闇の底 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062764575

作品紹介・あらすじ

衝撃の乱歩賞受賞第1作!
「俺たちはどうやったら本当に子供たちを守れるんだろうか」
『天使のナイフ』著者が描く あまりにも罪深き欲望の闇。光が差すことはないのか?

子どもへの性犯罪が起きるたびに、かつて同様の罪を犯した前歴者が殺される。卑劣な犯行を、殺人で抑止しようとする処刑人・サンソン。犯人を追う埼玉県警の刑事・長瀬。そして、過去のある事件が2人を結びつけ、前代未聞の劇場型犯罪は新たなる局面を迎える。『天使のナイフ』著者が描く、欲望の闇の果て。

感想・レビュー・書評

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  • 幼少期に性犯罪者に妹を殺された過去を持つ刑事の長瀬は、幼女殺害事件が起きるたびに性犯罪の前歴者が殺害されるという連続殺人事件を追う。殺人犯は死刑執行人のサンソンを名乗り、捜査本部とマスコミに犯行声明文を送りつける。サンソンの目的は?長瀬の心情は?運命の対峙が描かれた社会派ミステリ。

    ブク友・なんなんさんの薬丸岳作品へのレビューが素敵で、感化された私も続こうと積読棚から手に取った。

    薬丸岳7作品目。
    いやはや、今回も恐れ入った。

    薬丸岳は、一体どこまで人間模様や立場の【あちら側】と【こちら側】を追求し続けるおつもりなのであろうか。

    そして読者は、毎回突きつけられるテーマに対して各々の答えを出すたび、己の性根にある正邪と向き合わされるのだ。感情が零す。辛い、憎い、悲しいと。読後に祈る。救い、願いが、叶いますようにと。

    今回のテーマは【性犯罪】

    物語は長瀬、死刑執行人サンソン(男)、ベテラン刑事・村上の三人称視点で進行していく。

    立場の異なる3つの視点が都度スイッチングするため、なかなか感情移入し切れず、はじめはとても読みづらかったのだが、途中から感情の切り替えが自然と出来るよう読み進められた。これも著者の緻密な思惑の賜物であろう。

    本作のポイントは同じく性犯罪を憎み、根絶のためにそれぞれ行動する刑事長瀬と死刑執行人サンソンがどのように対峙するのかである。

    逮捕vs成敗であれば、いっそのこと二人称の構成で良いのではないかと思ったのだが、ベテラン刑事・村上のフラットな視点あってこそ、我々読者は理性と本性の2軸で読み進められるのだと気付く。

    そして、最大の見どころはサンソンの正体と真の目的、性被害者の長瀬の深層心理、そして何より日本の性犯罪に対する刑事罰の在り方だ。

    特に性犯罪に対して、私個人としては酌量の余地など無くて良いと思っている。何故ならば、世界的にも性犯罪の再犯率は群を抜いて高いからだ。さらに諸国対策する刑罰の重さが大きく異なる。とある国では性犯罪前歴者の情報を国が管理し、国民に情報開示を行なっている。また、重罪人にはGPSを体内に埋め込み、一生監視下に置く処罰まで行われると言う。一方、日本は殺意の有無や人権に重きを置き過ぎるゆえ、被害防止の取り組みが圧倒的に遅れている。

    性犯罪者に人権や名誉などの配慮は一切不要。極刑一択の厳罰化を願う。これは一国民である私の一意見である。

    本作もやはり、目を背けたくなるような、想像したくないような描写が綴られている。そして表題名が語る終い方も。未読で興味のある方はご留意を。

    どうも薬丸岳作品を読むとオフェンシブな自分が登場してしまう。嫌いじゃないけど。

  • やりきれないです、初めから終わりまで。
    どうしたら、この世界で子供たちを守れるのでしょうか。
    どうしたら、犯罪被害者とその家族を救えるのでしょうか。

    私は14歳の娘がおりますので、幼児への性的暴行殺害とは、苦しいですね。
    この手の犯罪を犯す人は、極刑に処するべきだと思っています。
    趣味趣向ですから、「更生」なんてものは最初から無いと思います。

    東野圭吾さんの「さまよう刃」
    これ読んだ時は、私も覚悟しました。
    もしも、うちの娘や猫ちゃんが、使い捨ての安い玩具のように遊ばれて汚されて壊されてゴミのように捨てられる事にでもなったら、警察や司法に任せるつもりはない、私がやってやろうと。

    怒りの感情は、疲れますよね。
    でも、赦すことなんて出来ない事をされたら、どうやって生きていけばいいのかな。
    でもでも、何かのきっかけで被害者ではなく加害者、加害者の親になる可能性だってあるのだと思うと、今日も無事に一日が終わって幸せなんだな…

    主人公の長瀬さんは救われたのでしょうか。
    たくさんのものを捨てて、一瞬だって忘れることのできないものを背負って…

    • あゆみりんさん
      なおなおさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます。
      台風は大丈夫でした、山に住んでいるのですが雨もそれほどではなく。
      そちらは大丈夫...
      なおなおさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます。
      台風は大丈夫でした、山に住んでいるのですが雨もそれほどではなく。
      そちらは大丈夫でしたか?

      まず、和菓子屋さんでおはぎを買う予定が、スーパーのあんドーナツになりました。
      なんか、すみません_:(´ཀ`」 ∠):

      そして、近場の本屋さんをまわったのですが「十角館の殺人」が売っておりません。
      明日、大きい本屋さんへ行ってきます。
      2022/09/20
    • なおなおさん
      あゆみりんさん、お返事をありがとうございます。
      こちらは関東なのですが、台風は大丈夫でした。子どもは休校にはならず、残念がりながら登校しまし...
      あゆみりんさん、お返事をありがとうございます。
      こちらは関東なのですが、台風は大丈夫でした。子どもは休校にはならず、残念がりながら登校しました^^;

      あんドーナツも良いですね!
      昨日のおやつはミスドのドーナツだったことを思い出しました。今、さつまいも味の物が出ていますよ〜なんかおやつがあゆみりんさんと被っているような^^;

      「十角館の殺人」、人気ですもんね。
      見つかるように祈っています(^^)/~~
      2022/09/20
    • あゆみりんさん
      なおなおさん、ミスドのさつまいものポンデ、狙っています。
      期間限定のドーナツはついつい多めに買ってしまいます。

      また本の紹介してくださいね...
      なおなおさん、ミスドのさつまいものポンデ、狙っています。
      期間限定のドーナツはついつい多めに買ってしまいます。

      また本の紹介してくださいね♪
      2022/09/20
  • ほんまに闇の底やな。
    子供への性犯罪…再犯も結構あるみたいやし…
    アメリカでは、そういう人らは、写真とか勤務先とかまで、公開されるらしい。
    本人は、そらイヤやけど、小さな子供を持つ親は不安で仕方ないのも確か。

    この作品では、幼児に対する犯罪があると、過去にそんなことした人が殺される。抑止力を狙ってるらしいけど、微妙な…
    サンソンを名乗って、処刑。
    世間も評価が二分する。
    自分もそんなんが、実際にあったら、考えるもんな。
    でも、人殺しは人殺し!あかんもんは、あかん!

    犯人は、コイツ?お前なぁ〜人のこと言えんのか…
    …分からんかった(−_−;)

  • 薬丸岳6冊目。重たい本を読みたくなったら真っ先に手が伸びる。タイトルの闇の底、その一線を越えると何が見えるのか。「闇」か?あるいは「光」か?少女を誘拐・性的暴行・殺害する事件がいつでも起きる。勿論、刑事も被害者家族となる可能性もある。とある被害者家族が犯人たちを殺害していく。被害者である刑事は犯人の犯罪をどう思い、どう対峙するのか。この刑事と犯人とのラストのシーン、刑事が犯人に銃口を向けるがその時にこみ上げるのは犯人への共感と罪を見過ごしてはいけないという刑事の本分。この相対する想いが闇の底だった。⑤

  • 幼児への性犯罪の抑止力のために、過去の性犯罪者を惨殺するサンソンを名乗る男。幼児性犯罪の抑止ができない警察ではあるが、正義の名の下私刑を繰り返すサンソンを許してはならない。警察はサンソンを捕まえて、性犯罪を抑止できるのか?
    薬丸岳さんは少年犯罪ものをたくさん執筆しているので、幼児性犯罪は珍しいかも。叙述トリックで犯人像を読者に想像させる手法も良かった。

  • うわ~!この小説、おもしろかった~!

    子供への性犯罪事件が起こるたびに性犯罪者を殺す…
    殺人で子供への性犯罪を阻止しようとする処刑人・サンソン
    子供の頃に妹を失った過去を持つ埼玉県警の刑事・長瀬
    身内を残酷な事件で失ったものにとって犯人を殺すのは悪なのか?そしてサンソンとは…

    サンソンが…
    驚いた~!

    でもって…ラストも…

    薬丸岳さんって本当にすごい作家さんだわ~!
    まさに世の中の闇にザクッと切り込んで
    「さあさあ…」と迫ってくる
    目をつぶりたくなるような問題を「さあどう思う?」
    と先送りにできないように心に突き付けてくる

    すごいわあ~。
    目の前にグイグイ

  • 犯人がずっとわからなくて、まさかの人。最後もまさかで、これは予想できない。
    でもやっぱり、殺人以外の方法でどうにかできたらなぁと思いました。

  • 薬丸岳氏は少年犯罪という難しい題材を巧みに鋭くそして繊細にエンターテイメント小説と仕上げる作家であるが今回のテーマも非常にセンセーショナルだ。

    プロットが面白く一気に読ませる展開であったがテーマとラストに暗澹たる気持ちになる。特にクライマックス。そこと某映画とも似ていたため★3つ。

  • 【どうやったら子供たちを守れるだろうか】


    子どもへの性犯罪が起きるたびに、かつて同様の罪を犯した前歴者が殺される。卑劣な犯行を、殺人で抑止しようとする処刑人・サンソン。犯人を追う埼玉県警の刑事・長瀬。そして、過去のある事件が2人を結びつけ、前代未聞の劇場型犯罪は新たなる局面を迎える。


    作者の作品は、少年犯罪がテーマのものしか読んでいなかったので、大人の性犯罪をどう裁くかがテーマのこの作品は新鮮で興味深く読んだ。

    大人が子供たちを自らの欲のために利用する。
    あまりにも理不尽な理由に巻き込まれた幼い子供たちを守る為にはどうしたらいいのだろう。
    性犯罪者の刑期の短かさと再犯率の高さに驚いた。

    犯罪を犯したものを厚生へと手助けすることに理解はするものの、プライバシー保護の為、出所者の個人情報は守られており、所在地を追跡しにくいこともこの作品で問題提起されている。
    法の裁きにも限度があり、だから本書で登場する私刑執行人のサンソンのようなものが現れたのだが。

    サンソンと警察のパートが交互に描かれていて、誰がサンソンなのか予想しながら一気に読んでしまった。

    実際に明日のサンソンが生まれないために、性犯罪者への処罰の厳罰化し、警察が所在を把握できるようにして欲しいと思う。

    犯罪者の再犯と厚生について考えさせられる一冊だ。


    こんなひとにおすすめ.ᐟ.ᐟ
    ・親
    ・社会派ミステリーが好きなひと

  • 子供への性犯罪が起きるたび、
    同様の罪を犯した前歴者が殺されると言う
    私刑的犯罪が起こる。

    幼い子供を育てている身としては、「サンソン」はぶっちゃけ大賛成。
    ただそれだけで子供への犯罪が減るわけでもなく、
    じゃあどうやったら子供を守る事が出来るんだ…と
    悩ましいところ。

    「サンソン」の正体は最後の最後まで分からなかった。

    服役してから普通の生活を送り、
    罪など無かったかのように過ごしている犯罪者たち。
    被害者家族からしてみたら、たまったもんじゃないよな。

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著者プロフィール

1969年兵庫県生まれ。2005年『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2016年、『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に刑事・夏目信人シリーズ『刑事のまなざし』『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』、『悪党』『友罪』『神の子』『ラスト・ナイト』など。

「2023年 『最後の祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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