QED 河童伝説 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062765848

感想・レビュー・書評

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  • 前作「御霊将門」に関連した部分もあります。
    「御霊将門」を読まなくても話は通じますが、そちらに登場していた人物が事件に関わっています。

    棚旗姉妹・タタル・小松崎は、「相馬野馬追い」を見る為に相馬に来ています。
    私は福島県民ですが、中通りに住んでいるので、相双地区には詳しくありません。
    震災以降は全く行っていません。

    当作にも御名形が登場します。
    奈々とは電車で会っているし、電話にも出ています。

    前作の事件はストーカー被害のみでしたが、当作ではバンバン死体が出てきます。
    冒頭は、「何このホラーなシーン」という感じです。

    第一の被害者は、前作で禮子をストーカーしていた昭二。
    川に浸かった状態で発見されていて、左腕が切断されてあった。

    第二の被害者は安岡である。
    安岡の死体も、昭二と似たような状態で発見されていた。
    死因は失血死だが、原因は左腕の切断によるものなのかは不明である。

    後に、安岡のライバル会社にいる男や安岡の上司の婚約者も殺されて、犯人は「製薬会社関係者ではないか」と思われる。
    安岡の勤める会社では、派閥争いやライバル会社との競り合いで大変な状況になっていた。
    新薬を売る為に、各製薬会社では様々なことをしていた。
    接待をしたり、医者にお金を渡して便宜を図ろうとしたり、嘘のデータを作ったり。

    「今回の事件は河童の仕業ではないか」と囁く人達がいたので、タタルから河童の話を聞くことになります。
    タタルは当作でもフリーダムで、待ち合わせに遅刻をした上、「どうせ北上するならば河童に会いに行く」と言って岩手に向かってしまいます。
    タタルの言う「河童」は、知識の豊富なご老人なんですけどね。

    「河童」とは、どういったものなのか。
    何故、馬を川に引きずり込もうとしたり、女の人に悪戯をしたり、キュウリが好物だったり、相撲を取るのが好きだったりするのか。

    結論は、将門の時と同じです。
    全てが怨霊であって、「河童」になってしまった。
    「河童」の正体は、朝廷に色々なものを取り上げられて、酷い仕打ちをされてきた人達のことだそうです。
    「河童」の特性が彼等のことを正確に言い表していたり、逆に語られたりしています。

    説明上仕方ありませんが、タタルは「マ○コ」を言い過ぎです。
    「馬」=「女性の陰部」というのは、何となく察していましたが。
    昔、月のものは「お馬さん」と称していたようですし。

    事件の犯人は、安岡が勤めていた製薬会社の常務・岩沼とMR・亘理でした。
    亘理が実行犯で、岩沼が指図していました。
    真相を知った岩沼の部下・中村は、怒りに任せて岩村を殺した後、自分の首を刎ねます。
    このシーンが冒頭とリンクしています。
    信頼していた上司には裏切られ、フィアンセや可愛がっていた部下を殺されては、キレるのも無理はないよね。
    ただ、あの残虐な現場を後に見ることになる中村の両親や弟ファミリーのことを思うと、身勝手なことをしたなと思いますが。

    安岡兄弟の腕が切断された理由には拍子抜けしました。
    弟の方は、犯人にとってマズいことを被害者が左腕に書いたから。
    油性マジックで消えないので、切ったそうです。
    兄の方は、毒殺だとバレないように、腕を切ることで失血死したと思わせたかったから。

    犯人達の杜撰さが原因で、殺さなくてもいい人達が口封じされています。
    安岡弟や中村のフィアンセの場合、犯人達が外でヤバい話をベラベラ喋っていたからじゃないか。
    動機の酷さに、もにょもにょしてしまいました。

  • ついにタタルが事件の推理すらしなくなったw
    申し訳程度に毒物の考察をしたくらいだ。
    それにしても、事件の犯人・犯行内容・動機、すべて犯人の口から語られて終わりというのは斬新すぎる。それも主人公達がまったく与り知らぬところで、口を滑らした犯人が詰め寄られて全部しゃべるっていう。
    しかし、それを加味しても面白かった。

    「河童の相撲好き」は野見宿禰でつながる。
    野見宿禰=相撲の始祖=土師氏=(土をこねるから)水辺に住む=河童
    土師氏は781年に菅原氏に改氏している。

    『童』という文字:目の上に入れ墨された奴隷、あるいは刃物で突かれて視力を無くさせられた奴隷を表している。それがやがて、元服前の子供の髪型がその奴隷のザンバラ髪に似ていることから『童』は、幼い子供を表す言葉になった。

    薬師如来=牛頭天王=素戔嗚尊

    八坂神社の神紋は五瓜に唐花(織田木瓜)=キュウリの切り口

  • 今なお、河童伝説が残る川で、左手首が切断された死体が、続いて、左腕が切り落とされた死体が浮かぶ。一方、相馬野馬追祭を見物に出かけていた棚旗奈々たち一行は、岩手県遠野まで足を伸ばしていた桑原崇と合流。そこでまた、血なまぐさい事件が…。事件の真相と、河童にまつわる真実が解き明かされる。

  • 現代の殺人事件と祟さんが絡まなかったのは珍しく、切り取ってつけた事件のようにも思えるが、いつもよりは読みやすかったなぁ。
    毒草師の出し方が次のシリーズへの伏線みたいだなぁ

  • 雷が鳴ったらへそを隠すという言い伝えの意味が…ここに明かされる!?古代日本史に隠された秘密を追及するミステリしてない歴史ミステリー小説。


     殺人事件?適度に関係ない感じで人が死んでるよ。河童に出てきてほしかった。



    ______
    p83 相馬の野馬追
     相馬家の始祖、平 小次郎 将門が相馬御厨の官職にあったころに、新しい軍事力として馬を活用するために始めたとされる行事。将門は当時、千葉県下総の国にいたが、その地に野馬を放ちそれを敵兵に見立てて兵士がそれを追い捕えるという軍事訓練がこの形になった。後の相馬氏が奥州に居ついてからも神式行事として現代に引き継がれているのが今の野馬追祭りである。昔は四年に一度だったが、毎年開催されるようになった。

    p133 将門の概要
     平将門は延喜3年903年に千葉県市川市のあたりに生まれる。若いころは朝廷につかえるが京生活に馴染めず悶々と生活を送った。父の死に際して関東に戻るが、所領は親戚に横取りされていて、将門は千葉の別の地を開墾し始める。そこで優秀な製鉄民族を従え、強大な軍事力を蓄えたと言われる。将門の軍事力と親分気質に、関東の武士はどんどん集まり、朝廷も危険視するようになった。将門が関東荘園の略奪から人々を解放してしていくうちに、朝廷が将門謀反を唱え、同じ武士で将門配下だったはずの藤原秀郷をして将門誅伐にあたらせた。毒は毒を持って制す、ヤクザと同じ用法だ。940年の秀郷と将門の決戦(4000の秀郷軍vs400の将門軍、正々堂々と多勢で奇襲をかけるww)によって将門は墜ちる。将門は流れ矢によってコメカミを貫かれるが、これは将門調伏を祈祷した全国の寺社の祈りの化身とされた。その調伏の筆頭が成田山新勝寺とされる。
     前巻では、将門おひざ元の成田山が将門調伏になったということの騙りを語ったわけだ。

    p159 鹿島、香取、息栖の神社
    ●常陸の国一宮:鹿島神宮…建御雷命を祀る。鹿島神宮には奥の宮の要石という物があり、その地に住んでいた大鯰を封じていると言われる。この鯰とは、土着していた海の神とされる。建御雷がこの地を征服して、先の支配者が復活しないよう押さえつけているという象徴なのだろうという。
    ●下総の国一宮:香取神宮…経津主命、建御雷とともに国譲りの戦に参戦した神を祀る。香取神宮の津宮河岸に浜鳥居があり、その地には竈神社があった。そこには沖津彦と沖津姫が祀れていた。この二人は先住者だったが、香取神に滅ぼされた豪族だろうと。「沖」の字は奥と同じで彼岸を表す。大國主と同じで根の国に追いやられた神として祀られているのだ。
    ●常陸の国一宮:息栖神宮…岐神(クナドノカミ)建御雷と経津主の東国平定を扇動したとされる神を祀る。この神社に祀られる気吹戸主(イブキドヌシ)がこの神社の名前の由来に関係してんだろう。この気吹とはふいごのことで、この地が産鉄地だったということを暗示していそうだ。茨城には筑波山とか産鉄の地があったらしいからな。
     これら東国三神社を地図上で線で結ぶとキレイな二等辺三角形になるそうな。

    p162 千葉氏
     将門の後裔とされる千葉氏の名前の由来。常陸の国の筑波はずくば(銑場)から来ているという。ずくば→せんば となって茨城の千波湖の由来と考えられる。つまり常陸の国は産鉄地だったのだろう。
     その千波→千葉と変わっていったと予想できると。将門も製鉄で力をつけた一族だから、そういった製鉄に関わる名前を付けたのかもね。

    p165 河童と相撲
     菅原道真の祖先、野見宿祢は相撲の始祖とも言われている。相撲は「角力」とも書く。どうやっても相撲とは読めないが、本来は「素舞」で、取り組みの前に武器を隠していないのを証明するための演舞だった。さらに昔は、征服した土地で行われる行事から相撲が来ているという。(本当か?)相撲は「住もう」から来ているという(ほ…本当か!?)
     征服された土地の民が河童である。「河童は相撲が好きなんだから、僕たちが積極的に攻め込んで、いっぱい相撲の興行を開いてあげるね♪」という自分たちの征服行為を正当化する偉い人の独善的な騙りがあるということだろう。

    p166 「祀る」とは
     裁縫のまつると同じ行為で、糸でぐるぐる巻きにして縫い付けて、その地から動けなくすることだと。神輿を担ぐの「かつぐ」も騙りがあるそうな。広辞苑で調べても「まつりあげる。名義上押し立てる」「欺く、騙す」というマイナスの意味がある。担ぐとは、征服地の先住者を神として祀り上げて(縛り上げて)事実上ヨイショするということだったのだろう。〆に注連縄で結界を張るという、ね。

    p178 河童の顔は赫い
     遠野物語では、普通の河童は青い顔をしているが、遠野の河童は赫いと言っているらしい。遠野は特別なんだ。前に河童は赫位と言って赤っ恥をかいたことがあったが、遠野物語は特別なのね。

    p230 三本指
     河童とか鬼が三本指なのは、奴隷として反乱できないように指を切り落とされていたから。という。
     三本指をついてお辞儀をするというが、それは絶対平服の意味があるからお行儀がよいとされているのである。

    p239 大工の弟子
     河童が大工の弟子になったという伝説がいくつかある。それは河童=奴隷民ということだという。
     童という字は奴隷を表すと前の巻にも書かれていた。童の字の作りは辛(剣)、目、東(突き抜ける)、土(膝まずく)の合成だから。山童とか河童とか、童のつく妖怪は奴隷民の刻印を刻まれた人たちへの蔑称だったのだろう。

    p252 日吉の猿、住吉との関係
     神武天皇前紀のなかに墨坂神という神が登場する。神武の東進を阻むために、その進路に大量の炭火を放って抵抗したとされる神である。それが墨坂→住坂→住栄→住吉となったとされる。別系統で、墨坂=火坂→日坂→日栄→日枝(日吉)となったとされる。
     どちらも火の栄える神様を祭っているのである。だから火(馬)を御する猿が使神になっているのであるという。

    p261 尻児玉
     人が溺死すると肛門括約筋が弛緩して肛門がぽっかり開いたままになる。汚い。それがあたかも尻にはまっていた玉を抜いたようになるから「尻小玉を抜く」という言い方になった。汚い。河童は濡れ衣を着せられたのだ。汚い。

    p267 キュウリ
     キュウリは北インドやネパールが原産と言われ、飛鳥時代から日本にあると言われる。しかし、その野生種のきゅうりは食べられたようなもんじゃないらしい。固くて苦くて下等の瓜と言われていた。そういや、食用に適さない瓢箪は苦くて毒だって言ってたな。野生のきゅうりはそういう毒素のある苦い奴だったのだろう。
     そういうキュウリが河童の好物にされている意味は…。そういう「キュウリでも食っていろ」という意味だろうという。

    p310 日立製作所
     将門の体は鋼でできていると言われるほど、将門の本拠地は産鉄地として栄えていたのだろう。茨城の日立製作所も前進は茨城の日立鉱山に付随する修理工場だった。へぇ~

    p311 死体泥棒
     河童や天狗は死体を盗むという伝説がある。タタラ場では、死体を製鉄に使っていたらしい。骨のカルシウムとかが鉄の融点を下げてくれて、銑鉄の流れをよくすることを経験で知っていたという説。その放るための骨を収集するために墓荒しや死体泥棒をしていたという。なるほどね。

    p315 かわいそうな秦氏
     秦氏は朝廷に仕えたが、何度も散在させられた。聖徳太子の頃に秦河勝が仏像を賜って、その恩に献上によって報いなければならなかった。雄略天皇の頃に奴隷にされた一族の者を変換してもらうために身代金を差し出したし、皇極天皇の頃には富士川の水辺の民の誅伐を自費でやらされたり、桓武天皇の頃には平安京遷都の際に私有地を官有地として召し上げられたり…。
     その結果、秦氏の信仰神が伏見稲荷(商売繁盛の神)にさせられた。自分たちが奪っておいて、繁盛するといいねとは、嫌味だ。

    p316 河童はカネを嫌う
     産鉄民と言われる河童が鉄(カネ)を嫌うと言われるのは…「カネは嫌いなんだろう?だったらもらってもいいよね。」という偉い人たちの自分勝手な騙りだろうという。

    p320 馬や女を狙うのは
     河童がなんで厠で女性のお尻をまさぐるという伝説があるのか。
     女性のあそこは「真処(マコ)」だが、それはタタラ場の「火炉」と同等の意味を持つ。(女性の陰部は「女陰(ホト)」と古い言い方をする。それは「火処(ホド)」の言い換えである)つまり、河童は女性の陰部と言う暗喩の、奪われたタタラ場を求めているのである。いやん。

     河童が馬を引き込もうとするという伝説も、陰陽五行の火に当たる「午」=火処を求めてという意味があったのだ。古い慣習で「飛び込み馬」を祀るという物があり、家内繁栄、子宝に恵まれるという願いが込められる。これらも火の化身(産鉄や真処)が家に舞い込んでくるのを望んだ迷信である。つながった。

    p324 愛宕
     愛宕とは「仇子」の事だという。復習。
     カグツチ神はイザナギとイザナミの子だが、火の神だから出産の際にイザナミの陰部を焼き、大やけど負わせ死なせてしまった。それに怒った伊弉諾に惨殺されて、その流血や死体からいくつもの神が生まれた。建御雷もその一人。その迦具土神が仇子=愛宕である。京都の愛宕山は昔から天狗の住処とされてきた、怪しさ満点、それが、愛宕。

    p400 雷
     雷は道真である。河童は菅原氏である。雷が鳴るとへそを隠せと言うが、それは雷(河童)が臍(ホゾ)を求めてやってくるからである。ホゾ=火処(ホト)のことである。民衆信仰にも反朝廷の被差別民への呪いが込められていて、今にも続いているというのは…。

    _________


     歴史薀蓄はなかなか面白かった巻であった。でも、殺人事件とか、薀蓄の騙り方とか、演出の仕方が詰まらなかったよ。
     殺人事件はもっとテキトーに殺していいから、もっと歴史薀蓄をうまく語ってほしいと思う。

     

  • シリーズ13作目。河童の伝説が残る川で左手首が切断された死体が発見される。

    今作は祟が直接事件に関わっていかない軽い印象。ただ歴史の謎は深く、河童はしっかりわからなかった。
    4人で飲みながら薀蓄を聞く場面は面白い。また、毒草師の今後も気になる。

  • 今回は題名通り河童のお話。しかしみんな河童なのには驚きです。アマテラスさえも。そして七夕の二人がそれなのも。蘊蓄は長いですが事件の解決はあっさりです。解決方法が結構きますが・・。

  • 図書館にて借りる。河童って悲しい存在だなぁ。

  • 冒頭、なんて怪異が起きたんだ?と思わせておいて、その実というか、まあ、このシリーズにかかると霊的な怪異ってのは起こりえませんのでね。実際にすごい場面であるってことは別にして。しかし、製鉄が得意な、収奪された勢力というコンセプトでひっぱるひっぱる、もう何巻目だろう。ただ、これって、たとえばもののけ姫なんかで言えば、収奪する側だったりもするわけですが、その辺は、多層的だし、ひょっとしたら円環的というかウロボロス的だったりするかも知れませんので、とりあえず、現時点での我々から過去を眺めてそんな立ち位置ということで。

  • ”QED 河童伝説”高田崇史著 講談社文庫(2010/02発売)
    (2007/02発売、講談社ノベルスの文庫版。解説:西上心太)

    ・・・QEDシリーズ13作目。連続殺人事件と相馬野馬追祭。あまり関連付けられていないせいか不完全燃焼な感じ。
    河童関係ないやろ・・・という読後感。
    多少、強引なくらいに過去の事件と結びつけられている方が楽しくなってきました(笑)

    ・・・御名形、神山等追加レギュラー陣が魅力的なキャラクターだけにシリーズが下り坂に感じられてしまうのが惜しいです。
    (私は今巻までですと、”式の密室”が一番と名作と考えています。)

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著者プロフィール

昭和33年東京都生まれ。明治薬科大学卒業。『QED 百人一首の呪』で、第9回メフィスト賞を受賞しデビュー。

「2018年 『千葉千波の怪奇日記 化けて出る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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