スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062765572

感想・レビュー・書評

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  • 317ページ
    940円
    9月20日〜9月22日

    人気作家チヨダ・コーキが暮らすスロウハイツの住人たちは、平和な日々を送っていた。新たな入居者、加々美莉々亜がくるまでは。コーキに急接近する莉々亜の存在が不穏な空気を漂わせる中、突如判明した驚愕の事実。赤羽環のプライドを脅かすこの事件がどんな結末を迎えるのか。そして皆、スロウハイツを旅立つ時が来る。

    ラスト50ページが、かなりおもしろかった。それまでのフリが長すぎた。幹永舞、鼓動チカラがどっちがどっちか、どういう設定だったかわからなくなって混乱した。辻村深月さんの若い頃の話は、こんなんだったのかと感慨深かった。

  • 期待していたものが大きすぎたせいか少し物足りなさもあったけど、辻村深月さんの物語は最初から最後まで巡り巡っているようで好き。
    終盤、天使ちゃんは環じゃないかと予想はできてしまったし、図書館にコウキが本を寄付したこと、駅にテレビをつけたことも予想出来てしまった。
    ただサンタさんがオズのケーキをくれたところはそれでも感動し、姉妹愛がとてもよかった。
    そしてコウキと環が初めて会い握手を交わしたシーンは、あぁそういうとこだったのかと感動。最後のニューヨークでの「久しぶり」にも繋がった。
    個人的には環の書いたSF〝サッカとガカ〟の話がよかった。この作中作を読むためだけでも価値があった。

  • 様々なクリエイターが住む「スロウハイツ」。ここに一人の少女がやってくる。
    登場人物の前後関係が少々分かりづらい点があるが、これはあえて補完してくれ、ということなのだろう。
    創作者の苦悩などが描かれていて興味は惹かれるのだが、なかなかに入り込めなかった。題材は魅力的なだけに残念、自分には合わなかった。

  • 上下巻読み通すのに、時間がかかった作品。
    上巻を読んでから、下巻を開くまでに間が空いてしまったせいもある。

    私が読んだ辻村深月作品の中では、唯一と言っていいくらい、登場人物たちの前後関係というか、背景が分かりにくいと思った。

    スロウハイツに住んでいる人たちは、それぞれ作家、漫画家の卵、脚本家、画家を目指していたり、編集者だったりするわけだけれど。
    彼らが生み出す作品の絡みとか、小説が漫画になるまでの流れとか、今一つ頭に入ってこなくて、あまり感情移入できなかった。

    この時期、忙しくて本の世界に没頭できなかったせいもあるのか…

    最後、伏線回収されていく過程は面白かった。でも大量に発注したクリスマスケーキを、たったひとつプレゼントするために、何日もかけて自分でケーキを食べ続ける、という描写は、非現実できすぎて、どうにも共感できなかった。
    チヨダコーキが、狩野とスロウハイツのリビングで仕事をしながら言う台詞。

    気に入ったフレーズは、
    「いいことも悪いことも長くは続かない。いつか終わりが来て、それが来ない場合には、形が変容していく…」というところ。

  • この作者さんの終わり方が好きで読んでいます。

  • 環と妹ちゃんのエピソードにうるうる

  • 上巻で深められた登場人物達がどのような結末を辿るのか期待しながら読んだ下巻。
    まさかのスーと正義が別れる所からスタート…変わらないことなんてないけど、スーと正義のカップルを推してたから少しショック。
    でもそこから正義が覚醒し映画監督として花開く展開は納得した。

    正義や狩野が物語に与えた意味について、私はコーちゃんとの対比というか、ひとつの創作者の在り方の提示かなと感じた。
    正義は現実世界で感情を閉じ込めないとそれが作品に出てこないつくり手だった。
    同じく狩野も闇の引き出しを持ちながらもそれを作品に昇華することを拒んだ。一方で闇の引き出しをもって活躍のきっかけを掴む。
    その一方で、コーちゃんは書き続けた。スロウハイツの生活という幸せの中でも。コーキの天使ちゃんという光をもって。

    コーキの天使ちゃんの正体含め、これまで謎だった部分が綺麗に回収されてさすがだと思った。
    纏めると盛大な両片思い。エピローグの満足感がすごかった。

  • 一つの屋根の下に集まった人達のお話。皆さんの方向が真っ直ぐで心地良い。上巻はなかなか盛り上がらないなぁなんて思ってしまったが、下巻はいろいろ繋がって興奮させられた。こんな才能が集まるなんて、などと思ってしまうが正に現代のトキワ荘なんだなぁって感じだった。いい意味で期待通りのお話。

  • 上下巻合わせて839ページ…なかなかの大容量でした!
    上巻の伏線が下巻でどんどん回収されていって圧巻でした!不覚にも途中でウルッときてしまいました

  • Audible読了
    うんうん、世間とかけ離れた唯一無二の愛。永遠性をにじませるラストにはうっとりした。怒涛の伏線回収もきれい。上巻では恋愛不感症を悟った私が、下巻でさらに叩きのめされた。がびーん、感じない。(表現)
    あーぁ、、やっぱり歳食ったんだなー。チクショウ。

    ──自分の力で世の中に関わろうとしろよ。
    そんな野太い叫び声を10代の私に送ってあげたい。赤川次郎さんとか水野良さんを読んで空想に耽ったあの頃に、こういう本も必要だったんだと思う。少し痛みを持ち合わせたような本が。

    ちょっと無敵感のある足長おじさんにも感じたけれど、そもそも足長おじさんって無敵だよね。タイガーマスクとか、VIVANTのベキとか。あぁっ。気づくとやっぱりおじさん目線で見てるわー。

    美しい物語に感じない冴えない中年が、若い足長おじさんにエールを送りながら読んだ。救われた娘の自立にも涙目になる。それはそれで、ありふれた唯一無二の愛なんだよね。

    これからクリエイターとして戦おうとする人たちにエールを。

  • 期待値が高すぎたせいか、読了感がまあまあでした。
    ちょっと長かったかなぁ。

  • チヨダコーキと環のための話という印象。散りばめられた伏線が下巻で一気に回収される。スーや莉々亜の言動にイライラし、読後感はまあまあ。

  • 作家だったり漫画家だったり若いクリエイターたちの青春物語。いいことばかりじゃなくて過去の闇が今を引き立ててる。絶望から希望が生まれる瞬間や、そこに自分が関わること、その人のことが好きだということが伝わってきた。ほんとは全部知ってたんだーー!ほんとに優しさでしかない。計算高い?のに頭良くて純粋すぎるコーキと環の二人が良い。

  • 上巻と下巻の序盤までは冗長で、登場人物達にも感情移入できず、あまり面白くないと感じていました。
    下巻の中盤くらいになってから、ある人物の視点になって面白くなり、しっかり良い感じに終わったのでよかった。

    ただ、そこまで至るまでが長かった。伏線を張るのも大事だし、いろいろ人物を掘り下げて書いてくれるのは大事なんだけど、もう少し短くてもいいかなと思った。

  • 後半の展開はさすがの辻村深月。
    ただ、高校生の頃にざっと読んでいた記憶が微かに残っていて、初読のときのような感動は味わえなかった。
    小説は雑に読んでは勿体ない。

    「ああ、僕は―。
    僕はあの子が好きなんだ。
    言葉にして一度思ってしまうと、ありとあらゆる感情の波が押し寄せてきて止まらなくなった。」

  • 登場人物がそれぞれ個性的で彼らの生活を見ているのはなかなかに楽しかった。後半に一気に伏線回収のような展開になるのが少しもったいない気がした。
    芸術関係の世界で生きていく若者の世界というのが私にはイマイチ想像しにくかったので、リアリティが感じられなかったというか共感性は引くかった。

  • 環とコウちゃんの関係性が素敵だと思った

  • 伏線回収があって良かったとは思いましたが、辻村作品の中では今のところ私は好きではない部類かも。

  • 色々伏せられていたことが明らかになる巻。
    後半、公輝視点でのエピソードが明かされて、環の過去が補完される。「お久しぶりです」はずっと引っかかっていたので。
    他にも細かいエピソードがほんとにキッチリ書かれている。バイトのサンタクロース、やけに詳しく書くから公輝なのかなーでも素っ気ないから違うのか・・・と思いきややっぱりそうだった。
    でもハイツオブオズのケーキをコンビニで売っていたり、駅の待合室にテレビを設置したりだとかは、違和感は感じつつも公輝が意図的にやったものだとは思わなかった。
    未成年の女の子の跡をつけて盗み聞きすることを繰り返すのは傍から見ればストーカーになるんだろうけど、された方から見て善い行い・有難い行いでしかない場合、どうなんだろう。でも引際は見極めないとね。

    登場人物も割と多いのに、視点がコロコロ変わり、人物だけでなく地の文も混ざったり。今思えば、「なんでこの人物がこれを知っているんだ」という場面をナチュラルに入れ込む為だったのかなと思う。
    ただ、全員の年齢が分かりにくかったなぁと。自分がこれぐらいの年にはどう考えていたかって、私にとっては結構重要。

    容姿について。辻村作品を読んでいると割と、かっこいいとかイケメンとか、顔が良いという表現が出てくるけれど、何となく違和感というか。
    その人がモテるか・魅力的かどうかって総合的な要素で決まると思うから。
    例えばp.70「そんなにいい顔じゃないよ」(だからモテない)というように見た目が最優先というか見た目さえ良ければモテるというような言い訳みたいな印象を受けてしまって。見た目に加えて、性格・人間性・言動も大いに評価されるものだと思っている。だから第一に見た目を重視する、そんな人ばかりじゃないよと言いたい。好みも人それぞれだし。
    そこまで引っかかることもないのかも知れないけど。

    容姿と言えば勝手に想像していたのが、なぜか環は猫目のツインテールで黒い服を着ている印象。
    公輝は雰囲気がデスノートのLっぽい感じ。
    そしてチヨダコーキ。アニメ化していて萌え系で、ストーリーはファンタジーだけど残虐性もあり。ブラン≒ジャンプで連載を持っている。「チヨダ・コーキはいつか抜ける」ということは、ライトノベルのような作風・・・私の中では西尾維新が近いのかなと思った。解説も書いているし。

    上巻から環みたいな地雷が分からない人って苦手、と思っていたけど、妹は逆にいい子ちゃん過ぎるというか、現実味がない。スーの言う「女性同士の不文律」も嫌いだな。人間はエスパーじゃないから、思っていることは言わないと伝わらない。伝え方は重要だけど。
    拝島が出てきた時、人間が出来すぎていて環には合わないのではと思っていたら、途中であっさりフェードアウトしてしまった。でも環が傷ついた内容は、自分で伝えないと分からないことで、それでも察して欲しいというなら、やっぱり拝島は合わなかったんだな。
    そして人づてに聞いただけで気持ちが分かってしまう公輝はやっぱり環のことをよく見ているし、相応しいのだろう。

    辻村作品には毎回痛々しい過去や経験をしている主人公が多くて、自分までダメージを受ける。まだ作者が若い頃の作品だからかな。文体も何となくまだ幼い感じ。

    この小説を読んでいて思ったけど、環のように作者自身も体験や心情を作品に反映させていたりするのかな。
    例えば憧れの作家に近付いた時の思いとか、親子の確執とか。
    特に、p.369「幸せになったくらいで、書けなくなってたまるかっつーの!!」これは作者の主張なんじゃないかな。
    あと黒木智志という存在。
    本来味方であるはずなのに、冷酷さや極端な合理性を以て自ら敵の立場になることでチヨダコーキをマネジメントしていく。あくまで仕事・会社の為に。
    だから優秀な編集者が必ずしも作家の味方やメリットになるかは分からなくて、作家もある程度コントロールできないようでは上手く活動できないのかもしれないと思った。

    この作品は、新社会人~20代半ばぐらいの人に一番刺さるんだろうな。自分の才能を生かそうと頑張る人、芸術を職業にする人に憧れる。スロウハイツは、ちょっと集まりすぎだとは思うけど。芽が出ないまま終わっていく人もごまんといるんだろうなあ。

    どうでも良いことだけど、『噓泣き女の末路』が『嫌われ松子の一生』を思い起こさせる。ゴロが似ていて。
    あと「ハイツオブオズ」のチョコレートケーキ、読んでいて何回も食べたくなった。

    ★3.5ぐらい。

    20230208

  • 朝の情報番組で「伏線回収がすごい」と紹介されていたので、気になって購入して一気読み。確かに後半の怒涛の展開は見事で、ここも、あそこも、そういうことだったのかという事柄が盛りだくさんで、ページを捲る手が止まらなかった。
    ほんのり切なく甘い恋愛表現も辻村さんぽいなぁと思った。
    全体的に好きな感じだったけれど、個人的に、細かい気になることを言うと、
    ・一人称?三人称?主体が誰なのかすっと入ってこない文章がところどころあった
    ・チヨダブランドが、萌えキャラ、ヒーローアニメっぽい、残虐、でもすごく感動して中高生に人気、というその内容がいまいちイメージできなかった
    ・莉々亜と幹永舞のエピソードはちょっと無理があるんじゃないかと感じてしまった
    ので、評価は迷ったけれど星3で。

  • 上巻よりあっという間に読めた。でもやはり上巻の印象と同様、動機や設定がなかなか違和感がある。とくにコーキが環と桃香姉妹をストーキング?してるところ。ケーキも。ちょっと作り込み過ぎと思う。他の作品を読むかどうか悩み中。

  • #読了 #辻村深月 #スロウハイツの神様 #読書好きな人と繋がりたい

  • 読み終わってしまった。
    展開がよめてもなおヒキコマレタ。

  • 最終章は読む価値あり。
    それまでの冗長な話が吹き飛ぶ。

  • 住人それぞれ、個性が良い。好きになれる人、なれない人もいるがそれも良い。
    少しだけ不器用でとても優しいキーパーソン2人がとてもいい。

  • とてもきれいなお話だと思います

  • ミステリー好きなので、読み始めてこの世界観に馴染めないまま読み進めていったけど、下巻の後半になってやっと少しうるっときました。

    赤羽環とチヨダコーキのヒューマンドラマ…

    こんな特別な2人って世の中にはいないなと思いつつ、心の内でお互いがかけがいのない存在になっているのに素直になれない。

    とても素適な小説だと思いますが、ミステリー好きな者としてスロウハイツで殺人事件が起きて欲しかったです。(笑)?

    辻村深月さんの作品の暖かさが十分に伝わってきたけど、同時にその暖かさは自分に必要ないものかなと確信を持てました。

    非道なサイコな作品を求めてた自分にとって、もう辻村深月作品は読まない。

  • #スロウハイツの神様 上下
    #辻村深月

    主語の分からない一人称視点的な語り口で、自分もスロウハイツにいるかのような気になれる。

    くすぶる若き才能への作者の愛を感じる。

    最後も微笑ましいファンタジー。
    だがしかし、チヨダ・コーキは侮れない。

  • 上巻は長いなーと思っていたけど、下巻は環とコーキの最後がよかった!

  • 最後の伏線回収はとてもよかったけど、ちょっと長すぎて途中中弛み感が大きかったので星3つ。
    評価高かったから期待しすぎたのもあるのかも。

著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

辻村深月の作品

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