スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 1058
  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062765572

感想・レビュー・書評

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  • 下巻は一気に読んでしまいました。

    やられましたねー。半分くらいの伏線には気づいたけれど、そこまで張ってあったのかってくらいに、怒涛の回収ラッシュ。しかも、拾い方がとてもおしゃれなんですよね。さりげなくてね。

    上巻で大きな山場をもってくることなく、我慢して溜めて下巻でガッと動かす。なかなか勇気のいる構造だと思います。絶対に上巻で切らせないような興味の引き方をしていて、みごと成功させた辻村さんの力量はさすがです。

    内容に関しても、芸術家たちの内面のややこしい(笑)葛藤を描きつつも、決して飽きさせないように話を展開させていきます。心情描写は軽めですが、ひとつひとつのエピソードが際立っているので、そこから読み取れる人は読み取れるのかもしれない。

    とかなんとか言いながらも、この作品の一番良いところは、やはり主人公たちの住むスロウハイツの暖かさでした。作中でも、優しさとか、厳しさとか、甘さとか、偽善だとか、怒りだとか、愛情だとか、相手に勝ちたいとか、馬鹿にされたくないとか、本当にいろいろな感情がピックアップされていて、それらが真剣に語られているのですが、スロウハイツとそこに住む人々は皆、間違いなく優しい。ほんとうに素敵な世界です。こんなところに住みたい。こんな友人達と夢を追いたい。

    読後感がさわやかで、一抹の寂しさと大きな希望を残して終わる、素晴らしい作品でした。

  • クリエイター(とその卵)たちが集う、トキワ荘のようなスロウハイツ。
    クリエイターはみんなこうなのだろうかと思うほどに、ふだん鈍感に生きているわたしには、彼らの鋭敏なアンテナは時に鋭い刃物のような緊張をも強いるけれど、そのなかにある互いへのリスペクト、強さと優しさ、不器用さが読み手を苦しくさせるほどに押し寄せてくる。

    そして、登場人物を丁寧に描いた(特に大きな事件もない)上巻に比して、下巻の展開の早さ、驚くほどの伏線の回収には、もはや「やられた!」という気分。
    can、ableには鳥肌です。

    絶望のあとの希望が素晴らしくて、ラストのほうはページをめくる手が止まらなかった。
    上巻で登場人物のキャラクターをしっかり押さえていられたからこその下巻だと思う。辻村深月さんは、きっとスロウハイツにぴったりの作家さんなのだろうな。
    ある意味では、スロウハイツの住人達はクリエイターであり役者でもある。すべてわかったうえで、「あ、ここにもヒントがあったのか!」と楽しみながら再読してみたい。

  • 自己実現という知恵の実を食べて目覚めてしまった人間は、もうただ生きるために生きていくことなんて、できない。苦しくて、でも追い求めないではいられない。求めるあまりに己を欺瞞の中に置く人、嘘でもいいからすがる人。挫折して折り合いをつける人。考えるのをやめてしまった人。
    作家だけに言えることじゃない。何かを追い求める人、なし得たいと思ってる人の話である。

    小説を酒に例えた漫画がありましたが、その通りだと思います。自分の中にある殺意だの希望だの愛だの欲望を、小説の力をかりて強くする。
    強くする力を持っている。

    この小説は、世界一可愛いツンデレと、世界一素敵なストーカーの愛の話である。

  • 環の神様、コーキにとってもまた環が神様だった。
    これは環とコーキのラブストーリーだと思った。2人が今までの経緯をカミングアウトしないとこが、第三者にはもどかしく、奥ゆかしく、2人が愛らしく奥深くステキに思える。

    伏線もたくさんあって、ひとつひとつが明らかになっていくのが心地よい。
    コウちゃん、全然手に負えない子ども大人じゃないじゃん!

    すっかり辻村ワールドにはまり、次読む作品を考えている…!

  • 北海道出張のおともに上下巻持って行ったのだけど…、一気読みしてしまった。最終章あたりの一番盛り上がるところを丁度帰りの飛行機で読んだのだけど、途中感心するから感動するやら何度も「落ち着け、ページを繰り急ぐな、ここ大事に味わうところやからゆっくり読めって俺」って自分を制御しようと本から目を離し深呼吸して…機内で挙動不審のおっさん化してもうた。

    上巻含め前半あたりは「トキワ荘物語」+「東京バンドワゴン」みたいなイメージで、これって辻村深月が書く小路作品みたいな感じやなぁと、登場人物のキャラクターを味わって、群像劇的な読み方をしてたのだけど。

    後半の謎解き(?)とスロウハイツ解散の危機あたりで、種まきというか風呂敷をこういう風に広げてたんだと気付く。そこあたりからの収束への進み方が上手い、後で冷静に考えたら、予想できる謎解きだし、展開も推測しやすい類のものだと思えるんだけど、物語との波長が性にあったんだろうなぁ。

    コーキの復活、ケーキの謎、図書館の蔵書や駅のテレビの件、いちいち「そうか、これか」と得心が行き、その都度ため息をつき…

    落としどころに向かって収束まで上手に構成された小説を読む醍醐味を、存分に味わえて幸せになれる作品でした。

  • 相変わらず伏線がすごい。
    これも伏線だったの!?と思う所がありすぎ。

    もどかしくて、早く結末が知りたくて、でも終わってほしくない。
    ずっと続いてほしいと思ったお話。

    コウちゃん、それ完全にストーカーでしょw

  • 停滞はよくない。

    いい男に釣り合いたいなら、自分の力で、まず頑張るべき・・・。

    ありのままの自分を大切にするのは良いことだと思う。でも、自分の未熟な部分を放置してしまうようではいけないなと思った。

    生きている限り、成長し続けたい。それがどんなに些細な事でも。

    人に頼ったり、甘えたりする事も大事だと思う。
    でも、それが楽なことに気付いて、相手に寄りかかることだけを考えるような人にはなりたくない。

    相手に縋る前に、まずは努力する人でいたい。
    自分の力で頑張ることが出来る人でいたいと思った小説でした。

  • 上巻では謎だった事柄がどんどん明らかになって、おもしろい!

    チヨダコーキ目線の過去のお話、すごい好き。
    他の人から見たら「?」と取られる行動が、全部優しさによるものだったんだなあ、と気づかされ目頭が熱くなります。

    上巻で好きだと思った登人物達がより一層好きになってしまいました。

    同じ事や同じ物でも人によって捉え方が違う。
    良く思われたり悪く思われたりするけど、それを周りの空気に乗っかってなんとなく良く言ったり悪く言ったりって良くないな。
    とこの本を読んで改めて思いました。
    ちゃんと自分を持っていられる自分でありたい。

  • 登場人物全てがだいすきになった。
    こういう終わり方で本当によかった。

  • もう楽しくて楽しくてページをめくる手が止まらない!もう伏線がすごすぎて!読み終えた後もう一度読みたくなります。

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著者プロフィール

辻村深月(つじむら みづき)
1980年山梨県生まれ。千葉大学教育学部卒業後、2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、2017年『かがみの孤城』で「ダ・ヴィンチ ブックオブザイヤー」1位、王様のブランチBOOK大賞、啓文堂書店文芸書大賞などをそれぞれ受賞。本屋大賞ノミネート作も数多く、2018年に『かがみの孤城』で第6回ブクログ大賞、第15回本屋大賞などを受賞し、2019年6月からコミック化される。他の代表作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『名前探しの放課後』『ハケンアニメ!』『朝が来る』など。新作の度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者からの熱い支持を得ている。2020年、河瀬直美監督により『朝が来る』が映画化される。

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