ハヅキさんのこと (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 1253
感想 : 130
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062765060

作品紹介・あらすじ

かりん、という琺瑯の響き。温泉につかったあと、すっぴん風に描く眉。立ち飲みで味わう「今日のサービス珈琲」。
48歳、既婚者で「中途半端」な私が夢中になった深い愛――。さりげない日常、男と女の心のふれあいやすれ違いなど、著者独自の空気が穏やかに立ち上がる。虚と実のあわいを描いた掌篇小説集。

感想・レビュー・書評

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  • あとがきにもあった通り、『知っている』人に出会う話と『いろいろな恋愛』に関する話の二種類からなるショートショートの作品群。どの作品もしっかり中身が深く一語一語にはっきりと意味を感じられ、川上ワールドを体験できた。小物もよく使っており、ともすれば読み飛ばしてしまいそうになる所もしばしば。短いながらも一話ずつ噛みしめるようにして読め、ちょっとした隙間時間にちょうどよかった。個人的にはかすみ草が好みだった。評価の星は3.5をつけたいが、システム上できないため4。

  • 川上さんはサラリとした描写が巧みですね。世間では孤独とされている人の世界を描くのが上手い気がする。

  • 過去に関わりを持ったひとたちへの想い。
    満たされているようないないような。居心地が良いような悪いような。
    妙に曖昧な感じがいいです。

    ささやかな掌小説の中に、いろんな思いがぎゅぎゅっと詰まっていて、温かさが溢れてきます。

  • 短編よりも短い10ページほどのお話ですぐに読めてしまった。短いだけに細かい説明がなく読み手の想像をふくらませなければならない部分もある。20年前のこと、とかもあるから短い話の中にその人の半生にまたがっていたりするから行間を読んでじっくりと文章を読むとまた違う感想になりそうだ。

  • 人生のなかの、何ともないような、でもいつまでも覚えているような記憶を思い返して書いているみたいな感覚の短編。

    2022-21

  • 解説にあった、
    「一気に読むより、一ページずつ、一本ずつじっくりゆっくり読むにふさわしい本だと思う。」

    川上弘美さんの作品はどれもそう。この作品も、一つ一つ大切に読んだ。

    日常のなんでもなさを切り取ったお話が好き。
    でも「疑惑」が実は一番面白かったかな。

  • とてもよかった。短い物語を、読むというよりも吸収する、という感じでした。じゅわじゅわ染み込んでくる感じ。どの表現も見逃したくなくて、一文字一文字なめるようによみました。
    景気悪く、捨てた。という部分は本当にその川上さんのセンスがあふれていて、どうにか誰かにこの素晴らしさを伝えたくて部分的に夫に読んで聞かせました。
    貸してくれた先輩に感謝。

  • 日常でふと感じる違和感や雰囲気が表現されてて、ああわかるなあ〜と、ゆったりした気持ちになれる作品。

  • 書き始めの一行から、何気ないちょっとした生活の中に入って、淡々とした物語が始まる。
    すっと終わりがくるけど、その余韻がたまらない。
    作品の中では「琺瑯」「浮く」「森」が好き。

  • 短編でありながら、行間の余白というか、語らずして語られていることが多く、空気感が伝わってくる作品ばかり。特に気に入っているのは、「琺瑯」「かすみ草」「床の間」「白熱灯」「動物園の裏で」「吸う」。すべてを語りきらない余白が、人間の世界の認識のしかたってこうだよなと、逆にリアリティをもって迫ってくる。引っかかったり、急にとんでもないところへ飛んだりする筋運びも、現実はたしかにこんな感じだと、腑に落ちる。作品の世界に浸った後で、自分自身の現実が、これまでとは違う見え方をしていることに気付いた。

  • シュートショートが25話。

    エッセイのような短い話がブツッと終わる感じに最初は馴染めなかったけど、1冊読み終えるころにはこういうのも悪くないなと思うようになっていた。

    言葉の選び方が上手い作家さんだなぁと思った。

  • 23個のちいさな短編集。冒頭の2、3行でふわっと情景が立ち上がって、ふしぎな余韻を残し、去っていく。
    清潔な物語だなあと思った。ひとりひとりが、しゃん、としている。
    日本語が美しいからそう思うのかな。
    「疑惑」や「かすみ草」は、初期の川上弘美っぽいドロリとした感じもある。
    解説もすばらしい。

    • mizutetsuさん
      >解説もすばらしい。

      そですね。
      柴田さんの解説が正しすぎて、あえてここで内容を論評する必要が感じられなかったくらいです(笑
      >解説もすばらしい。

      そですね。
      柴田さんの解説が正しすぎて、あえてここで内容を論評する必要が感じられなかったくらいです(笑
      2010/06/02
    • rinnさん
      >mizutetsuさん
      完璧な解説ですよね(笑) 解説まで読んで、また最初から読み直すと、よりくっきり、世界観が浮かび上がってくるような。...
      >mizutetsuさん
      完璧な解説ですよね(笑) 解説まで読んで、また最初から読み直すと、よりくっきり、世界観が浮かび上がってくるような。解説まで含めてひとつの作品みたいです。
      2010/06/09
  • ありそうでなさそうな日常がありそうに綴られる。
    そこはかとないデジャヴに寂しくて柔らかな気持ちがこみ上げる。
    かなり好き。

  • 短編集。

  • ビターな短編集。

  • 25の掌編小説集。
    どの作品も余韻が心地好い。綺麗にまとまっているとかオチがつくわけではないが、空間や時間の広がりがふわっと薫り作品の奥行きを感じさせる。
    川上作品は語りすぎない行間が魅力的だ。
    読み手の想像力を掻き立てながらも、そっと予感を残していく。
    挙げればキリがないけれど、「琺瑯」「グッピー」「かすみ草」「ハヅキさんのこと」「島」が特に好きだ。

  • ほぼ同じような展開

  • なんでかよくわかんないけど、よく思い出す記憶ってある。なんでだろう? 「ハヅキさんのこと」をはじめとする話、ふと思い出す断片的な映像みたいだった。や〜良い。

  • 川上弘美さんの短編集。
    一話が本当に短い。2,3~4,5ページのものが多い。
    その短い中で、登場人物がうまく描写され、ストーリーがある。当たり前か。
    どのストーリーも、登場人物がどんな人か、こんな短いページ数でも把握できる。
    女性同士の付き合いの話が多く、共感できる。
    面白かった。

  • 解説・柴田元幸

  • 琺瑯
    「町子っていうの」その子は小さな声で名乗った。
    「町子」私はぼんやりと繰り返した。

    短編好きにはたまらない、ふわふわとあわあわとどこに向かうのかわからないまま進み、ベージをめくったら、ふっと終わってしまうこの感覚。「あっ」と思ったあとに、ふふむ、と感じるこの感覚。

  • とても短いお話がたくさん、でもどのお話もすっと世界に取り込まれる感じが好きでした。
    ありそうでなさそうな出来事。中には、川上さんの実体験なのかな?と思うようなお話もありました。
    ぼんやり始まって、ぼんやり終わる、でもはっとするお話です。後からじわじわきます。
    どれも好きなのですが、「ぱちん」と「島」がなんだか良かったです。こんなこと、いつか起こりそうだな、と思うと楽しいです。

  • 川上弘美が好きだ。どうしても好きだ。

  • だめなものはが印象的。前半より後半のほうが好みな気がした。前半は、つかみどころがなさすぎた。

  • 読みやすいしどれもずっしりしてる

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    かりん、という琺瑯の響き。温泉につかったあと、すっぴん風に描く眉。立ち飲みで味わう「今日のサービス珈琲」。四十八歳、既婚者で「中途半端」な私が夢中になった深い愛―さりげない日常、男と女の心のふれあいやすれ違いなど、著者独自の空気が穏やかに立ち上がる。虚と実のあわいを描いた掌篇小説集。

    何処がどうという訳では無いのだけれども、この淡々とした文章でさらりと書かれた短編が沢山入っています。もっと膨らませて沢山本出せそうだなあと凡人は思ってしまいますが、出し惜しみせず書けるのは才能の成せるわざか。
    どの話も落ちは無いし、哀しくもうれしくもない話ではありますが、なんとなくチクリと細いとげが触るように、彼らの先行きが気になるようであります。

  • もうちょっと続きが読みたいと思わせる短編集。
    登場人物は若い人も年配の人も。
    不思議な人、不思議な関係の人。
    もう会わない(会えない)人。
    人との繋がりの儚さ、別れの切なさ、またはすっきり感。
    静かに描かれる。

  • やっぱり好きです 川上弘美さんはほっこりします。

    26編もの短編集ですが どの話もすぐそばに あるような気がするはなしです

    わたしは「かすみ草」がすきです。
    何年も夫婦やってきて わかっている分かり合っているはず…でもね秘密がね あってもいいよね

    「吸う」は とっても色っぽかった

  • なんだろうな、この、川上先生の書く恋愛小説の、べたべたしてない感じ。
    ドライというのともちょっと違うし、さっぱりというほど爽やかでもない。
    やっぱり、なんというか、夏の午後にぬるんだプールで、背泳ぎするでもなく、空見上げてぷかぷかしているみたいな、そんなゆらゆら感。
    すごく心地いいんだよなぁ…

  • 短編集。現実なのにどこか不思議な感覚もあって、でも静かに話は進んでいく、著者のそんな雰囲気が好きです。恋愛話もあったり、日常のさりげない話だったり、今回は人とのつながりが多かった気もします。表題作の「ハヅキさんのこと」が印象的でした。

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著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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