赤い指 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062764445

作品紹介・あらすじ

少女の遺体が住宅街で発見された。捜査上に浮かんだ平凡な家族。一体どんな悪夢が彼等を狂わせたのか。「この家には、隠されている真実がある。それはこの家の中で、彼等自身の手によって明かされなければならない」。刑事・加賀恭一郎の謎めいた言葉の意味は?家族のあり方を問う直木賞受賞後第一作。

感想・レビュー・書評

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  • 加賀の鋭い観察眼、加害者の家族にぎりぎりまで与える温情に胸を打たれた。隠された真実は、この家の中で彼等自身によって明かされなければいけない、このセリフの意味にぐっとくる。このような刑事さんばかりだったらどんなにいいか。
    本当に馬鹿餓鬼、どうしようもなく甘い母親、軸のない父親には驚きであった。この前原家に欠けているものは、真実を見るということではないか。と、言っている自分も人に物申せる人間では決してない。だからかな、平凡な家庭など、この世にひとつもない、帯の言葉がとても身に沁みた。

    ちりんちりんと、杖の鈴が鳴り、晴恵は足を踏み出す。
    年老いた母の丸い背中は小刻みに震えていた。
    ここ、とても心動かされた場面です。心のダム決壊というか。この晴恵の姿が自分の父親と重なった。ある時は家族の確執も、幸せな穏やかな時間もあって、全て背負った老いた背中にどうにもやるせなくなる。あんなに嫌がっていた杖、最近は欠かせなくなって。家族というのは一番身近で、分かり合えれば一番いいのですが、時には、一筋灘ではいかないこともあって。
    嫌な感情だけで終わらせず、家族の情に触れるというバランスにほろりとさせられました。加賀親子の隠された繋がりで、更に情に訴えかけられ、とても感動しました。
    スピーディな展開、丁度良い長さ。加賀恭一郎シリーズ、少しずつでも読んでいきたいです。

    • Manideさん
      kazekaoruさん、こんばんは。

      赤い指いい作品ですよね〜
      私も加賀シリーズの中でも好きな作品です。

      人形町駅を6年使っていたことが...
      kazekaoruさん、こんばんは。

      赤い指いい作品ですよね〜
      私も加賀シリーズの中でも好きな作品です。

      人形町駅を6年使っていたことがあって、
      付近を通るたびに加賀が頭をよぎっていました。
      かっこいいですよね〜( ^ω^ )
      日本橋を渡る時も、いつも加賀を思い出します。
      2023/06/13
    • kazekaoru21さん
      Manideさん、おはようございます。

      タイトルからとても気になっていた作品でした。
      クールで温情ある加賀がカッコよく、胸に響いた感...
      Manideさん、おはようございます。

      タイトルからとても気になっていた作品でした。
      クールで温情ある加賀がカッコよく、胸に響いた感動ものでした。
      どうしてもずっと阿部さんが目に浮かんでいました。

      サスペンスそうろうではなく、事件と人情そのバランスが私にはぴったりでした。
      コメントありがとうございました(^―^)
      2023/06/15
  • 加賀恭一郎シリーズ第7弾。
    今日今現在、私にとってはシリーズの中で1番の作品。
    サスペンスでありながらもヒューマンドラマの要素が強かった印象。
    家族の在り方、親子の在り方、今となっては父親であり息子でもある私自身が、もしも本作のストーリーのそれぞれの立場だったなら…。そう考えると非常に感慨深いものがあった。

    • Manideさん
      akodamさん

      赤い指、いいですよね。
      私も加賀恭一郎シリーズの中で1番好きな作品です。
      akodamさんの感想みながら、もう一...
      akodamさん

      赤い指、いいですよね。
      私も加賀恭一郎シリーズの中で1番好きな作品です。
      akodamさんの感想みながら、もう一度読もう!と思いました。

      私が最初に読んだのは2015年でしたが、
      既に「加賀恭一郎」=「阿部寛」でした。
      ドラマや映画に全く触れずに、この本を読んだ人が、加賀恭一郎がどんな人物イメージとなるかは、とても興味深いところです。
      2022/07/10
    • akodamさん
      Manideさん、こんにちは。
      コメントいただき嬉しいです。
      加賀恭一郎シリーズの中でも赤い指、良いですよね!
      恭一郎の感情が絶妙に描かれて...
      Manideさん、こんにちは。
      コメントいただき嬉しいです。
      加賀恭一郎シリーズの中でも赤い指、良いですよね!
      恭一郎の感情が絶妙に描かれていて、昭夫の良心に問いかけるシーンなど今でも覚えています。

      私は加賀恭一郎シリーズを読破した後映画を観たため、初めて観た時は違和感とショックを受けました。
      (とは言えイメージ出来る俳優さんは居ないのですが…)

      好きな物語だからこそイメージを壊してほしくはないと言う気持ちを強く持った初めての作品でもありました。

      ガリレオシリーズは逆に映像から入ったので「福山雅治」以外考えられず…やはりイメージって大事ですよね。

      今後ともよろしくお願いします^ ^
      2022/07/10
    • Manideさん
      そうなんですね〜
      聞いてみたいことが聞けて嬉しい反面、
      絶対、阿部寛だと思ってましたので、びっくりしてます(笑)
      映像の力、恐ろしいですね。...
      そうなんですね〜
      聞いてみたいことが聞けて嬉しい反面、
      絶対、阿部寛だと思ってましたので、びっくりしてます(笑)
      映像の力、恐ろしいですね。

      人の考えを聞けるのは面白いですね。
      楽しいお話が聞けてよかったです。
      また、勝手にコメントさせてもらいますね ^_^
      2022/07/10
  • とても良かった。

    新参者で登場した加賀恭一郎刑事のシリーズのようです。

    今回は普通の家庭で起きた悲劇から家族とは何か、親子とは何かということを考えさせられる作品です。

    いつもながら伏線回収と結末は見事!

    オススメです♪

  • 「しっかり、加賀君のやり方を見ておくんだぞ。おまえはこれから、すごい状況に立ち会うことになるからな。」加賀刑事の慧眼ぶりに心が沸き立ってしまいます。これから何が起こるのかと。
    東野圭吾さんのミステリーはとても読みやすく、すいすい頭に入ってきます。少しずつ、でも確実に真相へと近づいていく。鮮やかに場面の推移が浮かんでくる。
    その間の心理の読み合いは見ごたえがあり、相手の遥か上を行っているのも面白いです。得られる深い人間への洞察はミステリーならでは。
    しびれるやりとりに、あっという間に読了してしまいました。

  • 加賀恭一郎シリーズ。
    表向きは平穏そうな家庭でも、それぞれに悩みや問題がある。
    その中のひとつ家庭の物語。
    殺人事件に絡み明かされる複雑な家族の肖像。
    その結末はやはり…
    「彼ら自身の手によって明かされなければならない」
    この言葉に尽きると思いました。
    この家庭には本当に胸糞感しかなかったけど、最後には…。
    ラストは加賀自身の家族の事も。
    これには心打たれました。

  • 加賀恭一郎シリーズ 7作目

    嫁姑問題・老人介護問題・少年犯罪等、解決するのが難しい問題を織り交ぜて、息子が犯した犯罪を、有る手段--それは人間として絶対にしてはいけない手段を思いついた両親を「彼ら自身によって明かされなければならない」と、加賀恭一郎は、両親の良心に訴えて、見事に、解決する。

    それと同時に、恭一郎の父親・隆正の最後が描かれる。

    病室で、隆正が看護師と打っていた将棋の相手が実は、恭一郎が一手ずつ、看護師に指示していた事。
    最後まで、自分に会いに来るなと言った、隆正・恭一郎親子が決めた事。
    感動的だった。

  • 加賀恭一郎シリーズ7作目は、家族の問題を扱った作品。嫁・姑の確執、母親の溺愛と父親の無関心が生んだ精神未熟なモンスター、そして父・息子の反発。

    中学生の息子(直巳)が少女を絞殺。息子を溺愛する母親(八重子)に懇願され、隠蔽工作に奔走する父親(昭夫)。人倫にもとるシナリオ。昭夫は、果たして人の道を踏み外してしまうのか。全てお見通しの加賀恭一郎はどう裁く?

    所轄の刑事加賀と組んだ捜査一課新米の松宮(加賀の従兄弟)は、父親に対する加賀の態度に反感を覚えつつも、加賀の捜査手腕に舌を巻く。芝居じみたちょっと出来すぎな展開で、やや興ざめ。

  • まあ、ミステリーには違いないんだけど、テーマとしては重いなぁ。
    八重子が根本的な原因なんだけど、実際こういう人珍しくないような気がする。育てられ方の問題だろうか。何か間違ってる。もちろん旦那も、それを止められない、諌められないのが情けない。

  • 加賀恭一郎シリーズ7作目
    新作の「あなたが誰かを殺した」を早く読みたいという気持ちを抑えて、順番に7作目を読みました。

    今作は主人公の思いの変化が詳細に描かれていて、心が揺さぶられるくらいに感情移入しました。親と子の絆を感じられる物語でした。

    また、シリーズを重ねて、加賀恭一郎の思考や慧眼に厚みのようなものを感じて、より一層魅力的な人物になっているなと思いました。次作の新参者が楽しみです。

  • 東野圭吾による加賀恭一郎シリーズ第7作

    住宅街にある公園のトイレで女児の死体が発見された。
    捜査一課の新米刑事松宮と所轄の加賀恭一郎、従兄同士の二人がペアを組んで捜査にあたる。

    読者には、犯人も犯行の状況も冒頭で明かされる。
    加賀たちは、その真相をどう暴いていくのか…

    加賀の勘と推理が冴え渡る。
    松宮のみならず上司たちまでもが舌を巻く。
    聞き込み捜査の時の細やかな気遣いもしかり。
    今回は、迷うことなく一直線に解決に向かっていった印象だ。

    そして、最後は加賀と父親との関係に涙した。
    真面目で頑ななところがそっくりの親子なのだ。

    さまざまな家族の形がある。
    親はどんな形であれ自分の子供のことを守ってやりたいと思うものだが、それは時として歪んだ形となってしまうこともある。
    歪んでしまった形を元に戻すのもまた家族の役割。
    家族の在り方について考えさせられる作品だった。

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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