新装版 コインロッカー・ベイビーズ (講談社文庫)

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  • 講談社
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レビュー : 292
  • Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062764162

作品紹介・あらすじ

一九七二年夏、キクとハシはコインロッカーで生まれた。母親を探して九州の孤島から消えたハシを追い、東京へとやって来たキクは、鰐のガリバーと暮らすアネモネに出会う。キクは小笠原の深海に眠るダチュラの力で街を破壊し、絶対の解放を希求する。毒薬のようで清清しい衝撃の現代文学の傑作が新装版に。

感想・レビュー・書評

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  • 『コインロッカー・ベイビーズ』を読むと村上龍は天才だと感じる。神懸った迫力が具わった作品だ。圧倒的な熱量と質量を含む文章、発想が常人離れした場面展開、そのなかを時に抑制され時に解放し時に右往左往しつつ時に縦横無尽にキクとハシは全速力で走り抜ける。物語のエントロピーが極大化したとき崩壊は結実し、キクとハシの新しい歌が始まる。

    数十年ぶりの再読で、当時小説なんて年間1~2冊しか読まなかったが本作品を皮切りに村上龍作品だけはすべての作品を読んだ。いま読んでも私の生涯Best 3作品である。

  • 真夏に劇薬を三ツ矢サイダーでわって飲みほした読後感

  •  ダチュラとはチョウセンアサガオのことなのだそうだ。てっきり村上龍の造語かと思っていた。村上龍の小説にぴったりな語感をもつ植物だ。
     ダチュラで東京を、軍艦島にする。正直キク・ハシ・アネモネには何一つ共感できないし読み終わるとげっそりするが、その空想だけはわりかし楽しかった。イヤ、別に病んでるわけじゃない。

     なんて汚くて、残酷で、孤独で、閉塞したこの世界。
     それでも生きていかなければならないのだな、と、力ずくで納得させられた感じ。
     文学というよりもはや力学の範疇みたいだと改めて思う。一見執拗すぎるような描写は、それ自体が読者の心を動かすエネルギーだから、無駄なようで無駄がない。

     函館の少年刑務所と海洋実習のシーンは、辻仁成の『海峡の光』を思い出したりなんかして。

  • 僕達はコインロッカーの中で生きている。

    この窮屈な世界はコインロッカーだ。鉄壁のようなルールが四方を囲い、狭く暑苦しい中で僕達は暗闇を見つめている。そして、コインロッカーはコインロッカーのままで、僕達はその中で死んでいく。

    “弱虫め、僕は、ちゃんと生き返ったんだぞ”(229)

    でも、暗闇に光が指すこともある。
    声を上げれば、キクのように声を上げ続ければ、いつか光が指してくる。
    暗闇の中で、”ダチュラ”を叫べ。
    そのときコインロッカーは鉄くずに変わる。

    光ある世界は決して優しくない。
    コインロッカーの中よりも痛い世界だ。でも、その痛みは生きてる実感だ。痛みと破壊を僕達は乗り越せる。

    “誰もが胸を切り開き新しい風を受けて自分の心臓の音を響かせたいと願っている”(552)

    たとえダチュラが撒かれようとも、心臓はビートを刻み続ける。

    “生きろ、そう叫びながら心臓はビートを刻んでいる。”(562)





    文章のあまりの熱量と密度に、読んでいてクラクラした。不快感を刺激する描写も多く、読後は何だか悪酔いした気分だった。
    でも、この作品のテーマは案外シンプルだと思います。”好きな事して生きろ!”じゃないでしょうか?
    1番わかりやすく書いてるのが、516ページ。
    “キクは鮫の緑色の血の中で二つのことを知った。死に抗うのを止めると体から苦しさが消えること、心臓の鼓動が聞こえる間は諦めずに苦しさと戦い続けなければいけないこと、この二つだ。”
    コインロッカーのように窮屈で閉塞的な社会の中で、”ルール(法律だけでなく習慣なども含む)”に従って生きれば苦しさは消える。でも、それじゃ心臓に申し訳ないのだ。心臓は常に生きようとして私たちの各器官にエネルギーを送っている。それを、ただ死を待つだけに使うじゃ、心臓に申し訳なすぎる。だから、心臓が鳴る限り、痛くても苦しくて、好きな事して生きよう!って作者が言っているのだと、私は思いました。

  • ドロみたいな本だった。悪い意味ではない
    爽やかさ0、終始仄暗い、読みながらこっちまで血や汗にまみれていく感じ。可哀想な子なのに可哀想な感じしない。生を強く感じる。あとキチガイばかりでよかった。

  • 起爆剤であり、パンドラの匣のような作品。
    コインロッカーに仮死状態で捨てられ、生き返ったキクとハシ。
    ふたりの生命力・破壊力は凄まじい。

    あまりにも痛々しく、荒みきった世界が描かれている。
    しかし、育成環境などから心の病を発症する人が増えている現代日本を(過激すぎるかもしれないが)非常によく捉えているように思う。

    物に溢れていて、安全に思える日本。
    でも、本当に豊かな国といえるのか?

    キクの叫びとハシの空虚感が、現代社会に向けて警鐘を鳴らしているように思えました。

    大切なのは、赤子の頃の記憶。
    心臓の音。


    現代社会の病理がとてもよく描かれています。
    村上龍さんすごい。

  • ボリュームと過激さも相まって結構読むのに時間がかった。1つの1つの表現は激しくてかなり意味不明で、理解しがたい様に思えるのに、読んでいるとスーッと入ってきて気持ち良いとまで感じられる文章だった。内容はとにかくキクとハシそれぞれの生き抜く強さがひしひしと感じられた。暗いけど爽快感があり読んでて興奮させられる作品だった。

  • 埋まることのない空洞を抱えた二人が成長し、そして崩壊していく話。暴力的、厭世的な文体、世界観が魅力なのだろうが、自分は入っていけなかった。
    短編なら世界観を雰囲気として楽しめたかもしれないが、500ページ以上の長編として読むにはしんどいものがあった。


  • 村上龍の作品を読むと高確率で村上龍っぽい世界観の夢を見ます
    建物や人が犇めく混沌としたアジアの世界で基本的に全身が泥にまみれています

  • 初めての村上龍作品。最初、少し読みづらくて断念してしまった。2週間ほどかけてやっと読了。なんか半分を過ぎたあたりから読みやすくなった。なぜだろう。

    内容はとにかく直接的にいろんな角度(性、暴力、ドラッグ、犯罪)から殴りかかってくる。そして恥ずかしいぐらい欲に正直。もしかしたらこういう暴力的な小説好きなのかもしれない、と思った作品でした。

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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