厭魅の如き憑くもの (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.65
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本棚登録 : 1382
レビュー : 189
  • Amazon.co.jp ・本 (624ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062763066

作品紹介・あらすじ

神々櫛村。谺呀治家と神櫛家、二つの旧家が微妙な関係で並び立ち、神隠しを始めとする無数の怪異に彩られた場所である。戦争からそう遠くない昭和の年、ある怪奇幻想作家がこの地を訪れてまもなく、最初の怪死事件が起こる。本格ミステリーとホラーの魅力が圧倒的世界観で迫る「刀城言耶」シリーズ第1長編。

感想・レビュー・書評

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  • 「わたしをぉ、殺したのはぁ......おまえだよっ!!!」
    「ぎゃー」

    こんな怪談が子供の頃に流行ったが、犯人指名のシーンで次の頁をめくった瞬間、この感覚に似た驚きと恐怖を味わった。

    神々櫛(かがくし)村。
    代々、憑き物筋でありながら同時に憑き物落としを取り仕切る谺呀治(かがち)家と、それに対抗し村を二分する力を持つ神櫛(かみぐし)家。
    村中の至る所に立てられ畏れ崇められている「カカシ様」
    そして正体不明の最も忌まわしき憑き物、厭魅(まじもの)。
    神隠しの噂の絶えないこの村を怪奇小説家の刀城言耶(とうじょうげんや)が訪れた時、不気味な連続怪死事件の幕が上がる。

    『首無の如き祟るもの』が抜群に面白かったのでシリーズ一作目に手を出したのだが、これがまあ怖い。初期の作品なので文章に若干の読みにくさは感じられるものの、それがより気味の悪さを引き立てているのかもしれない。
    村の名前や屋号の仰々しさ、文字は違えど代々同音で「サギリ」と読ませる巫女の一族など、虚構と現実のバランスが横溝正史が4:6なら、三津田信三は6:4。僕らの住む世界と地続きのようでありながら「ここではないどこか感」が漂ういい塩梅。

    村での出来事が、谺呀治家の紗霧の日記、刀城言耶の取材ノート、神櫛家の漣三郎の記述録の視点から語られ、読者はその全体像を俯瞰する形となる。
    走りながら考えるタイプの刀城言耶の、いい意味での迷探偵っぷりに最後までドキドキさせられ(本人には探偵の意識はなく、作中でも指摘されるゴーストハンターの役回りのようだが)、アッと言わされる。犯人は予想の範疇ではあったが(とはいえミステリを読む時は全てを疑ってかかるので当然なのだが)真実に震え上がった。

    ミステリとホラーの融合という難しい試みを成功させているこのシリーズ。ミステリ部分での面白さは『首無』にやや軍配が上がるが、ホラー部分では断然こちらが上。
    全体的な雰囲気はもちろんだが、全ての可能性を論理的に排除した後に残る恐怖。うまいなぁ。

    刀城言耶シリーズ、これからも追いかけていきたいと思います。

    • kwosaさん
      九月猫さん!

      コメントありがとうございます。

      『星降り山荘の殺人』については、実は主要人物に関するかなり重要なネタバレで(泣)
      でも、頑...
      九月猫さん!

      コメントありがとうございます。

      『星降り山荘の殺人』については、実は主要人物に関するかなり重要なネタバレで(泣)
      でも、頑張っていつか読んでみます。

      司凍季さん情報ありがとうございます。
      いろいろ調べてみたのですが、これまた二作目の『蛇つかいの悦楽』(文庫改題『蛇遣い座の殺人』)が面白そうですね。
      でも、まずは一作目ですね。

      僕も横溝正史、そして横溝テイスト大好きなんですよ。
      まさにちょうどいま、横溝正史の『蝶々殺人事件』に取りかかっているところです。
      ひさびさの横溝作品ですが、いやあこれは面白いですよ。

      『わたしのマトカ』最高ですよね。
      もちろん『グアテマラの弟』も読みますよ。
      初めてのエッセイとは思えぬ、片桐はいりさんの文章力。
      いっきにファンになりました。
      「面白い、最高、読んでー」って気持ちはあるんですけど、なかなかレビューが書けずにいます。
      2013/07/02
    • とし長さん
      kwosaさん

      コメント失礼いたします。

      『「わたしをぉ、殺したのはぁ......おまえだよっ!!!」
      「ぎゃー」

      こ...
      kwosaさん

      コメント失礼いたします。

      『「わたしをぉ、殺したのはぁ......おまえだよっ!!!」
      「ぎゃー」

      こんな怪談が子供の頃に流行ったが、犯人指名のシーンで次の頁をめくった瞬間、この感覚に似た驚きと恐怖を味わった。』

      このレビューが本当に的を得ていると思います。自分もこの本を誰かにすすめる機会があれば、この言い回しをぜひともお借りしたいところ…

      kwosaさんおススメの『首無~』の方もまた読んでみますね!
      2015/05/14
    • kwosaさん
      とし長さん

      コメントありがとうございます。

      ほんと、怖かったですよねぇ。
      件の言い回し、どうぞどうぞ使ってください。
      多くの...
      とし長さん

      コメントありがとうございます。

      ほんと、怖かったですよねぇ。
      件の言い回し、どうぞどうぞ使ってください。
      多くの方の読んでいただきたいですね。

      そして『首無』は是非に!!
      2015/05/18
  •  怪奇幻想作家の”刀城言耶”が訪れた神々櫛村は、二つの旧家の微妙な力関係の中で神隠しや憑き物、カカシ信仰など古くからの風習と怪異が根付く村であった。そしてその村で怪死事件が起こりそれは連続殺人へと発展していく。

     序盤はかなり読みにくかったです(苦笑)。複雑な人間関係に、ボリュームたっぷりの民俗学の記述や村の記述、そして怪異の描写もボリューミーで話がなかなか進まず、序盤は正直リタイアしかけました。(何度、「早く誰か死んでくれよ」と思ったことか…)

     それでも読み続けたのは、作品に漂う雰囲気が妙に気になったこと、そしてこの刀城言耶シリーズの評判の高さゆえです。一つ目の殺人が起こってからは、徐々に文体にも慣れてきたためかサクサク読め、そして読み終えたときには、「リタイアしなくて良かった」と心底思いました。

     終盤の推理シーンは二転三転し、読者も言耶と同じく混乱しながらこの奇怪な連続殺人の本筋をたどっていく過程をスリリングに楽しめます。(スリリングなのは言耶の推理が危なっかしいからでもありますが)
    推理があっちに行ったり、こっちにいったりするので多重解決型のミステリでもあるわけですね。

     そして、明らかになる真相はなかなかのインパクト!このインパクトのおかげで前半部の苦労は消し飛びました。

     真相の怪奇さもさることながら、論理的に解決できない曖昧さも残しているところがまた憎いところです。

     クセのある作品でしたが、評判に違わない面白さでした。

    • とし長さん
      kwosaさん
      お久しぶりです。
      コメントありがとうございます。

      最近読んだミステリでは新人作家さんの作品だと、葉真中顕さんの『ロ...
      kwosaさん
      お久しぶりです。
      コメントありがとうございます。

      最近読んだミステリでは新人作家さんの作品だと、葉真中顕さんの『ロスト・ケア』。芦沢央さんの『罪の余白』が、どちらも社会派の要素が強いのですが面白かったです。

      そして今更ながらエラリー・クイーンの『Yの悲劇』を読んだのですが、こちらもやっぱり面白かったです。

      色々お忙しいと思いますが、また気が向いたら読んでいただければなあ、と思います。

      刀城言耶シリーズは初読だったので、これからシリーズ作品読んでいけるのが楽しみです。

      おススメしていただいた『首無の如き祟るもの』はかなり評価が高いみたいですが、やはり傑作なのですね。ちょっと間が空くかもしれないですが、ぜひとも読みたいと思います!
      2015/05/14
    • kwosaさん
      とし長さん

      こちらこそコメントありがとうございます。
      自分の本棚にも返事をさしあげています。お暇なときよろしければ。

      『ロスト...
      とし長さん

      こちらこそコメントありがとうございます。
      自分の本棚にも返事をさしあげています。お暇なときよろしければ。

      『ロストケア』評判いいみたいですね。
      芦沢央さんもよくお名前を見かけるし。
      最近では、村崎友さんの『夕暮れ密室』も気になっています。
      積読を消化してばかりで、いまの作家さんを読めていないのが残念なところ。でも読んでみたいですね。

      『Yの悲劇』読みました! 面白かったですね。
      これについては細かいところをいろいろ語り合いたくなりますよね。
      クイーンは近頃、新訳ラッシュですね。
      彼の作を含め、いわゆる「古典」ももっとチャレンジしていきたいです。

      そして『首無』!
      お忙しいとは思いますが、各所からのさまざまな情報が入る前に、脳みそがまっさらな状態のうちに是非楽しんでいただきたいです。
      2015/05/18
    • とし長さん
      kwosaさん

      『Yの悲劇』やっぱりいいですね!
      個人的にはレーンが最後に漂わせる寂寥感がとても好きです。
      クイーンってロジックだ...
      kwosaさん

      『Yの悲劇』やっぱりいいですね!
      個人的にはレーンが最後に漂わせる寂寥感がとても好きです。
      クイーンってロジックだけじゃなくて、こういう人間ドラマ的な部分も書けるんだな、と
      今までのクイーン観を覆され、一気にファンになりました。

      クイーン作品は「悲劇四部作」ももちろんですが、東西ミステリーベスト100で紹介されていた『災厄の町』『九尾の猫』の新訳も今読みたいな、と思っています。

      積読も大量にあるのに、読みたい本ばかり増えて困りますね…。首無ももちろん読みますよ!(いつになるかちょっと不明確ですが…)
      2015/05/18
  • 最近読んだなかで一番の大ヒットでした。
    とにかく、ものすごく面白かったです。そして怖かった。骨太の古典ホラーという感じがしました。
    自分が子供だった頃、夕暮れの帰り道、あの角の向こうになにかおそろしいものがいるのではないか。
    電信柱の陰から、自販機の下から、えたいのしれないものが覗いているのでは……と思った、あの独特の恐ろしさを思い出しました。
    舞台設定もいいですね。戦後の、まだ世の中が混沌としていた時代。光と闇がいっしょくたになっていて、なにかおそろしいものが宵闇に紛れて闊歩していた時代なのだろうなと思いました。

    話はひとつの村の中にあるふたつの家の話に山神様といった信仰や、厭魅といった出会ってはいけないもの が絡み合って構成されています。
    憑き物 ミステリーとホラーと民俗学的な要素が組合わさった話の筋は、京極夏彦の京極堂シリーズとすこし雰囲気が似ていると思うのですが、あちらがミステリーに主軸を置いているとすればこちらはホラー寄りです。
    犯人と呼ぶものは確かにいるのですが、それよりも圧倒的に説明がつかないもののほうが印象に残り、それが良い余韻となってぞくぞくします。
    続刊も何冊か出ているようなので手に取りたいです。

  • 得体の知れないモノの恐さ、しみじみと。

    クセになりそう?
    自問自答。

    恐い本が好きな小学生の気持ち分かった気がします。やっと・・・
    ひとりじゃなくて友達とキャーキャー言いたいんだよね。
    誰か助けて・・・

    • kwosaさん
      jyunko6822さん

      遅ればせながらコメントありがとうございます。
      ようやく『厭魅』のレビューを書きました。
      一緒に「キャーキャー」言...
      jyunko6822さん

      遅ればせながらコメントありがとうございます。
      ようやく『厭魅』のレビューを書きました。
      一緒に「キャーキャー」言いましょう!
      2012/12/26
  • 最後はなんだか雑な感じがする。

    今まで数年間も存在自体を見つからないようにするなんて可能なのかな。
    トイレとか行かないの?

    私は黒子がお兄ちゃんという推理の方が
    おお!って感動したけどね。

  • 「刀城言耶」シリーズの第1弾。

    戦後間もない頃、怪奇小説作家の刀城言耶(とうじょう・げんや)は、神隠しや憑き物など、数々の奇怪な事件で知られる神々櫛村(かがくしむら)に取材にやってきます。ところが、彼が村にやってきたころから、次々に奇妙な事件が村に起こりはじめます。

    神々櫛村では、憑き物筋の谺呀治(かがち)家と、非憑き物筋の神櫛(かみぐし)家という二つの家が対立していました。谺呀治で憑座を務める紗霧という少女と、神櫛家の三男の漣三郎という、幼なじみの男女を中心に、それらの事件の顛末が描かれていきます。

    まず、漣三郎・紗霧と幼なじみだった千代という少女が、紗霧の生霊と見られる蛇の霊に憑かれるという事件が起こります。さらに、神々櫛村の啓蒙化を画策していた谺呀治家の四人の男たちとと、やはり谺呀治家に居ついていた山伏の善徳坊が、一人また一人と命を落としていきます。彼らはいずれも、村に祀られているカカシ様の格好をして死んでいました。

    一方、村の啓蒙化に賛同する若い漣三郎も、幼い頃この村での奇妙な事件に関係していました。一つは、幼い頃、兄の漣太郎に連れられて、谺呀治家の者しか立ち入ることのできない忌み山として恐れられる九供山に立ち入り、兄が神隠しにあったこと。もう一つは、紗霧の双子の姉の小霧が、九供儀礼でカカシ様になった事件があったときに、姉妹の祖母で巫女の叉霧が、蘇生した小霧を棺のなかに押し込めるのを目にしたことでした。

    やがて刀城の胸のうちに、これらの奇妙な事件を説明するいくつかの解釈が生まれ、思いがけず彼はその考えを村人たちの前で披露することになります。

    「ホラーとミステリの融合」というのが、この著者の作品にいつも冠せられることばですが、本作はミステリとしての性格が強い作風だと感じました。ただし本書の一番の醍醐味は、謎解きのおもしろさよりも、むしろ全編にわたって散りばめられた民俗学的な舞台設定と、おどろおどろしいストーリー展開にあるように思います。

  • 今まで読んだどのホラーよりも恐ろしく、そしてミステリとしての驚きは最上級そのそれである。因習の蔓延る閉鎖的な村に憑物筋の家、山神様への信仰と【厭魅】と呼ばれる最も悍ましき存在。そして村中に佇む山神様の化身【カカシ様】。そんな世界観の中で起きる連続殺人に民俗学の見地から分析を加え、時にその蒐集に熱中してしまうものの、合理的な論理で真相に迫る刀城言耶。物語は取材記録や日記、記述録などの複数の異なる視点から描かれることで複雑な様相を呈する。ミステリとしては真相に届きそうで届かず、悩ましいラインを上手く突き、表面上は人間の仕業とは到底思えない不可解な状況。次々に死んでいく関係者の死に方は人外の存在を色濃く示唆する密室や不可能犯罪。そして読者が推理を巡らせ、右往左往しているうちに、思わぬ方向から強烈な仕掛けが明らかになる。そしてホラーとしての結末は、解決のその先に尾を引き……

  • 閉鎖的な村での怪事件。土俗的なホラーミステリ。
    山神。カカシ様。憑き物。厭魅…怪異に支配された村での、もはや現実にはありえないような、事象や事件。
    ページの大半を、風習や伝承の解説に充てることにより、物語の禍々しさに拍車をかける。
    基地外じみた殺人現場は、人間の犯行には全く思えない。圧倒的な恐怖と膨大な謎を残したまま終盤へ。
    これからなにが起こるのか?興奮と寒気が同時に訪れる。
    そこに待っていたものは、まさしく本格ミステリである。論理的な解決に次ぐ解決。!!と??がここまで頭を駆け抜けたことはかつてないであろう。
    そして驚天動地のカタルシス。ここまでの大トリックには、もはや完膚無きまでの敗北である。
    ホラーとミステリの要素で欠けているものがない。全くもって油断していた作品である。薀蓄ばかり、難しい用語ばかり、名前が覚えられない?そんなくだらないこという人は、はじめから読み直し!!

  • 細かな伏線の解説には驚き。でもその場面を読み返す気にはならない。
    最後の二転三転する中には、「それはムリがあるやろ」ってものもあり。読んでて疲れる。

  • 長いです。 すごく長く感じました。説明くさい文章が結構長く続いたように感じます。 途中から飛ばし飛ばし読んでしまいました。

    発想は良かったと思います。 最後も、ゾッとするような後味を残して終わり、そこも良かったです。

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著者プロフィール

2001年『ホラー作家の棲む家』でデビュー。ホラーとミステリを融合させた独特の作風で人気を得る。10年『水魑の如き沈むもの』で第10回本格ミステリ大賞を受賞。主な作品に『十三の呪』にはじまる「死相学探偵」シリーズ、『厭魅の如き憑くもの』にはじまる「刀城言耶」シリーズ、『禍家』『どこの家にも怖いものはいる』『のぞきめ』『怪談のテープ起こし』『黒面の狐』など多数。

「2020年 『魔邸』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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