向井帯刀の発心 <物書同心居眠り紋蔵> (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 59
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062765527

作品紹介・あらすじ

次男の紋次郎にまで養子話が出て跡継ぎに頭を悩ませる紋蔵。貰い子の文吉も侠客・不動岩の伜に世話になると家を飛び出した。が、紋次郎が剣術の稽古でいじめられていると知って仕返ししたらしい。子供の喧嘩にしゃしゃり出てきた親は上役の吟味方与力・黒川静右衛門。逆恨みの無理難題を切り抜けられるか。「物書同心居眠り紋蔵シリーズ」第8弾。(講談社文庫)

感想・レビュー・書評

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  • 目次
    ・与話情浮貸横車(よわなさけうきがしのよこぐるま)
    ・歩行新宿旅籠屋(ほこうしんじゅくたびかごや)
    ・逃げる文吉
    ・黒川清右衛門の報復
    ・韓信の胯(また)くぐり
    ・どうして九両(くれよう)三分二朱
    ・旗本向井帯刀(たてわき)の発心(ほっしん)

    何の落ち度もないのに、というか逆に仕事ができすぎて、誰も紋蔵のように古文書の事例を扱えないので、せっかくの定廻り同心から物書き同心へ逆戻り。
    収入も10分の1に戻る。

    そんな時、紋次郎に養子縁組の話が持ち上がる。
    長男を養子に出したので、次男まで養子に出してしまうと紋蔵の家の跡取りがいなくなってしまう。
    断ろうとずるずるしているうちに…。

    文吉も家を出てしまい、次女の麦も養女へ貰われていくことが決まり、紋蔵の家も寂しくなってきた。
    家族の時が過ぎるってこういうことだなあ。

    表題作「旗本向井帯刀の発心」は、なんとも切ない。
    どこの誰の子どもに生れ落ちるか、それは選べるものではない。
    あの日そこに落雷がなければ、馬が暴れなければ、向井帯刀が風邪をひかなければ、紋蔵に絵を見る目がなければ…。
    数々の偶然が重なった結果明かされた、向井帯刀の生まれの秘密。
    そしてそれを知った彼が旗本であることをやめ、仏門に帰依すると決めたことで起きた事件がまた、何の罪もない子どもにこの先苦労を強いることになるのだろう。

    『親の因果が子に報い』とは、今よりももっと重い言葉だったのだろうと思う。
    向井帯刀がいい人であればこそ、余計に残念な事件であった。
    この件では紋蔵はかなり苦しい立場に立たされるが、最後までしらを切りとおすのである。意外と根性がある。

    それに引き換え、家柄の良さを鼻にかけ、親子でねちねちと紋蔵一家に絡んでくる黒川清右衛門はたちが悪い。
    とりあえず今回は閑職に落とされて一件落着だけど、いつか復活してくるかもしれないなあ。

    さて「歩行新宿旅籠屋」は正しくは(かちしんしゅくはたごや)と読む。
    この読み間違いが、紋次郎の運命を決めた。
    漢字、奥が深いなあ。

  • ・与話情浮貸横車(よわなさけうきがしのよこぐるま)
    ・歩行新宿 旅籠屋(ほこうしんじゅく たびかごや)
    ・逃げる文吉
    ・黒川静右衛門の報復
    ・韓信の胯くぐり
    ・どうして九両(くれよう)三分二朱
    ・旗本向井帯刀の発心

    武士の、家で役職を代々受け継いでいくということの厳しさ苦しさというのをここまで深く実感させられたことはない。自分の職場の上司も同僚も後輩もみんな親から引き継いだ仕事なのだ。親の後輩から仕事を教えられ、自分の同僚の子を後輩に持ち、上司の子がまた自分と自分の子の上司になりるのだ。とてもとても恐ろしいほどに狭い世界で生きている。

    自分の跡取り息子を与力から養子にと言われれば断れず、子供同士の喧嘩なのに、相手が上司の息子なら、ゆくゆくは自分の息子の上司になるわけだから、自分だけが我慢すればいい話ではない。波風立てずに穏便に治めなくては、自分だけでなく、息子の希望の配属にも関わってくるのである。大変窮屈で気苦労の多い生活である。

    武士は「お家(いえ)が一番」というのは分かっていたが、こうやって丁寧に書かれている小説は殆どなく、改めて日々の些細な出来事を処理する時にこの狭い環境で適切な対人関係を考慮しなくては生活できないということが理解できた。

    武士って想像以上に苦しい環境だ。

  • 止まらなくなってきた。面白い。

  • 物書同心居眠り紋蔵シリーズの第8集。佐藤雅美のいくつかあるシリーズの中でも最も長いものかもしれない。ぼくも確かこの作家を読み始めたきっかけがこのシリーズだったように記憶する。
    手馴れたというか、安心して読める。いろいろなシリーズを交互に読んでいると主人公はともかくまわりの脇役がごっちゃになるが、読み始めればああそうだそうだとすぐ思い出す。紋蔵の相棒は定廻りの大竹金吾でなくてはならない。今回は黒川静右衛門という憎まれ役がでてきて悶着を引き起こす。まあ最後には溜飲の下がる結末となるわけだが。
    この著者の特徴のひとつが江戸時代の土地貸借などの経済事情や刑罰などの法制度の説明が詳細正確なことだろう。それはそれで興味深くはあるけれど、「拝領町屋敷地代店賃上り高引当貸付」とか「拾ひ物いたし、訴へ出でず儀、顕ニおいてハ、過料」とか随所に出てくるのは多少繁雑に感じることもある。もちろんいいかげんな時代考証等を読まされるよりは正確な史実に則っているほうがずっといいのは間違いないけれど。
    タイトルになっている最終作、「旗本向井帯刀の発心」はさわやかな好作。星四つでもいいのだけれど、文吉をめぐる不動岩の対応にちょっと不審というか整合性がない部分を感じたので少し減点。

  • 事件の思わぬ展開に加え、黒川さんという敵役を得、それぞれの短編としても短編集としても起伏に富む一冊になっている。子供が次々養子に出たり、嫁に行ったりと、家庭面ではめでたいけどなんだか寂しい状況。

  • 江戸時代町奉行所裏方事件帖8冊目

    前巻で現場周りになったと思ったら、裏方に必須の人材と請われて戻って元通りの巻。
    普通になら裏方になってしまうところ、人情を通しながら事件出来事に整理をつけて、解決にもっていく話運びが何とも見事。
    今回は、例繰方にもどって元通りということもあってか、紋藏の私事が結構深く関わるようになって、子供と養い子計4名の将来が決まっていく。子が優秀で、行き先がそれぞれあって良かったというものではあるが、送り出す親の複雑なところも出ていて、それぞれ面白い。
    そのなかで、一番気に入ったものをあげようと思うと「どうして九両三分二朱だろうか。
    あと、この巻通して敵役として出てきた黒川さん。
    紋蔵さんが通す義理人情の反対を行く人で、やきもきさせられたりしましたが、もう退場なのかな。
    紋蔵の周りもいろいろ片づいてしまったのだけど、それはまた人間関係が広がったことでもあり、今後どのように展開するか、また楽しみです。

  • 物書同心居眠り紋蔵 第八弾

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著者プロフィール

1941年兵庫県生まれ。早大法学部卒。85年『大君の通貨』で第4回新田次郎文学賞、94年『恵比寿屋喜兵衛手控え』で第110回直木賞を受賞。おもな作品に『物書同心居眠り紋蔵』『八州廻り桑山十兵衛』『縮尻鏡三郎』『町医 北村宗哲』などがある。

「2016年 『侍の本分』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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