永遠の0 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
4.42
  • (10087)
  • (5173)
  • (1756)
  • (355)
  • (120)
本棚登録 : 49725
感想 : 5850
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062764131

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 凄い作品だった。
    間違いなく自分が今まで読んだ作品の中で最上級の作品であるだろうと感じている。
    はじめて喉元まで込み上げてくるような苦しさも味わった。

    戦時中故の深く感じさせられる「生と死」、そして「愛」
    80年位前の日本はこんなにも「生と死」が生活に隣接していて、だからこそ「愛」の形も純粋で深く重い。

    自分自身を見つめ直す機会もくれた。
    今日という日の意味や明日という日の大切さ。周りにいる人達の大事さ。
    気づかないというより気づこうとしない事の多さが嫌という程感じさせられる。
    もう少しだけ噛み締めながら生活していかねばと感じた。

    「平和」と「戦争」
    賛否分かれるテーマではあるが、平和の中にも気持ち悪いくすぶる違和感のような気持ちがあるのも事実。戦争の中にもこの作品のように深い純粋な心があるのも事実。どちらも甲乙つけるものではないのだろうと考えた。

    こうして読後、感想を書いてはみているもののなんだか上手く書けない。
    自分の言葉や感情に深い純粋さが足りない事に気づいているからだと思う。


  • 映画化された年に読み、何年振りかの再読です。もうこれは泣きます。大号泣です。内容がわかっていても泣かずにはいられません。

    最近修学旅行ぶりに、広島の平和記念館、原爆ドームに足を運びました。そしてふと読み返したくなったのです。フィクション小説なのに、永遠の0の宮部久蔵という人はね…と、史実みたいに語りたくなってしまいます。彼たちに思いを馳せ、想像しますが、決して現代を生きる私たちには到達できない境地でしょう。そして「それが普通」の世に産まれたら、世が言う普通を受入れ、そこにそれぞれの意味を見い出すことができるのが人なのだと思うと、人って本当に凄いとも思いました。

    日本軍が自国の兵隊を粗末に扱い、人の命よりも航空機や武器を温存した話。人が操縦するロケット爆弾の桜花。アメリカの博物館に展示されていた桜花の名前がバカボム、すなわちバカ爆弾であったという…。人間魚雷の回天。脱出装置はなく、一度出撃すれば攻撃の成否にかかわらず乗員の命はなかったという。死ぬための訓練…。こんなモノを考えた人は同じ人であろうか?自分と身内のこと以外は同じ人とすら思っていないのでしょうか。兵隊の命を大事に扱ったアメリカ軍との対比がなんとも言えない気持ちになります。ですが、発案した方たちがまずは乗って試したと言う史実があれば、前言撤回しなければならない感想です。

    またメディアの欺瞞や、責任を取らないエリート層が作中でも描かれている。メディアと官僚の組織体制の良くない部分は現在も昔と変わってないのかな?と思わされます。大衆を動かしたい方に動かすにはどうしたって仕方のないことなのかもしれません。第九章カミカゼアタックの武田貴則と新聞記者のやり取りは何度も読み返したい。

    永遠の0の映画公開が2013年なので、この小説を初めて読んだのがもう11年も前になります。当時今よりも遥かに戦争や歴史に対して無知だった私が映画を観て、原作を読み、もっと知らなければと思ったことを思い出しました。エンタメ小説といえど学びの一冊です。宮部久蔵、景浦介山、大石賢一郎、みんなかっこよすぎました。

    • hibuさん
      あささん、おはようございます!
      この作品映画にもなって内容もわかってるはずなのに泣けますよね!
      ウチの息子の再読率NO.1の作品です^_^
      あささん、おはようございます!
      この作品映画にもなって内容もわかってるはずなのに泣けますよね!
      ウチの息子の再読率NO.1の作品です^_^
      2024/03/16
    • あささん
      hibuさん、こんばんは!
      ですよね( ; ; )私も何年後かにまた読みたいです。息子さんと本のお話を共有できるの素敵ですね。憧れます。
      hibuさん、こんばんは!
      ですよね( ; ; )私も何年後かにまた読みたいです。息子さんと本のお話を共有できるの素敵ですね。憧れます。
      2024/03/28
  • 特攻とは、非人道的な恐ろしい作戦。

    特攻要員は本当に死を恐れなかったのか—。

    改めて戦争について考えさせられる作品。




    私は『永遠の0』を実話だと思って読んでいました。

    しかし違ったようで、特攻作戦に関わった実在の人物のエピソードをオマージュしている小説です。

    大筋はフィクションですが、登場人物は実在するので、特攻隊を中心として見た太平洋戦争の様子を知ることができます。
    (小説であるという事を忘れてはいけない。真実を知りたければ記録を読み学ぶべし。)

    太平洋戦争を生き残った零戦パイロット、坂井三郎中尉の実戦の記録『大空のサムライ』が元になっているようです。


    死んだ実の祖父の生涯を調べる事になった主人公健太郎。

    戦友会で祖父の事を知っている元軍人達から祖父の素顔が語られる。

    「臆病者」と言われた祖父が生に執着する理由。

    それは、愛する妻と娘のためだった—。

    ラストは意外な展開でした。


    私は実在の話だと思っていたので、ラストを読んで「あれ?」と違和感を感じました。

    あまりにも出来すぎな展開…。

    フィクションでしたら、納得です。

    泣きました…。
    ラストで…と言うよりは、海軍の特攻隊に対する仕打ちの酷さに涙が出ます。

    軍人達の非人道的な扱いや悲惨さは描かれているものを上回る見方をするとしても、私たちの想像以上に辛い経験であっただろうと思いました。

    戦後民主主義国家となり平和な時代を生きる主人公(健太郎)は26歳。
    特攻で亡くなった祖父(宮部久蔵)の生涯は26年。

    生きて帰りたいと願う宮部の軍人として弱腰な態度に、部下達の評価は冷たい。

    元海軍飛行兵曹長、井崎源次郎が病院で語った話。

    ーーーーー

    「たとえ敵機を撃ち漏らしても、生き残ることが出来れば、また敵機を撃墜する機会はある。しかし—」
    小隊長の目はもう笑っていませんでした。
    「一度でも墜とされれば、それでもうおしまいだ」
    「はい」
    小隊長は最後に命令口調で言いました。
    「だから、とにかく生き延びることを第一に考えろ」
    この時の宮部小隊長の言葉は心の底にずっしりと響きました。
    (本文より)

    ーーーーー

    生き延びなければ無駄死にである。

    祖父の生き方、考え方を知り主人公は成長します。

    日本軍の戦術である特攻は、零戦で突撃するだけではありませんでした。

    人間が操縦するロケット爆弾の『桜花』
    人間魚雷の『回天』
    (回天に関しては最近知りました。この小説ではあまり触れられていませんが、名称は出てきます。)

    よくもこんなに非道な作戦を考えだしたなと思うほどです。
    100%生きて帰れません。
    これらを操縦する為、若い兵士達が一年かけて特訓するのです。

    死ぬための訓練なんて、どんな気持ちか想像もできません。
    当時はそれが当たり前という教育が施されていました。

    特攻も志願という形をとっていましたが、希望しない申請をした兵士は上官に呼ばれ説得されます。
    最終的には半ば強制的に志願兵という事になるのです。

    桜花に関しての作中でのエピソードは心を抉られます。

    (アメリカのスミソニアン博物館に展示されていた『桜花』を見た岡部。
    そこに書かれていた名前は『バカボム』だった。)

    ーーーーー

    「BAKA-BOMB、すなわちバカ爆弾です。私は息子夫婦が隣にいるにもかかわらず、声を上げて泣きました。悔しくて、情けなくて—いくら泣いても涙が止まりませんでした。しかし本当のところは、『BAKA』そのものずばりだったのです。すべての特攻作戦そのものが、狂った軍隊が考えた史上最大の『バカ作戦』だったのです。しかしそれだけで泣いたのではありません。そんなばかな作戦で死んでいった高橋たちが、ただただ、哀れで、哀れで、涙が止まらなかったのです」
    (本文より)

    ーーーーー

    帝国主義思想の当時、反対の声を上げることなんて軍部に反する行為。
    とてもできません。

    酷すぎて泣けてきます。


    私達が中高で教わった『歴史』は、近代になるにつれ大雑把な印象です。

    大昔の歴代将軍名や年号の暗記等は何かの役に立つのでしょうか?
    教員や作家になればもちろん暗記していて当たり前なのかもしれません。
    ですが大抵は役に立ちません。

    時代の流れを知ることは大切ですが、現代に最も近い時代に重点を置くべきだと思います。
    道徳や総合の時間に、学ぶべき事はたくさんあったのでは?と今となっては疑問です。


    この小説は、フィクションという形であっても、特攻隊目線での太平洋戦争の悲惨さが流れでわかる1冊となっています。
    子供達が手に取って読んでくれるなら、エンタメという形であれど、必要なのではないかと思いました。



  • どんなに多くの人から支持されようとも、ベストセラー作品にはなかなか手が出せないたちである。そんなあまのじゃくが一転、何故本書を選んだかというと…テレビ番組で某ミュージシャンがこの作品を絶賛していたことがきっかけだった。何ともたどたどしくグダグダな紹介だったんだが、その熱さが妙に印象に残り、翌日には購入していた。
    生きて帰ると絶えず言い続けた天才パイロットは終戦の年、特攻で命を散らした。実はその人が本当の祖父・宮部久蔵だと知らされた、終戦から60年の夏。司法試験浪人の健太郎とフリーライターの慶子の姉弟は、宮部の足跡を辿るべく、彼を知る人物を訪ねて歩く。
    「今」を生きる若者が「過去」の身内の生涯を探る…正直、ありがちな設定とは思った。だが読み進めていくうち、「今」の場面位はベタでもよいのではと感じるようになった。宮部の旧知の人物達から語られる戦時下の話が大きく比重を占め、その重さ、今更知る当時の過酷さには愕然とする。これまでいくつもの戦争の本を読んできたが、海軍を詳細に描いた作品を読むのはほぼ初めてと言ってよい。真珠湾、ラバウル、ガダルカナル、レイテ…概要しか知らなかった戦いの現実を知り、壮絶さ、理不尽さに体が震えた。空での戦いのすさまじい緊迫感。零戦がどれほど優れた戦闘機だったかも改めて知った。
    読んでいくと、撃墜王と呼ばれた日本海軍の戦闘機搭乗員・坂井三郎など、実在の人物らとの絡みも見られる。まったく違和感がなく読めて、どこまでがフィクションだかノンフィクションだかわからなくなるほどだった。徐々に明らかになっていく宮部の人物像。臆病者と揶揄された彼の信念。天才的な空戦技術。彼の人間性に、読むほどに惹かれていく。それは、宮部との日々を語る元兵士たちもであった。ただただ、目の前の戦いに必死な彼らを襲う数多の悲劇。その都度涙腺は決壊し、時には怒りでページを繰れなかったりもした。「桜花」という人間爆弾は初めて知ったが、その非人間的発想、命をあまりにも軽視した当時の海軍上層部に対し、はらわたが煮えくり返って…何ともやりきれない思いで、読みながら苦しく、猛烈に悲しかった。
    結末に向けての伏線の張り方は見事だ。胸が張り裂けそうに辛かったクライマックスを経て、ラストへの展開はやはりまた涙涙の連続。戦争の悲惨さを伝えつつも、エンタメ作品としてしっかり仕上げたところに、放送作家時代に培った百田氏の底力を実感した。
    文庫売上数で驚異的な数字を叩き出しているようだが、映画公開に向けてさらに数字を伸ばすことでしょう。売れるのも納得です。今出会えてよかったと心から思う。某ミュージシャンに感謝。
    読み終えてから映画の公式サイトで予告編を見て、そこでもまた号泣。映画公開が本当に楽しみだ。

  •  今年一番感動した本。
     太平洋戦争や特攻隊については人並み以上の知識があり、隊員の遺書を目にしたこともあって、かなり深く知っていたつもりであったが、隊員一人ひとりの心情をここまで心から考えさせられる本に出会ったことはなかった。
     本書はフィクションであるが内容がリアルで、涙なくして読めない。また臆病といわれる主人公が、実は神業を持つエースパイロットで、家族や同僚を思い、周りを助けていくという王道の伏線回収が物語としても楽しめる内容であった。

  • 娯楽作品としても秀逸でしたが、単なる娯楽作品ではなかった。フィクションとノンフィクションの見事な融合により、過去の過ちを知るきっかけとしてはこの上ない教材とも言える作品でした。

    歴史から学ばなければならない。
    帝国軍エリート幹部達の夜郎自大。それはなにも太平洋戦争当時に限られたことではなく、現代においても通じるものがある。などなど、そんなふうに色々と考えさせられる作品でした。

  • 10年ぶりの再読。やっぱり文章そのものに惹かれるものがあるので、読んでて心が満足します。

  • 「生きて帰る」という妻との約束を果たすため、生きることに執着し続けた宮部久蔵はなぜ特攻に志願したのか、読み進めていくうちに明らかになる真実を知ったとき、とても心が動かされた。
    教科書だけではわからないことが沢山あった。

  • サイン本があるらしく、それが欲しくて本屋さんに電話を掛けまくり…。
    しかし、どこも売り切れで結局は古本で購入。

    新聞や、ネットにも「120万部突破!」と書いてあって、ミーハーになるのは抵抗があったが…。


    読み終えた後の複雑な気持ち。

    暫く、読書に手が回らなかった。

    ああ、この本に会えてよかった。


    お正月、祖父母に会ったときに、戦争の話を改めて、聞いてみようと思う。



    過去に犯した過ちを、ちゃんと見据えなければならない。

    • honno-遊民さん
      百田尚樹なら、時代小説だけど「影法師」も感動ものの傑作ですよ。お勧めものベスト10に入ります。
      百田尚樹なら、時代小説だけど「影法師」も感動ものの傑作ですよ。お勧めものベスト10に入ります。
      2013/01/02
    • しをん。さん
      hongoh-遊民さん
      あけましておめでとうございます♪
      これからも、よろしくおねがいします(●^o^●)

      そうなのですか!確かに、「影法...
      hongoh-遊民さん
      あけましておめでとうございます♪
      これからも、よろしくおねがいします(●^o^●)

      そうなのですか!確かに、「影法師」もよく見かけますヽ(^o^)丿
      早速、探して読んでみようと思います
      2013/01/02
    • honno-遊民さん
      こちらこそ、よろしくお願いします。今年もまた、感動を呼ぶ傑作にめぐり合いたいですね。まず、宮部みゆきの大作「ソロモンの偽証」に取り組みたいと...
      こちらこそ、よろしくお願いします。今年もまた、感動を呼ぶ傑作にめぐり合いたいですね。まず、宮部みゆきの大作「ソロモンの偽証」に取り組みたいと思います。
      2013/01/04

  •  戦前から軍へ入隊し、海軍航空隊のパイロット・指導官として、戦地で過ごしてきた宮部久蔵。彼は「生きて妻子の元へ帰りたい。死にたくない」という信念を持ち続けていた。しかし、終戦間際に特攻隊への道を選び、命を落とす。飛行技術に優れ、優しい人物であった。生きることへの執着心がこれ程まで強かった男が何故特攻隊の道へ。彼の生涯をたどる物語が始まる。

     お国の為に命を捧げることが当たり前とされていた戦時中、「死にたくない」という心持は当然のごとく反感をかった。しかし、特攻隊指導官の彼を慕っていた予備学生が多く存在した。「皆さんは日本に必要な人達です。この戦争が終われば、必ず必要になる人達です」
    宮部の発言に心が震えた。

     特攻隊は、勇敢極まりなく、悲しすぎる存在だと新たに実感できた。終戦まで残り五か月弱。そこから始まった戦略である。戦争に携わってきた人々はすでに分かっていた。アメリカには敵わないこと。戦闘機で敵の戦艦に体当たりする彼らは、ほとんどが学生であった。さらに、その戦闘機は体当たりの前に落下するものばかりだった。特攻隊=テロリストという考え方まで生まれ、やるせない気持ちで一杯になった。

     第二次世界大戦において、日本は敗戦する。とかなり前から分かっていたにもかかわらず、長期に及んだ。早くに手を引けば、沢山の命が助かった。きっと広島・長崎の原爆投下は行われなかった。そして、特攻隊という存在もなかったであろう。戦争の犠牲者は他国からだけではない。自国から犠牲になった命と心があったことを決して忘れてはいけないと思う。引くに引けない。割り切れない。そういった人の醜い感情から多大な犠牲が生まれる。

     かなり前から読みたいと思っていた一冊。重たい時代背景ではあるが、心温まるエピソードが散りばめられている。衝撃と感動で溢れかえった物語であった。一生忘れることはないだろう。

  • 今回は読了…ではなくオーディオブックにて拝聴です

    圧巻の作品!!
    正直私は戦争の作品は苦手だ
    悲しくて、苦しい気持ちになる
    だけどこの作品に出会えて本当に良かったって思うんだ
    勿論物語は悲しくて苦しいことが沢山あるけれど、でも…知らないでいることの方が苦しくなる
    どんな日本だったか、どんな人達が戦っていたのか
    歴史としてではなく、命懸けで生きた人々を知らないといけないんだって

    物語も素晴らしいけれど、オーディオブックならではの声優さんたちの朗読が本当に凄い
    今回私が利用したオーディオブックでは、登場人物一人一人にそれぞれの声優さん方が声を割り当てられている
    聴く映画のように想像がとても捗った
    迫真の朗読だからこそ、戦争へのそれぞれの想いが身に染みる
    朗読に加えて飛行機や銃の音声、BGMが収録されてるから物語への没入感が半端ない
    辛い叫びに聴きながら胸が苦しくなるんだ

  • なんだか最近、温かい物を食べれば、寒いロシアで飢えてた兵士達に、タイムスリップして持ってってあげたいなあと、冷たい物を食べれば、暑いジャングルで飢えてた兵士達に持ってってあげたいなあとふと思うようになった。それも度々。戦争を知らない世代なのに。
    思ってもどうしようもないが、彼らのことを忘れないことが重要なんだと思うようにしてる。

    特攻隊がいたんだと忘れないように…。

  • 素晴らしい作品でした、コレがデビュー作と後から知り更に驚愕です、最後の語り手に関しては辛くてページが捲れない程でした。
    最近ずっとミステリーばかりだったのもあり読み終えて清々しい気持ちになりました。
    あのような方が本当にいるのでしょうか?

  • 宮部久蔵に恋をした。なんて魅力的な人だろう…。「臆病者」と呼んだ人もいた。だけど、徐々に明かされる宮部久蔵の真実に心を奪われずにはいられなかった。国の為に命を懸けるのが当たり前とされた時代に生きた人たちの話は少なからず私の心を抉った。そこで覚えたやるせなさと憤る気持ちは一体どこにぶつけたらいいのか…。そんな中「愛する者の為、生きる。」と誓った男のなんと美しいことか。読み進めながら、この人だけは死んでほしくない、という思いでいっぱいだった。戦争のお話。だけど、それだけじゃない。

  • 戦争を生きていた人たちが、今の日本を見たら
    どう思うんだろう…。
    今の平和な世の中なのは、この時代を生きていた人たちが
    いるからであって、そのことを忘れてはいけないと
    思わせる本だった。

    26歳の健太郎の祖父だと思っていた人物が
    実は血の繋がりがなかった。
    実の祖父がいったい、どういう人物だったのか
    姉と一緒に祖父のことを調べる。
    どうやら祖父は特攻隊で亡くなったらしい。
    祖父である宮部は、とても優秀なパイロットであり、
    その時代には珍しく「生きて帰る」ことに執着していた。
    そのような人物がなぜ、特攻で死んだのか。

    宮部目線の話は全くなく、孫の健太郎目線や
    宮部と共に戦争を生き抜いてきた人物たちからの目線で
    進んでいく。
    学校の授業では習うことのない、戦争の恐ろしさを
    学んだ気がした。
    「神風特攻隊」ってワードも聞いたことあったけど、
    私は敵を倒しながら自爆してるイメージだった。
    けど、話では敵にぶつかる前に撃たれていたり、
    戦闘機が故障していたりで、必ず敵を倒していた
    わけではなかった。
    「回天」は知ってたけど「桜花」は知らなかった。
    そんな死に方がこの世にあったなんて、
    改めて戦争の恐ろしさを感じた。

    たまたま図書館で艦隊の雑誌もあって確認しながら
    読んでみた。
    「赤城」とか「瑞鶴」とか、どれだけの馬力があって
    どのくらい人が乗っていたとか、確認してしまった。
    それだけたくさんの人が亡くなったことを
    感じて苦しくなったよ。

    ちょっと今、戦争系の話に興味あるなー。
    アマプラで「私は貝になりたい」と「硫黄島からの手紙」を見た!!
    (なぜ小説でないのか!?というツッコミはしないでねー笑)
    なんか知っておかないといけない歴史って
    改めて思いました。
    もし、オススメあったら、教えてください。

    • shintak5555さん
      1995年から1996年にかけてNHKで放送された「映像の世紀」ですね。
      加古隆さんの「パリは燃えているか」というテーマ曲と共にめちゃくちゃ...
      1995年から1996年にかけてNHKで放送された「映像の世紀」ですね。
      加古隆さんの「パリは燃えているか」というテーマ曲と共にめちゃくちゃ勉強になる実映像での11回シリーズです。

      NHKオンデマンドでしか観れないかなぁ。
      2023/11/14
    • ほくほくあーちゃんさん
      shintak5555さん、ありがとうございますー!!
      「映像の世紀」って言われてもピンと来なかったのですが、「パリは燃えているか」の曲を聴...
      shintak5555さん、ありがとうございますー!!
      「映像の世紀」って言われてもピンと来なかったのですが、「パリは燃えているか」の曲を聴いて、映像見たことあることに気づきました!!
      中学のときの社会の授業で、この映像見てました。
      けっこう衝撃的な映像があって、さらに曲も印象的だったので覚えてます!!
      2023/11/24
  • この物語そのものには感動した。


    それに反して、当時の官僚について
    慶子と健太郎が語った話に怒りをおぼえた。


    (指揮官が自分の命が危険にさらされた時は
    弱腰になるのに……のところ)


    涙なしには読めないが、
    感動と悔しさの両面からだった。

    • mr.shinyapapaさん
      複雑な想い憤りや悲しみまた、小さな幸せ奇跡がが著書の訴える事であり、日本という国の歩んできた道でもある。
      今を生きる我々が次の世代に向けて、...
      複雑な想い憤りや悲しみまた、小さな幸せ奇跡がが著書の訴える事であり、日本という国の歩んできた道でもある。
      今を生きる我々が次の世代に向けて、何が出来るか?どう生きるか?
      考えさせられる重要な一冊であると感じる。
      2020/07/06
  • 今と違う時代の話
    でも同じ日本の話

    時代は変わるし価値観は変わる
    命を懸けて死ぬ事が良しとされた時代があったのは本当で
    国のために家族のために
    その身を捧げる事が当たり前とされた時代があった

    今の人たち未来の人たちからすると
    きっと異質な文化の物語だろう

    しかしあったのだ
    別に当時を美化している訳でもなく
    国全体の思想が染まっていた時代が
    本当にあったのだ

    そして映画の完成度は高い
    映画見ると岡田准一に惚れる事ができます

  • 朝から布団の中で号泣した。今も何て言ったら分からないけれど、読んだ直後の感想が一番正しいから今の内に書いておこうと思う。

    私にとって、戦争というものは本の中にもあったようにどこか遠い話である。「永遠の0」を読んだ今もその感覚は完全に消えない。小学生の頃に、「自分のおじいさんおばあさんに戦争の話を聞こう」という企画があったけれど、「戦争の頃はまだ十代前半で幼かった」と答えてくれた祖父母を思い出し、本に書かれていた「戦争経験者が表舞台からいなくなりつつある」の文章は私にとって重く伸し掛かってくるものがあった。

    日本世界問わず歴史が好きで、歴史に関しては色んな本を今までに読んできたが、近代における戦争について私はほとんど知らない。戦争は苦しい歴史で、救いの無い、見るのが辛い写真が並ぶものとして認識していて、知るのが怖かったというのが正直な理由。特攻も洗脳だったのだろう、と調べもしないで勝手に思っていた。今では恥ずかしく、申し訳ないことに思う。

    今回この本を読んで、今の自分の存在が、自分の過ごす生活が、この時代の多くの犠牲の上に成り立つものなのだと思い知らされた。知らなければならない過去に、初めて知らされた感覚だった。

    何か面白そうな本は無いかと本屋を巡っていて、平積みされて目を引いたこの「永遠の0」。私の知らない戦争が生々しく、鮮明に、宮部久蔵という人物を追っていく形で描かれている。影でしかなかった亡霊がどんどん形を帯び始め、愛おしささえ感じられるようになる書き方は凄い。分厚い本だというのに飲み込まれるように読み進められた。

    登場する健太郎は私と同年代。宮部さんともさほど変わらない。

    生まれてきた人間にとって、「生きたい」という気持ちは本能だと私は思う。だというのに、「死にたくない」と呟けば臆病者扱いにされ、周りに流されずにはいられないあの時代の状況で、それでも生きたい気持ちを貫き続けた宮部さんはどれだけ強い人なのだろう。

    そんな彼の姿が良いようにも悪いようにも多くの人々の中に刻み込まれ、多くの人たちの中で彼は生きられた。だから松乃さんも他の人の中に生きる宮部さんを感じたのかもしれない。

    最初と最後の繋がりにはぞっとせずにはいられなかった。あんな風に、多くの人々が、宮部さんのように家族を想う一人の人間が、生を全うしたのだと思うと涙を浮かべずにはいられない。

    戦争は惨い。それをやめられないのは人間の性なのではないかとも思う。それでも日本軍は愚かだ。何故普通に考えれば分かることが分からなかった。何故降伏しなかった。人の命の価値が、ここまで貶められた時代があったのだと思うと、遣る瀬無さや悔しさや怒りに似た感情に押し潰されそうになる。

    現代に、彼らの望んだ平和が実現しているかは分からないけれど、少なくとも私は幸せに生きている。悩みも辛いことはあっても、両親の愛情の下にここまで育って、毎日笑って、友人とふざけ合って、大学で好きなことを学んでいる。

    私はこれからも生きていきたい。いつかは結婚して子供を産んで、静かに年老いていきたい。そんな考えが当たり前に出てくる。夢も見たい。行ってみたい場所も、やってみたいこともまだまだ沢山ある。明日死ぬなんてことは考えたこともない。けれど、この生きたいという気持ちは、この時代に生きた人々にとって、どれほど強いものだっただろう。

    同じ年代で命を懸けた人々の犠牲の上での今に生きる私。

    知るべきことを教えてくれた作品。
    今の平凡な生活が、掛け替えのない幸せの中にあるのだと教えてくれた作品。
    心から感謝します。ありがとうございました。


    追記:読了後、歴史に詳しい父にこの本について話したら、私の曽祖父とその兄弟が戦死していたことを初めて聞かされた。曽祖父はガダルカナルで餓死、兄弟は戦艦大和で沈没したという。自分の身内にも命を懸けて戦ってくれた人たちがいた。もっときちんとこの時代について知りたい。

  • DVDで先に映像から入った作品でした。フィクションではありますが、ノンフィクションでもある作品だと思いました。自分のように映像のみでこの作品を知っている方には、是非、この本を読んで欲しいと思いました。映画も良いのですが、やはり原作を読むと戦争を知らない自分たち世代には日本の過去を知る、勉強する作品でもあると思います。色々な戦争をテーマに扱った作品はありますが、この作品は一番最初に読んでも良いものかもしれません。戦争を体験した人にしか分からない気持ちもあると思いますが、読みながら自然に涙がこぼれてくる場面がいくつかありました。

    娘に会うため、自分の帰りを待つ妻のために死ねない、生きて帰ると思い続けながらも戦死した男性を中心に、戦争体験の話が語られながら話が進んでいきます。死への恐怖と生きることの大変さを十二分に感じました。最終章で戦争体験を語ってくれた登場人物たちが、この男性をどれだけ尊敬し、生きるための強さをもらったのかが分かり、涙が止まりませんでした。

    フィクションですが、本当にこの男性のような方が戦死されていったのだろうなぁと思いました。当時の日本の軍隊の上層部は国民にこれだけのことを背負わせたのに、何らかの反省の色は合ったのだろうかと思います。今の日本の政府、政治体制も形は違えども似ている部分があるように感じることもあり、苦笑いしてしまいそうになりました。

  • 10年以上前に1度読んでて
    今回は 再読

    かつて映画も観ましたが
    やっぱり小説じゃなきゃ な

    当てられない戦闘機乗りの 弛まぬ努力や 巧妙なテクニックなんか もう
    活字じゃなきゃ 理解できない
    当てるテクニックもしかり ほう
    そうすると当てられるんね とな

    映像で観るだけでは 理解できんのですわ


    p.431 特攻隊員たちに対する毀誉褒貶
     特攻作戦を指揮した人達の旗弁
     “特攻隊員は志願だった” ・・・の せい


    自分が歴史を知らなすぎて
    学び直したいな と 思ったよ
    【野火】の読後も そう 思ったよ な

    戦争の話は
    やるせなかったり ひもじかったり
    悲しくなったり 悔しくなったり するのに 読みたくなるんね 何故だろう

    ・・・

    えぇっ!? っと思ったところ

     『真珠湾攻撃』
     ワシントン駐米大使館員の職務怠慢!?
     で結局は騙し討に
     山本長官は「騙し討にならぬよう」って
     言ってたのに

    『栗田艦隊の謎の反転』

    『ミッドウェー海戦 4隻失った南雲長官』

    『特攻・回天・桜花』・・・など

     
     そして
     エライ人は どんな失敗も 責任を
     取らされていない 不思議な組織


    ん? 今も?

  • どんなに堪えようとも、涙が止まりませんでした。なんという時代。現代とのあまりのギャップに胸が締め付けられる。何もせずとも、時間を垂れ流して生きてしまえる現代。息をして、寝て、起きて、そんな毎日でも「生きて」いられる。だからこそ、一人の人間の崇高で凄まじい生き様に、こうも心を揺さぶられ感動するのだろう。
    時間は皆に公平に与えられる。どのように時間を使うかで、人生は百人百様。卑しくもなれば尊厳に満ちたものにもなる。宮部は妻子のために生きたい、と願ったが、彼の尊敬すべき信念や言動は誰のためというより、彼自身の生粋の人格だ。誰のためでもない。でも多くの人が彼に惹かれ、尊敬し、多くの人の人生に影響を与えた。人間を動かすのは、生身の人間ということ。私は何よりも、この、彼の生き方に心を揺さぶられた。
    宮部にはどうか生きて欲しかった。死ぬというラストがわかってはいるけど、悔しくて、なんとも悲しすぎて、ただただ戦争という、時代という悲惨さに言葉もない。そんな中で、生身の人間の優しさや気高さが垣間見えるエピソードが本当に救われる。それもすべて宮部だからこその、その人徳あってこそ。
    現代パート含めて本当に素晴らしい構成。

  • 今此の国があるのは,先人方の並々ならぬ覚悟と愛国心そして愛する者達を護ろうとする強き意志…
    先人方が護ろうとした日本を今自分達は誇れる国にしているだろうか?問われる1冊の様な気がします。

  • 戦争ものは好きではないし、
    戦闘の描写には正直辟易して、
    もう辞めてしまおうかと何度も心折れそうになったのですが、
    この本の評価が高いこともあって頑張って読み進めました。

    最後の方になって、それまで苦痛だった戦争の描写が
    どんどん繋がっていき、最後は読み進める毎に
    ボロボロ涙が溢れてきました。

    後味も悪くないし、久しぶりにいい小説に出会いました(*^-^*)

  • 大・大・大号泣〜

    主人公の宮部の大切な人を守る覚悟とその生き様に
    だぁぁぁぁぁーと涙が止まりませんでした!!



    たくさんの優秀な若者が
    家族や夢などを捨て
    愛する人や国のために
    死んでいかなければならなかったこと…

    それがたった78年前に 起こっていたという現実_

    戦争のお話はいつも心がず…んとするのだけど
    戦争を体感してないからこそ 人の命で国を守る現実が
    あった事を知らないといけないと思い手にとりました



    本を読むことで 当時の若者の想いや時代背景を知ることは
    少しでも弔いになるのではないかと感じました

    今のタイミングで出会えて 本当に良かったです!

  • これは戦争を知らない世代の人は絶対に読むべき。
    辛いことが沢山ありすぎたけど、日本の歴史として知っておくべき話。

  • 正月休みを利用して一気読み。
    宮部久蔵の生き様は、男として惚れる。その時代の犠牲があって、今自分たちは平和な世の中に生かせてもらっている。自分も家族のために体張って生き切ることができれば本望だなと。自分に偽らない男としてのカッコ良さを感じることができた素晴らしい作品だと思う。

  • すごい一冊だった。

  • 泣きます。息子は何回も再読していました。

  • 涙無しでは読めません。
    フィクションですが、よく作り込んである作品です。
    中学生の読書感想文などに最適かと思います。戦争の過酷さ辛さ、勉強になるはずです。

  • 中三春、読了。
     戦争を題材にした作品は沢山あるけど、そのうちのほとんどは戦争の惨さを伝えている。しかしこの作品は、戦争を通して家族愛や仲間愛も伝えてくれた。
     名作だから、ぜひ読んでください!

    • りょうさん
      小説も面白いので、ぜひ読んでください!
      小説も面白いので、ぜひ読んでください!
      2021/04/10

著者プロフィール



「2022年 『橋下徹の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

百田尚樹の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
湊 かなえ
伊坂 幸太郎
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×