魔王 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 22665
レビュー : 1974
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062761420

作品紹介・あらすじ

会社員の安藤は弟の潤也と二人で暮らしていた。自分が念じれば、それを相手が必ず口に出すことに偶然気がついた安藤は、その能力を携えて、一人の男に近づいていった。五年後の潤也の姿を描いた「呼吸」とともに綴られる、何気ない日常生活に流されることの危うさ。新たなる小説の可能性を追求した物語。

感想・レビュー・書評

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  • 最近政治やら戦争やらが題材の小説が気になっていたので、読んでいてとてもおもしろかった!!
    でもこれで完結!?嘘でしょ!?あの伊坂幸太郎が!?伏線回収の鬼みたいな伊坂幸太郎がこれで完結!?と思っていたのだけど、別タイトルで続編があるらしいね。読まねば。
    死神の精度の千葉が出ていたことを他の方のレビューで知り、「あ、千葉ってあの千葉!?だからお兄ちゃん千葉に対してあんなビクビクしてたんだ!?」って驚いてその部分だけ読み直した。すげー。千葉……調査ってお前……お兄ちゃんのこと“可”にしたんか……千葉……悲しいね。
    弟くんはお金をたくさん貯めて何に使うんだろう。国の為に?いざ戦争が始まるってなったときに、あのお金を和解金か何かに使う予定なのかなぁ。分かんないな。伊坂幸太郎の作品は、読後感スッキリするものばかり読んできたからこのモヤモヤ感に戸惑っている!!続編読まなきゃ!!

  • 好きなセリフ

    ・「今まで議論で負けたことがない」とか、「どんな相手でも論破できる」とか自慢げに話している奴を見ると、馬鹿じゃないかって思うんだよね。相手を言い負かして幸せになるのは、自分だけだってことに気づいてないんだよ。理屈で相手をぺしゃんこにして、無理やり負けを認めさせたところで、そいつの考えは変わらないよ。場の雰囲気が悪くなるだけだ。
    ・テレビとパソコンの前に座り、そこに流れてくる情報や娯楽を次々と眺めているだけだ。死ぬまでの間、そうやってただ、漫然と生きている。食事も入浴も、仕事も恋愛も、すべて、こなすだけだ。無自覚に、無為に時間を費し、そのくせ、人生は短い、と嘆く。もっと言えば、まともに生活することもままならない人間が多すぎる。彼らは無料の娯楽で、毎日を過ごす。テレビとインターネットだ。豊富な情報と、単調な生活から生まれてくるのは、短絡的な発想や憎悪だけだ。
    ・人は、命令を与えられれば、それがどんなに心苦しいことであっても、最終的には実行する。命令された仕事だから、と自分を納得させるのかもしれない。
    ・集団は、罪の意識を軽くする。
    ・民主主義は善か?民主主義は何人殺したんだ?資本主義はどれだけの人間の人生を損なった?
    ・もし万が一、おまえの考えが、そこらのインターネットで得た知識や評論家の物言いの焼き増しだったら、俺は、おまえに幻滅する。おまえは、おまえが誰かのパクリではないことを証明しろ。
    ・私を信用するな。よく、考えろ。そして、選択しろ。おまえ達のやっていることは検索で、思索ではない。
    ・まわりの雰囲気とか、世間体を気にして、やりたいことができない自分はちょっと嫌だ。何のための人生なんだ、って思うよ。

    犬養好きだな。彼の台詞を読んでると、耳が痛い。教会音楽を聴きながら読むと雰囲気が出て、作品に没入出来た。

  • 普段関わりのない1つの事柄に偶然触れて、無知が故にそのまま傾倒してしまうのは怖い。
    自分で考える力は鍛えることが出来るから、今から始めても遅くない。自分1人だけと孤独に思うこともあるが、それは間違いではないし恥じることもない。
    どれか1つの考え方を推薦するタイプの本ではなかった。あくまで自分なりの答えを求め、考えさせる。
    千葉さんの見届けがあったけど、こっち側の視点で読んでみたい。そうしたら、何が起きていたのかが明確だろうなぁ。

  • 「魔王」とは何か。誰なのか。深く考えさせられる作品であった。人々の思考が犬養の思うままに変容していく、そこから自分の知らぬがままに、社会全体が変わっていくこと、風潮、常識みたいなものにたいして問題視すべき、そのような意味合いもあったのだろう。宮沢賢治の言葉が上手く使われており、状況を効果的に分かりやすくしていた。

  • 2回目の読了。
    1回目を読んだのは随分前だったような…。

    いかに自分が漫然と生きているか。深く考えずに、「大衆」が言うことを鵜呑みにして、そういうものなのだと思って受け入れていることか。
    私のその選択は、私の意思だと思っているけど、そらはなにか大きな力に影響されて、動かされているだけではないのか。

    群衆は怖い。一人一人の意思ではなく、群衆それ自体が一つの方向に向かっていこうとするときに、そっちに行きたくない人だっているだろうに、それが悪みたいになってしまう。
    犬養みたいに群衆を煽るのが上手い人が現れると、人々は楽に意思決定ができるから、そっちに付いていこうとするのだろう。

    何が大切なのかを、考えて、考えないと流されてしまう。

  • シューベルトの楽曲「魔王」を意識して作られたという、伊坂幸太郎さんの著書。

    作品中には、憲法改正や他国との外交関係等、政治色のある内容も出てくるが、著者自身、何かを意識したり、勉強したり、思惑があってのことではないらしい。

    ストーリーは、自分が心の中で念じれば、そのままの言葉を相手の口から発させることができる能力に気づいた安藤が、その能力の限界を探りながら、時の首相有力候補の男に近づいていく。

    その男は、これまでの政治家にはないような魅力をもち、身の保身や既得権益なんかに左右されず、ぶれない政治家であり、憲法改正を強く望む姿勢を全面に押し出す野党党首だった。そして、その男に近づいた結果、なぜか安藤は脳溢血で死んでしまう。

    また、安藤の死から5年後、安藤と共に暮らしていた弟の順也の日常を描いた「呼吸」も収録されている。

    順也は、安藤が死んでから、なぜかじゃんけんに負けたことがない。予知しているわけでも、声が聞こえるという類いのものでもなく、当てずっぽうに出した結果、負けなしという不思議な運が身に付いていた。

    なんとも言えない、他の伊坂作品とは違う雰囲気の不思議な小説だった。

    ちなみに、「魔王」という楽曲は、父親が発熱した息子を脇にかかえて、馬を疾走させ森を駆け抜ける間に、息子には魔王の姿が見えたり、声が聞こえたりするが、父親は気のせいだと取り合ってくれず、病院につくころには死んでしまうという後味の悪い楽曲だ。

    その楽曲とどう関係があるのかはわからなかったが、安藤のような能力を身に付けた者を自分だけだと思うなという忠告は本文中に出てきた。

    もし自分がこんな能力を身に付けてしまったら、だれにどんな発言をさせようかと考えてみたが。。何気に思い付かない。

  • 読み終わった後
    すっきりする終わり方ではなくてもやもやして
    すごく考えさせられている自分がいて
    これがこの本の良さなのかなと思った。
    兄弟の能力を描きながら
    もっと違う何かを伝えようとしている
    そんな感じがした。面白い。

  • これまで読んだ小説の中で最もパワーのあるテーマを感じた。
    思考放棄の危険性を実感させてくれる

  • 自分はうまくまとまった感じの作品よりも、読後にこれくらい煙に巻かれた感がある作品の方がいいな。

    まぁ、両論ありそうだけど。

  • いつもの怒涛の伏線回収がなかったのが残念。

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著者プロフィール

伊坂 幸太郎(いさか こうたろう)
1971年千葉県生まれの作家。東北大学法学部卒業後、SEとして働きながら文学賞応募し、2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞受賞、デビュー作となる。その後作家専業となり、宮城県仙台市に在住しながら執筆を続けている。2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、同年『死神の精度』で第57回日本推理作家協会賞短編部門、2006年平成17年度宮城県芸術選奨文芸部門、2008年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。同作で直木賞の選考対象となることを辞退したことも話題になった。上記受賞作のほか、『重力ピエロ』、『バイバイ、ブラックバード』、『アイネクライネナハトムジーク』など話題となる作品は多い。代表作も殆どが映画化されている。最新作に『フーガはユーガ』。

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