新装版 三国志(五) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (792ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062761901

作品紹介・あらすじ

友を信じ、明日を誓う、劉備、曹操、孔明、周瑜……
心ゆくまで英雄三昧

関羽、孤立無援の中で鬼籍に。続いて曹操、劉備も命運尽きる。三国の均衡は破れ、蜀の興廃は、ただ孔明の双肩にかかっていた。孔明、仲達、連戦7年、ついに孔明も五丈原で星となる。吉川英治の名著『三国志』本編のみをまとめた新装版。「出師の巻」「五丈原の巻」収録。

感想・レビュー・書評

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  • 関羽が敵陣に囚われて処刑され、張飛は部下に寝首をかかれ死す。曹操も病で没する。そして、玄徳もまた、病に斃れる。

    孔明が、遠い南方地方「南蛮の地」に長途遠征するくだりがある。これが奇妙な雰囲気。今でいう雲南省からさらには、越南やビルマ北部に至るのだ。山岳地帯の熱帯雨林を行く。
    さらには、南蛮の敵将を七度も捕縛しその都度、解放するエピソードの物語性も不思議な趣き。ファンタジーじみた趣が滲み、孔明伝説、説話文学の感もある。ティム・オブライエンのベトナム戦争文学「カチアートを追跡して」を想起した。

    捕縛した敵将孟獲に対し孔明は言う「飲んで帰れ」。 こういう場面、好きである。

    日本語表現の宝庫である。いくさ場で敵将兵の首をとることだけでも、さまざまな文章表現があり、吉川英治の才に感じ入る。
    また、敵将と一騎打ちする際の宣戦布告の弁は、朗々として高雅な漢文調の言い回し。だが、その一方で、同じ軍幕内の勇将同氏の会話には、現代的でくだけた言い回しも多い。「帰ろうか」とか、「ないなあ、そんな気は」とか…、そのギャップも味わいのひとつである。

    「三国志」を読み味わうのに、漢字を共有する国の読者ならではの僥倖あり、と思う。玄徳や曹操という名前や地名にしても、漢字の「貌」で味わえる部分がある。きっと「三国志」英語訳もあると思うが、横文字訳では味わえない部分だと思う。

    さて。そして。
    巻の終わり近く。
    孔明は五丈原の戦陣で病に伏す。そして逝く。
    落涙こそしなかったが、悲しく、寂しさを感じた。寂寥の感があった。
    その後の蜀の衰亡に触れることなく、孔明の死と、これまた巧みな成都への総軍退却をもって物語はそっと終わる。孔明と共に長編は閉幕するのであった。

    さすがに幾世紀を経て尚読み継がれる壮大なサーガ、読み応えあり。内容重厚で、余韻もまた深い。

    (※各巻700頁超で全5巻の大部だったが、意外とすらすら読める。2か月ほどで読了した。)

  • 吉川英治の三国志(五)を読みました。続けて、出師の巻、五丈原の巻を読みました。関羽が孤立無援の中で没し、曹操も没し、さらに劉備も没してしまい、蜀の命運は諸葛孔明の双肩にかかってしまいます。蜀を永続させるためにはどうすればいいのか、孔明は考えるのでした。諸葛孔明が物語の主人公になってからは三国志も面白く読みました。諸葛孔明は傑出したプロジェクトマネージャですが、人材に恵まれず成果を上げようと仕事に没頭するあまり、過労で亡くなってしまうという物語が悲しいですね。それ以降の戦の作戦に大きな影響を与えたという事も含めて、諸葛孔明という人が時代をこえて人々に愛されている理由が納得できました。この物語を通して一番印象に残った登場人物は孔明以外ではやはり関羽でしょうか。天性の武勇を持ち、玄徳と桃園の契りをした後はその約束を違えず、最後まで守り通した、というところが気に入りました。

  • 関羽が死んでから悲しすぎてページがすすみにくくて
    しょうがない、、、。

    孔明の孤軍奮闘ぶりにも胸痛む。 

    吉川英治の三国志は魏呉蜀の書き方の
    バランスがとれていて好きです。

  •  やっと読み終えました!!長かった。

     やはりこの巻の最初に曹操、続いて劉備が亡くなり、その後の主役は孔明になるわけだけど、孔明の智謀策略があまりに人智を超えすぎていて、敵なしという状況に、どこか物足りなさを感じてしまいます。
    最大の敵といえば、司馬仲達になるのだろうけど、仲達にしても孔明に何度も煮え湯を飲まされていて、孔明の智には到底及ばない。

     蜀にとって致命的な不運は、関羽、張飛、趙雲亡き後の武将の人材不足と、劉備の跡を継いだ劉禅の一国の主としての才のなさですね。

     天に生かされている身といえど、やはり歴史を作るのは人間ですからね・・・。

     三国志を読みつつ、最近よく取り沙汰されている、政治家の世襲についても考えさせられました。

     やはり、当代きっての英傑といわれる人物も、その子供に後を託すものの、親と同じ才覚を持ち合わせているかといえば、そうではない人物がほとんどですね、
    こういう物語の中でも。

     安穏とした苦労のないところで育った者は、弱いです。
    荒波にもまれて、自分の経験の中から責任感とポリシーを持って行動する。そういうのが大事ですね(笑)

  • 三国志の最終巻。
    長かった・・・けど読み終わるのは寂しい

  • 1周目は、名前がややこしかったりして読むのがやっとだった三国志全5巻。
    2周目は、やっとおもしろさを感じながら読めました。

    史実なのでわかっていても、何度読んでも関羽、曹操、劉備、孔明が亡くなっていく最終巻は悲しくて寂しいです。

  • 背ラベル:913.6-ヨ

  • 長かった三国志との毎日にピリオドです。
    どんだけ戦うんだってくらい戦って、命を散らしていった三国時代の将達にまずは敬意です。「兵どもが夢の跡」まさに夢・浪漫であったことに違いないでしょう✨

  • 2019年10月2日読了

    吉川三国志、読了!

    北方三国志は「ザッツ・エンターテインメント」だが吉川三国志はまさに正統派といったところ。

    全10巻を新装版で5巻にまとめたので、1巻あたり500ページ超えの大作。

    また数年後に再読したい。

  •  三国志にハマる人が多いわけがわかる気がする。次は北方謙三(全14巻)読破かな。

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著者プロフィール

1892年、神奈川県生まれ。1921年、東京毎夕新聞に入社。その後、関東大震災を機に本格的な作家活動に入る。1960年、文化勲章受章。62年、永逝。著書に『宮本武蔵』『新書太閤記』『三国志』など多数。

「2017年 『江戸城心中 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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