スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 9260
レビュー : 1060
  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062765572

感想・レビュー・書評

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  • これだけは言っておきたい。
    下巻は、絶対に読書環境を整えて読むこと。
    特に終盤は、決して通勤・通学電車の中とか、ちょっとした空き時間とかに読んではいけない。
    没頭できる、心置きなく感情移入できる環境を整えること。

    不覚にも私は家族のいるリビングで読んでしまったので、感情移入が妨げられてしまった…。
    無念。

    素晴らしい物語なのになぜか☆5つ付けない自分がいる。
    作中にも何度か出てくる、物語が心に響く年代というのはあると思っていて、この本に関しては残念ながら私はちょっと読むのが遅すぎたかもしれない。
    それでも、とても良い物語だと思うし、これほどの壮大な話をよく書き上げたなぁと思う。

    (上記、どうしても伝えたかったので、このレビューは「ネタバレ」にチェック入れてないけど、以下は人によってはネタバレだと思うかもしれないので、読む前の人は読まないほうがいいかも)

    ミステリに分類してたレビューを見かけたけど、私の感覚ではこれはミステリじゃない。
    謎を解くのがミステリであって、書き手によって明かされるこの本は、ちょっとミステリから外れている。
    読者は真相を知るけど、登場人物の誰ひとりとして知らないままで終わるから。

    その上で、ばらまかれた伏線の回収はお見事。
    んでも、この作品の評価されるべきは本当はそこじゃなくて、陳腐な言い方になるけど、純粋な愛の形を書き切ってるところだと思う。
    自分のことを好きになってもらいたいから、ではなく、ひたすら相手に幸せになってもらいたいから起こす行動。
    無償の祈り。
    好きって気持ちのごく初発的な形が描かれているから、心が震えるんだ。

    でも、公輝は環の想いを知っている。
    そんで、頭のイイヒトだから、スロウハイツを始めた環の本当の意図にも気づいてるだろう。
    お互いの相手を思う優しさが、最後まで平行線で終わらないことを願うばかりだ。

  • 下巻の伏線回収が見事
    文句無し、ぶっちぎりの
    私的ナンバーワン物語

  • もちろん伏線回収時にカタルシスはある。でも、この物語にはそれ以上のものが存在する。

  • 環さんの気の強さと、その裏にある弱さや健気さが好きです。
    登場人物それぞれに共感する部分があって、今まで自分自身では消化出来なかった感情を、それぞれが消化してくれます。

  • 「チヨダ・コーキはいつか、抜ける」

    冒頭で伝えておかなければなりません。私も確かにその一人です。情熱的な主人公の熱い言動に崇拝し、美しいヒロインの薄幸な姿に魅了された、沢山のステキな物語達に影響を受けた少年時代を持つ一人です。

    腰の落ち着け易い、ちょっとした段差の高みから物語と対峙するようになった今の私には少々、多感な物語だと言えます。

    けれど、スロウハイツに出てくる登場人物達は、そんなハラハラしながら客観的に読み進めている私のような斜に構えたおじさんにも容赦をせず、感動を与えてくれました。

    たしかに、上巻を読み進めてきてそれらの下地の中で「怪しいな」と思う部分は多々あったと思います。
    やっぱりか、と思う所も多々ありました。
    けれどそれがどうだというのでしょう。読み終えてあらためて思い知らされたのは、この本は「ミステリー」ではないという事です。伏線回収がどうだって関係ない。
    登場人物が全力でぶつかり、駆け抜けてきた「物語」だということです。ラストは突き抜けたような爽快感で一杯になりました。

    もう一度言います。私は抜けた者の一人です。

    まだ抜けていない、自身の人生に夢を託すことの出来る方には、ぜひ読んでほしい。
    私が感じた何倍もの感動を得られることが出来ると思います。
    それが夢を持つ人たちの素晴らしい特権、というものなのかもしれません。

    http://chivalryblog.com/2018/06/13/

  • 人間の善意と悪意の捉え方が共感できる作者さんです。冷酷さと優しさが同居した作品で、しかも文章は極めて平易で読みやすい。そりゃ若者を中心によく読まれる(売れる)だろうと納得。登場人物がみんな出世し過ぎのきらいもありましたけどモチーフがトキワ莊にあることを思えばリアリティがないとは言えないですよね。
    重要な箇所ではないと思うのですが、なぜか駅員さんのストーブ置いといてくれたエピソードがぐっときました。

  • ああ。作家てすげえ。って小説の狩野というキャラが言っていた感想。まさにそれ。環の言葉も自分に刺さりまくったし、環に勝ちたいと思ってしまうエンヤにも共感し、正義のように感情を排除して作品を作るやり方も....それぞれの登場人物が人間臭くて、それぞれ持ち合わせていてスロウハイツの住民のやり取りのシーンに思わず声を上げて笑ってしまう。
    読みやすい文体で二日間くらいで一気読みしてしまいました。感情を丁寧に描かれています。

  • ラストにかけて、すべてが繋がっていくのが気持ちいい。

  • 個性の強いスロウハイツのメンバー。それぞれが実はとっても人のことをよく分かっていて、優しい心を持っている。
    2冊通して彼らがどう繋がっているのか明らかになっていくが、読んでいる自分にとっては、「あれはそういうことだったのか!」という納得感があり、非常に読みやすい。

  • 東京都内のアパート「スロウハイツ」では、人気急上昇中の脚本家赤羽環と中高生に絶大な人気を誇る作家千代田公輝をはじめとして、漫画家の卵、映画監督の卵、画家の卵たちが共同生活を送っていた。オーナーの赤羽は、芯が強く仕事も出来るが、恋愛になると不器用になる性格ゆえ、同居人から愛される存在であり、他の者もクリエイターならではの好奇心を抱き、互いに刺激し合いながら苦楽を共にしていた。
    作家の千代田公輝は若くして大成したが、10年前、彼の作品に影響された者が主犯格として集団自殺を図ったことを機に、数年間作品を書くことができなくなった過去があった。そんなとき彼を救ったのは、コーキの天使ちゃんであった。その者は、本を読んだことのない第三者が千代田ブランドを汚すことを許さず、作品の素晴らしさをマスコミに毎日訴え続けていたのである。謎に包まれたコーキの天使ちゃんであったが、その正体は中学生時代の赤羽環なのであった。彼の作品を心待ちにしている彼女たちに生きる希望をもらった千代田公輝と母親の逮捕、両親の離婚、育ててくれた祖母の死など悲惨な経験をした赤羽環、桃花姉妹を陰で支えていた千代田公輝が時を経て再会したのであった。

    最終章までの約700ページが存在したからこそ感動が生まれるのであろう。多くのページを割いて、スロウハイツに住む仲間たちの過去、性格、価値観などを理解し、クライマックスに至るまでの流れを共有することが、最終的にあらゆるエピソードを繋げる材料になっている。換言すれば、筆者は伏線回収が上手く、何百ページも前に登場する何気ないエピソードが次々に繋がりをみせるのである。そういう点で、一気読み必至の書であるといえよう。
    コーキの天使ちゃんが赤羽環であったこと、千代田公輝はその人物を知りたくてかつて赤羽環の元を訪ねたこと分かったとき、体に震えが走った。だから、加々美が千代田の悪口を言ったとき激怒したのか、だから千代田公輝が赤羽と仕事で会った時に久しぶりと言ってしまったのか、だから赤羽が暮らしていた図書館にいきなりチヨダ・コーキの作品が増えたのか、だから買ったプラズマテレビをいきなり手放したのか、だから売られるはずのないコンビニでブランド品のケーキが販売されたのか、だから3食クリスマスケーキだったのか…すべてが繋がったとき読者を感動の境地へと誘うことは間違いないであろう。

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著者プロフィール

辻村深月(つじむら みづき)
1980年山梨県生まれ。千葉大学教育学部卒業後、2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、2017年『かがみの孤城』で「ダ・ヴィンチ ブックオブザイヤー」1位、王様のブランチBOOK大賞、啓文堂書店文芸書大賞などをそれぞれ受賞。本屋大賞ノミネート作も数多く、2018年に『かがみの孤城』で第6回ブクログ大賞、第15回本屋大賞などを受賞し、2019年6月からコミック化される。他の代表作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『名前探しの放課後』『ハケンアニメ!』『朝が来る』など。新作の度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者からの熱い支持を得ている。2020年、河瀬直美監督により『朝が来る』が映画化される。

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