陪審法廷 (講談社文庫)

著者 : 楡周平
  • 講談社 (2009年3月13日発売)
3.47
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062762823

陪審法廷 (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 牧田研一はジュニアハイスクールの卒業式の翌日、ダンスパーティーの夜に隣人のクレイトンを射殺する。
    グアテマラから必死にアメリカを目指し、養女となってようやく安寧の日々を手に入れたパネラを守るために。
    養父であるクレイトンは、妻に隠れてパメラに3年間も性的虐待を続けてきた。
    養父を殺害しようと決意しているパメラに代わり、研一はクレイトンに向けて銃を放ったのだ。
    法廷での検察側と弁護側の攻防。
    緊張感にあふれ、一進一退のまま最終弁論を迎える。
    すべては12人の陪審員の判断に委ねられ、いよいよ評決の話し合いが開始された。
    面倒なことは少しでも早く済ませて日常の生活に戻りたい者。
    15歳の少年の人生を左右する責任があることをまったく自覚しない者。
    所詮他人事でしかない者。
    殺害したことは事実なのだから有罪が妥当だと単純に考える者。
    陪審員たちの話し合いはなかなかまとまらない。
    評決への道筋をつけたのはひとりの陪審員の発言だった。
    彼女は訴える。
    陪審制度は何故あるのかと。
    法にのっとり、事実だけを検証し、有罪か無罪かを決めるだけであれば陪審員は必要ない。
    事件に関わるすべてのデータを判例に照らし合わせてコンピューターが決めればいいと。
    法の専門家でもない市民が陪審員として評決の場に呼ばれるのは、機械では測ることの出来ない「情」をくみ取れということではないのかと。
    他人に起きた不幸を自分に置き換えてみる。
    もしも自分だったら。
    もしも自分の娘だったら。
    もしも自分の妻だったら。
    評議の場で交わされる会話のすべてが、リアリティのあるものに感じられた。
    殺害という最悪の選択をした研一とパメラ。
    贖罪の気持ちを忘れずに、強く生きて、出来れば良い未来を作り出してくれると信じたい気持ちになった。

    実際にアメリカで起こった「性的虐待を受けているガールフレンドのために、彼女の父親を殺害した少年」の事件がベースになっているらしい。
    その事件では、加害者の少年は終身刑の判決が下されている。

  • 米国在住の日本人少年が犯した殺人の罪状の有無を陪審制で問う、というものですが
    重たいテーマでありながらも、集中して一気に読んでしまうほど、考えさせられる作品です。

    陪審制で判決が下される米国の地で、
    日本人が殺人を犯し、米国の法に基づき裁かれ、
    一方で(米国籍ではあるが)日系人が陪審員に選出されるので、
    色々考えるきっかけが沢山散りばめられています。

    白黒しか存在しない(ここで言う有罪か無罪か)という米国と
    グレーゾーンが存在する日本との文化や国民性の違い、
    認識・見解の違い、そして個人の考え方の違い、と
    様々な背景が読み手に与えられるので、すごくエネルギーを使います。


    この作品の世界に入り込んでいけるのは、
    殺人を犯した少年、
    この事件の引き金になったこと、
    裁判における陪審員、
    この3つの視点のストーリーが序盤に描かれているからかな。

    事件の発端も、各人物の心情も、殺人に至るまでの経緯も分かった上で、
    「果たしてこの裁判の判決はどうなるのか。」とドキドキし、
    読み終わっても、安心だとか、がっかりだとか、
    そういう感情に浸ることなく悶々と考えてしまいます。


    陪審員に問われているのは、被告が犯したことに対しての罪状の有無を決定する事、
    というのは認識してはいるものの、
    ならば何故、法の専門である裁判官のみで判断を下さず、
    一般市民が陪審員として参加する必要があるのか。

    陪審員に求められているものは果たして、
    検察側、弁護側が用意した物的証拠や弁論から汲み取れる
    事件の真偽なのだろうか。難しい。

    日本と米国の有罪・無罪の見解、そして罪状の度量?には
    大きな違いがあるように思えました。

    日本でも裁判員制度が導入されたのが最近のことなので、
    他人事として割り切れない作品。

  • #fb こういう結末しかないのだろうが、言葉を交わせずサラバなところに妙に感情移入して、ごめんなさい。

  • 2017 1 28

  • 楡作品。
    プラチナタウン、フェイクを読んだが、なんかつまらない作家だ!ビシッと決まらない。と思っていた。
    今回の陪審法廷。やっぱりつまらない。
    最初から、結末も見えている。朝倉恭介シリーズに手を出そうかどうか?迷っている

  • 思春期の少年による殺人事件が発生。あまりに短絡的な犯行に、物語として成り立つのかなと憂慮したが杞憂だった。訴訟大国アメリカの陪審員制度の問題点を指摘しつつ展開していく。日本の裁判員制度を考える上でも参考になった。
    昔、妻によるDV夫殺害の裁判を傍聴したことがあるが、法廷で話されている内容とニュース等で報道されている内容の差異に驚いたものだ。法廷の内容だけで審議する裁判員は大変だと想像するに難くないが、自分自身が選ばれたなら誠実にやってみたい。

  • 陪審員の法廷入門小説、といえるリアリティーある内容だった。文学としてどう よりも。

    国民性のギャップを念頭に置きながら 自分の方向性を定めて読むのにエネルギーを使った。
    米国の、少年法なし第1級殺人のドライな判決の過程は読みごたえあった。

    良い 悪いではなく 広く視野を広げなくては。自分も司法の一端を背負う立場になる時が来ると覚悟して。

  • 陪審員制度を取り入れている米国は、民意を反映した裁判の手本のように言われるが、実態はこの著書にあるとおり。州によって多少異なるものの、基本は量刑ありきの「有罪 or 無罪?」を問うだけの裁判ゲーム。そういう意味では、法のプロが審議し、量刑も吟味される日本の裁判を、比較論で良否判断することはできない。日本も裁判員制度が導入されて久しいが、米国を反面教師にせよ、というメッセージが込められているのかもしれない。

  • 久々に面白い小説でした。
    「12人の怒れる男」という映画が重なりました。
    さまざまな人種のいるアメリカという国では明確に線の引けない曖昧な基準では社会が成り立たないのでしょうかね。

  • アメリカで養父にレイプされ続けた移民少女を救うため、養父を殺害した日本人少年の裁判。「Cの福音」「巨流再生」などをイメージするとちょっと違う。

    「裁判員制度」が導入される時はいろいろな議論を巻き起こしたが、そこが日本、導入されてしまえば無条件で従い、修正議論もおこらずマスコミも忘れたかのように何も言わない。この作品は導入以前で当時のテーマとしてはホットだが、「なぜ、法律知識のない一般市民に陪審員として判断を求めるのか」を「情」で結論づけるだけでなく、事件に興味を持たない陪審員が徐々に関心を示し、最語にはひとつの結論に辿り着くのは”楡らしくない”視点。御用本みたいになっている。楡ならば逆の結論の巻き起こす混乱・怒り・悲しみなんかを描いて欲しかった。

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