藪の中 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 615
レビュー : 71
  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062764599

作品紹介・あらすじ

わたしが搦め取った男でございますか? これは確かに多襄丸(たじょうまる)と云う、名高い盗人でございます――。馬の通う路から隔たった藪の中、胸もとを刺された男の死骸が見つかった。殺したのは誰なのか。今も物語の真相が議論され続ける「藪の中」他、「羅生門」「地獄変」「蜘蛛の糸」など、芥川の名作、6編を収録。

※本書は、講談社文庫『羅生門・偸盗・地獄変・往生絵巻』(1971年7月)および、『日本現代文学全集56 芥川龍之介集』(1980年5月)を底本とし、旧漢字・旧かなとなっているものは新漢字・新かな遣いに改め、ふりがなを加えました。底本に見られる誤植等は訂正するなどしましたが、原則として底本にしたがいました。また、底本にある表現で、今日からみれば不適切と思われる言葉がありますが、作品が書かれた時代背景と作品的価値、および著者が故人であることなどを考慮し、底本のままとしました。よろしくご理解のほどお願いいたします。

感想・レビュー・書評

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  • 青空文庫で手に入ります。
    この作品は、1921年に発表されてから内容についての論議を巻き起こした作品のようです。短編推理小説で、読み始めてからあっという間に読み終えてしまします。時代は平安時代で、勿論現在の様な科学捜査など出来ようもありません。殺人事件なのに残虐性は無く、事件についての証言も少ないし遺留品も少ないようですね。この作品での犯人の特定は難しいのではないでしょうか。いったい誰が犯人なのか答えは書いていません。
     秋の夜長に、色々と推理して楽しんでください。(^_^)

    僕も今悩んでいます(^_^;)

  • すごく好きです、こういう話。自分の好きな話のタイプが分かり易すぎる!語り手がころころ変わるじわじわっとしたミステリって、そんなの好きに決まってる。

    「二人の男に恥を見せるのは辛い」っていう言葉の気高さと尊さと潔癖さにうっとりしつつも、私は女なのでこういうときに「悪いのは女なんじゃないの?」ってすぐ勘繰ってしまう。でもこの話、登場人物皆が優しい良い人なのかなって思える救いがある。ただのもやっとさせるだけの話ではないのだ。

    「陰鬱なる興奮」ってすごい言葉だなあ、というかこの事件すごく色っぽいシチュエーションなのに直接的な表現が限定されていて、それが余計にむはっと色っぽい。正に陰鬱なる興奮。

  • 『藪の中』
    初めて読んだ。真実はどこにあるのだろうか、登場人物から与えられる情報では読者は真実にたどり着けなくて、ただただ混乱するばかり。

    【その外の作品】
    何度か読んだことある作品らだけど、あらためて人間の心の奥底の罪深さを表してくれる作品だと思う。

  • ある男が藪の中で死んでいた。検非違使の調査で容疑者が捕まり、その調査にあたった者、被害者の関係者などの証言を淡々とまとめただけの話。
    だけどあれこれ考えてしまってすっかりはまってしまう。
    いまだにこの真相を巡り論争が起こるのもわかります。
    私も考察サイトを回ってるうちに感想を書くのが遅れました。

    被害者:金沢武弘(26)そこそこいい男
    関係者:武弘の妻・真砂  
    容疑者:多襄丸 剣の腕は立つが無類の女好き

    1と2は死体を発見した木こりと事件前に被害者を見かけた旅人の話 3、事件を担当する検非違使の部下の役人 4、被害者の妻の母親の話 5、容疑者多襄丸の自白 6、被害者の妻真砂の証言 7、被害者の霊が乗り移った巫女の話

    ここで、1~4はただ単に事実を話してるだけとみなしてよく、7も、ツッコミどころではあるけど被害者の夫本人の証言としてしまっていいとする。
    すると、容疑者多襄丸と被害者の妻は、自分が金沢武弘を殺したのだとそれぞれ証言し、巫女に乗り移った金沢武弘は自殺したという。
    皆がみんな、自分に不利な証言をしていて、嘘を吐くにしても不利な嘘ついてどうするの? みたいな疑問が生じる。

    自分でも真相を考えてみましたが、私は恋愛脳というか、カップリング脳というか、どうしても恋愛方面と結び付けていろんな邪推をしてしまいます(笑)

    ★自説
    多襄丸と被害者の妻・真砂は実は幼馴染で互いに想い合っていたいたが、事情で真砂はどうしても金沢武弘に嫁がなくてはならなかった。真砂は多襄丸を忘れようとしていたのに、ひょんなことから再会してしまい、二人とも衝動が抑えられずに通じてしまう。
    夫はそんな真砂を陰から見ていて自害。
    夫の死体を最初に発見したのは多襄丸だった。
    多襄丸は残された真砂(このままでは、夫がいるのに浮気したと陰口をたたかれる)を想い、自分が罪を引き受けるべく、夫を縛って遺体から小刀を抜き(他殺に見せかける細工をした)、その場を立ち去る。
    多襄丸が去った後目を覚ました妻・真砂は、多襄丸の残した細工を見て彼が夫を殺したのだと思い、自分の櫛を落としておいて嘘の証言をする。
    夫である金沢武弘は、真砂と多襄丸の過去を知っていた。しかし真砂を好きだった。強引に結婚してしまったことを悔いていた。
    自分が身を引けば、真砂と多襄丸が結ばれると思い自害した。
    巫女に乗り移った時に妻を悪く言ったのは、真実半分、「真砂のことをもう好きではないから文句言ってるんだぜ」という、真砂が悔いないようにポーズで言ったこと半分。

    うーん、途中までは良いような気がするけど苦しい。


    『地獄変』
    ここ最近ずっと乙一を読んでるけど、乙一作品とこれは何か通じるダークさがある。


    『羅生門』
    個人的な感想で申し訳ないんですが、高校の時に教育実習生のお姉さんがここの授業を担当してくださり、黒板に自らの手でこの場面の絵を描くという図解までしてくれたんですが、何が描いてあるか見当もつかない前衛芸術が黒板に展開されていたのでそればかり思い出す(笑)。


    『鼻』
    『人間の心には互に矛盾二つの感情がある。勿論、誰でも他人の不幸に同情しない者はない。所がその人がその不幸を、どうにかして切りぬける事が出来ると、今度はこっちで何となく物足りないような心もちがする。少し誇張して云えば、もう一度その人を、同じ不幸に陥れて見たいような気にさえなる。そうしていつの間にか、消極的ではあるが、ある敵意をその人に対して抱くような事になる。』
    人の心はエゴと優しさが常に存在してる。
    禅智内供という主人公は偉い僧らしいですが、彼もこういう人で、煩悩ばっかりだなと思いました。
    ……と言っては身も蓋もない感じですが、むしろ、容姿に対する評価が気になるという、日常の些細な問題こそ宗教を考える際のポイントになる、みたいなことが解説サイトとかに書かれており、そう考えると、宗教は本当に人間の身近な思想から出たものなんだなと思いました。


    ============
    ※追記
    『地獄変』で良秀が最後に自害した理由について。
    これまで何度か地獄変を読んだけど良秀が自害したのは「娘を火にかけて殺すことになってしまい罪悪感を感じたから」だと単純に思ってました。
    けどいろんな感想を見ていたら、良秀は娘のことに罪悪感など感じてないような気がしてきた。
    良秀は火に包まれる娘に手を伸ばした一瞬後に、人間を超越して、芸術家の業に取り込まれてしまった。
    考えているのはもう芸術のことだけで、人の心はもうない。自害したのは娘のことを悔いていたとかそう言う人間臭い理由ではなく、地獄変を描ききったことで芸術家としての役割を終えたと判断したとか、人間の感情を捨てたので地獄へ行くことにしたとか、そういう、ある種自分を中心とした理由の方が腑に落ちるし、怖さが増す。
    いわばサイコパスみたいな感じ。
    大殿の中には人への恨みだとか後悔の念がまだあり、人を捨てた良秀と対比されているようにも感じる。

  • 死体が見つかった!
    それぞれ食い違う証言に真実は…!?
    真実っていったいなんだろう、考えさせられる1冊です。

  • これは、黒澤明監督の「羅生門」として映画化された作品。
    殺人と強姦という事件をめぐり4人の目撃者と3人の当事者が告白する。しかし告白内容が互いに大きく矛盾しており真相がわからない。
    その事件が藪の中で起きたため、関係者の証言からは真相がわからない状況を「藪の中」と言われるようになった。
    各自の証言は、状況と照らし合わせて本当らしく語られている、しかし互いの証言は矛盾して、真相が分からなくなっている。

  • そもそも現実とは何か。例え何かの場所に居合わせたとしても誰一人として現実の詳細についてなんか分かってないのではないか。記憶というものも極めてあやふやであって、世界とはそんなものだ、掴み処の無いものだ、ということを教えてくれる。同じ事件を見た複数の人がそれぞれ別の見方をしてしまっている、というのが物語の主題。まさに現実は「藪の中」。

    現代においてそこまで自分たちが物を知らない、と疑う人はどれだけいるのかを憂える芥川の提議にハッとさせられた。

  • 早耳ネットのCDで「藪の中」を聴いた。朗読:葉山純士郎
    なんなん?これ…。
    欲かいて人生を見失うなってことね。あと、誰もが自分なりの真実を持つ。こんな物語の真実なんて糞くらえだ。
    「羅生門」もそうだったけど、芥川ってまるで人間に絶望しているみたい。なんでこの人が著名なの?今の僕には理解できない。

  • 「藪の中」「羅生門」「地獄変」「蜘蛛の糸」「杜子春」「鼻」の6篇。芥川龍之介は初めてまともに読んだけど、意外と読みやすい。人間の心理を上手く描いている印象。どれも有名な話なので、最初に読む本としては良かった。
    「藪の中」は最初、「え?これで終わり?」と拍子抜けしたけど、後からジワジワきた。真相は色々な説があるようだけど、真相云々より読み手がどういうふうに解釈するかがテーマなのかな。「地獄変」は絵師の話だと思っていたんだけど、大殿様が隠れた主役な気がする。この中では「杜子春」が一番ほっこりする話。他の作品も読んでみたくなった。

  • 30年ぶり位に「藪の中」を再読。
    3人の当事者証言のうち最も信憑性が高いのは、精神錯乱になる必然性が最も低い多襄丸だろうと思うが、主題はそういうことではないのだろうから気にしないでおこう。

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著者プロフィール

小説家(1892-1927)。東京帝国大学文科大学英文学科卒業。創作に励むかたわら、大阪毎日新聞社入社。「鼻」「蜘蛛の糸」など数多くの短編小説の傑作を残した。1927年、服毒自殺。

「2019年 『羅生門・鼻・蜘蛛の糸 芥川龍之介短編集 Rashomon, The Nose, The Spider Thread and Other Stories』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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