一瞬の風になれ 第二部 -ヨウイ- (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062764070

作品紹介・あらすじ

オフ・シーズン。強豪校・鷲谷との合宿が始まる。この合宿が終われば、二年生になる。新入生も入ってくる。そして、新しいチームで、新しいヨンケイを走る!「努力の分だけ結果が出るわけじゃない。だけど何もしなかったらまったく結果は出ない」。まずは南関東へ-。新二との連の第二シーズンが始まる。吉川英治文学新人賞、本屋大賞ダブル受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 「陸部に入って、よかったです」
    俺は言った。今更とも思ったけど、守屋さんに言葉で告げたくなって口にした。
    「そうか」
    守屋さんはうなずいた。しみじみと嬉しそうな顔になるのがわかった。
    「俺もだよ」
    と守屋さんは言った。
    (略)
    「面白いよな、部ってな」
    と守屋さんが言った。
    「色んな奴が入ってどんどん変わっていって。でも、この学校のこの部のカラーって、やっぱりあるんだよな」(130p)

    「俺(=神谷)」は2年生になり、守屋部長から次期部長に指名される。私から見ても適任だ。
    部長はこのように先輩が決めたり、先生が決めたりする。柔道をしていた私の場合は先生だった。神谷のように練習が好きで、周りの状態を気にかけるような男ではなく、練習にムラがあるけど1番強くて才能があったSを指名した。そうやって多分彼に責任感を持たせたのだろう。私は何故か副部長になれと言われた。そうやって、次第と部の個性が出始める。

    個人競技の柔道も、神谷や一ノ瀬たちの陸上も、一人ひとりの頑張りだけど、全然一人ひとりでやってるわけじゃない。ひとりのミスをひとりがカバーしたり、ひとりの調子が団体戦(本書の場合ならば4継)の調子を左右する。

    本書では天才肌の一ノ瀬にも、神谷にも、今までで最大の試練が与えられる。でも、神谷くん、一ノ瀬くん、それって生涯最大の試練じやないからね。神谷くんの時は、意外にも喫茶店でぼろぼろ泣いてしまってびっくりした。

    私は6年間、どうして部活を続けていられたんだろう? 神谷のように部活漬けの生活ではなかったけど、高校生の楽しみを経験しているような周りとは無縁の「家と学校と道場との往復」生活をした。

    「俺ァ、他のスポーツやらないからわかんねえけど、最高に気持ち良くない?」
    連の言葉に、俺はうなづいた。(300p)

    あの輝く一瞬。
    それは総ての部活で経験できることなのかもしれない。

  • 「努力は必ず報われる」
    本当はそうであって欲しい。
    でもそうじゃない時だって多々あるのを、人生折り返している私は知っている。

    私にも、努力は絶対報われると信じて疑わない時期もあった。特に若い時。環境も健康も(ほぼほぼ)最高な時。こういう時って、自分が恵まれていることに気付けない。無敵。

    でも歳を重ねるにつれ、自分ではどうともし難いハードルがバンバン立てられて、努力だけでは超えられない事態に遭遇する。それを乗り越えるには、人の優しさ助けをもらったり、自分の中に隠れてた強い意思を奮い立たせたり。痛みが抜ければきっと次に行ける。その時の一歩一歩を大事に。その一つ一つの努力がきっと自分の未来を助けてくれるのさ。

    ...ええ、そんな感想を持つお話でした(ざっくり)
    主人公のキャラも勿論、周りを支える人達も魅力いっぱいです。頑張れ、みんなーーー!!

  • 「俺さ、おまえとかけっこしたくて、この部に入ったんだよ。」

    長らく駅伝の名門校で顧問をされていた先生が、お話ししてくれたことを思い出しました。
    「マラソンはね、体の大きさなんか関係なくてね、ただ単純に体一つでかけっこするだけだから面白いんだよね。」

    新二くん、がんばれ!
    春高陸部、がんばれ!

  • 新二は2年生になる

    春高の陸上部を、才能のある者もそうでない者も全ての人を受け入れ、伸ばしてやれる場所にしたいと自ら日々精進を怠らなかった守屋部長の後を引き継ぎ、部長になる

    県総体で3位 春高新記録42秒01 南関東出場というこれ以上は望めないような好記録を出すも、連の故障で、なかなかチームとしての記録が安定しない

    特別メニューを自らに課しひたすら努力を重ねる新二に思いがけない不幸が襲いかかる
    幼い頃から憧れ尊敬してきた兄の健一の交通事故による大怪我 

    怪我をしたのが兄ではなく自分だったらよかったと自分を追い詰め、苦しみ、練習にも出られない日々が続く

    新二の「俺」目線で語られるので、心情がぐいぐい伝わってくる

    兄はサッカーの天才、幼なじみの連は短距離走の天才。
    天才二人に挟まれてきた新二であるが、タフで僻むことなく、前向きにひたすら努力を続ける姿に胸を打たれる

    ああ、こんな息子が欲しいとさえ思ってしまう

    最後が良かった!
    兄のことで陸上に参加できずに、隠れて駅伝を応援していた新二を探し当てた連
    連の前で、今まで堪えていた涙が溢れ出す新二
    「つまんねえのよ。おまえ、いねえと」
    「俺さ、おまえとかけっこしたくてこの部に入ったんだよ」
    と、新二に練習に戻ってくるよう促す

    天才一ノ瀬連のそばにいるのが幸運なのか不運なのか
    それは考え方一つで変わってくるぞと監督のみっちゃん(三輪先生)は言う

    確かにあまりにもすごい存在がそばにいると、普通なら妬みや落ち込みに苛まれ、ダメになってしまうケースもあるだろう

    しかし、新二にとっては、幸運以外の何ものでもないというか、新二が幸運に変えている
    新二と連は、互いの闘志を掻き立てるエネルギーの源泉であり、またとないライバルであり、最も信頼できる親友なのだと思った

    いよいよ第三部、春高は、鷲谷高の4継チームに勝って
    南関東大会を勝ち抜き、インターハイに出場できるのだろうか

  • 第ニ部のヨウイも良かったです。
    高校2年のお話。
    次の第三部は最終学年ですね。
    成長していく課程で多くの試練が立ちはだかります。さらなる成長を期待して第三部を読みます。
    健ちゃんがとても心配です。
    谷口若菜との恋?の行方にも気になります^_^

  • 主人公の新ニや、チームメイトの成長。友情。
    淡い恋愛なんかも入りつつ、もう待って!やめて!っていう出来事も起こり、二部も楽しく読んだ。

    旧キャプテンから、新キャプテンへの引き継ぎの様子に涙し(涙もろすぎかな)
    顧問の三輪先生の生徒を思う言葉や行動にハートを掴まれた。こんな先生と部活やってみたかった。

    なんだか無性に坂道ダッシュをしたくなった。
    三部も楽しみ。

  • 後半でまさかの出来事もあり、涙が止まらず夢中になって読みました。新二の周りの仲間や友情が温かく、読んでいる時は自分もその中にいるように必死に応援し、読み終えたら羨ましく感じました。

  • 2巻目。高校生男子の心情を丁寧に描いてます。スプリント、リレーの面白さが分かります。2巻は辛い展開。3巻目も楽しみです。

  • 「突出した選手が低いレベルの環境に入っていくと、全体がいい選手のレベルにアップしていくより、いい選手がまわりに合わせてレベルダウンしてしまうことのほうが多い。ウチの部はあいつを育てられるんだろうかってね。」
    「特に、部長になってからは、俺に何ができるんだろうって真剣に考えたね」
    「結局、自分のできることをせいいっぱいやるしかないって当たり前の結論に落ち着いたよ。1日、2日じゃない、毎日、毎日、三百六十五日だ。どんな日のどんな練習もおざなりにしない。どんな試合もきちんと走る。毎日、ベスト更新だ。練習も試合も。気持ちだけはな。そうすれば、俺も選手として伸びるし、皆もついてきてくれるだろう。気まぐれな天才、一ノ瀬でもだ」
    「ここをいい場所にしたかったんだ。どんなすごい奴でも、癖のある奴でも、力のない奴でも、堂々と受け入れて伸ばしてやれる場所。みっちゃんがああいう性格で、人数も少ないから、ウチはけっこう自由だろ。アットホームでのびのびしてて。でも一歩間違うと、馴れ合い集団になっちまう」
    「頼んだぞ、神谷、ここをいい場所にしてくれ」

  • 鷲谷との競争に胸が高鳴りました。最初は鷲谷に追いつけるのかと思っていたけど、連と新二が全力を出したら鷲谷さえ抜いちゃう気がします。
    高梨との会話が好きです。試合前だとしてものんびりマイペースで、走る直前に頭が冷えるという自分に都合のいい体質の高梨と、付き合ってあげる新二の会話にほっこりしました。
    3巻ではどんな終わりなのかな。守屋さんが引退しちゃったのがショックです。
    若菜ちゃん、仙波が好きだそうですけど、それは憧れで、恋の話じゃない気がします。本当は新二が好きなんじゃないかな。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。1989年、「サマータイムで」月刊MOE童話大賞を受賞しデビュー。『イグアナくんのおじゃまな毎日』で98年、産経児童出版文化賞、日本児童文学者協会賞、99年に路傍の石文学賞を受賞。ほかの著書に『しゃべれども しゃべれども』『神様がくれた指』『黄色い目の魚』日本代表リレーチームを描くノンフィクション『夏から夏へ』などがある。http://www009.upp.sonet.ne.jp/umigarasuto/

「2009年 『一瞬の風になれ 第三部 -ドン-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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