魔王 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062761420

作品紹介・あらすじ

会社員の安藤は弟の潤也と二人で暮らしていた。自分が念じれば、それを相手が必ず口に出すことに偶然気がついた安藤は、その能力を携えて、一人の男に近づいていった。五年後の潤也の姿を描いた「呼吸」とともに綴られる、何気ない日常生活に流されることの危うさ。新たなる小説の可能性を追求した物語。

感想・レビュー・書評

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  • それぞれが違う特殊な能力を持った兄弟が、世の中を変えていきたいと決意し、立ち向かおうとする
    この作品の様に強い指導者が出て来た時に、他人の意見を迎合することなく、俯瞰的に物事を見る事が出来るのだろうか?
    疑問を抱く事が出来るだろうか?
    それは家族だったり、学校、職場、どこの世界でも同じ事だと思った
    「考えろ、考えろ、マクガイバー」

    作中に出て来る宮沢賢治の『注文の多い料理店』とシューベルトの『魔王』の歌も、ファシズムに巻き込まれて気付かない、考えているつもりになっている暗喩として用いられている

    テーマが現実的な問題であり、突き刺さる言葉が多いので、読んだ後も引きずり考えさせられる
    そして完成系ではないので読後感はスッキリしない
    しかし『モダンタイムス』に話が続くと他の方々のレビューにもあったので、後々読もうと思っている

    もし自分に兄の様な特殊な能力があったら、どう使うか?
    弟の様な特殊な能力があったら、どう使うか?
    ちょっと考えてみるのも楽しい
    「ドゥーチェ」のマスターと兄の対決は、エスパー対決みたいで独特の世界観だった
    離れた場所にいながら目と目で心と心で戦い、人知れず決着がついていた
    ちょっと怖い。。。
    そして千葉がいた(O_O)
    千葉ってあの千葉だよねー?!
    いつも思うのだが、他の作品のキャラクターが出て来ると嬉しくなるのは何故だろう?(笑)

  • GWは伊坂幸太郎2冊。前半の「魔王」は安藤の話しで安藤は自分が念じたことを相手に話させる(腹話術)ことができる。後半の「呼吸」は安藤の弟・潤也の話しで潤也は賭けに勝つ能力を持つ。魔王の正体は「日本の世論」であり、兄弟は日本がどう舵をとるべきか真摯に考え、彼らなりの正義を持ち、一貫した考えから各々の能力を使うのである。日米安保・憲法九条がどうあるべきか、安藤はカリスマ性を味方に、潤也はお金を味方に世論を変えられるかを試みる。結局、日本の世論は熱しやすく冷めやすいので正義とは何かを捉えるのが難しいかもね?

    諸君はこの颯爽たる 諸君の未来圏から吹いて来る 透明な清潔な風を感じないのか BY 宮沢賢治

  • 物語の最初から最後までずっと、ざわざわと心が落ち着かなかった。
    外側から見れば何だかおかしいぞと思うことも、一歩内側に踏み込んでしまえば、たくさんの人が同じ方向を向いていることに安心し、何がおかしかったのか思い出すこともなくなってしまう。内側では、皆がまだ大丈夫だと根拠のない自信を持ち、勇ましくそして心地よい響きの言動に誘導され、その結果を都合よく自分勝手に解釈する。毎日流される膨大な情報のどれが正しく、どれが間違っているのか。わかったつもりでいることの危うさに気づかない。
    考えろ考えろ。安藤兄が対決するべき魔物はいったい何だったのか。犬養か国家か。群衆となった人々か、それとも世間の空気か。どれにしても安藤兄が対峙する相手はあまりにも大きく、個人で太刀打ちできるものではない。それでも安藤は立ち向かう。
    そして、弟潤也も兄とは異なる形でその何かに立ち向かおうとしている。けれど、大きな流れとなりはじめてるその何かに抗うには、ふたりはとてつもなくちっぽけな存在だろう。兄が大切にしていた「考える」ことだけでも、潤也が蓄えている「お金」だけでも世界を変えることは出来ないと思う。
    「でたらめでもいいから、自分の考えを信じて、対決していけば世界が変わる」
    流されるままに向かう先に望む世界はあるのだろうか。考えろ考えろ。覚悟はできているのか。

    • やまさん
      地球っこさん
      こんばんは。
      やま
      地球っこさん
      こんばんは。
      やま
      2019/11/09
    • 地球っこさん
      やまさん、おはようございます。
      コメントありがとうございます(*^^*)
      やまさん、おはようございます。
      コメントありがとうございます(*^^*)
      2019/11/10
  • 腹話術の能力を持った兄と、後に賭け事の能力を持った弟。二人には強い絆があって、能力以外での強さを持っている。ゆっくりと話は進んでいるのに心の中ではモヤモヤし、どうなるのかという期待感が強いまま読了。政治だけでなく世の中の様々な出来事に対して流されず、自分の考えを持とうと思わされた小説。

  • 兄の能力は、面白いと思った。
    マスターの能力は、恐ろしいと思った。
    弟の能力は、心の底から欲しいと思った。
    ストーリー展開は流石だなと思った。

  • 魔王 伊坂幸太郎さん

    1.購読動機
    2020年。山にもいけず本を読む時間が増えました。
    伊坂幸太郎さんは、アイネクライネナハトムジークが最初の出会いでした。
    サブマリン、チルドレン、グラスホッパー、そしてガソリン生活など10冊弱購読してきました。
    どの書籍も世界観が違いました。だから、読むたびに新しい風を感じることができたのが心地よかったです。
    読みつづけたい作家さんのお一人です。

    2.作品 魔王
    主人公は、幼くして両親を事故でなくした兄弟。
    兄は、ある日自身の特殊能力に気づきます。
    自身が念じたことを、相手に発言させることができる能力です。

    国内の政治は混迷を極め、野党による政権交代の機運が高まります。
    その野党党首のメッセージに、違和感を覚えた兄は、能力を使い、失脚への道への画策を始めます。

    タイトルの魔王。
    シューベルト作曲です。
    その物語と、この作品がどのようにリンクするのか?

    ページを開いてお楽しみください。

    3.読み終えて
    『人間の進化の最大の武器。
     それは好奇心である。』

    主人公兄弟からのメッセージです。
    言い方かえれば伊坂幸太郎さんからのプレゼントです。

    外的環境は、自己がコントロールできないことだらけです。
    しかし、そこで無関心、放置ではなくて、一隅、そう自身の手の届く範囲にのみ行動を起こしてみること。
    私は、一読者としてこの内容を気づきとして贈られました。

    魔王。
    見えない、忍び寄る世界は、怖がるのでなく、まずは目を向けること。

    #読書好きな人と繋がりたい

  • 考えろ考えろマクガイバー...

    生きていれば、こういうこともありますね。

    でたらめでもいいから、自分の考えを信じて対決していけば、そうすりゃ、世界が変わる。



    いろいろ考えるきっかけを貰ったお話でした。

    消灯ですよ!

  • 熱狂の渦に飲み込まれず、立ち尽くす一本の木になるのは至難だと感じました。
    考え貫くのは難しいです。

    「ずるずると、磁石に引っ張られるみたいに、物騒な方向に向かっていくんだ。」

  •  特別な能力を持つ兄、弟、弟の彼女、3人の日常を綴った物語、魔王。

     数年後、兄とは違った特性に気づいた弟と妻(元彼女)の日常を綴った物語、呼吸。

     2つの物語が上手に絡み合い、素敵な構成となっている。

     2人、時には3人の会話には、独特な時間の流れがあり、幻想的な空間に包まれた。

     別々な行き方を選んだ兄弟であったが、お互いを尊敬し、信頼しあっていた。

     弟は兄からもらってきた沢山の言葉を胸の中に大事にしまっておき、場面場面でその言葉を取り出し、彼との繋がりを宝物のように大切にする。

     言葉による繋がりは永遠であり、何ものにも変えられない。愛情に満ち溢れるものだと思った。

     伊坂幸太郎は、物語の中に小説や音楽を取り入れる。今回は宮沢賢治。素敵な詩の世界に触れることができ、心が満たされる思いだった。

  • 2005年初版。著者の作品は比較的読みますが、今までと少し違う感じがしました。まだ終わってないような。解説を読んでみて、「モダンタイムス」と言う作品が続編ぽいようなので読んでみようと思っています。特殊な能力を持つ兄弟、世の中の流れに抗おうとして、結果的に何もできなかった兄と行動を起こそうとする弟。弟のその後がどうなるのか興味があります。それが「モダンタイムス」なのかなあ。

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

伊坂幸太郎の作品

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