警視の孤独 (講談社文庫)

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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062765800

作品紹介・あらすじ

連続放火、殺人、誘拐。寂しさの連鎖が悲劇を招く
不審火に残された新たな犯罪の鍵。うら若き女性消防士の協力のもと、警視キンケイドと、パートナーのジェマが難事件に挑む。

ヴィクトリア朝の歴史ある館が火事になった。持ち主は、地域の再開発に反対していた大物政治家。焼け跡からは女性の遺体が見つかる。警視・キンケイドと警部補・ジェマをあざ笑うかのように、犯人は第2、第3の放火を企て、行方不明者は10歳の少女をはじめ、女ばかり3人に。警視の家庭にも危機が迫る!

感想・レビュー・書評

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  • 火事の跡から見つかった女性の死体。特徴が該当する行方不明女性が3人。火事と殺人と失踪事件をキンケイドとジェマが追う。

    いや〜。待ってました。
    前半4冊が絶版になってしまったので、もう新作は出ないもんだと諦めてたよ。嬉しくて600ページ一気読み。
    今回は殺人、火事、失踪、誘拐と事件が絡み合い、姿を消した女性の誰がどの事件に関わっているのかを軸に読ませる。
    誘拐犯の動機と正体だけは早い段階で分かったけれど、それが気を殺ぐ事はない。謎解きが主題ではないので凝ったトリックは使われておらず、その分じっくり捜査の進展を追うことが出来る。
    ありがちな犯人や動機が空々しく感じないのはそこへ到るまでの過程がしっかり描かれているからだと思う。
    横糸はキンケイドとジェマの家族としての関係。仕事を持ったジェマが家族と仕事の間で悩むのだけど、今の形を変えたくないばかりに先への一歩を踏み出すことに葛藤する姿はとても共感できる。
    パートナーのキンケイドも欠点のある人間として描かれていて、いいんだよなぁ。
    今回もいくつかの人間関係が形を変えていく。この先がどうなっていくのか、キンケイドとジェマだけでなくすべての人に対して気にかかる。次作が実に楽しみ。

  • 警視キンケイド・シリーズの第十作。

    火災現場で女性の遺体が見つかる。
    事故に見せかけるための放火なのか、
    保険銀詐欺のための火災なのか、
    連続放火魔の犯行なのか、捜査がはじまる。

    女性の身元を確かめようとすると、
    次々と女性の行方不明が判明してくる。
    火災現場の近所の病身の老女の同居人。
    女性用のシェルターに通う女医。
    その元夫がバーで出会った女。
    火災現場の建物の所有者の娘。
    いったい、誰が遺体なのか。

    でも、なんといっても山場は、
    火災だと嘘をついて消防官たちを呼び、
    子供が閉じこめられた家に押し入った場面だった。

    前作で人生の転機を迎えたジェマの元大家、ヘイゼルは
    スコットランドに行ってしまったらしい。
    キンケイドの従兄弟の妻が再び登場したが、
    もとの教区に帰って行ってしまった。
    キットの親権を巡っての裁判が始まり、
    DNA検査をすることになるが、大丈夫なんだろうか。

  • ストーリーは面白かった。シリーズものだけど、これから読んでも楽しめた。ロンドンの街をもっと知りたくなった。

    ただ、大勢の一人称は読みづらく、慣れるのが大変。翻訳本はこういうの、多いわ。
    登場人物が多いせいないのかなあ。一人称が少ないと、それぞれの人間の本当の気持ちはわからないけど、そこを推し量って読む方が好き。

  • 警視キンケイド・シリーズ第10作。

    放火による火災に見舞われた建物から他殺体が見つかる。一方、火災現場近くで女性の失踪が相次ぐ。これらに関連があるのか、キンケイドとジェマが共に捜査にあたる。

    このところジェマの活躍ばかりが目立っていたが、久しぶりにキンケイドの登場シーンが多かった。複数の事件が交錯し緊迫感があるものの、放火犯を特定するところがあっさりしすぎていて物足りない。

  • キンケイドとジェマのシリーズ10作目。シリーズとして長く続くものはどれもそうですがこれも登場人物の設定と描写が丁寧で事件と同じくらいか、それ以上に人間関係がどうなってゆくのか、というところが読みどころ。前作で勃発したキンケイドの息子キットの親権争いが訴訟に発展しそれだけでも人生の一大事なのに放火が疑われる現場跡(しかも焼けた建物のオーナーは政治家)から身元不明の女性遺体が発見され、行方不明者を捜すと該当しそうな不明者が複数出てきてそれぞれがまた他の問題をはらみ、捜査の的は絞られるどころかやることは増えるばかり。所轄の違う刑事同士や刑事と火災捜査官らの縄張り意識ややっかみをうまくさばくのに疲れてへとへとに。信頼と裏切り、というテーマを軸に複数の事件が同時進行で進み最後にどどどどどと解決するところは迫力がありました。次作を読むのが楽しみ。

  • 火事現場から見つかった遺体。子どもの行方不明事件。
    仕事上の問題にキットの親権審問が進行し、さすがのキンケイドもなかなか大変なようでした。
    このキンケイドシリーズは、ジェマとの関係もさることながら、子どもの問題、事件のことなどかなり読み物としてはぎゅっと詰まった感じがして面白いと思います。
    でもかなり久々に読んだような気がしましたが、最近出ていなかったんですね。

  • 2010年発行の新作。
    この作品からでも読めます。
    スコットランドヤード(ロンドン警視庁)の警視ダンカン・キンケイドと、パートナーのジェマの二人が主人公のミステリです。
    ハンサムで知的なダンカンと、明るく人の話を聞き出すのが得意なジェマ。
    ジェマが部下だった頃は仕事でも一番の組み合わせでしたが、今はジェマが出世して警部補となり、ノティング・ヒル署へ移っています。
    そろそろ次の出世を期待する回りの圧力を感じているダンカン。
    サザーク地区の放火現場に死体があり、建物が有名な議員所有のもので騒ぎになりそうなため、出向を命じられます。
    サザーク地区は再開発中で、そこも高級マンションに改築中のヴィクトリア朝の館でした。ところが議員は再開発には反対のはず?
    向かいのビルの監視カメラに、議員の娘クロエの姿が…?彼女は行方が知れません。

    一方、若い女性消防士ローズが、放火事件の共通性に気づきます。
    消防士の世界がけっこう出てくるのが興味深い。
    ジェマは友達(ダンカンの従弟の妻で司祭)に頼まれて、身体の不自由な女性ファニーの同居人エレインが行方不明になった件を調査することに。
    ファニーの家は、サザークの放火現場から目と鼻の先。
    ダンカンとジェマの捜査が交錯してきます。
    同じ頃、少女ハリエットと、その母も行方がわからないと…
    その母の勤め先もその近くなのです。
    死体に該当するかも知れない女性が3人も出てきます。
    しかも、第二、第三の放火が…!?

    ダンカンが別れた妻の元から引き取った息子キットは13歳になる所で、難しい年頃。
    素直ないい子なんですが、母に死なれ、育ててくれた父(既に離婚、再婚してカナダへ)ではなくダンカンの方が実父だったらしいという状況。
    ジェマの連れ子で5歳のトビーと一緒ではなく一人の部屋が欲しいというのも無理はないので、ジェマはあれこれ選んでやります。
    一見明るいジェマも心の傷を抱えています。
    キットとトビーが仲良くて、髪と目の色が同じため実の兄弟に見える外見というのは縁を感じさせて一種の救い?
    亡き妻の両親がもともとダンカンを悪く思っていて、キットの親権を主張、その審判も迫っています。
    仕事が忙しくてキットに十分つきあえなかったりするダンカンですが…
    穏やかでやや優柔不断なダンカンですが、ここへ来て、ある決断を?
    ほどほどにスリルと現実味があり、充実した読み応えです。

  •  警視キンケイドシリーズ。
     放火され、焼け跡から女性の遺体が見つかる。

     良くも悪くも、二転三転します。
     でもって、誰もが怪しい。ついでにキンケイドの家庭も、キットの親権裁判でごたごたしてます。
     この家庭の不安定さが、上手い具合にフラグというか、空気を導いていて、やっぱ、上手いなぁと思うのである。

     にしても、ちょっとキンケイドを格好良く描きすぎかな。
     もっとも、格好よいからこそ、よその署の刑事にうさんくさがられたりするあたりが、面白かったけどね。

     と、誘拐された少女の戦いに涙腺決壊いたしましたm(__)m

  • 今いちばん好きかもしれないミステリ・シリーズ。 この第10弾(もうそんな)もいつもの調子でおもしろかったー。 今回は、過去と現在の事件ではなく、火災と殺人と誘拐、同時に起きている事件がからみあう。火災現場で見つかった遺体はだれなのか、さぐっていくうちにあてはまりそうな人が次々見つかって。なかなか複雑だけれども、いつものように関係人物はみんなきっちり背景まで描かれているし、いくつかの事件を同時にさぐるので場面が切り変わっていくのが飽きさせないなーと。プラス、主人公のキンケイドとジェマが互いに子ども連れで新しい家族になっていく問題も進行していくし。 あと、悪事を働く動機が、結局、貧困が原因ってことが出てきて、なんだかせつないなと思ったりした。

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著者プロフィール

米国テキサス州ダラス生まれ。後に英国に移り、スコットランド、イングランド各地に住む。現在は再び故郷・ダラス近郊で暮らす。代表作のダンカン・キンケイドとジェマ・ジェイムズのシリーズは、米英のほか、ドイツ・イタリア・ノルウェー・オランダ・ギリシア・トルコでも翻訳され、人気を呼んでいる。

「2023年 『警視の慟哭』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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