永遠の0 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
4.42
  • (8998)
  • (4586)
  • (1542)
  • (298)
  • (107)
本棚登録 : 38904
レビュー : 5384
  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062764131

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  •  ひとりだけ特攻を志願しなかった宮部に免じて、この作品への大絶賛の嵐の中で異を唱えることを大目に見てやってください。それと、別に作者のことが読む前から嫌いだったわけでもありません。ただこの先はとてもネタバレであるし、感動した人の興をそぐのは本意ではないので、続きは自己責任で読んでください。長文だよ!













     たしかに感動はできる。
     この作品を読んで、なんとも思わない日本人はいないだろう。けれどもそれは作者の力であるというより、史実と、それが記されていた参考文献の力だろうと思う。
     あえて作者の力を褒めるならば、たくさんの参考文献をうまくまとめたことだし、本筋から脱線したエピソードも戦争を知らない世代が物語に入っていくためには必要だったと擁護できる。わたしは無知で、ここに書かれていた太平洋戦争前後にまつわる様々なエピソードには知らないものが多かった。
     けれども、そこに作者が加えた斟酌や創意工夫が少なすぎるのではないだろうか? 太平洋戦争という歴史上の大事件について、個人や団体が自ら骨を折って史料・資料・証言を集め、分析を加えて著述した本があって、それを読んだ作者が自分に必要な部分を孫引きしてまとめたような、お手軽な感じがする。
     そもそもこういった太平洋戦争パートはほとんどが老人の一人語りによるものだ。どの老人も異様に硬い言葉で話し、豊富すぎる知識を持つだけでなく、人名や階級まできっちり覚えているのは不自然すぎる。参考文献を読んだ事はないけど、安易に借用しているだけのように思えてならない。
     小説家の仕事はそれを血の通った語りに生まれ変わらせることであって、「全ての日本人に知ってもらいたい!」と、どさくさに紛れて自分の主張を突っ込むことではない。

     次に作者の創作した部分について。あれほど強烈に生への執着を見せていた宮部が、生き残れるチャンスを自ら棒に振った理由に納得できない。心情的には理解できるけど、操縦技術の未熟な大石が不時着に失敗したら元も子もないじゃないか。直掩任務で撃墜されていく教え子達を見て変節したというほうがまだよっぽど理解できる。宮部をどこまでも聖人に仕立てようとして、最後の最後に気持ち悪さが残ってしまった。

     なにより納得がいかないのは、健太郎の姉・慶子である。ちなみにわたしとだいたい同い年。
     彼女は「仕事を自由にやらせてくれそう」「本を出すという夢を叶えてくれそう」という打算的な理由で、愛してもいない高山との結婚を考える。これでは真剣に将来を考えているどころか、ただの枕営業でしかない。どうやら作者にとって、女性とは男性の承認を得てはじめて外で働くことができる存在らしい。
     その後、慶子は本命の藤木に高山との結婚をほのめかして、藤木が自分に結婚しようと泣きついてくるが断ろうとする。それを「藤木さんに謝れ」と弟(※ニート)に説教され、祖父の話に感動してやっぱり藤木と結婚しようと決める。徹頭徹尾、男性の言葉や生き方に右往左往する主体性のない女なのだ。お前なんかにフリーライターがつとまるかばーかばーか!
     健太郎が夢や目標を持てない若き現代男性の代表であり、慶子は仕事と結婚の間で迷う若き現代女性の代表として描かれているはずだ。この本を読んで作者のことがちょっと嫌いになった。いみじくも解説の児玉さんが書いているように、「作者の全人格が投影され」、女性蔑視というか、女性への無理解が滲み出た作品となっている。
     戦争の資料を集める前に、Anecanでも読んでろ!


    以下最高にどうでもいい疑問

    ・インタビューするための東京からの遠征費(二人分)はどこから出したんだろう。愛媛、和歌山、岡山、鹿児島、その他関東近郊。交通費だけで軽く20万以上かかる。

    ・ヤクザの景浦さんは「友達イラネ」とか言ってるわりにちゃっかり戦友会に入ってる不思議。そして松乃を助けにいっちゃう。ツンデレなのか?

  • 百田尚樹が好きではない。
    なので、映画は観たが原作は今まで読まずにいた。
    しかし、この夏、太平洋戦争の体験談に触れたのをきっかけに映画のロケ地にもなった筑波海軍航空記念館にも足を運び、やっと、この原作を読んでみようと思った。
    この作家が好きではない理由が、文章は上手でも、中身がないからであり、ただ史実に基づいた話としては読めるけど、心に響くものがない。「海賊と呼ばれた男」も出光の歴史に興味があって、読んだだけで、「中身がない」印象は強烈だった。そして、この作品も然り。
    でも、ただ史実を復習する意味では、それなりに役に立つと思うが、特攻隊員を「テロ」呼ばわりするなど、左翼的な内容にはただただ腹が立つ。
    戦後72年が経って、戦争を経験した人の話を聞く機会がほとんどなくなって来ている。そんな中で後世へ戦争を語り継ぐ重要さを考えて欲しい。この作品は高校生への読書感想文のおすすめの本として、取り上げているサイトもある。
    しかし、この作品の中に描かれていることが、本当の戦争ではないこと、この作品はあくまでも史実に基づいたフィクションであることを忘れないで欲しい。

  • 読みたくなかったけど、薦める人がいて、断るわけにも行かないので読んでみた。
    読んでみた結果を素直に言うと、思っていたほど悪くはなかった。海軍航空隊の歴史がテンポよくまとめられていて、語り手が俯瞰的で戦史的な視点を持ち過ぎなのはどうかとは思うけど、まあしょうがないといえばしょうがない。

    しかし小説としてはレベルが低い。稚拙だ。

    嫌味ったらしく登場させている某リベラル新聞の記者は、設定が浮きすぎて悪役としても魅力がない。作者の気持ちを作中人物に代弁させるのは小説だから当然ありだけど、悪役だからこそもっとちゃんと書いてくれ。これでは中学生の書いたオレツエー小説と変わらない。

    その新聞記者と、主人公の姉と、司法試験に落ちて田舎の鉄工所を継いだお兄さんのエピソードはまるごと不要。なんのためにあるんだこれ?

    そもそもニートの主人公の狂言回しという舞台設定そのものに物語的な必然性がない。それがないから、最後に司法試験にやる気を出すとかみたいなどうでもいいサイドストーリーを作るハメになる。
    あと、人物描写の甘すぎる「ヤンキーの孫」など、人物描写が下手くそな割には、人数ばかりだして消化できていない。

    なんでこんなわらわらと不要な人物を出して贅肉をつけたかというと、最後の「どんでんがえし」のためなんだろう。一応ネタバレなのでここでは書かないけど、これ、どんでんがえしとして破綻してるよ。なにこれ?
    なにも登場人物の行動や心理を、すべて懇切丁寧に書く必要はないけど、そこがしっかりしていないんだったら、そもそも主人公の孫が狂言回しをしている、大前提そのものが不要じゃないか。

    この小説は、主人公をはじめとする現代の人物の描写はまるごといらない。あとオチもいらない。
    単に証言集として淡々と書いていけばいいだけだと思う。そのほうがよほど引き締まった。戦史そのものはちゃんと調べて書き込んでいるし、特攻隊に対する評価も妥当なだけにもったいないと思う。

    もったいない、は言いすぎか。

  • ここまで多くの人を感動させて、売れているということは、今作が素晴らしい本だという揺るぎない証拠だと思うけど、戦争を理解する教科書にはなりえなくて、あくまで今作は感動するために脚色されたエンターテイメントだと思います。これで戦争のことは全く分からないし、戦争が知らない子どもが読むべき本でもありません。逆に読まないで下さい。でも、これを機に、少しでも、戦争に関心が生まれれば、沖縄や広島や長崎などの戦火に巻き込まれた地に訪れ、そこで博物館を見学して、出来れば、戦争体験者の話を聞けばいいと思います。そこでは、たぶん、じゃなくて絶対感動出来ない。ただ恐ろしいだけです。でも、目を逸らしてはいけなくて、それは日本が起こしてしまった嘘偽りない恐ろしく、恥ずかしい過去です。ここで、大いに苦しんで、もう一度戦争について考えればいいと思う。集団的自衛権を容認すれば、戦争が始まるっていう考えは飛躍し過ぎた考えですが、確実に戦争が出来る国に近づいています。70年守り続けた偉大なる名誉を自国の利益ということだけで簡単に手放していいのか。大袈裟ではなくて今、日本人の真価が問われていると思います。

  • 第二次大戦のことをあまり詳しく知らなかったからか、内容は面白く感じた。
    ただその面白さをいちいち「姉」がぶち壊しにする。
    「ひどいわ!」とか言って涙を流す場面が多々あるけど、そこまで感情を昂らせられるような内容じゃないから一気に興醒めする。「永遠の0」なのは姉の脳みそのことちゃうか。ていうか姉の人物像の創り方が雑過ぎ。

    面白くないとは言わないけど、この本がこんなにも売れるのが不思議。

  • 歴代文庫本売上数1位になったんですか、この小説。結論、言うほど大した作品じゃありません。百田氏が歴史認識や政治問題について積極的に発言することもあって、歴史認識との関わりで言及されることが多いのですが、それ以前に小説として凡作です。これを絶賛しているようなら、横山秀夫の『出口のない海』を読んだ方がよほどいい。

  • 戦争は、『悼む』ものであって『感動』するものではないと思う。

    この本の功績は、多くの人が再び戦争を知ろうと感じたきっかけになったことだと思う。この本だけで終わらず、多くの人に戦争に関わる本を読んでほしい。

    個人的な感想としては、最終的に特攻を選んだ宮部の生き方を美化、正当化し、感動させようとするのが、『反戦』を訴えるべき本来のスタンスと相反しているように思えて好きになれない。

  • 何故こんなにもてはやされているのか理解に苦しむ…。小説としては、あまり評価できない。
    小説として言うなら、確かに宮部さんの散り際は切ないけど、他キャラが雑すぎ。作者の言いたいこと言わせてるだけで全然入り込めん。
    小説形式で戦中にあったことを知る本としてはいいけどね。どの程度が史実だったのか比較できる知識もないので鵜呑みにも否定もできないけど。
    うーん。2に近い3。小説としては2。

  • 0(ゼロ)というのは零戦のことである。そして、物語に登場する零戦パイロット宮部久蔵は非常に魅力的な人物である。本人は特攻により故人となっているが、その人物を知る人たちが語る人物像は、強く、清く、あまりにせつない。

    しかしながら、私自身はこの物語にイマイチ感情移入できなかった。というのも、「現代を生きる主人公に対し当時を知る人物が回想を語る」という形式で語られるこの物語は、あまり都合がよすぎるからである。

    この語り手たちは偶然出会った順に宮部の足跡を追うように語り、体験談以外の戦争の概要を長々と説明する。しかも、”後で知ったことだが”とか単純な気持ちではなかったが今は説明できないとか、如何にも現代から調べて想像したという感じと、それを先回りして言い訳する賢しさが見え隠れしている。

    そして、現代側に登場する人物は無駄に多く、魅力もない。また、何人も出てくる語り手たちも、全員が口調を変えただけ同じ人物のような深みしか持っていない。
    このあたりが非常に興をそがれた原因であると思う。

    宮部とそれを現代において語ることのできる人物を一人。それに作者が史実を示すだけで良かったのではないかと思う。それができなかったのが作者の力量なのか、いろいろ盛り込みたかったからなのか知るよしもないが、不満の残る作品であった。

  • 文章が素人っぽくて感情移入出来ず。使い古されたテーマなのでなかなかなんとも。
    終始「感動しろ、感動しろ」と迫ってくる感じが個人的にはNG。

著者プロフィール

百田 尚樹(ひゃくた なおき)
1956年生まれ、大阪府出身の放送作家・小説家。『探偵!ナイトスクープ』の放送作家として活躍。
50歳の時にはじめて執筆した『永遠の0(ゼロ)』で作家デビュー。ヒット作となり、映画化されている。
ボクシング青春小説『ボックス!』が第30回吉川英治文学新人賞候補、第6回本屋大賞の5位に選出され、映画化もされた。『海賊とよばれた男』で2013年本屋大賞大賞受賞。コミック化、映画化された。

永遠の0 (講談社文庫)のその他の作品

永遠の0 (ゼロ) 単行本 永遠の0 (ゼロ) 百田尚樹

百田尚樹の作品

ツイートする