永遠の0 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062764131

感想・レビュー・書評

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  • 戦争は残酷だ。
    戦地へ赴く人にとっても、送り出す人にとっても、何ひとつとして良いことはない。
    国家を守るために戦わなければならないことがあるかもしれない。
    けれど、「特攻」という戦略はどんな時代であってもけっして許されることのない戦略だと思う。
    孫の健太郎が宮部を知る人たちを訪ね、当時の宮部のようすや状況を聞く構成になっている。
    それぞれの人たちが語ることによって、宮部のさまざまな顔が見えてくる。
    徐々に浮き彫りになっていく宮部の人となり。
    数多く語られる細かなエピソードの積み重ねが、当時のどうにもならない閉塞した空気をも伝えてくる。
    強烈な印象を残したエピソードがあった。
    戦死したアメリカ兵のポケットに入っていた胸をあらわにした女性の写真。
    日本兵たちが写真を回し見していると、宮部が写真の裏を確かめてから静かにアメリカ兵のポケットに写真を戻す。
    もっと見たい!と思ったのだろうか。戻した写真に手を伸ばそうとした日本兵に対して宮部は声を荒げる。
    そして「愛する夫へ」と書かれていたと辛そうに言うのだ。
    日本兵もアメリカ兵も関係なく、愛する者を本国に残し出征してきているのだ。
    生きて帰ることが叶うかどうかわからない戦場で、写真1枚を胸に戦死していく若者。
    戦争は、誰にたいしても本当に残酷だ。

    「お前が特攻で死んだところで、戦局は変わらない。しかし・・・お前が死ねば、お前の妻の人生は大きく変わる」と諭された谷川。
    そして彼は戦争を生き延びた。
    ようやくたどり着いた村では、穢れたものでも見るように谷川を見、誰も近寄ってはこない。
    陰で「戦犯だ」と言われ、子どもたちからは石を投げられた。
    戦争中には村の英雄だった者が、戦後は一転して村の疫病神に成り果ててしまったのだ。
    どんなに悔しくてもぶつける相手はどこにもいない。

    第二次世界大戦の開戦。
    宣戦布告の手交が遅れ、結果的に卑怯な奇襲になってしまった真珠湾攻撃。
    しかし、当時の駐米大使館員の職務怠慢を責める者はひとりもおらず、戦後も誰ひとり責任を取ってはいない。
    上層部が考え出した「特攻」作戦。
    歴史上に残る非人間的で狂った作戦だったと思う。
    国民の命をないがしろにする国家に未来はない。
    国とはいったい何だろうか。「一億総玉砕」という言葉が終戦間際には使われていたらしい。
    軍部は何を考え、日本にどんな未来を見ていたのだろう。

    平和な時代に育ち、戦争のことを何も知らないままに机上の理論だけで特攻の人たちを「テロリスト」だと言いきるジャーナリスト・高山。
    せめて、少しはその目と耳で取材をしっかりとしてから言ってほしいと思う。
    当時の新聞は大々的に紙面を使い、戦争賛美への素地作りに大きな役割を果たした。
    国民を煽り、ある方向へと誘導していったのは他ならぬ新聞社ではなかったのか。
    当時手紙類には上官の検閲があり、遺書さえも例外ではなかった。
    戦争や軍部に批判的なもの、軍人にあるまじき弱々しい内容は許されなかった。
    だからこそ、遺される者への思いを行間に込めて書いたのだ。
    「喜んで死ぬと書いてあるからといって、本当に喜んで死んだと思っているのか」
    高山の言葉に激怒する武田はその心は高山には届かない。
    「喜んで死を受け入れる気のない者が、わざわざそう書く必要はないでしょう」と切って捨てる。
    思いやりのない人というよりも、想像力・共感力がないのだろう。
    ほんの少しでも当時の状況をきちんと調べる気があったら、死に臨んだ人たちがどんな思いで飛び立っていったか想像してみればわかることだろうに。

    組織の末端にまでくだらないヒエラルキーがあったと言われている日本軍。
    その中で、いったい誰が「特攻などに行きたくない」と言えただろうか。
    そもそも「特攻」のようなものが戦略として認めた時点で、軍の最高幹部たちは指揮官としての資格を失くしたのだと思う。
    想像しようにもあまりにもすごすぎて想像出来ない。
    もしもいま、見上げる空に敵機がいて攻撃を受けたとしたら。
    そしてそれが、毎日のように続いているとしたら。
    遠い昔の話ではない。
    その時代を生き抜いてきた人たちが、実際にいまも生きているのだから。
    真っ向から戦争反対を唱えている物語ではない。
    けれど、戦争の残酷さや悲惨さは十分に伝わってくる。
    そこから何を汲み取り何を感じるのか。
    それは読者にまかされている。
    撃墜された特攻機から回収された宮部の遺体。
    その胸にあった写真を見て、故郷に残してきた家族に思いをはせるアメリカの兵士たち。
    とても印象に残った場面だった。
    立場の違いはあっても、どちらの兵士にも家族があり愛する人がいて、無事に帰ってくることを信じて待っている。
    本当に戦争は残酷だ。

  • 読んだ。

    たまたま会社のそばのtsutayaで、映画の予告編をモニタで流していて、それを見ていたらジーンとして映画を観たくなり、映画を観るなら先に原作を読むか!と、つい乗せられて買った。
    百田尚樹は「錨を上げよ」を読んで、それが素晴らしくよかったし、私の好きな小説のベストテンに入っているし、それはもう本当に胸を打つ小説だ。しかし、「永遠の0」は何となく手が伸びなかった。売れすぎていたからかもしれない。

    読んだらやばかった。
    感動のハンマーがガツンガツンと何度も心を叩くから、涙をこらえるのが大変だった!

    太平洋戦争ってたかだか70年前の出来事なんだよなあ。特攻兵器「桜花」のことは何となく聞いたことがあったけれど、その実態をこの本で初めて知った。自分の無知が恥ずかしい……
    人を人だと思わない、悪夢のような作戦が本当に遂行されていたことに改めて思いを馳せるよいきっかけになった。

  • 百田尚樹の文章は簡潔すぎるし、筋もシンプルで、伏線もひねりもトリックも、これといったものは何もない。
    でも、これだけ見せつけられたら、もう何も言えない。

    特攻のパイロットは天皇陛下万歳の異常な殉教精神をもったテロリストだったのか?
    そんなことはない、と思う。
    戦時中という異常な状況の中でたまたま狂気に陥っていたのか?
    そんなこともないと思う。

    ただ、普通の人間が、必死で生きていると、死ぬことでしか全うできない人生がたくさんあったのだと思う。
    結局、圧倒的な戦争という災禍に比すれば、戦後の思想なんて左翼も右翼もハナッタレの甘えた寝言にしか思えなくなる。
    戦争反対も軍隊礼賛も、のうのうと言ってられたもんではない。
    人間として生きるということはこれほどの力と犠牲が必要になるのだ。

  • 零戦に乗った男の人生と考えを、同僚、部下、上司、妻、様々な観点から捉えていく小説。

    いまの日本企業においても大切な示唆があると思う上に、戦争のことは知っていなければならない点において、いい本。

    感銘を受けた示唆は…

    1.「生き抜く」というひとつの信念を貫いたオトコであっても、捉える人や立場によっては、賛否両論は必ず生まれるという点。

    2. 「生きる」「死ぬ」を真剣に考え抜き、自らで納得させ、行動してきた人達がいたからこそ、今の日本があるという点

    3.信念を貫くことが何を意味し、どんなハードルがあり、それが本当の信念なのか、ゆがんだ信念なのか、理解するのが難しいことがわかる点

    4.日本組織の成り立ちと弊害

  • 宮部さんは小説の登場人物に過ぎませんが、彼と同じように、あの時代を戦った一人一人にそれぞれの人生があり、愛する人や帰りを待つ人がいたのだろうと思うと、胸が張り裂けるようでした。つらい現実を知るのが恐く、日本の歴史から目を背けていた自分を恥ずかしく思いました。考えを改める機会を与えてくれたこの本に感謝しています。

  • 夢中で読破した。
    全日本国民が読んだ方がいい。

  • 久しぶりに星4つをつけました。

    戦争で亡くなった実の祖父の足跡を求めて、かつての祖父の戦友たちを訪ねて歩く姉弟の話。

    中盤を過ぎた辺りから、読むたびに涙を堪えるのが困難になってきました。
    電車の中で読む本じゃない。

    「生きたい」「生きて欲しい」そんな言葉を口にすることも許されなかった軍において、それを口にし、限界まで実践した男の話。
    生への執着が軍部でタブーだったのは、それがいかに叶え難い願いであるかをみんな知っていて、その思いを抱きながら現実に対峙するのがどんなに辛いことかわかっていたからかもしれない、と思いました。

    「命に変えても守る」というのはとてもポピュラーな日本語表現だけど、それは、「自分も守って相手も守る」を諦めている表現だと思います。
    不可能に思えるほど難しいから、不可能だということにしてどちらかをとる。
    自己犠牲よりさらに高次にある選択肢は、選び取るのは本当に難しいし、勇気がいる。
    それを、選んで闘った男の話。

    ふたりに本当の祖父の存在を語ったときのお祖父さんの気持ちを考えると、また涙が出ます。
    記憶を共有してきた妻が亡くなった時、誰かに知っていてほしくてたまらなかったんだろうなぁ…と。


    ただ、戦争賛美の方向にはいってほしくないなと思う。
    軍部の否定も不条理もたくさん描かれているけれど、だからこそ、「あの作戦さえ成功していれば勝てていたかもしれない」「戦士は立派だった」そんな文言は、文字通り受け取られれば恐ろしい言葉だと思う。

    もし日本兵がより美しい作戦を実行していたら、もし判断の誤りがなく勝利していれば、現実はベターなのでしょうか?
    …死ななくてすんだ日本人の数だけ、アメリカ人が亡くなっていただけです。

    空の、一対一の真剣勝負の下では、降り注ぐ爆撃になす術もなく死んでいった人もいます。

    極限での人の輝きは確かにはっとするほど美しいけれど、代償の大きすぎる美ではなく、人を幸せにすることで、今自分がどれだけ美しい人間であれるかを考えたい。

    主人公の選択は、祖父の人生に比べて見劣りすることも些少であることも決してない。
    現代が過去よりくすんでいることもない。「今の若者は」って言うから、若者は自尊心を失っていくんだと思う。
    平和を維持してる今の人たちの方が美しいと思う。

    彼らが渇望をふつふつと滾らせていた平和を、守る強さが美しいと思う。

  • 震えた。
    感動したのか、悲しかったのか、理由はわからない。
    戦争を題材にした小説なのに、泥臭くなく、清く美しいと思った。

    人間一人一人が生きた証、思いが、克明に描かれている。

    どんな言葉を紡いで感想を書けば良いのか、今の未熟な私にはわからない。

    ただ、一つだけ言えるのならば、
    読んで良かった。
    この本に出会えて良かった。

    素直にそう思えます。

  • 著者の心の叫びが聞こえてくるようです。

    太平洋戦争を時系列で追うなかで、徐々に明らかになっていく一人の戦闘機乗りの人間性と想い。戦争とは、命を奪い合うとは何なのか。そもそも「命」とは何なのか。問いかけられながら読み進める程に、そこから伝わる熱く、悲しい、そしてやりきれない感情のさざなみに絶え間なく心がゆらされます。



    「死ぬのはいつでもできる。生きる為に努力をすべきだ。」


    しかし、その努力することすら叶わない人々が今もいます。なによりも尊いはずの「命」が晒される不条理。場所や形を変えて今も存在するその現実から目を逸すことは私たちには許されないのかもしれません。


    「感動的」という言葉では飾りきれないほどの、美しすぎる作品です。

  • 日本人なら読め!です。
    百田さんの本は起承転結がハッキリしていて好み。しかもどれも読み易いのが凄い。エンタメのなんたるかという理解が高く、どう表現したら伝わるかを知り尽くした書きぶりだと思う。小学生でも飽きずに読めるだろう。どれもスッキリする。初めて靖国神社に行った。無知は罪。毎夏読みたい。

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著者プロフィール

百田 尚樹(ひゃくた なおき)
1956年生まれ、大阪府出身の放送作家・小説家。『探偵!ナイトスクープ』の放送作家として活躍。
50歳の時にはじめて執筆した『永遠の0(ゼロ)』で作家デビュー。ヒット作となり、映画化されている。
ボクシング青春小説『ボックス!』が第30回吉川英治文学新人賞候補、第6回本屋大賞の5位に選出され、映画化もされた。『海賊とよばれた男』で2013年本屋大賞大賞受賞。コミック化、映画化された。

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