ブラックペアン1988(下) (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062765268

感想・レビュー・書評

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  • 1988年、一人の外科医が姿を消した。
    癌告知はタブー、「神の手」を持つ外科医一人が崇められ、新しい技術が疎まれる80年代の医局で、入局一年目の世良は図らずとも様々な軋轢や因縁、そして外科医の現実と対峙していく。
    医師に必要なのは果たして技術だけなのか、それとも人の心なのか。
    「チームバチスタの栄光」をはじめとする「愚痴外来シリーズ」へと繋がる、最初の物語。
    ――今、すべてに終止符を打つべく、張り巡らされた謀略が作用を始める。

    ラスト30ページの為に頭の350ページがある作品を書く人だ。
    愚痴外来シリーズから、ずっとそう思って読んでいます。私たちは、その「最後」を見届ける為だけに350ページを読む。そして、それにまったく悔いがない。人の体いじくりまわしてる描写しかないのに、この疾走感は何なのか。
    上巻を読んだだけではまだワクワク感がなく星3つでしたが、下巻のジェットコースターばりの展開とお馴染みメンバーへの安心感と渡海への個人的な思い入れにこっちは星5つ付けてしまいました。
    栄光は廃れ、沈黙は無く、凱旋は夢のまた夢の中、これはタイトルが凄く効いてる。好みの作品です。

  • 今回もまた現在の医療が孕む問題を俎上に上げたお話ながら、「イノセント・ゲリラの祝祭」で苦労した理屈っぽさは無く、外科手術を容易にして世の中に広げていく理想に燃える高階と自分の技術の高みのみに拘る渡海の対立を軸に、スナイプ手術の行く末、学会や院長選挙での確執、病院と製薬会社の関係など、20年前から今に至る様々な話題を絡ませて、読ませる。
    そして17年前に遡る佐伯と渡海の因縁から明らかにされるブラックペアンの謎。何となく読めた結末ながら、登場人物それぞれが持つ医者としての矜持を示して悪くない読後感。

  • 面白かったです。

    ブラックペアンにはそんな意味が込められていたのね。
    なるほどね・・・

    でも、みんなかっこいいなぁ~

  • 2010年01月 05/05

  • NHKの[プロフェッショナル 仕事の流儀]の
    移植外科医・加藤友朗さんの回が再放送されてたので、
    また観てた。



    海堂尊さんの[ブラックペアン1988(下)]を読み終わったんだけども、
    先日の日記で、
    「上巻を読んで、(上記の) 加藤さんや、小説の中の高階と
    反対の立ち位置に居るように見える外科医・渡海の発言のその裏に
    何かが有りそうで気になってしょーがない
    だけど、そんな渡海と高階が一致したのがタブーとされてた癌告知の選択で、
    そこに何かヒントがあるのかも~」
    などと書いてたけども、
    下巻を読んでて、それ以上の答えが返ってきたような感じがした。
    「そんなこと言ってるばあいと違うっっっ。」的な。



    技術を個人的に極めることを目指すか、技術の万人への一般化を目指すか。
    技術を磨くことを第一とするか、心を磨くことを第一とするか。
    アプローチやプライオリティは違うんだけども、
    結局、渡海も高階も向かう先は一緒で、
    また、
    渡海の医師としてはアウトローな言動を生み出す原因であった佐伯も
    その行動とは裏腹に実は同じ方向を向いていたとゆー。
    それぞれが、その置かれた立場から、その時々に
    一番良いと判断した考えで患者や医療に向かって居ただけで、
    それはどれも間違いでは無く、だけど正しいかどうかも誰も分からない。



    渡海の言動も、佐伯の言動も、
    その表の部分だけしか見てないと酷いと思われそうなんだけども、
    裏の部分を知れば酷いだけとは決して思えないし、むしろ真摯とも思えたりして、
    人の発言や行動の、その裏にある元となる種を知ることは相変わらず難しいよなぁ、
    とか思ったりもしてて、
    「自分の想いのすべてを他人に伝えることなんて、誰にもできない」のは知ってるけども。
    それでもな…って思ってしまう。



    医療における、
    次の世代への教育と、
    技術や概念の進展(渡海や佐伯が求める専門化)とその周知(高階の求める一般化)の必要性と、
    だけどそれらとは全く関係なく常に患者から求められる安定性と、
    そこからどうしても生まれてしまう葛藤。
    そして、
    その葛藤を打ち破って前に進むには、どうすることが正しいかではなくて、
    海堂さんの言葉を借りれば、その時その時の最適解を求めていくしか手が無いってゆー。
    そして最適解は常に流動的であるってゆー。



    これは医療だけでなく、全てのことに当てはまるように思えて、
    改めて自分の身やその周りに置き換えて考えてしまったり。
    また時間をかけて何度か読み返してみたいところです。



    私には佐伯の高階に向かって言うこの言葉がとても象徴的だったんだけど。
    「お前の企ては自己破綻している。
    このオモチャが一般化するためには、
    今日のような失敗をしたときにリカバリーできる外科技術があることが前提だ。
    だが、オモチャが一般化すれば、外科医からそうした技術習得の機会を奪うことになる。」
    科学の進歩はいつもこうゆうジレンマと隣り合わせだな。
    成長痛みたいなもんなんだと思う。

  • ブラックペアン1988は、チーム・バチスタの栄光やナイチンゲールの沈黙といったいわゆる「田口・白鳥シリーズ」の少し前の世界─田口医師が研修生で登場します─を展開している作品です。

    「田口・白鳥シリーズ」は謎解きがメインになることが多いですが、ブラックペアン1988では新人研修医(世良)の成長物語の様相になっているので、読了感が幾分爽やかです。

  • 2010 1/24読了。Wonder Gooで購入。上巻からいっきに読んだ。

    終盤、佐伯先生が極北大から戻ってくるあたり前後の展開が熱い。
    「ミステリー」というようなミステリーらしい事件があるわけではないが、それでも十分満足な読後感だった。
    世良くんの今後が気になるところ。

  • さすが。
    医療界の内面を、主人公の言葉と行動で示し、共感を生む、その筆致のテクニックは素晴らしい。

  • 医療の専門用語が多く出てきて意味が分からず読み進めなければならないところが多く、巻末にでも用語集でも載せて欲しいな。
    表題のペアンにしても表紙に書かれているから何となく鋏に似た形のモノと分かるが、細部まで想像できない。
    だから手術場面が書かれた部分で、出血点をペアンでつぶして…などの表現が出てきても頭の中にその映像が浮かばす面白さが半減してしまう点が残念。
    内容は医療界の裏話がメインと感じた。
    「医局内の気になる話」「医者とはこんな人種」「教授たちの当てこすりの作法」なとといろんな見出しが頭に浮かぶ。
    ブラックペアンの謎も、そういう方法でしか出来ないのであればしかたないよなとは思うが、その理由を隠すのはどうなのかとは思う。
    医者って大変だなぁ。

  • 世良くんと花房さんとの関係も気になるけれど。。。!
    一気に来た渡海教授と佐伯教授。
    そしてようやくブラックペアンの意味が分かる。
    佐伯教授を私も憎んだけれど
    深い意味があった、やっぱり感動。

    この世界観は本当に好き。
    吉川晃司も最後に書いてたけど、
    私もバチスタよりブラックペアンのほうが好き!

  • 面白い…オペの描写はちょっとリアルだけど私にはよくわかんないから大丈夫です。チームバチスタの20年近く遡った時代の話。
    2010年1月18日読了

  • この人のこのシリーズは単品でとらえると今ひとつ「で?」という感じになるんじゃないかと思う。シリーズを想定された順番で読んでこそ、ということで読者としての自由度が限定されるのは気にかかるところ。それなら「1」「2」とか番号振ってくれよって思うこともある。

    高階院長若かりし頃の作品。
    難しい手術は限られた人にしか出来ないもので良いのか。
    難しい手術を多くの人ができるようにする技術を導入すると、全体の技術レベルが低下するのではないか。
    技術レベルを維持しつつ、困難な手術を広めるにはどうすれば良いか。

    医療だけでなく、技術に関わるあらゆる分野に共通する問題でもある。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    スナイプを使ったオペは、目覚ましい戦績をあげた。佐伯教授は、高階が切った啖呵の是非を問うために、無謀にも若手の外科医のみでのオペを命じる。波乱含みの空気のなか、ついに執刀が開始された―。ベストセラー『チーム・バチスタの栄光』に繋がる、現役医師も熱狂する超医学ミステリー。

  • 上巻、下巻と一気に読了。面白かった。時間軸的には「チーム・バチスタ」から20年近く遡るが、読む順番としては「チーム・バチスタ」〜「ジェネラル・ルージュ」の三部作に目を通してから取り組むのが適切と思われる。

    加えて言えば、一気に読み切った方が楽しめる。分量も適当且つスピード感のあるストーリーなので。多分。

  • チームバチスタシリーズの番外編。 高階病院長の若かりし頃の話。
    時代は1988年。新しい術式を携えて、若かりし頃の高階病院長が講師として、赴任するところから始まる。

    主人公はその時の1年目の医師。世良。
    そのほか、教授とそのライバルみたいな感じで、イメージとしては
    振り返ればヤツがいる風のストーリーで、高階が石黒賢、もう1人渡海という医師が織田裕二。
    あんまり、権力闘争とかがあるわけではないので、白い巨頭風ではない。

    たぶん、シリーズで読んでいる人は楽しめるけど、それ以外の人は多少物足りない内容かもしれない。

    それにしても海堂尊は金脈を当てた感じがします。
    チームバチスタと同じ設定で、本編が4冊、番外編が5〜7冊出ていて、多分これからも出る。
    シリーズ物って強いよなぁ

  • スナイプを使ったオペは、目覚ましい戦績をあげた。佐伯教授は、高階が切った啖呵の是非を問うために、無謀にも若手の外科医のみでのオペを命じる。波乱含みの空気のなか、ついに執刀が開始された―。ベストセラー『チーム・バチスタの栄光』に繋がる、現役医師も熱狂する超医学ミステリー。

  • 面白かった。
    新年早々、幸先のよいスタート。

    思い返したくもない出来事をいくつも重ねて
    何かを手に入れていくんだな、と思う。

    世良先生の成長が良い。

  • いつもどおりにスピーディに読了。

  • エンターテインメント的な文体で読みやすく
    しかも骨太なストーリーに魅了された。

    読み終えてうなるね。

  • 感想は上巻に。
    海堂さんの作品が持つパワーはホント凄い!

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著者プロフィール

1961年千葉県生まれ。医師、作家。外科医・病理医としての経験を活かした医療現場のリアリティあふれる描写で現実社会に起こっている問題を衝くアクチュアルなフィクション作品を発表し続けている。作家としてのデビュー作『チーム・バチスタの栄光』(宝島社)をはじめ同シリーズは累計1千万部を超え、映像化作品多数。Ai(オートプシー・イメージング=死亡時画像診断)の概念提唱者で関連著作に『死因不明社会2018』(講談社)がある。近刊著に『北里柴三郎 よみがえる天才7』(ちくまプリマー新書) 、『コロナ黙示録』『コロナ狂騒録』(宝島社)、『奏鳴曲 北里と鷗外』(文藝春秋) 。

「2022年 『よみがえる天才8 森鷗外』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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