カシオペアの丘で 下 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
4.03
  • (323)
  • (360)
  • (195)
  • (43)
  • (4)
本棚登録 : 2698
レビュー : 219
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062766319

作品紹介・あらすじ

苦しみ、傷つき、やがて輝く星になる。壮大な命の物語
ぼくはゆるしてもらえるんでしょうか。
ゆるされて、しぬことができるんでしょうか。

29年ぶりに帰ったふるさとで、病魔は突然暴れ始めた。幼なじみたち、妻と息子、そして新たに出会った人々に支えられて、俊介は封印していた過去の痛みと少しずつ向きあい始める。消えてゆく命、断ち切られた命、生まれなかった命、さらにこれからも生きてゆく命が織りなす、あたたかい涙があふれる交響楽。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 小説の冒頭から主人公の余命宣告。これだけでわたしのハードルが上がる。
    人の生き死が関係する話は悲しいに決まってる、と。
    読み進むうちに気づく。主人公はシュンだけではなかった。特に病状が悪化したあとの語り手がユウちゃんに代わったところが1番キた。
    四人の友情、秘められた恋心を1番痛感させられた。
    ユウちゃんはいい男だ。初登場からどんどん見違えていく(笑)
    子どもの頃のミッチョがトシよりシュンよりユウちゃんを好きだったっていうのは意外だった。

    キーワードはゆるす、ゆるされるということ。
    死生観をまじえながらも、根底にあるのはゆるされたくて苦しんでいる人の話、だった。
    ゆるせないまま人生を終えることは寂しい。トシが実母について語った言葉が胸にしみた。

    クラセンさんの言葉をもっと聞きたかった。聞かなくてもわかるけど、やっぱり聞きたかった。シュンとの対話をもっと聞きたかった。周りの憶測ではなく、彼の言葉が聞きたかった。

    ミウさんは、正直苦手だ。上巻で星を一つ減らしたのは彼女の存在がだいぶめんどくさかったからだ(笑)
    話に必要だったんだろうか?
    巡り合わせが多すぎて、ちょっと蛇足かなと思えた。川原さんの一件だけで十分重かったから、下巻でふえーんって泣き出した時には場違いな腹立たしさすら覚えてしまった…ぐぐ。

    哲生がどんどん大人になっていくシーンも切なかった。車椅子生活のトシの立ちションを手伝い、友達になるシーンが好きだ。転校先で親友を作り、父の誕生日で等身大に戻って泣きじゃくり、そして父の葬儀ではちゃんとお父さんからのバトンを受け取って母を支える、その姿が眩しかった。

    シュンの意識が混濁してくるあたりで、彼の言葉や思考が平仮名で表記され出したあたりはほんと泣きそうだった。アルジャーノンに花束を を思い出してよけい泣きそうだった。

    ガンで死ぬということ。それについてもかんがえ、家族が欲しいと急におもってしまった。家族っていい。そして友達ってやっぱりいい。
    わたしが死ぬ時どれだけ周りの人に何かを残せるか。幸せだったと思えるか。悔いのない人生を、なんて考えるのはまだ早いと思ってたけど、シュンの発病した年齢とわたしの年齢、ふたつしか違わないって気づいてひやっとした。

    ゆるせない人がわたしにもいる。
    その人はゆるされたいとは思っていないとおもうし、わたしに憎まれていることすら分かっていないとおもう。
    順当に行けば向こうが先に逝く。
    わたしはゆるす準備をしなくてはいけないな、と少し焦る。
    亡くしてからでは遅いもんなあ。

  • 読んだ後、自分も相手もゆるしたい、と思った。
    作中も「ゆるす」という言葉がずっとひらがなだったのが気になったけど、許可や恩赦でもなく、「手放す。自由にする。」という意味なのではないだろうか。(辞書より)

    この作品の中で、謝り続ける人、ゆるされたい人、ゆるせない人、ゆるしたい人がそれぞれ出てくる。
    ひとりの人間の中に、誰かにゆるしてほしい気持ちと、誰かをゆるせない気持ちがあって、時々顔を出したり、押さえ込んだり、忘れながら生きている。

    炭鉱事故で夫を奪った倉田千太郎を許せず、トシが半身不随になる切欠となった小学4年のシュンに全ての憎しみをぶつけたトシの母。
    炭鉱事故の件や北都を見捨てる決断をした「倉田」を許せないトシ。
    愛娘を殺した犯人と不倫していた妻に対し、愛している気持ちと許せない気持ちで苦しむ川原。
    炭鉱事件の事で、祖父を許せないシュン。

    交通事故で相手をひいた事で、車の運転ができなくなったミウ。
    昔シュンと付き合っていて、流産したことを隠していたミッチョ。
    自分の好きな祖父が、トシの父親を死に追いやった事実を知らず、無邪気に遊んでいた事を知ったシュン。
    何も知らないままケンカをしてトシを半身不随にしてしまったこと、それを謝れなかった事。
    人の命を断ち切る決断をした祖父が憎かったのに、ミッチョの子供を産ませてあげる決断を出来なかったシュン。
    炭鉱事故の決断をした後、観音様を建てた倉田千太郎。

    こうして書くと、俊介が内に抱えていたものが、罪の意識がどれほど深かったのか伺える。
    そして千太郎も。
    どれだけ気にするなと言われても、仕方なかったと言われても、本人の中で許せなければ、許されないのだろう。
    本当に損な性分だ。
    最後に色んな記憶が混じった観音内で、ゆるしを乞う千太郎の姿を見て、俊介もやっと祖父を、そして祖父を憎んだ自分をゆるせた。

    ガン宣告、余命数ヶ月で過去と向き合って、背負ったまま死んでいくしかないと、つぶされそうになっているシュンに寄り添う、恵理さんと哲夫という家族。
    彼らのために生きたい、残された時間を大切に過ごしたい、ゆるされたい。
    シュンがゆるされたいと思う気持ちとは別に、家族が愛しいと思う気持ちがあふれていた。
    もっと別の幸せなシチュエーションで見たかった。けど、支え合う家族ってこうなのかな。とも思った。


    個人的に、一番弱くて、一番強いと思った雄司。
    ミッチョのこと好きだったんだね。
    でも自分で緩衝役となって、幼なじみを繋げていたんだね。
    彼の気持ちもいつか昇華できるといいな。

  • 後半の150ページぐらいは涙なしではよめない展開となっており、自分のなかではかなりツボだった。

  • 泣けた。死への描写がよく書けていて痛々しかった。

  • 人は死に直面した時、何を考え何を求め何を祈るのか。「憎しみ続けて生きるのは寂しい」「人は誰もが人を傷つけ、許されたいと願うもの」といった言葉が胸に突き刺さる。主人公やその祖父、家族、周りの幼馴染や知り合った人々にも、少しずつ変化が訪れる。それでも、遺された人たちは、日々の日常を生き続けなければならない。
    舞台となった北海道の巨大観音像のモデルは、芦別の観音像か?炭鉱町という設定も合致するが、果たしてそうなのかどうかは不明。

  • 泣けました。

  • 途中グダグダなったけど、結局泣けるんだよな。

    重松清さんすごい。

  • 上下巻通して一気読みでした。テーマは「過去を許して受け入れる」って事かな・・・切なくて、悲しくて、そして楽しい人生。過去には戻れないもんな~。許して受け入れるしかないんだろうな。。。

  • 重松清さんの上下巻に渡る長編小説。重かったけど間違いなく傑作。
    主人公達は、40歳の男女4人。
    北海道の小都市・北都が舞台。小学4年生の彼らは「カシオペアの丘」と名付けた丘で、星座を眺めながら夢を語り合った。
    そして30年後、それぞれ別々の道を生きていた。
    ミッチョとトシは結婚して、北都に「カシオペアの丘」と名付けた閉園間近な遊園地を細々と続ける。そしてそこでとっても残忍な事件が起きてしまう。
    その事件をきっかけに、報道マンとしてユウちゃんが二人のもとへ訪れ、久々の再会を果たす。
    一方、東京で生活するシュンは、結婚して妻の恵里、小学4年生の息子・哲生と幸せに暮らしていたが、突然、肺ガンを宣告され、余命がわずかしかないことを知る・・・。
    病気で徐々に弱っていくシュンと、学生時代に密かにシュンと付き合っていた過去をトシに隠しながら、車いす生活のトシを支えるミッチョが交互に物語を語る。
    かつてのライバル同士で、昔のある事件を期に疎遠になってしまったトシとシュンも、病気をきっかけに再会を果たす
    とっても暗くて苦しかった。4人の他にも過去に傷を負う人々が沢山登場する。
    物語のテーマは、「許すことと許されること」だと思う。
    過去の罪を背負いながら長い間葛藤を続けるトシとシュンと、彼らの家族同士の因果がとても痛々しい。
    電車の中、会社の休憩時間、読みながら、泣きそうになるシーン、何度もあった。
    とくに強がりながらも哲生君が泣き出してしまうシーンがホントに胸が痛くなった。
    何故神様は罪もない良い人たちを地獄に突き落とすのだろう。。小説なのにそんなことまで思ってしまった。

    ユウちゃんが全体の中でもとっても良い味を出している。彼がいることで重い空気が和らぐ。
    そして、3人の男の子にモテモテなミッチョが少しうらやましいと思った。

  • ・幼馴染のミッチョ、トシ、シュン、ユウ
    ・癌になったシュンとその奥さん、息子
    ・娘を妻の浮気相手に殺された旦那
    ・トラウマから車の運転ができなくなった女性
    ・炭鉱事故で、トシのお父さんを生き埋めにする判断をしたことで、その他大勢を救ったシュンのおじいさん
    ・ミッチョとシュンの過去

    死ぬ時にこうやってたくさんの人に囲まれたい。大切な人の過去や、自分以外の人と過ごしている時間を共有することはとっても魅力的に感じるけど、難しくて悲しいこと。そんなことをしなくてもお互いを信じていられるようになるのが大人。恋人だってそう、友達だってそう。

    どんなお話にも家族愛が入ってるのが重松さんの良いところ。父親の癌を知って、一度は「パパ」から「お父さん」に呼び方を変えた息子が、父親が死ぬ間際にまた「パパ」と呼ぶところが好き。

全219件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

重松 清(しげまつ きよし)。1963年、岡山県生まれの小説家。早稲田大学教育学部卒業。
出版社勤務を経て、フリーライターとして独立。ドラマ・映画のノベライズなどを手がけたのち、1991年『ビフォア・ラン』で小説家デビュー。
1999年『エイジ』で山本周五郎賞、2000年『ビタミンF』で直木賞、2002年『流星ワゴン』で「本の雑誌年間ベスト1」、2010年『十字架』で吉川英治文学賞、2014年『ゼツメツ少年』で毎日出版文化賞をそれぞれ受賞。
山本周五郎賞、講談社ノンフィクション賞選考委員を務める。2017年、早稲田大学文化構想学部客員教授に就任。
『とんび』、『青い鳥』、『流星ワゴン』をはじめ、多くの代表作がドラマ化、映画化されている。

カシオペアの丘で 下 (講談社文庫)のその他の作品

重松清の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

カシオペアの丘で 下 (講談社文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする