ぼくのメジャースプーン (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 10168
レビュー : 1291
  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062763301

感想・レビュー・書評

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  •  サイコパスな人間に対して、どうやって戦うのか、読みやすくて面白いし、それでいて、緊張感が常にある。いわゆる「復讐もの」だからだ。しかもその復讐は主人公が狂気の人格になって努力して勝ち取るというよりは、先生との対話を重ねて、積み上げていくもの。たった一度の命令をどのように実行するのか。難しくなりすぎず、かといって先読みがなされないように、丁寧に作り上げられている。
     底が抜けるというか、先が見えるということがない。必ず主人公は勝つだろうというのはわかっていても、どう勝つかわからないから、読み進めてしまう。見事なリベンジ物語であったと思う。

  • 私にとって嫌な箇所があった。
    物言わぬ動物が虐待される描写。
    動物好き故に、普段動物に関する番組や映画(特に可哀想なやつ)を見ることが苦手なので、うさぎはもちろん、動物嫌いな人がネットで会話する場面は本当に苦手だった。
    そのページは二度と読めないかもしれない。

    私が嬉しかったところ。
    この作品でも、他の作品の登場人物が出てくるのは分かっていたけど、秋山先生も納得だったけど、まさかあのD大に再び足を踏み入れることがあろうとは!
    しかも月子まで再登場。たぶん恭司も。そうだ料理があまり得意じゃなくて、噛み合わない会話をする月子だった…と懐かしくなった。秋山先生が人を消した方法が分かってすっきり。できれば浅葱のその後も見たかった。
    子どもたちは夜と遊ぶが大好きなので、あの雰囲気をまた味わえたことが嬉しかったな。

    驚かされたいから、あまり先を予想せずに読もうと思っていたので、「ぼく」がPTSDだとは全く予期していなかった。でも確かに大学で賞味期限切れのチョコなんて置いてるかな?とか、マドレーヌが個別に味が違うとか引っかかるところはあったけど、読み返すと味覚について確かに色々書いてある。二回目読んだら景色が違って見える叙述トリックが好き。
    そしてそこまでこの子が「自分のせい」だと責めていたなんて。それが悲しくて、そして人の気持ちを察するって難しいんだなって改めて思った。ふみちゃんの気持ちは考えたけど、ぼくの言葉は書かれていることが全てだと思っていた。だから人の思考回路を、言外のことを分かろうとするのは難しいといつも思う。自分と他人の考えは違うから。それを忘れないでいたい。


    この物語は、罪と罰に重きを置いている。
    確かに市川雄太は人を殺したわけじゃない。例えば生類憐れみの令のように人間に重い罰を与えるのも違う気がする。
    そして私達は普段生きていくために沢山の生き物の命をもらっている。
    だけど、必要のない殺生に、それを見た人を傷つけると分かっていることに、動物だけじゃなく今後人間をも手にかける可能性のある人物がした行いに、本当に器物損壊罪で済まされるのかは疑問。
    人間は人間同士のルールを守ることである程度の身の安全を保証されるのではないか。それを守らない人に、人の人生を奪う人に、保証はない。それを正しく判断し、罰するのも人間だからこそ、人間は考えることをやめてはいけないと思う。

    ふみちゃんみたいに、周りの子より大人で、群れない子は生き辛いだろう。でも私はふみちゃんみたいに優しくて、自分の軸を持つ子が好き。
    私は秋山先生の考えに近いので、ぼくが市川雄太に言った条件と罰は納得できないし良くないと思うけど、身を挺して自分を庇ってくれる「ぼく」のような存在が身近にいると分かって、ふみちゃんは幸せだと思う。だから単に事件の記憶を消せば良いということでもないのかもしれない。

    ぼくとふみちゃんの今後が気になる。
    3.5点ぐらいのつもり。

    20181216

  • 罪を犯した人間に、正しい、罰を。
    正しさを計る匙加減、なんて難しいんだろう。

    名前探しに繋がる話で、夜と遊ぶの裏側の話でもありました。

    条件提示の能力があってもなくても、強い想いから発した言葉は、良くも悪くも人を縛るんじゃないかな。
    それを愛と呼んだり、罰と呼んだり。

    余談ですが「お兄さん」はいつだってかっこいいんだよ。

    辻村深月作品は巡り巡って再読必至でもう困る。

  • 先に名前探しの放課後を読んでしまったので慌てて読んだ。ああ、彼らの子供時代かと思うと不思議な感じ。

    辻村深月だからどんでん返しがあるかとソワソワしながら後半読み進め、こうきたかと少し驚きながらも、いやいや頭よすぎでしょうと突っ込んでしまった。

    最後はホロリとしたし、メジャースプーンの例えもなるほどなと思ったけれど、めちゃくちゃ好き、というタイプの本ではなかったな。

  • ある事件を切っ掛けに心を失ってしまったふみちゃん。ふみちゃんの心を取り戻すため、主人公が持つ言葉の力を使い犯人に復讐する。構成や登場人物、文章ともにさすが。ただ小説だから架空の話ではあるも。小学生の主人公が出した結論にしてはやや飛躍し過ぎでは??

  • 最初は面白い、設定のストーリーでどんな結果になるのだろうと強い興味を持ちました。先生の条件ゲーム定時能力の長いレクチャーも、真剣に聞きました。まるでハーバード白熱教室のようにどんな罰を犯人に与えるべきか、それは罰となるのか、と先生との会話を自分自身議論していました。ここまでは面白かった。最後が期待ハズレだった。条件と結果のレトリックを駆使した結末を期待したのに。

  • 罪と罰。なかなかの難題に突き進むぼく。
    秋先生のところでいろいろと学び、秋先生を裏切ったぼく。それほどまでにふみちゃんを想うその気持ちは間違いなく愛だよ。
    いやー。ほんとに難しい。罪と罰というのは。現代の社会においても市川のような人は存在していて、ぼくの立場をわたしに置き換えたとき、わたしはどんな罰を与えるだろうか。反省してほしい…でもない。死んでほしい…でもない。ずっと恐怖に怯えていてほしい。それこそ死にたくなるような。でも死ねない。そんな恐怖に怯えながら生きていけばいいと思う。

  • 学校で起きた事件をキッカケに心を失った少女と、復讐を企てる少年の物語。
    ふみちゃんは賢くおごらず、それでいて凜といて
    ああ、格好いいなあ。「ぼく」にとって彼女はきっとヒーローだったのだろうと感じました。
    そんなふみちゃんが学校のうさぎが惨殺された事件をキッカケに声を、表情を、心を失ってしまう。
    読んでいて苦しくもなりましたが、後半トモがふみちゃんを真似て悪ふざけをする場面はとても小学生らしく、
    無知な子供だからこそ見せるこれこそが人間の本心なのだろうと胸が痛くなりました。
    不思議な声の力で復讐すべく声の先生から教わるぼくですが、
    結論から言えばそれはふみちゃんの為でもなくぼく自身の為、そしてあの日うさぎの当番を交代したことへの自責の念がトラウマになり、知らずにPTSDを患っていたぼくを
    正しい道へ導き救う為に手を差し伸べたのが
    「子供たちは夜と遊ぶ」の秋先生でした。
    余談ですが先生の例え話に出てきた月子や恭司があの頃のままで「ああ、やっぱり月子は月子だな」とほっこりし、
    子供たち〜の伏線回収もされていて流石だなと思いました。
    ぼくがバラバラに溢れたメジャースプーンの正しい使い方を学び、ふみちゃんに返したときに声を取り戻す。
    一歩踏み出した彼等が、これから成長していける希望を見せてくれる本でした。

  • 久しぶりに、マイケル・サンデル教授の「これから『正義』の話をしよう」という哲学書を読んでいる気分になりました。もっとも、サンデル教授は頑なに答えを出そうとはしませんが。

    お母さんは「ぼく」の能力を呪いと言ったけど、こう言った大きな能力を使うために、哲学的な問題をとことん考えさせる秋山先生はやはりすごい教育者です。

    秋山先生をはじめ、子どもたちは夜と遊ぶで出てきたキャラの再登場も嬉しいところ。動物園に一緒に行った2人は、恭二と月子かな。でも、月子は記憶をなくしているので、白根さんかもしれない。

    主人公は子どもなんだけど、この子が違和感を感じるぐらい賢かったのが残念なところです。

  • 【内容】
    ひとさじのファンタジーを加えた、小学生の葛藤の物語。

    主人公は、ある力の使い方を学びながら、酷いことをした相手にどう向き合うかを考える。
    相手はどう思考するだろうか? 自分は何を選び、どうなれば許せるのか?

著者プロフィール

辻村深月(つじむら みづき)
1980年山梨県生まれ。千葉大学教育学部卒業後、2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、2017年『かがみの孤城』で「ダ・ヴィンチ ブックオブザイヤー」1位、王様のブランチBOOK大賞、啓文堂書店文芸書大賞などをそれぞれ受賞。本屋大賞ノミネート作も数多く、2018年に『かがみの孤城』で第6回ブクログ大賞、第15回本屋大賞などを受賞し、2019年6月からコミック化される。他の代表作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『名前探しの放課後』『ハケンアニメ!』『朝が来る』など。新作の度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者からの熱い支持を得ている。2020年、河瀬直美監督により『朝が来る』が映画化される。

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