- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062763349
作品紹介・あらすじ
風呂の撹拌棒を人にあげたがる女、鋸を上手に使う娘、北の湖を下の名前で呼ぶフランス人、そして空気の抜けるような相槌をうつ主人公…。自覚のない(少しだけの)変人たちがうろうろと、しかし優しく動き、語りあう不思議なユートピア。柔らかな題名とは裏腹の実験作でもある、第一回大江健三郎賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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とてつもなくここちよく、ぼくにとっては、とてつもなくスリリングな作品。だって、この作品を読んでいて、何度か電車を乗り過ごした、乗り過ごしそうになった。
でも、このここちよさは、きっちり、ていねいに物語ることを意識した、作者の力量だと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
長嶋有作、記念すべき第一回大江健三郎賞受賞作。
賞っていうのは与える対象によって賞自体の性格が定められるような部分がありますけれども、
第一回の受賞が長嶋有のこの作品だとそのあと大変そうな気がします。まだ続いてるんでしょうか、大江健三郎賞。そこら辺無知なのですいません。
何故大江健三郎賞の受賞作がこの作品だとそのあと大変なのか。
解説で大江健三郎も語っております通り、この作品、というか近年どころか今までの長嶋有作品に特に顕著な部分として、
主人公の影の薄さがとても強く、それは日本で言われるところの「純文学」には全く見られそうにない特徴であるからです。
さらに大江健三郎は、そのことに対して解説で「新しさ」を感じたことを論評で言ってます。
賞を与える理由として「新しさ」を挙げるとなると、その賞の選考自体がどんどん尖鋭化するのは間違いない。
というわけで大江健三郎賞、思いきったなーと感じたわけです。
そのように他の文学作品にはあまり見られないほどこちらの作品は尖鋭的であるのですが、
なんだか印象としてはゲーム、殺人事件の起きないアドベンチャーゲームみたいな趣で面白かったです。
大きな事件は起きまくっているわけですが。それこそ殺人事件なんかより現実的な。 -
芥川賞を取られている方の作品なので文章は巧みなのかもしれないが、私にはなじまない作品であった。会話は、最初は「」が付いているものの、その返答には「」が付いていないという特殊な文章で、集中して読まないと分かりにくい構成になっている。また、情景描写に不足が多いと感じることが多く、状況がすんなりとイメージできないシーンが多々あった。特に大きな事件が起きるわけではなく(妊娠事件はあるが…)、ちょっと変わった日常を不思議な視点から見つめた作品である。作品の紹介に「実験作」と記載があるが、頷ける。
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アンティークショップを舞台とした連作短編集。
「透明で背景みたいなひと」と評される主人公は、最後まで、名前はおろか、生い立ちや年齢といったプロフィールの一切を明かされない。自分が何者かである必要がない、人生の中でぽっかり空いた「夏休み」のような時間をきりとった作品なのだとおもう。
ユーモアを交えた会話や描写、作品全体を包むゆるやかな空気感を楽しみつつ。それでもやはり、人は、ここにずっと留まり続けることはできないのだと感じた。此処から「ぼく」はどこに旅だっていくのだろう。 -
こういうオムニバス形式は好きな形態だ。
古道具中野商店と同じ、というか、
裏・古道具中野商店、か。
いや、どちらが裏でどちらが表か、は、
ちょっと決められないかもしれない。
コインの裏表である。
しかし、今読むと、貴闘力は、何とも言えない。 -
ゆるく、やさしい、人々とその生活。こんなふうに生きれたら、と思う。控えめさと、ユーモアと、相手を受け入れるおおらかさ。そんなものを併せ持つここ(この本)にいる全員が、すぐ触れられる距離にいるように、ていねいに描き出されている。ほんっとに好きなタイプの小説。また、この著者の作品を、探して読もう。
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第一回大江健三郎賞受賞作。P6<blockquote>しばらく無言でみつめていたメールの画面をみせてくれる。「from:マリ」とある次の表題に「満月」とある。夕子ちゃんがボタンを押すと本文には「ですな」とだけ書かれていた。「満月ですな」つなげて棒読みした。夕子ちゃんはうなずく。</blockquote>P133<blockquote>寂しいのかもしれない。だけど大家さんがいうように「可哀想」なわけではない。親が性悪じゃなくても〜寂しい人は最初からずっと寂しい。</blockquote>主人公以下、全ての人が優しくて寂しい。何度もぱらぱらとページをめくって読み返している。
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「夕子ちゃんの近道」(長嶋有)[電子書籍版]を読んだ。このムニャムニャした?ちょっと違う、モサモサ?違う!う〜、とにかく一粒一粒がしっかり立っていてそれでいて全体としてはもっちり感のある独特なテイストがとても良いです。長嶋有さんの作品は初めてだな。これはもっと読まねばなるまい。
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なになにが素晴らしかった、って要素を個別に言っていくのがためらわれるくらい全部良かった。
上手さと良さしかない。
必然のタイミングで必要な情報を与えるだけの語りがたまらない。
その「必然のタイミング」を適切に見極めること、つくりだすことが難しいのに……!
なんだか完成されてて、小説以外の言葉を付随させることに情けなさを感じてきた。読んだほうがいい。
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