スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 9209
レビュー : 1058
  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062765572

感想・レビュー・書評

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  • 上巻と下巻でガラリと印象が変わる作品でした。

    赤羽環を中心とした、スロウハイツに集まる仲間達の物語。
    それぞれの視点で話が進んでいきますが、漫画家志望の狩野の目線で描かれているものが多く、主役の環や、キーパーソンのチヨダ・コーキがなんだかずっと謎めいていました。

    そのためか、始めは環の事が好きになれず、なんだ、この自己主張の激しく気が強い女は…、なんでみんなに慕われているんだ?と。

    上巻は淡々と話が進む感じでしたが、下巻に入ってからは一気に読んでしまうほど内容が濃かったです。

    環に関してもだんだん人間らしさを感じる事ができ、あれ、これってもしかして…そういう事だったんだ!って最後は涙が溢れてきました。めちゃめちゃ愛がいっぱいです!!
    素直に感動できました。

    辻村深月は誰しも持っているであろう心の闇、負の部分を描くのがとてもうまいなぁと。ラストはそのギャップで完全にやられた感じです。

  • うーん、よかった!

    最後の環と公輝の再会の仕方も映画のシーンのようで、なんとも言えずよかった。

    最終章、二十代の千代田公輝は死にたかったまで読んでようやく環がこだわっていたことの本当の意味がわかる。

    すれ違っていた二人(環が誤解していたり知らなかったりしていることが原因なのが大きい)だけど、最後には幸せを予感できるのがとても良い。

    辻村深月さんの作品に出てくる登場人物って、ああ、私もこんなところがある、とは思うのだけど、その上で、このキャラクターがとても好き!!って風にはあまりならない。

    作品自体はとても好きだし、別にそれが悪いことだとは思わないのだけど、自分にとって痛かったり、恥ずかしかったり、悲しかったり、もどかしかったり、そうした部分を見せつけられているようで時に辛く、憧れを抱けないからだろうか。

  • またやってしまった!
    また、最も理想的な読者になってしまった!

    途中までは、うーん、この本は評判通りもっと若い人が読むべき本だなあ〜この本こそがチヨダコーキだっていう感じで書いてるのかな〜
    って完全に油断して文字を追っていたから、かもしれないけれど、

    最後の章、もう一度出てくる投稿、それを読んで、ああっ…!ってなんかもう一気にきてダメだった。
    最後の章に至るまでに読んだ文章なのに、全然意味が違う。
    不覚にも泣いてしまってびっくりした。

    公輝の言葉、エピソード、すべてに意味があって全部最後に明かされて、とんでもなくあったかい気持ちになる

    なんだよーこいつら両想いだったのかよーって

    自分の中にも、こういうお話で泣いたりあったかくなったりする感情がまだあったことにびっくりしたり

    うわーん、と思いながら上下巻の、表紙、に気付いたときの気持ちったら。

    「まあ、なんていうか。あらゆる物語のテーマは結局愛だよね」

    以下引用
    -------------------

    「あなたにとっては、些細なことに映るでしょう。くだらないと、そう思われるかもしれない。だけど、私の友達はみんな必死だわ。自分にとって何が武器になるのか。それを考えて、小説を書いて、漫画を描いて、必死に世界に関わろうとしてる。これが自分の武器なのだと考え抜き、これで訴えかけることができないんだったら、本当に自分の人生はどうしたらいいんだって、一生懸命なのよ。世界に自分の名前を残したい、それを一度夢見てしまった以上は、と今日も机に齧りついている」
     そのために、負けず嫌いが高じて人に会えなくなったり、衝突したり、自分自身を磨り減らしたり。そうしながら、生きていく。この方法で世界に関わりたいと望んでしまったから。

  • 10代の頃に接した本や漫画や音楽は、例えそれが子供向けの作品で、一過性のものであったとしても、その後の人生に大きな影響を与えると思う。作者はファンにとっては「神様」みたいなものだ。

    環にとって「チヨダ・コーキ」という作家の作品はきっと、この先の人生においても何物にも代え難い宝物なのだろうと思う。自分にも、そういう作品があるからわかる。そしてきっと、辻村深月さんにとっても、そうした「神様」のような存在、宝物があるのだろう。辻村さんが子供の頃から本が好きだったというのが、この『スロウハイツの神様』を読むとよくわかる。

    チヨダ・コーキの本の影響で起こったとされる事件の回想から、スロウハイツに住む人々の日常描写に入る冒頭。そこから、章ごとに過去を織り交ぜ、登場人物の人となりや人生の軌跡が明らかになってゆく。一つの建物を舞台にした群像劇。しかし、退屈しない。あっという間に読み進める。

    赤羽環=コーキの天使ちゃんであることまでは予想がつく。彼女の書いた手紙と、エンヤとのエピソードを比較しても符合するし、苗字の伏線もあった。

    しかし、彼の「ストーカー」までは全く予想できていなかった。「お久しぶりです」という挨拶までもが、伏線だったなんて。2人は想い合っていたし、環が思うのと裏腹に、彼はずっと環のことを知っていた。それを知った上で最初から読み返したくなってしまう。

    謎解きには驚かされたが、本書のメインはそこではない。夢を追う人への静かなエールなのではないだろうかと思う。

  • 登場人物がそれぞれ魅力的でした。身を削って作品を作り上げていく作り手の人たちの姿がリアルでした。話の展開は出来すぎといえるかもしれませんが、それでいいじゃないかと思える気持ちよの良さ。読後感がすごくいいです。とても清々しい。丁寧に読み進めた後の最後の章はもう読まなくても分かるほどでしたが、それが良かった。回収されていく伏線の一つ一つがしみるように腑に落ちていく。終わってしまうのが惜しくて読み進めることをためらってしまいました。

    作者の方は自身ををどこまでも追い詰めてしまうようなこんな話をよくぞ書いたものだと思いました。強い、戦う気持ちが無ければ書けませんね。設定として「人の一生を揺るがしてしまう程の影響力を持つ作家」を描くのは厳しいことでしょうね。ましてその作家のデビュー作としての「V.T.R」まで書かれているなんて..........「V.T.R」このあと読もうと思います。とても楽しみです。そしてできることなら作家チヨダ・コーキ作品をみんな読みたいと思ってしまいました。もちろん環や狩野や正義の作品も。

  • 誰かを想う、その気持ちが人を強くする。コウちゃんが環にしたこと、環がコウちゃんに抱く想い。見返りなんていらない。ただその人を大切に想うがゆえにとる行動は、自分自身の強い推進力になる。
    この本は、わたしにとっての、10代の神様の1人。

  • 純愛だあ。

    現代のトキワ荘といえる「スロウハイツ」にて繰り広げられる
    人間模様。。。
    クリエーターたちの葛藤、喜び、それぞれのいろんな形の愛などなど。
    それぞれのキャラが素敵です。

    チョイ役の拝島司が黙ってスロウハイツを見上げて去っていくなんて
    かっこよすぎだ。
    こうちゃんの回想は不器用すぎて・・・ぐっときます。

  • 私は辻村さんの本を読んで、
    今ここに生きています。

  • コウちゃんの章でとっても泣いた。
    読むと、毎日頑張ろうって思える本。
    特別な時に読みたい本なので、1年に1回は必ず読む。

  • すごい。最後の一章で、涙がとまらなかった。これが一体なんの涙なのか、悲しいのかうれしいのか、自分でもよくわからないけれど、なんかもう感情が溢れた。コウちゃんが、環が、愛おしくて涙がでた。上巻を読んでいるときは、話の主人公がころころ変わるし登場人物がおおいし、時系列がすこし複雑で、苦手かもしれないと思いながら読んでいたけど、下巻に入ってからはもう一気読みしてしまった。読み終わらずに今日を終えることがどうしてもできなくて、今夜中の一時なのにこんなに泣いてしまって、明日まぶたがはれていないことを祈ります。笑

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著者プロフィール

辻村深月(つじむら みづき)
1980年山梨県生まれ。千葉大学教育学部卒業後、2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、2017年『かがみの孤城』で「ダ・ヴィンチ ブックオブザイヤー」1位、王様のブランチBOOK大賞、啓文堂書店文芸書大賞などをそれぞれ受賞。本屋大賞ノミネート作も数多く、2018年に『かがみの孤城』で第6回ブクログ大賞、第15回本屋大賞などを受賞し、2019年6月からコミック化される。他の代表作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『名前探しの放課後』『ハケンアニメ!』『朝が来る』など。新作の度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者からの熱い支持を得ている。2020年、河瀬直美監督により『朝が来る』が映画化される。

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