凍りのくじら (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 13418
レビュー : 1603
  • Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062762007

感想・レビュー・書評

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  • ここしばらくは辻村深月さんを読み続けよう!と決意させてくれた作品。

    本を読むことで自分が構築されたと自負し、思考に特化することで、いつも遥か高みから周りのみんなを見下している理帆子。

    自分の頭の良さを自覚している早熟な少女にありがちな自意識過剰ぶりには目をつぶるとして、目上の人やお世話になっている人までも心の中では呼び捨てにしている彼女に、前半はなかなか感情移入できなくて苦しみました。

    でも、素直に語りあえる相手となる別所あきらに出逢い、母との別れや自分の不遜さが招いた事件を通して、「ほんとうは誰かと繋がりたい自分」に目覚めていく後半は、どんどん理帆子がいとおしくなってきて・・・

    考えてみたら、小難しい本をいっぱい読んでいても、愛読書ベスト1に「ドラえもん」を挙げる理帆子が、根っこに泣きたくなるような純粋さを抱えているのは当然といえば当然だったんですね。

    おとうさんと、敬愛する藤子先生と、ドラえもんの愛に満ちた「テキオー灯」に照らされた理帆子が、写真を通して同じようにあたたかい光を、少しでも多くの人に届けられますように。

    • kwosaさん
      まろんさん!

      『凍りのくじら』
      これまた素晴らしい本でしたね。
      読み終えて圧倒され過ぎて、自分の中ではまだうまく消化できず、今後も繰り返し...
      まろんさん!

      『凍りのくじら』
      これまた素晴らしい本でしたね。
      読み終えて圧倒され過ぎて、自分の中ではまだうまく消化できず、今後も繰り返し読むことになりそうです。

      この物語は「名前」もひとつのキーワードでしたね。
      父の思いを込めた「帆」の字。
      そして母の遺言ともなった、娘に向けた「帆」というタイトルの文章。
      「あの光」を浴びたとき、忘れていたひみつ道具と父の名前を思い出し、両親に愛された記憶と共に「帆」の字も思い出し、少し不在だった「りはこ」は、「理帆子」として現実世界にテキオーし定着した。

      名前を忘れたら戻れなくなる。
      『千と千尋の神隠し』をちょっとだけ思い出しました。

      そういえば、名前の入った巾着袋は大切なものでしたし、普段は「リホリホ」だった美也も、真剣に向き合う時は「りほこちゃん」でしたね。

      あと、ちょっとだけ出てきた「ふみちゃん」のその後は、幸せであってほしいと思いました。
      2013/05/19
    • まろんさん
      kwosaさん!

      大好きなこの本に素晴らしいレビューを書いてくださって、本当にありがとうございます。

      「名前」に込められた辻村さんの意図...
      kwosaさん!

      大好きなこの本に素晴らしいレビューを書いてくださって、本当にありがとうございます。

      「名前」に込められた辻村さんの意図、
      確かに『千と千尋の神隠し』に通じるところがありますね!
      両親が愛情を込めてつけてくれた名前の意味も温かい記憶に忘れていた理帆子は
      まさに「名前を忘れたら戻れなくなる」状態にあった。
      『千と千尋の神隠し』をここに挙げてくださったことで、
      あの感動的なラストがさらにストンと腑に落ちた気がします。

      ちなみに私、巾着袋を縫ってくれた多恵さんがとても好きなんです。
      おおらかで、あったかくて、さりげない気配りができて、私にとってまさに理想の女性です。
      そんな多恵さん、理帆子、ふみちゃんたちに再会できる
      辻村さん作品がまだまだ待ち構えていますので、
      kwosaさんに早く読んでいただきたくて
      そしてまた素敵なレビューを書いていただきたくて、うずうずしています(*'-')フフ♪
      2013/05/21
    • まろんさん
      kwosaさん!

      「温かい記憶に」じゃなくて、「温かい記憶も」と書いたつもりだったのですが。。。
      「に」じゃ意味が通りませんよね、いつもな...
      kwosaさん!

      「温かい記憶に」じゃなくて、「温かい記憶も」と書いたつもりだったのですが。。。
      「に」じゃ意味が通りませんよね、いつもながらソコツな私です。。。
      2013/05/21
  • 自分自身、漫画の「ドラえもん」を読んで育った世代だし
    そこに流れる哲学や
    優しい世界観が好きなので、
    かなりハマりました(^_^)


    人を見下しているような理帆子の性格には
    最初好感が持てなかったけど、
    読み進めるうちに
    殻に閉じ籠っていた
    10代の頃の自分を見ているようで(汗)
    自然と物語に引き込まれていきました。

    ミステリーとしての要素を上手く盛り込みながら、
    母から父や娘に贈った
    最後のラブレターや、
    ラスト近くに明かされる衝撃的な展開には
    かなり込み上げるものが…(ToT)?


    物語は新進気鋭のカメラマンである
    25歳の主人公・理帆子の回想から始まり、
    高校2年生だった頃の
    彼女の日常が描かれていきます。


    父は失踪し
    理帆子は病気の母と二人暮らし。


    父が大好きだった
    「ドラえもん」を愛し、
    漫画や小説を読むことにしか
    夢中になれない。


    誰といても
    そこを自分の居場所だと思えない、
    どこにいても
    どこか不在な女の子。

    きちんとその場に存在して、
    そこで生きてる人たちが
    羨ましくて怖くて
    いつも気後れしている。

    そんな彼女が
    写真を趣味とする不思議な青年や、
    言葉を話せない少年と出会い、
    今までの対人関係や
    家族との関係を見つめ直し、
    少しずつ癒されていきます。


    しかしその影で同時進行する
    ストーカー的な元カレの存在が
    本当に怖くて痛くて、
    やがて理帆子は
    どうしようもない事態に追い詰められていきます。


    しかしこの作者は
    心理描写が抜群で
    人間を描くのが本当に上手いですね。


    本当は一人が怖くて
    誰かと生きていきたい。
    必要とされたいし、必要としたいと願う
    理帆子の叫びが
    丁寧に描かれた行間から聞こえてきそう。



    本当に大事なものを失くして
    どうしようもなくなって初めて
    人は後悔する。


    大切なものをなくした時
    人はどう乗り越えて行けばいいのか、

    自分を好きになれない全ての人に
    読んで欲しい小説です。



    『誰かと繋がりたいときは、すがりついたっていいんだよ。相手の事情なんか無視して、
    一緒にいたいって、それを口にしても…

    痛かったら泣いて、
    苦しかったら、助けてって言っちゃえばいい。
    きっと誰かが力を貸してくれる。

    もう嫌だって、逃げちゃえばいいんだよ。
    そうすることだって、できるんだよ』

  • 藤子・F・不二雄を「先生」と呼び、その作品を愛する父が失踪して5年。高校生の理帆子は、夏の図書館で「写真を撮らせてほしい」と言う1人の青年に出会う。戸惑いつつも、他とは違う内面を見せていく理帆子。そして同じ頃に始まった不思議な警告。皆が愛する素敵な“道具”が私たちを照らすとき。

    辻村さんの作品を読みたいと考えており、何から読もうか迷っていたらまとめサイトに順番が載ってあったので、まずはその通りに読むことにしました。
    最初がこの作品で良かったと思う。初めは読みにくいと感じたが読み飛ばしても熟読しても話がつながり、うまいと感じた。軟らかな文章であり、文章一つ一つに情感がこもり徐々に引き込まれていった感じです。ドラえもん愛が散りばめらえた良い作品でした。
    また、最後に安心感のあるエピローグがとても良い。

    特に印象に残ってるのは、
    いつも、持病のせいとか、親のせいとか、自分の力ではない他のせいにしてきた。だけど、悪いのは自分だと認めなくちゃ。全部を自分の責任だと認めて、その上で自分に実力がないんだと、そう思って諦めなくちゃならない。精一杯、本当にギリギリのところまでやった人にしか、諦めることなんてできない。挫折って、だから本当はすごく難しい。

  • 誰しも他人のことを主観で評価してると思う。自分もそう。でもそこからどう動くかは人それぞれ。主人公とは根本的なところで合わない、理解できない。そこまで孤独になろうとしなくても…。私は周りとは違うんだ、と思うことで立っていられたんだろうか。
    読み終わってみると、スゴく狭い世界での話だったんだなと思う。息苦しい感じがしたのは、そのせいかな。自分の在り方をひたすら考え込んでしまうのはとても人間らしいけど、小説の読み手という完全に外側の人間からすると、少しもどかしい。自分が読み手であると意識してしまった時から、なかなか読み進めることができなくなってしまった。

  • うまいなぁ、この題名。
    凍てついた海で身動きできず弱っていくクジラは、本当は素直に自分を出したいのに頭でっかちになってしまってまとわりついた氷を打ち破れない主人公のことかと。

    最初、主人公の妙に諦観したところや、斜に構えたところや、上から目線なところがどうにも気に食わなくて、なかなか読み進めることができなかった。
    でもそれはもしかすると、同じく「助けて」といいたいのに、理想の自分像にとらわれて言いだすことができない自分の姿を見たからかもしれない。
    すこし不思議なこの話に出会って、もう少し周りにいてくれる人に感謝し、肩の力を抜いてすこし甘えてみてもいいのかなぁ、と思った。

  • 『ぼくにとっての「SF」は、サイエンス・フィクションではなくて、
    「少し不思議な物語」のSF(すこし・ふしぎ)なのです』

    5年前に失踪した父が敬愛していた藤子・F・不二雄先生の言葉に習って、自分や他人に「すこし・ナントカ」という「個性」を与える主人公、芦沢理帆子。高校生にしては達観した考えを持ち、周りを馬鹿だと見下す癖があり、本人もそれを自覚している。誰に対しても本音を言わない、どこにいてもそこを自分の居場所だと思えない、だから理帆子が自分に与えた個性は「Sukoshi Fuzai(すこし・不在)」

    そんな息苦しい生活の中、写真を撮らせてほしいという一人の青年と出会い、理帆子は誰にも見せたことのない一面を見せていく。


    もうすでに辻村作品いくつか読んじゃったんですけど、読むならこれが一番最初だと今さら知って慌てて手にとりました。
    正直、理帆子の女子くささに辟易する場面がいくつもあるのですが、そこがまた怖いもの見たさというか(笑) 若尾が堕ちていくのを見ていたいという理帆子と同じ心理なのかなと思ったり。
    隠された「仕掛け」には早い段階で気づいていました。
    辻村作品を読むのがこれが最初だったら気付かなかったかもしれないけど、わりとわかりやすいのではないかなと思います。

    汐子さんの遺したメッセージに鼻の奥がツンときました。

  • 去年ジャケ買いしたんだけど、冒頭数ページで断念積読状態でした。 今回は最初からスッと入り込めて一気読みしてしまうくらい面白かった。(これだから読書って不思議で楽しいのだ) 途中、サスペンスかホラーかっていうくらいドキドキさせられたけど、ところどころ琴線に触れる言葉がたくさん散りばめられていたし、人の心の奥底にあるダークな部分を見事に表現していて傑作だと思いました。 今後、時々読み返したいので保管しておくつもりです。

  • "人間っていうのは、頭の良さに伴って思考する能力を持てば持つ程、孤独にならざるを得ない(p294)"

    この本を読んで最初に頭に浮かんだのが、9歳からの付き合いの友達。当時から頭が良いとは思ってたけど、それから三十年以上経っても彼女より頭のいい人には巡り合っていない。

    鋭い観察力と洞察力を持ち、豊富な語彙で正確に、鋭く物事を表現する。普通疲れたり面倒になったりで思考停止する中、彼女は思考すること、分析することがやめられない。心を誤魔化せない。自分なりの答えが見つかるまで。
    そこが理帆子と似ているのかも。

    だからか、理帆子に対してはあとがきにあるようなネガティブな印象を持つことは無かった。疲れる生き方してるな、とは思ったけれど。

    でも、結局、人として付き合っていく為に必要なのは、小難しくて正確な言葉でなく「心の共通語」なんだろう。物語の最後、今まで見下していたはずの人達のことを、実は自分は素直に心身一体で生きてる彼らに気後れしていたのだ、彼らのことを好きなのだ、と理帆子が自覚する場面。個人的には、きっと理帆子の中では彼らと「心の共通語」が通じてたのをちゃんと感じとっていたのではと思う。

    私がその友達とずっと付き合ってるのも同じ理由だ。これからもそうだろう。

    若尾が壊れていく様はかなりホラーで衝撃。理帆子との会話のすれ違い具合ももはやホラーだ。自分を直視できずに他を傷付ける、私には共感も同情もできない存在だった。根本的な所で少しでも自分自身を助けたいと思ってる人じゃないと誰も助けられないと思う。彼は自身の本質から都合良く逃げすぎた。

    ドラえもんもまた読みたい。改めて考えると、ドラえもんの道具には夢の様な利点の裏に必ずリスクもあり、それがなかなかに深い。四次元ポケットの中には哲学もあるのですね。

    早い段階でネタバレ(別所の存在)、物語の細部にはツッコミ入れたい所もあるけど、考えさせられる、記憶に残る本だった。

  • 自分と同じ価値観を持っている人なんて、そうそういない。
    相手に合わせよう、周りに合わせようと、環境に調和しようとすると、同じ空間にいるのが息苦しく感じたり、相手が友達なのか、よく分からなくなる・・・。

    自分の気持ちを素直に表現することが、誰かとの絆を深めることができるのかもしれないし、前よりずっと、きっと楽に生きられる。

    辛く、苦しい時は、「助けて。私を一人にしないで。」そんな風に、自分のためにわがままになってもいいのだ。

    誰かに必要とされたいし、必要としたい。その願いを叶える秘訣は、まず、自分に正直になることだと思う。

    嘘をついたり、我慢をしたりしたことが、後悔を生むこともある。
    時に、誰かに縋りついたり、甘えたり、それでいいんだ。

    自分の人生には、代わりなんて誰もいない。だからこそ、ありのままの姿で、気持ちに正直に生きること。
    それが、Sugoku・Fine「すごく・素敵な」人生を送るのに必要なことだと思った小説でした。

  • 「少し・不在」な主人公、「少し・フラット」な別所さん、「少し・腐敗」な元カレ若尾、「少し・不幸」な母、「少し・藤子先生」な父。

    人の弱い部分とか、痛々しい部分、どうしたって許せない部分、そういうところを知っているのに、どうしても人と、誰かと繋がっていたいと思うこと。
    一緒にいたいと思うなら、相手の事情なんて無視ししていい。
    我慢しなくていい。
    もっと頼って、もっと人を信じていい。


    「不在」になんてしなくていい。


    友達と元カレと母と父と、ドラえもん。
    読み終えた後に浮かぶ風景は、キラキラ光る海。
    そして、読んだ多くの人がおもうのではないでしょうか。

    「すごく・不思議」な物語だ、と。

    • まろんさん
      はじめまして。
      花丸をいただいた上にフォローまでしていただいて、ありがとうございます!まろんです。

      この本、私も大好きです。
      人とリアルに...
      はじめまして。
      花丸をいただいた上にフォローまでしていただいて、ありがとうございます!まろんです。

      この本、私も大好きです。
      人とリアルに触れ合うのが怖くて、本さえ読んでいられればいい、と
      周りを冷たい目で見下すことで自分を保っていた理帆子が
      テキオー灯の光で心をほどいていくラストが素晴らしくて。
      頑なな少女だった理帆子の成長に、他の作品で目を細められるのも
      辻村さん作品の素敵なところですよね。

      読書傾向がとても似ているようでうれしい、ぬんさんの本棚とレビュー。
      これからも楽しみにしていますので、どうぞよろしくお願いします(*^_^*)
      2013/05/21
    • ぬんさん
      まろんさん。

      コメントありがとうございます。
      まろんさんの本棚、拝見させていただきました。
      本の数と、レビュー数に驚きました。参考にさせて...
      まろんさん。

      コメントありがとうございます。
      まろんさんの本棚、拝見させていただきました。
      本の数と、レビュー数に驚きました。参考にさせていただきます^^

      辻村さんの作品は、今回が初めてでした。
      美しいというか、あたたかいというか、的確な言葉が思い付きませんが、読んだ後とても優しい気持ちになりました。
      辻村さんの作品を制覇するつもりです!

      それでは、どうぞ宜しくお願いします。
      2013/05/22
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著者プロフィール

辻村深月(つじむら みづき)
1980年山梨県生まれ。千葉大学教育学部卒業後、2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、2017年『かがみの孤城』で「ダ・ヴィンチ ブックオブザイヤー」1位、王様のブランチBOOK大賞、啓文堂書店文芸書大賞などをそれぞれ受賞。本屋大賞ノミネート作も数多く、2018年に『かがみの孤城』で第6回ブクログ大賞、第15回本屋大賞などを受賞し、2019年6月からコミック化される。他の代表作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『名前探しの放課後』『ハケンアニメ!』『朝が来る』など。新作の度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者からの熱い支持を得ている。2020年、河瀬直美監督により『朝が来る』が映画化される。

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