新装版 三国志(一) (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (736ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062761864

作品紹介・あらすじ

友を信じ、明日を誓う、劉備、曹操、孔明、周瑜……
心ゆくまで英雄三昧

2世紀末、中国後漢末期、政治は腐敗し、黄巾賊が各地にはびこって、民衆は苦しんでいた。青年劉備は、同志関羽、張飛と桃園で義盟を結び、世を救うことを誓う。ここに百年に亘る治乱興亡の壮大なドラマの幕が開く。吉川英治の名著『三国志』本編のみをまとめた新装版。「桃園の巻」「群星の巻」収録。

感想・レビュー・書評

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  •  やっと読めた。724ページ。やっとレビューが書ける。それでも思っていたよりはサクサク読めた。
     戦国時代については日本のことも中国のこともヨーロッパのこともさっぱり分からないし、興味もなかったのだが、何か長くて重たい物が読みたくなり、ついに家にあったこのシリーズに手を出すことになった。夫が昔見ていたNHKの人形劇の「三国志」(その時点で再放送だったが)のキャラクターを思い出しながら読んだ。男性は「三国志」好きな人多いようだ。
     劉備玄徳は絵に描いたような人徳者。こんな人なかなかいないよ。絶対的に親を敬い、祖先を敬い、国の荒廃を憂えて、関羽、張飛と義兄弟の契を結び、貧しい義勇軍を結成して、黄巾賊を倒すべく戦いにいく。しかしいくら成果を上げても、何の身分もないために然るべき所から功績を認められず、自分の軍隊の兵に満足な環境を与えることも出来ず、やるせなくて、少し帰国して母親に会いに行ったら、「志し半ばで、二年や三年で帰ってくるとはどういうことだ。万民の民の幸いを思いなさい。」と母は叱りつける。母親の鏡のようでもあるが、玄徳親子は古い日本の道徳観を絵にしたみたいだなあと思って調べてみると、戦時中に連載されていた小説だった。吉川英治はなんと1800年代の生まれ。思っていたより昔の人だった。 
     曹操は頭も切れ、優秀な武将で、野望が大きく、しかし、ちょっと邪魔なら親切にしてくれた親の友人一家を全員皆殺しにしてしまう程の冷酷な人物。でも、人の意見でも良いと思ったことには素直にすぐに従い、自分を襲ってきたちょっとした敵でも見所があると自分の部下としてどんどん登用したり、さっぱりしたところが意外と魅力的。絶対に近づきたくはないけれど。
     初めは黄巾賊vs官軍(そこに劉備らは義勇軍として参加していた)だったのだが、玄徳らの功績で黄巾賊を負かしてもその功績を横取りして、栄誉をほしいままにする、政府の有力者たち。その中の一人、袁紹は王も追い出して、自分が権力を握り、私利私欲のために国を荒廃させる。そして今度はその袁紹を倒すために立ち上がる人が何人かいるのだが……。途中で、誰と誰が何のために戦っているのか分からなくなった。ここまで書いたことも合っていないかもしれない。とにかく、戦争のための大義名分が途中で私利私欲に変わり、結局は誰が大将になっても同じなんだなあ。万民のことは顧みられず、女性は交渉の道具にされる。
     でも、一つ、面白かったエピソードが。それは、曹操軍と呂布軍が戦っているとき、“いなご”の大軍が襲来し、田んぼの稲を全部食い荒らしてしまい、食糧がなくなり、両軍とも兵糧が無くなって、自然に戦争は休止せざるを得なくなったというエピソード。普段ないがしろにしている農民が泣くと戦争どころではないし、武将も兵も農民も“自然”には勝てないんだなと、広い中国の古代の歴史小説から学んだ。
     まだあと4巻もある。なかなかレビューを書けないとストレスが貯まるので、ちょっと短いものを読んでから、次へ行こう。

  • 秘本三国志が面白かったので、今度は王道の方の三国志。
    文庫カバーで作者の生まれ年を見て衝撃。
    吉川英治って100年以上前に生まれた人ー!?嘘だー!司馬遼太郎と同じ位の人だと思っていたのに…え、てか司馬さんっていつの人よ?
    慌てて「し」の棚に行って「燃えよ剣」を手に取ると、司馬遼太郎は97年前に生まれた人だった。30年くらい後に生まれた人なのね。そしてついでに「燃えよ剣」をぱらぱらめくると、解説が「秘本三国志」の作者・陳舜臣だった!
    色々な人の三国志があるが、何か因果を感じた吉川三国志を読むことにした。

    まだ1巻なので感想はほどほどにしておくが、劉備が日本人っぽい。戦いの場面も武将たちが侍っぽくて日本的。吉川英治が書くとこうなるのかー。もはやどれが正解もない古典なので、気に入った作品を自分にとっての三国志としよう。

  • 気にはなっていた三国志。
    知らない訳ではないが、詳しく知っている訳でもない三国志。
    ついに手を出してしまった。

    つくづく劉備は人が良過ぎる。こんな魑魅魍魎の中で生き延びて行けたなあ。
    側近の関羽と張飛との信頼関係がすべてか。
    また母の毅然とした態度、振舞いには涙、涙。

    勧善懲悪とはならず善が悪へと変わる様、妻や子を駒として使う様など、この時代生きて行くのは大変だったのだろう。貂蝉をして董卓、呂布の仲を割く件などは切ないものだ。
    だからこそ劉備の高潔さは際立っている。

    壮大な物語。続きが楽しみ。

  • 「三国志」にまつわる思い出がある。88年夏、個人旅行で中国西域へと長旅した。トルファンのあたりで、香港からきた6人ほどの若者たちと出会い、数日ほど一緒に旅した。彼らのうち一人の青年が「三国志」をいつも携えて熱心に読んでいたのだ。「彼は「三国志」に夢中だから」と同行の香港人にひやかされていた。きっと格別に面白い本なんだろうな…と思った記憶がある。

    だが、私はなぜか歴史小説に食指がうごく機会が無く、長らく未読のままであった。そして最近、妻曰く。「男なのに「三国志」読んでないなんて珍しい。ふつう男なら読むでしょ」。妻も読んだらしい。そんな経緯もあり、読み始めることにしたのであった。

    で、内容についてである。戦において、緻密で天才的な戦術が繰り広げられるもの、と想像していた。だが、読み進めるとちょっと趣を異にした。戦の勝敗を決するのは、巨躯や獣じみた腕力を備えた漢たちの、いわば個人のパワーに依拠することも多いのであった。
    劉備玄徳の闘いには、そういう戦術の天才らしきところを思わせるものはまだない。思えば、そういう軍師らしき戦ぶりを示すのは、諸葛孔明か。巻の一では、孔明はまだ登場していない。

  • なかなか一気に読み進めることが出来なくて意外と時間かかりました。が、面白いですね✨中国の文明がこれほどまでに日本に先行していたとは… 人物像としては呂布と曹操が若干ガッカリ、劉備は思った通り、貂蝉は…ホント切ないです

  • 僕の人生をある意味で決定付けた本。

    小学生のときに三国志に出会わなければ、大学で東洋史なんてやらなかったでしょう、きっと。
    文語体の文章を、漢和辞典を引き引き読んだのもいい思い出です。
    満足度5程度では、僕のそれは表せません。

    粗筋の説明なんて要りません。
    三国志未体験者は、とりあえず読めということ。
    この本でなくてももちろん構わないんだけれども。
    歴史小説の面白さはそこに現れる人間のバリエーション。濃縮された群像劇が醍醐味。

    ちなみに僕が持っているのは新装版ではなく、古い講談社文庫。
    画像がないと寂しいので、敢えてこれに。

  • 最終巻を手に入れたので、再度読み直し!

    主要な人物の登場シーンがすごくかっこいい。
    小説でここまで表現できるのがすごい。

    劉備をはじめ、呂布、董卓、孫堅、曹操などが登場。
    いろんな人達の成功、失敗が物語中に描かれている。人生の縮図。

    おもしろいとしか言いようがない!

  • 腹の底では何を考えているのかよく分からぬ劉備、酒が温かいうちに大将を瞬殺できる文武両道の関羽、天下無双の豪傑にしてアル中の張飛ら三兄弟の出会いから始まる壮大な史劇。
    日本人の知っている三国志の原点。

  • 劉備 関羽 末っ子気質の張飛 をはじめ
    極悪の董卓 愛すべき愚かな呂布 
    曹操に孫堅 夏侯惇 王允 貂蝉
    ああ それぞれがなんと魅力的なんでしょう。
    吉川英治の文章だから心にスッと入り込むのですね。

    でも100年に渡る物語の登場人物や地名を把握するのは難しい。
    私は「一冊でわかるイラストでわかる図解三国志」(成美堂出版)を手元におき パラパラ見ながら読み進めています。
    このガイド 適度に内容が薄く(←褒め言葉ですw)おすすめですよ。

  • レッドクリフブームの前に、ゲームも何も関係なく三国志に興味を持った所、
    人から「初めて読むならまずこれを読むべし」とすすめられたので読んだ。

    のっけから劉備の母ちゃんのハイテンションぶりに付いていけねー!
    鬼だ!アンタは鬼だ!
    劉備のマザコンぶりもすげぇー!こいつ、母親に対してだけ、ドMだ!

    やたらめったら爽やかな曹操様が、出てくるたびにかわいいんですけど。
    曹操ってワルモノじゃなかったのか?
    劉備って善人じゃなかったのか?
    そんな疑問を抱きつつ、ページを繰る手が止まらない1冊。

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著者プロフィール

1892年、神奈川県生まれ。1921年、東京毎夕新聞に入社。その後、関東大震災を機に本格的な作家活動に入る。1960年、文化勲章受章。62年、永逝。著書に『宮本武蔵』『新書太閤記』『三国志』など多数。

「2017年 『江戸城心中 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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