追跡・「夕張」問題 財政破綻と再起への苦闘 (講談社文庫)

  • 講談社 (2009年4月1日発売)
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感想 : 8
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  • 本 ・本 (430ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062763394

感想・レビュー・書評

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  • 夕張の財政破綻は有名ですが、実情については詳しく知りませんでした。

    炭鉱がなくなり、観光路線に移行してからの巨額投資が影響して、破綻したとのことです。

    人口の減少、公的機関の脆弱化、医療の問題など、住んでいる人たちのことを考えると胸が詰まるような気持ちになりました。

    今の夕張がどうなっているのかも気になります。

  • その昔、石炭は「黒いダイヤ」と呼ばれた。日本のエネルギー
    政策を支えた石炭を産出する炭鉱の町は、映画を誇った。

    しかし、エネルギー政策の転換、事故の頻発で炭鉱は次々と
    閉山され、それに伴い町も衰退して行った。

    2006年に深刻な財政問題が表面化した北海道夕張市も炭鉱の
    町だった。

    炭鉱の町から観光の町への脱皮をはかり次々と建てられたハコ
    モノ、閉山の為に夕張市を去ることになった炭鉱会社が残した
    住宅や入浴施設を買収したことに関わる多額な財政負担が積み
    重なり、自治体の財政は破たんした。

    本書は夕張市の財政破綻に至るまでの経緯と、その後を丁寧に
    追った作品である。

    炭鉱閉鎖により住民数が激変したところに財政再建団体指定で
    ある。「最高の負担、最低のサービス」の自治体から、更に
    人口が減るのは当然と言えば当然。人口が減れば税収は減る。
    残された住民には更なる負担がのしかかる。

    自治体が破産するというのは、こういうことなのかと暗澹たる
    思いになる。市職員の数も激減し、ひとりひとりの仕事の負担
    は重くなるばかり。しかも、給与・賞与は削減。退職金だって
    貰える保証はない。

    これで市の再建に前向きに取り組めとは無理な話だと思う。
    おまけに国や道にお伺いを立てなければ何も出来ない。
    足を縛られているのに全力疾走しろと言われているような
    ものではないか。

    無理に無理を重ね、不正会計を続けて来た夕張市の責任は
    重い。だが、薄々は知っていて放置していた国や道にも
    問題があるのではないかと思う。

    特に夕張市の財政破綻が表面化した当初、国も道も自己責任
    とばかりに突き放していたのに、統一地方選挙・参院選を控え
    ると態度を軟化させたところに狡猾さを感じる。

    住民の生殺与奪の権利を行政が握っている怖さが浮かび上がる。

    自治体としてはありえないような借金を抱え込んだ夕張市。
    その借金は徐々に減って行っている。現在、夕張市のホーム
    ページでは「夕張市の借金時計」が残高を刻んでいる。

    興味のある方はこちらから。
    https://www.city.yubari.lg.jp/syakintokei/index.html

  • 170325 中央図書館
    炭鉱事故についても思い出した。

  • 当然、市長はじめ市の幹部に問題があったのだろうが、ここまでくると道と国の対応次第なんだろうな。今の夕張がどうなっているか調べてみる

  • 『夕張市長まちおこし奮戦記』のアンサー本。夕張市の破綻前後を追跡したルポルタージュです。
    2006年、北海道新聞による夕張市の財政難の取材からはじまり、財政再建団体への転落、そしてその直後の市の状況を丹念に追っています。
    夕張市を巡る過熱報道ぶりがまだ記憶にあるためか、当時の状況とすり合わせながら、報道だけではうかがい知ることのできなかった当事者の苦悩とか、動向が読み取れます。
    また、財政難から破綻に至る経緯は、巻末にある解説を読めばざっくりとわかるように編まれています。
    特に金融機関の「追い貸し」の件は、『夕張市長まちおこし奮戦記』での大言壮語ぶりと合わせて読むと、まさに鬼畜の所行。
    このように読み応えがあり、これはこれでいいのですが。
    一つ腑に落ちないのは『夕張市長まちおこし奮戦記』の時点で、すでに夕張市は起債制限されており、さらには1982年の段階で財政再建団体への転落が危惧されていました。
    にもかかわらず、なんでこんなことになったのか?
    あたかもバブル崩壊が引き金で財政が悪化したかのような分析がされているけど、それより前から危ない橋を渡っていたんじゃないの? と思うのですが…。
    1980年代当時のエライ人やメディアの方々、そして当事者たちはどんな感じで、夕張の観光開発を見ていたんでしょうか。

  • 夕張の破綻を契機に全国の自治体で財政健全化への緊張が高まり、現在もその潮流は続いている。その契機となった夕張の実態を詳しく知ることで、よりいっそう財政健全化の必要性を痛感した。
    しかし、行政や銀行に大きな責任が有ることは議論の余地がないが、市民には民主主義の仕組み以上の責任は無いのだろうか。つまり、それほど受け身な責任しかないのだろうか。それはこの本の中にある、印象的な市民の声が答えを示唆しているのではないか。
    「市に金がないなら、頼みごとをしても無駄。それなら市議を応援する意味はない」…
    この声が市民のなかに有る限り、議会も首長も官僚も夕張と同じような状況に動かざるを得ないのではないか。
    市民の責任の取り方は、まず行政への依存体質から脱却することから始まるのではないだろうか。それは全国の自治体に当てはまるはずだ。

  • かつて全国を騒がした夕張市の破綻問題、本書は当時と2年経った現在を追ったドキュメントである。
    当時の報道でも何も知らなくて可哀相な市民ととんでもない市役所(公務員)といった対比が見られた。
    本書でも、市や国や北海道の責任を問うている部分がある。再建計画の有効性を疑問視している部分もある。感想としては多少違和感を感じた。外的要因があるにせよ責任は首長と議会にある。そして選出した市民にもあるはずである。市民は知らなかったでは許されない。知る努力をして一票を投じる必要がある。それが民主主義であり選挙ではないか。市は歯を食い縛って借金を返す責任がある。いつまでも可哀相な市民といったステレオタイプの報道が続くとしたら残念な事である。

    何故、借金が増えたのかにも踏み込み不足な点がある。なぜ借金をしなくてはならなかったのか金子勝の解説を読まないと画竜点睛を欠くのが残念であった

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