- Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062764995
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
人は思い込みにとらわれている
7編のミステリー。読みがいがある。
『独白するユニバーサル横メルカトル』は読みたいと思っていたので、ここで読めて良かった。
地図が語るという、一見ファンタジックな物語なのだが、地図が見た真相は不気味だ。
特に人間の皮を使った地図がでてきたときにはどきりとしたものだ。
お節介な、しかし、主人に尽くす気持ちを最大限に発揮する血右派、穏やかな老執事を思わせる。
独創的なミステリーだ。
『Rのつく月には気をつけよう』
牡蠣がおいしい季節がやってきた。
カキフライを小さい頃に灯油ストーブに突っ込んだことは今でも家族の笑い話だが、ここでの牡蠣はもう少し恐ろしい。
軽妙な文体ではあるが、牡蠣によって人が殺されたかもしれない、という穏やかではない話。
人の心とは思わぬ行動を起こさせるものだが、最後はしっとりと、牡蠣のほろ苦さを残して終わる。
牡蠣を食べながら、といいたいところだが、汚れるので、食べる前にでも。
『糸織草子』
以前読んだ『七姫幻想』二でてくる物語。
すっかり内容を忘れていたので、改めて楽しく読めた。
『克美さんがいる』
これは怖かった。
一度読んだあと、もう一度読み返してみると、なるほど、初めからこうだったのかということがよくわかる。
嫁姑戦争という言葉もあるが、ぶつかり合う憎しみがもたらした最悪の結果に戦慄間違い無し。
人は初めから思い込みの中で生きているのかもしれない。
それにしても、ここまでの思い込み、自分には絶対起きないと言えるだろうか。
いやいや、全て夢のごとし.......かも知れない。
『マザー、ロックンロール、ファーザー』
これはミステリーという区分からは少しずれているかもしれない。
古川日出男もまた独自の世界観をもっているので、これにぴたりと合えばたいそう面白い物語に違いない。
インドとエルビス・プレスリーの出会い。
プリンに醤油、みたいな組み合わせだが、果たして。
人名が面白い。これは気に入った。緑っぽい緑......。
巻末に解説もあるので、収められた作品をじっくり堪能できそうだ。 -
ミステリー好きで、短編アンソロジー好きなのは昔から。なかなか粒揃いで面白い短編が揃ってる。通勤などで、サッと取り出して読むには最適。