永遠の0 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 38900
レビュー : 5384
  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062764131

感想・レビュー・書評

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  • 一言、よくできている。

    書きたいことを書いてあると思う。
    ターゲットは日本語を読めるひと全員だと思う。
    主人公というよりも語り手の青年、
    その姉に求婚する新聞記者がうまいこといやらしい。

    戦後の新聞記者のステレオタイプにきちんと表現されている。
    もっとも新聞記者というよりもメディアのステレオタイプと言えるかな。
    いい感じで正論だと本人は思い、信念をもつ、扱いづらい人となっている。

    これはメディアのステレオタイプといえるかもしれないが、
    国民の意思と言っていいかもしれない。

    本作品の特に注目する点は

    一人一人が生身の人間であるということだ。
    だから、登場人物すべてに一理ある。
    すべてが納得できる。

    十人十色なものですから、全く同じ人なんていないわけですが、
    自分のなかに、そういう考え分かるよねと思えるのです。

    だから、戦争はつらいという感想も違うんだが、
    なかなか表現しにくいね。

    最終章の12章は小説としてよくできたフィクションになっているが、
    これはおまけでしょう。作品を面白く仕上げるために必要な章ではあるが、

    戦争にたいして考えられることはそれまでに表現されている。

    戦争ものはいつも同じ感想なのですが、
    人が人を殺めなくていいのに、
    なぜそんなことをと、思いますね。

  • 賛否両論ある作品だけれど、戦後60年(本作品初版発行時)に多くの人に戦争について考えされるきっかけをつくったという意味では、素晴らしいミリオンセラーだ。

    夢を見失った現代の若者が、実の祖父である特攻で亡くなった一人の海軍航空兵の生き様を、生前の彼を知る人に聞き歩き、浮き彫りにしていくというストーリー。

    祖父について調べ終えた若者の変化からは、人権が守られ自由な今を生かされている現代が貴重であることを認識し、懸命に生きよというメッセージを感じた。

    本文の相当を占める戦時下の航空兵の熾烈な環境描写からは、百田氏本人の言う「特攻を断固否定」「反戦」のメッセージも受け取ったが、一方で違和感もある。

    確かに反戦ではあった。
    ただ、こうすれば勝っていただの、上層部の判断が間違っただの、大本営の戦略のずさんさへの批判があまりに多すぎる。戦争自体への否定が、薄れてしまうのも無理はない。

    本作品への批判は、パクリ疑惑や、特攻美化というものもあるが、わたしは元ネタと言われている書籍を読んでいないし、戦争についても詳しくなかったため、その点はわからない。

    わたしはこれまで不幸な話や恐ろしい話、怖い話が本当に苦手で大嫌いで、小さい頃からずっとずっと避けてきた。

    「火垂るの墓」も通して観れたことがないし、例えフィクションでも戦争を題材にした話は読めない・観れないだった。

    けれど、数ヶ月前から急に戦争の史実に興味を持って、「積ん読」だった『永遠の0』もその心情の変化から読むに至った。

    亡くなった祖父は、幼かったわたしに何度か戦争の話を聞かせてくれようとしたけれど、わたしは泣きながら逃げて、結局一度も耳を貸さなかった。まさか後悔する日がくるとは思わなかった。

  • 百田尚樹の文章は簡潔すぎるし、筋もシンプルで、伏線もひねりもトリックも、これといったものは何もない。
    でも、これだけ見せつけられたら、もう何も言えない。

    特攻のパイロットは天皇陛下万歳の異常な殉教精神をもったテロリストだったのか?
    そんなことはない、と思う。
    戦時中という異常な状況の中でたまたま狂気に陥っていたのか?
    そんなこともないと思う。

    ただ、普通の人間が、必死で生きていると、死ぬことでしか全うできない人生がたくさんあったのだと思う。
    結局、圧倒的な戦争という災禍に比すれば、戦後の思想なんて左翼も右翼もハナッタレの甘えた寝言にしか思えなくなる。
    戦争反対も軍隊礼賛も、のうのうと言ってられたもんではない。
    人間として生きるということはこれほどの力と犠牲が必要になるのだ。

  • 久しぶりに星4つをつけました。

    戦争で亡くなった実の祖父の足跡を求めて、かつての祖父の戦友たちを訪ねて歩く姉弟の話。

    中盤を過ぎた辺りから、読むたびに涙を堪えるのが困難になってきました。
    電車の中で読む本じゃない。

    「生きたい」「生きて欲しい」そんな言葉を口にすることも許されなかった軍において、それを口にし、限界まで実践した男の話。
    生への執着が軍部でタブーだったのは、それがいかに叶え難い願いであるかをみんな知っていて、その思いを抱きながら現実に対峙するのがどんなに辛いことかわかっていたからかもしれない、と思いました。

    「命に変えても守る」というのはとてもポピュラーな日本語表現だけど、それは、「自分も守って相手も守る」を諦めている表現だと思います。
    不可能に思えるほど難しいから、不可能だということにしてどちらかをとる。
    自己犠牲よりさらに高次にある選択肢は、選び取るのは本当に難しいし、勇気がいる。
    それを、選んで闘った男の話。

    ふたりに本当の祖父の存在を語ったときのお祖父さんの気持ちを考えると、また涙が出ます。
    記憶を共有してきた妻が亡くなった時、誰かに知っていてほしくてたまらなかったんだろうなぁ…と。


    ただ、戦争賛美の方向にはいってほしくないなと思う。
    軍部の否定も不条理もたくさん描かれているけれど、だからこそ、「あの作戦さえ成功していれば勝てていたかもしれない」「戦士は立派だった」そんな文言は、文字通り受け取られれば恐ろしい言葉だと思う。

    もし日本兵がより美しい作戦を実行していたら、もし判断の誤りがなく勝利していれば、現実はベターなのでしょうか?
    …死ななくてすんだ日本人の数だけ、アメリカ人が亡くなっていただけです。

    空の、一対一の真剣勝負の下では、降り注ぐ爆撃になす術もなく死んでいった人もいます。

    極限での人の輝きは確かにはっとするほど美しいけれど、代償の大きすぎる美ではなく、人を幸せにすることで、今自分がどれだけ美しい人間であれるかを考えたい。

    主人公の選択は、祖父の人生に比べて見劣りすることも些少であることも決してない。
    現代が過去よりくすんでいることもない。「今の若者は」って言うから、若者は自尊心を失っていくんだと思う。
    平和を維持してる今の人たちの方が美しいと思う。

    彼らが渇望をふつふつと滾らせていた平和を、守る強さが美しいと思う。

  • FBをしていなければ、こんな大切な本を見過ごすところでした。
    売れているのはよく知っていました。書店に平積みになって派手なポップや推薦文で飾り立てているのを見ると、かえって辟易してその場を通り過ぎる天邪鬼な自分。
    でも、FB友達が手放しで称賛しているのだけは無視できませんでした。そして手にした初めての百田作品。感動しました。
    本書で大きなテーマとなっている「特攻隊」については、高校時代から購読している、やや右寄りの雑誌「SAPIO」でたまに特集を組んでいて、割と予備知識はある方だったと思います。特攻隊員の遺書も読んだことがあります。靖国神社も参拝し、英霊の御霊に哀悼の誠を捧げました。
    それでも本書の感動は変わりません。いえ、特攻隊員の遺書を胸を熱くしながら読んだ経験があるだけに、その感動はひとしおだったかもしれません。
    以下、感じたことを脈絡なく書き綴ります。
    読み進めながら、まず胸躍らせたのは、戦闘機乗りのカッコよさ。これはもう男なら逃れられない魅力なのではないでしょうか。かつて世界最高の戦闘機と言われた零戦をまるで手足のように操り、敵機を葬り去るシーンには何度も快哉を叫びました。
    しかし、戦況が悪化すると、軍事にはド素人の自分でも目を疑うようなバカげた作戦が軍上層部によって次々と立案され、実行に移されていきます。
    人間爆弾「桜花」、人間魚雷「回天」…。
    およそ人を人とも思わない軍上層部には激しい怒りを覚えました。自らの出世のために、みすみす好機を逸する場面も出てきます。では、彼らは無能の徒なのでしょうか。そんなことはありません、れっきとしたエリートです。
    主人公の姉・慶子が語ります。
    「そう。つまり試験の優等生がそのまま出世していくのよ。今の官僚と同じね。あとは大きなミスさえしなければ出世していく。極論かもしれないけど、ペーパーテストによる優等生って、マニュアルにはものすごく強い反面、マニュアルにない状況には脆い部分があると思うのよ。それともう一つ、自分の考えが間違っていると思わないこと」
    たびたび指摘されることかもしれませんが、説得力があります。
    そして、何より許せないのは、彼ら高級エリートたちの中には、戦後も責任を取っていない者が大勢いることです。
    翻って前線で戦った戦闘機乗りの何と清々しいこと。
    特に感動したシーンの中に、戦後、米国で開催された「第二次世界大戦航空ショー」で、かつて戦火を交えた日米両国の戦闘機乗りが再会したシーンがあります。お互いを称え合う場面は深い感動を呼び起こさずにはいられません。
    何だか戦争を賛美しているように受け取られる方もあるかもしれませんが、それは私の本意ではありません。私は「平和ボケ」「一国平和主義」と罵られても、平和な社会を希求します。
    あの戦争で、特攻で散って行った方たちの思いも同様だと推察します。
    実は昨年から今年にかけて戦争経験者2人と会い、取材しました。
    一人は海軍工廠というところに配属され、後にあのトラック島で任務に従事していました。もう一人は海軍の通信員です。
    2人からは貴重な証言をいくつも聴きましたが、それをいちいち書くことはここではしません。私が強調したいのは、2人とも「戦争は二度としてはいけない」とはっきり口にしたことです。
    翻って今の政治状況、世相はどうでしょう。好戦的なムードが日に日に強まっていると感じるのは自分だけでしょうか。「普通の国」になるということは、戦争ができる国になることと同義です。
    一方で、ためにするような議論ばかりしている左翼にもくみしません。身体を賭すような真剣な言葉を、彼らの口から聴いたことがありません。
    ですが、今の好戦的な政府よりは、実害がないだけまだましかもしれません。
    いみじくも、その元海軍通信員は言いました。
    「今の政権を見ていると、戦争を知らない人たちばかりなだけに危なっかしい」
    勘違いしてもらっては困ります。元海軍通信員は筋金入りの保守派です。
    私も彼の意見に同意します。
    話がやや逸れました。
    戦前には勇敢に戦った兵士たちを「英雄」と持て囃し、戦後は「職業軍人」などと軽蔑交じりの呼称で呼ぶ人たちの姿には、失望を覚えました。国のために戦った人たちを蔑むすべての人たちを、私は軽蔑します。
    英霊に哀悼の誠を捧げるとともに、国のために戦った男たち、銃後を守った女たちに深い感謝の意を表し、不戦の誓いを新たにした読書体験でした。

  • 独特の文章の癖が若干読みづらく読み終えるのに1年以上かかったけど、読んで良かった。現代を生きる、日本に縁がある人は必ず読むべき本だとも思った。
    歴史モノが苦手な私もあまり抵抗なく読める。それは、この物語の中で人間が生きているからだ。
    宮部少尉は血の通った人物で、彼の生き様がとてもリアルに書かれている。誰もが彼に出会うべきだと思う。

  • 2018.9.10
    感動した。知らなかった事をたくさん教えてくれた。
    作者の人柄をネットニュースなどで知っているので、作者の思惑も多分に含まれてるように思いましたが、戦争の事を知りたいと思わせてくれた良い本だった。
    戦争を知り、繰りかえなさい為に現在の政治も知り、選挙に行く。それが、戦争で亡くなった方達への礼儀だと思った。
    戦争系の本は初めてだったが、こんな読後感も初だった。好みではないが立派なジャーナリズムを感じました。

  • 戦争の話題にうんざりしている人におすすめ。
    永遠の0は実戦や軍の実際を書いた部分が大半。だけど、戦争っていうテーマに嫌気が差してる私でも最後まで読めたのは、言葉の端々に人間の生が溢れ出てたからだと思う。

    命を懸けた戦いがどれほど極限だったのか、どんな精神状態で戦い抜き生き抜いていたか、何を思って戦っていたのか。
    平和な私には理解できないと思う。だけど涙で片付けたくないと思った。日本人ていうアイデンティティを持つ限り、意識しなくても背負ってるんだと思う。過去の日本人の、思いとか、覚悟とか、そういういろんなものを。意識しなくても、背負って、考えて、創っていくものなんだろうなと思った。

    どうして彼らは戦えたのか。この人のためになら死んでもいい。それと同じ強さで生きたいと思う。だから戦える。戦おうと思える。意気込める。
    戦争は人を死なす、だから反戦。それは正論だし、覆されるものじゃない。だけどそんな条理を超えたところで彼らは生きていて、「国が滅ぶかどうかという戦い」をしていた。そのことがすごく迫って感じた。彼らは私と同じように生きていて、だけど全く違う常識に囲まれていたから、私は彼らと同じようには生きてないんだろうな。

    戦争小説から、戦争の悲惨さや反省や反戦のメッセージを読み取るのもいい。だけど永遠の0はそれだけでは許してくれない。今私が日本人としてこの国に生きているということを、根底から考えさせられる。アイデンティティを揺さぶられる。私の軸はどこにあるのか問われる。昔日本人としてこの国に生きていた彼らと比べられる。
    私はどんな精神状態で生きているんだろう。

  • この小説のテーマは「約束」です。
    言葉も愛も、現代(いま)よりずっと重たかった時代の物語です。
    Amazonに掲載されている筆者のコメント より

    賛否両論ある本であるが、経験した人にとっての真実、が含まれていると思う.戦争を経験していない身としては、想像するしかない世界であるが、若くして特攻隊員として死んでいった方々のことを考えると、苦しい気持ちになる.先の戦争がどう評価されるのであれ、その戦いの後に今の日本はある.
    筆者のコメントで、この小説のテーマは「約束」とあるように、戦争中に交わされた「約束」があったからこそ、主人公たちの今の平和な生活がある.戦争に行った方たちがみな、このように語る人たちではなかっただろう.伝わらなかった約束がたくさんあって、その後に自分たちは生きているのだろう.

  • 故児玉清氏の書評に惹かれて購入。

    フリーライタの姉慶子の依頼により、ニートの青年健太郎は、戦死した実の祖父の為人を知るために祖父の戦友を訪ね歩き、祖父の愛の偉大さを知る。
    健太郎と慶子と慶子の恋人の絡む現在と、祖父の戦友の語る回により戦中が織り重ねられストーリーは進む。

    戦中の出来事はフィクションが折り込まれているものの、史実をベースにしていることから重みがある。
    一方でニートの弟とフリーライターの姉という現在の設定も姉と姉の恋人のストーリもあまりに軽薄である。
    これは穿った考えだが、我々の祖父母の世代が戦中を必死に生きてきたに対して、わずか70年足らずで戦争のせの字も知らなず平和に浸りきった現在の青年像を映したのであろう。

    本書を読み、祖父母の代の戦争史実を今記録しなければ、永遠にその機会を失ってしまうことに気付かされた。

    妻と子のために必死に生きて帰ろうとした宮部久蔵氏の姿と最期に、涙を留めることはできなかった。
    しかし史実を一人の人物で無理やり繋ぎ合わせた感と現在の軽薄感は否めず、星4つ

著者プロフィール

百田 尚樹(ひゃくた なおき)
1956年生まれ、大阪府出身の放送作家・小説家。『探偵!ナイトスクープ』の放送作家として活躍。
50歳の時にはじめて執筆した『永遠の0(ゼロ)』で作家デビュー。ヒット作となり、映画化されている。
ボクシング青春小説『ボックス!』が第30回吉川英治文学新人賞候補、第6回本屋大賞の5位に選出され、映画化もされた。『海賊とよばれた男』で2013年本屋大賞大賞受賞。コミック化、映画化された。

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