「蜜代っち」と呼ばれ、詩織の事を「詩織っち」と呼ぶ。
     憲法九条の改正に批判的な意見を持つ。

    「赤堀」
     「呼吸」に登場。
     詩織の同僚で、一歳下の二十七歳。
     憲法九条の改正に肯定的な意見を持つ。

    「大前田」
     「呼吸」に登場。
     詩織の上司。

  • 面白かった〜

    大きな洪水に流されない自信があるか
    この言葉は自分の人生に何度も巡ってくる問である。

    ある学問を独学で学んでいるのですが、段々と孤独感、社会から離れていく気がして不安になる瞬間もある。

    「でたらめでもいいから、自分の考えを信じて、対決していけば」
    ムードに流されるな、自分を信じろ!


    パンチライン集
    □「相手を言い負かして幸せになるのは、自分だけだってことに気づいていないんだよ。理屈で相手をペシャンコにして、無理やり負けを認めさせたところで、そいつの考えは変わらないよ。場の雰囲気が悪くなるだけだ。」

    □「今この国の国民はどういう人生を送っているか、知っているか?テレビとパソコンの前に座り、そこに流れてくる情報や娯楽を次々と眺めているだけだ。死ぬまでの間、そうやってただ漫然と生きている。」
    □「テレビとインターネットだ。豊富な情報と単調な生活から生まれてくるのは、短絡的な発想や憎悪だけだ。」

    □「得てして人は、自分の得たものを、自分だけが得たものと思い込むというわけですよ。」
    「特別なのは自分だけではないのに、です。」

    □「もし万が一、お前の考えが、そこらのインターネットで得た知識や評論家の物言いの焼き増しだったら、俺はお前に幻滅する。おまえは、おまえが誰かのパクリ出ないことを証明しろ。」

  • 読了。10年以上前に読んだ時は、ちょっと上手く入れなくて苦手でした。今回はそこまで嫌悪感はなかったけど、やっぱり不気味さがあるなぁ。でも、時間を開けて読むとやっぱり感じ方が変わってくる。
    #読了
    #魔王
    #読書好きな人と繋がりたい

  •  20代前半で初めて読んだ時は、ファシズムの恐ろしさよりも犬養のような首相が実際に居ればいいのに、という感想を抱いていた。流れに身を任せ、何も考えない群衆の1人だったことに再読して気づく。実際に覚悟を持って政務にあたっているため、政治家・首相としては適任かもしれないが、改憲のくだりはうすら寒さを感じた。
     シューベルトの『魔王』がずっと脳内で再生され、ダークな雰囲気にゾクゾクする。ギャングシリーズのような楽しいものも好きだが、国家などの個人ではどうにもならない巨大な勢力に立ち向かおうとする作品が好きだ。

  • 大きな力に抗う兄と弟。
    それぞれ違った力で。

    が、何かモヤモヤ感が残る。

    いつもの伊坂ワールドの大どんでん返しもなく。

    モダンタイムスを読んで、この作品が理解できるのだろうか…

    モダンタイムスも読まなければ(笑)。

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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