- Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062764476
作品紹介・あらすじ
カザルム学舎で獣ノ医術を学び始めたエリンは、傷ついた王獣の子リランに出会う。決して人に馴れない、また馴らしてはいけない聖なる獣・王獣と心を通わせあう術を見いだしてしまったエリンは、やがて王国の命運を左右する戦いに巻き込まれていく-。新たなる時代を刻む、日本ファンタジー界の金字塔。
感想・レビュー・書評
-
素晴らしく面白かった、獣の奏者第2巻。
国の成り立ちの真相、二度と過ちを繰り返さないために、王祖が取り決めた王獣の育成の秘密が次第に明らかになっていく。
エリンは、真王に献上された席で矢を射られ、傷つき何も食べずに衰えていく王獣の子、リランの世話を申し出て、王獣舎に寝泊まりしながらその様子の観察を続ける。
まだ王獣規範を知らないエリンは、リランを救いたい一心で観察と試行を繰り返し、野生の王獣の親子の姿を思い浮かべるうちに、親子がロロロ…と声を出してやり取りしてたことを思い出す。エリンは竪琴を奏で、母が子にたてるような音をたてることで、リランと心を通わせることに成功する。リランはエリンから食べ物を食べ、音無し笛を吹くことなく、リランの世話ができるようになったのだ。
しかしそれは、霧の民が禁忌として封じてきた、王獣を操る術<操者ノ技>であった。
4年の月日が流れた頃、エリンとリランは、簡単な意思疎通をできるようになっていた。
ある日、地震で足元の地面が崩れ、リランは本能で飛び立ち、空を自由に飛行する楽しさを知る。しかしエリンは、ずっと監視を続けていたという母の一族の霧の民から「決して人に馴れない獣、決して人に馴らしてはいけない獣」である王獣を操ることは、大いなる<災い>を招く、と警告を受ける。
でも今更、音無し笛を使って、リアンを縛りつけることはできない…。霧の民の警告を受け入れることができなかったエリンだが、真王の訪問時の襲撃を機に、エリンが王獣を操る技を持つことが保護場の外に知られることとなる。
真王(ヨジェ)領と太公(アルハン)領の対立が深刻化する中、エリンは否応なく、その争いに巻き込まれていく─。
今巻では、エリンは真王の護衛士の一人・イアルと心を通わせていくのだけど、和やかな場面というよりは、怪我をしていたり深刻な話をするような緊迫した場面が多いの。でも二人の語らいに、直接的な愛の言葉などはないのだけど、信頼、心配、苦しみが伝わってくるのですよね。次第に孤独な心が慰められていくような…、お互いを思い合う気持ちが随所に感じられるのだ。
他方のリランとエリンの関係は、たった一回の音無し笛で、以前のようになんの隔たりもないようなものではなくなってしまう。王獣と人間の決して相容れない部分があるのだなと。人の意のままに操られる動物は、もはやその動物そのものではないのだけど。
一旦完結とはいうものの、とても気になるラスト。これまでリョザ王国を支えてきた両輪である真王セィミヤと大公シュナンは、これまでの関係を変えることができるのだろうか。そしてエリンは、どのように生きたのだろうか─。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
やばい、面白い。
第一巻の闘蛇編で謎だった部分が次々と明らかになり、絶対に人に慣れないとされる王獣を懸命に世話するエリン。するとエリンは細かい観察の結果、王獣リランと簡単なコミュニケーションが取れるようになります。
そのことが後々、エリンを戦争の舞台に引きずり出すことにつながって行きます。
ラストは必ずしもハッピーな展開ではないけれど、最後のエリンとリランの関係にはグッとくるものがありました。
一巻と二巻だけで濃密すぎて今後の展開はいかに!オススメです♪
三巻に続く。 -
エリンの純粋な探究心とか王獣達への想いとかを単純に応援できなくなる悲しさ…
闘蛇や王獣はどうしても政治と絡み合ってくる。
その時エリンは何を選んで何を諦めるのか。
最後は怒涛の展開で、本当にハラハラした!
スピード感があり次々起こる出来事にページをめくる手が止まらない。
エリンが悩んで傷ついてそれでも守ろうとしている姿には涙がでた。
そしてエリンだけじゃなくあの人の選択にも…
次の巻ではエリンたちの状況がどんな風になるのか、すごく気になる。 -
4.8
久しぶりの一気読み。
もちろん楽しい話ばかりではない、というより、切ない話の方が多いかもしれない。
でも、次が気になり、でも、軽く早く読んでいくのも勿体無くて、じっくりと読んでいきました。
いったん区切りが付いたような終わり方になっていますが、全4巻中まだ半分、これからどのように進んで行くのか楽しみです。 -
「王獣編」。王獣に魅せられたエリンは彼らのそばで働けるようカザルム学舎に入学し、エサルにその力を買われて幼獣リランの世話を任される。
人に慣れない闘蛇や王獣を音無し笛で操り、特慈水を与えて管理することに疑問を感じたエリンは、危険を承知でそれらを用いずにリランを育て上げるのだが…
争いを嫌う真王を神と崇め守るために穢れた闘蛇を操り、武力をつけたはずの大公、だが次第にその関係は歪み…王獣と心を通わせてしまったエリンはその政治的な争いにも巻き込まれていく…
それなりの頁数があるにも関わらず一気に読まされてしまいます。3.4巻図書館にあるかしら… -
番外編「刹那」を読んだら
改めて最初から読み返したくなり13年ぶりに再読。
13年前に読んだ時、評価をしただけで
感想を書いていなかった理由は明らかだ。
この物語の感想を一言で片付けるのはすごく難しい。
エリンと王獣リランが竪琴によってその距離を縮めていく、その過程を中心に、
真王ハルミヤやその孫であるセィミヤの
王であることの苦悩や、太公との確執、
エリンとエサルの関係、
そしてエリンとイアルの運命的な出会いなどなど、他にもいろいろな要素が絡まり合い、
ひっきりなしに感情が揺さぶられた。
王獣によって抑止された世界は
今でいうと核爆弾を持つ国、ということになるのか?
その采配が、たったひとりの少女に委ねられるなんて
あまりに過酷だ。
この先真王となったセィミヤと太公の息子シュナンが
どうなるのかも興味津々。
次作も読んでるのに、内容全然忘れてる! -
ただただ、獣が何を思っているのか、心を通わせたい、音無し笛で縛るようなことはしたくないと純粋な気持ちで王獣と関わってきたエリン。
そんな思いとは相反して、どんどん大きな力に利用されようと巻き込まれていくエリン。
壮絶すぎるエリンの生き様に息もつけず夢中になって3巻へ…。 -
王獣編はドキドキ、ワクワクというファンタジーではなく、とっても切ないストーリーでした。王獣、闘蛇は王とのかかわりが多いので、政治がらみのいやらしい部分もあり、それにエリンが巻き込まれて・・・。
自然と生き物と共生しているエリンを人間の黒い部分が苦しめます。そして王の盾として生きるイアルの運命。この二人は別々の道を歩いているが同じように少しずつ成長していっているのが分かり、最後のほうになるにつれてハラハラしてきます。
欲は時に人間を悪い方向に向かせます。この作品はファンタジーだけれど、大人も考えさせられる、現実に通じるものを感じました。
著者プロフィール
上橋菜穂子の作品





