1/2の騎士 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 51
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  • Amazon.co.jp ・本 (688ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062765657

作品紹介・あらすじ

"幸運のさる"を見つけた中学生が次々と姿を消し、盲導犬は飼い主の前で無残に殺されていく-。狂気の犯罪者が街に忍び寄る中、アーチェリー部主将の女子高生・マドカが不思議な邂逅を遂げたのは、この世界で最も無力な騎士だった。瑞々しい青春と社会派要素がブレンドされた、ファンタジックミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 4人の殺人鬼に幽霊の女装少年と女子高生が立ち向かう連作集。

    キャラクターは分かりやすくコミカルなのに対し殺人鬼の犯行や展開は重くそのギャップが面白かった。

    各話にでてくるトリビア的小ネタが楽しい。特に天気俚諺の話。
    話のなかではドッグキラーが勢いもあり最後までハラハラできて一気に読むことができた。

  • 出てくる人たちがみんな1/2な感じで色々と考えられたのでよかった。異常な動機への共感は難しかったけど、でもそれも実は大差無いねという結論かな。最後の方のサファイア絡みの展開は少し不満だけど。

  • 初野晴『1/2の騎士』読了。
    文庫700頁弱の大作ながら、読みやすさ、構図の美しさ、テーマ性、物語の求心力、どれをとっても素晴らしい。女子高生マドカと相棒役のサファイヤという主人公たちがしっかり軸となり、様々な形で葛藤するマイノリティへの壁を超えながら、街に現れた四人の異常犯罪者に立ち向かっていく。長い作品にありがちな空中分解は起こらず、テーマもぶれず、加速していく。
    驚かされるのはその可読性。文章における読みやすさももちろんだが、ストーリーの運び方が上手い。章ごとに次が気になり、期待通りしっかりとオチる、そしてまた次の章が気になるようにできている。連鎖的に読者の感情を惹き込んで行く。
    章立ての構図も工夫されていて、「騎士叙任式」と銘打たれた「もりのさる」の事件は後に感情移入させるための細やかな工夫になっている。その後の「序盤戦」から「終盤戦」に至るまでの禍々しい異常犯罪者との対決は謎としても魅力的だがミステリ的な仕掛けもそれぞれ技巧的。
    飼い主の前で盲導犬を殺すドッグキラーとの戦いでの意外な真相、部屋に気配だけを残す侵入者インベイジョンとの戦いでの動機の悍ましさや解決のロジック、毒を散布する姿なきラフレシアとの戦いでの狂気的に歪んだ「捻れ」は印象的。民間伝承を用いるのも面白い。
    主人公二人の成長と苦難の物語として、徐々に危険な強敵と出会うのは段々と本質的で誤魔化しの効かない絶望と葛藤に向き合うということでもある。
    「一騎打ち」における灰男グレイマンとの対決はある種「騎士叙任式」と対になるべき物語。全てが終わっていく切なさが苦しくなる。
    物語が面白いことがそのまま感情移入に繋がっていき、綺麗に最終章を迎える。そのシンプルさ何より魅力的な作品

  • アーチェリー部主将で同性愛者の女子高生マドカと、女装男子高生おばけのサファイヤが、濃くなく爽やかな雰囲気。ドックキラー他、登場人物の通称からはゲームみたいな空気を感じるけれど、ファンタジックなのはサファイヤだけで異常連続犯罪者たちはしっかり現実のミステリだった。ガラス工芸の灰男の狂気が鮮烈だった。

  • 高校3年生アーチェリー部主将円裕美。
    女性しか愛せない、喘息の持病がある、
    そんな普通とは違うマドカは、一目ぼれをした。
    相手をサファイヤと名づけるが、サファイヤには秘密が。

    この二人のコンビが東北のある都市に潜む
    猟奇的な愉快犯たちと対決していく物語。

    ファンタジー要素もありますが、推理ものとしても
    十分楽しめる作品です。

    人物設定ゆえに、最初はとっつきにくかったですが、
    事件が始まってからはどんどん世界に引き込まれました。
    色々と疑問は残るところもありますが、それでもやっぱり
    楽しい作品です。

    中盤戦が一番面白かった。

  • “幸運のさる”を見つけた中学生が次々と姿を消し、盲導犬は飼い主の前で無残に殺されていくーー。
    狂気の犯罪者が街に忍び寄る中、アーチェリー部主将の女子高生・マドカが不思議な邂逅を遂げたのは、この世界で最も無力な騎士だった。
    瑞々しい青春と社会派要素がブレンドされた、ファンタジックミステリー。

  • 【収録作品】騎士叙任式 もりのさる/序盤戦 DogKiller/中盤戦 Invasion/終盤戦 Rafflesia/一騎打ち GrayMan/後日談 ふたりの花 
     マドカの行動力もさることながら、見守る大人たちに分別も行動力もあるのがいい。作者が登場人物ひとりひとりときちんと向き合っているように感じられる。

  • 《世界は不思議と偶然にあふれている---私が出会った、最後の頼り。最弱の騎士の物語》

    とある街に、集ってしまった異常犯罪者たち。
    「もりのさる」「ドッグキラー」「インベイジョン」「ラフレシア」「グレイマン」。
    そして、犯行手口を見破り、事件を未然に防ぎ大切な人を守るため、マドカとサファイアの2人もまた、縁に結ばれていく。

    ベターハーフじゃないけれど、リボンの騎士とニブンノイチか。
    「1/2の騎士」っていうタイトルがもう1つの詩みたい。

    どの事件にも、「社会的弱者」を対象にした社会問題や人間の不安定さがあらわになっていく。
    ただのミステリ、ファンタジー、エンタメとしてでなく、こうした問題性を浮き彫りにしていく見事な作品。
    謎も、解決も、抜群な面白さ。

    それぞれのエピソードもつながりがあり、登場人物たちに役割が最初から最後まであるし、アニメで見てみたい。
    でもあれか、結構犯行手口とか毒とか実際の事件や団体に言及する必要がなければ成り立たないので、難しいかな・・・。

  • 好みのタイプの本ではなかったけど
    作者が書きたいテーマや意図は伝わってきました。

    いい本だと思います。

  • マドカとサファイア、個性溢れる2人の主人公が禍々しい4人の犯罪者と戦う話。
    前半では多くの伏線を張り、後半からクライマックスにかけて一気に回収していく様が読んでいて清々しい。中でもサファイアの正体に涙。

    主人公2人のキャラがハルチカの2人と被る、
    600ページだったが、長さを感じさせない程おもしろかった。初野さんの著書の中で一番の傑作だと思う。

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著者プロフィール

1973年静岡県生まれ。法政大学卒業。2002年『水の時計』で第22回横溝正史ミステリ大賞を受賞しデビュー。著書に『1/2の騎士』『退出ゲーム』がある。

「2017年 『ハルチカ 初恋ソムリエ 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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