リンカーン弁護士(下) (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062763936

作品紹介・あらすじ

弁護の報酬は大金と、恐怖

多額の報酬が約束された事件を調べるハラーは、かつて弁護を手がけたある裁判へと辿りつく。もしかしたら自分は無実の人間を重罰に追いやってしまったのではないか。思い悩む彼の周囲に、さらに恐るべき魔手が迫る。絶体絶命の状況下で法廷に挑む彼に勝算はあるか?コナリーワールドの新境地を拓く意欲作。

感想・レビュー・書評

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  • やっと、文句なしの面白い本に会えた。最近面白いなぁと思ったものは多いが、全編を通して、息継ぎがないくらいに読み通したのは久々で、評判どおりだった。

    リンカーン・コンチネンタルの後部座席を事務所にして仕事をする、弁護士のマイクル(ミッキー)・ハラー。

    儲からない貧乏仕事ばかりで、別れた妻の元にいる子どもへの養育費も含めて経費の支払いに汲々としている。計算高いが、人間味もある、勝つためには裏技も使う、知的戦力に優れ、法廷の弁論合戦も計算された演技力を駆使する。
    面白く読み応えがあった。
    いくつかの小さな担当事件が挿入されているが、これがメインの事件につながるところもあり、こういったわずかな報酬の仕事で作り上げた人脈が、後に幸いするのも、人柄だろう。

    * * *

    売春婦の殴打暴行事件の犯人ルイス・ルーレイは、犯行直後に、隣人二人に捕まえられた。拘留中のルイスから弁護を依頼されたマイクには、この富豪の息子の弁護は、やっと運が向いてきた萌しだと思えた。彼はルーレイを一目見て、内向的で無垢な笑顔に、冤罪を感じた。
    だが、状況は全てに不利だった。直感に従えば、無罪の犯人を弁護する難しさを実感する。


    <em>「(父は)弁護士が担当する依頼人のなかでもっともまれなのは、無実の依頼人である。と語っていた。もし弁護士がへまをして、無実の依頼人が刑務所にいくようなことがあればそのことが生涯、弁護士を悩ませるだろうと。」
    「親父さんは文字通りそんなことを言っているのか?」
    「そういう趣旨の発言をしている無実の依頼人には(略)妥協するな、ひとつの評決あるのみ。スコアボードにNGをつけなばならない。無罪<font size="1">ノットギルティ</font>以外の評決はない」</em>


    一方、使っている調査員ラウルの報告は次第に、ルーレイの素顔に迫っていく。
    事件の真相は、警察の捜査が進むにつれて、ミッキー・ハラーの中でも被告人の罪状に対する印象が二転三転し、そのたびに無邪気に見えたルーレイの顔つきも変化していく。

    頼りにし親しくしていた、捜査員のラウル・レヴンが殺された。使われた銃は、ハラーが父から遺贈されたものだった。しまいこんでいたクローゼットの箱の中身が消えていた。ラウルは手がかりをつかんだと最後の電話で伝えてきていた。

    ハラーは犯人の弁護と、身の潔白を明かさなければならないという羽目になる。

    ラウルのつかんだ証拠が犯人に不利になるのを知っていた、だれが銃を持ち出したかもほぼ見当がついた。
    ラウルの最後の言葉は不明ながら、真実に近いものだと分かっていた、しかし彼は弁護を続ける。
    検察に追い詰められれば証拠について反証されることも承知の上だ。
    が、彼は次第に犯人の意図が見えてくる。無罪を勝ち取るためにジレンマを抑え弁護を展開する。

    ルーレイは仮釈放から追尾アンクレットをつけていた、彼の動きはパソコンに記録され、大きなアリバイになっていた。

    また、ハラーの持つ数々の証拠から、検察側の証拠を粉砕する論拠は確実になった、相手の新人検察官は追い詰められ、ついに有利な答弁取引を提案した。しかし、これを聞き入れれば、ルーレイの罪を認め、彼は短いながらも拘留され、犯罪歴が残る。実績を残すには、彼は無罪でなくてはならない。

    ハラーは監察官の取引をはねつける、そのとき自分の勝ちを実感した。

    * * *

    日常のハラーは、抜け目のないところが小粒な収入であっても彼の仕事を続かせている。
    街の薬物中毒者は、麻薬密売の現行犯からハマーの弁護で厚生施設送りに減刑されてもまた罪をくりかえす、いいお客さん(リピート客)だが、そのつどハラーは全力で弁護してきた。
    カード詐欺、売春、麻薬取引、下町の犯罪を弁護する話は、読んで楽しく興味深い。

    第一部の「刑事調停」はハラーの家族や彼の世界と、法律のあり方や犯人との絡みが面白く、
    第二部の「真実のない世界」というのは、その後のハラーの生き方のさまざまな象徴とも言える。

  • (上巻より続く)

    ただハリー・ボッシュが主役の作品に比べると、
    深みがなく、ハラハラドキドキ感は少々薄い。
    焦燥感が足りないというか。

    ただ、ここにきて、マイクル・コナリーの作品を好む理由が一つわかった。
    主人公とどういう関係にあれ、
    登場する女性が常に強く、優秀だというこだ。

    「スケアクロウ」の解説にあったように、
    どうもそれは、男性の目から見てかわいくない女性、のようだが。

  • いっとき、法廷モノがはやっていたのに最近はめっきりなくなってさびしい。そんなおり、マイクル・コナリーで法廷モノということで飛びついて読む。王道をいく感じで、期待を裏切らないおもしろさ。お金のために、罪を犯してるとわかっている人間のことでも弁護するっていう弁護士の、人として正しいか正しくないか、っていう問題はさておき(おいていいのか?、その葛藤がまた物語としておもしろいのだけれど)、わたしは家族を守ろうとする主人公が好き。最後の最後まで本当にハラハラしたー。シリーズ化されているとのことなので次も楽しみ。

  • 感想は上巻に。

    コナリーはけっこうロックを聴いているのかな。
    混雑したバーで飲物が運ばれてくるのを
    「パール・ジャムのコンサートに詰め掛けている観客の頭上を十代の若者が運ばれていくかのように、綺麗なグラスが手から手へ運ばれてきた」などという描写がある。

    巻末の解説によると、
    出版される半年前に映画化権が売れたということで、2011年にハラー役にマシュー・マコノヒーで映画化された。「リンカーン弁護士」(The Lincoln Lawyer)
    監督ブラッド・ファーマン


    2005発表
    2009.6.12第1刷 2012.7.9第6刷 図書館

  • 顧問弁護士が居ながら、何故自分に依頼してきたのか、わかったのは、依頼人による罠にはまった後ですが、その後の生き残りを賭けた逆転劇は見事。

    アメリカの司法制度に関わる部分もあり、日本との違いを感じますが、逆に言うと、これぞアメリカの法廷劇という感じです。

    面白いのが、離婚した妻とも意外に良い関係を続けていること。しかも、一人ならず二人も(笑)

  • ピンチからどうやって大逆転するのか、気になって一気読みした。
    ジーザスが可哀想。
    法廷バトルは面白かったけど、相手の検察官が弱すぎた。

  • 面白かった。最後まで落ち着き先が分からなかったが一気に読み終えた。
    全て円満の解決ではなかったが納得のいく結末だった。
    主人公が魅力的なので続編があれば読みたい。

  • 図書館の本 読了

    内容(「BOOK」データベースより)
    多額の報酬が約束された事件を調べるハラーは、かつて弁護を手がけたある裁伴へと辿りつく。もしかしたら自分は無実の人間を重罰に追いやってしまったのではないか。思い悩む彼の周囲に、さらに恐るべき魔手が迫る。絶体絶命の状況下で法廷に挑む彼に勝算はあるか?コナリーワールドの新境地を拓く意欲作。

    マイクル・コナリーはハリー・ボッシュシリーズを好んで読んでいたのですが、いろんなところで、この作者が書いた(出版した?)順番で読むべきとあったので、素直にリンカーン弁護士に行ってみた。
    なんとなくボッシュをほうふつとさせるハラー。
    複数の弁護人が動く中で調査員と刑事との絡みが進んでいくにしたがって謎が深まる。
    最後はほほーってな展開だけれどもボッシュに比べると迫力不足な気がするのはボッシュ好きのひいき目か。
    次はボッシュに戻りたいと思います。

    The Lincoln lawyer by Micheal Connelly

  • ハリー・ボッシュのようなハードボイルドじゃない、ヘタレな主人公なんだけど好きだ。下巻から止まらなくなる面白さ

  • 文句なしに面白い。マイケルコナリーの作品では、初めてのハリーボッシュ以外の物だったが、相変わらず面白い。アメリカの司法制度や裁判の詳細がとても詳しく書かれていて、またその周辺で活動している人々のことも詳しい。とにかく文句なしに面白く、ミステリー好きの人にはお勧め。この作者のシリーズは、経年で主人公も年を取るので、できれば最初から読むのをお勧め。

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著者プロフィール

Michael Connelly:1956年生まれ。LAタイムズ元記者。代表作としてはボッシュ・シリーズ、リンカーン弁護士シリーズがあり、当代随一のストーリーテラー。

「2023年 『正義の弧(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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