カシオペアの丘で(下) (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062766319

作品紹介・あらすじ

苦しみ、傷つき、やがて輝く星になる。壮大な命の物語
ぼくはゆるしてもらえるんでしょうか。
ゆるされて、しぬことができるんでしょうか。

29年ぶりに帰ったふるさとで、病魔は突然暴れ始めた。幼なじみたち、妻と息子、そして新たに出会った人々に支えられて、俊介は封印していた過去の痛みと少しずつ向きあい始める。消えてゆく命、断ち切られた命、生まれなかった命、さらにこれからも生きてゆく命が織りなす、あたたかい涙があふれる交響楽。

感想・レビュー・書評

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  • 自分も折り返し地点を回って、そろそろ国立競技場が見えてきました。人は必ず死にます。心筋梗塞でバタッと逝くか、ガンで余命宣告されて嘆き悲しむかこの先の運命は分かりませんね。
    読んでるところで、有名な女優さんが自ら命を絶ちました。本当に残念でなりません。子が親より先に死ぬのはキツいです。
    さて、本の話しですが、とにかくそんなことを考えながら読んでましたので。。。

  • 今回は以前から読みたいと思っていた「カシオペアの丘で」を読みました。
    4人の幼なじみが中心の話でしたが、テーマは「生(死)」と「家族」、「友情」でした。
    40歳という若さで癌のために苦しむ「シュン」。
    余命を宣告されてから、どのように「死」までを生きていくか。
    子供に どうすれば父親として伝えなければならないことを伝えることができるのか。
    病気で一番苦しい所を逃げも隠れもせずに 真正面から描ききっています。
    読んでいる間 ずっと涙が溢れてくる作品でした。

  • 上巻読み終えてすぐに下巻も。人を許す事、許される事は難しい。たとえ相手が許してくれても。こういう気持ちがあるのは、相手を思う気持ちがあるからかなと。

  • 読んだ後、自分も相手もゆるしたい、と思った。
    作中も「ゆるす」という言葉がずっとひらがなだったのが気になったけど、許可や恩赦でもなく、「手放す。自由にする。」という意味なのではないだろうか。(辞書より)

    この作品の中で、謝り続ける人、ゆるされたい人、ゆるせない人、ゆるしたい人がそれぞれ出てくる。
    ひとりの人間の中に、誰かにゆるしてほしい気持ちと、誰かをゆるせない気持ちがあって、時々顔を出したり、押さえ込んだり、忘れながら生きている。

    炭鉱事故で夫を奪った倉田千太郎を許せず、トシが半身不随になる切欠となった小学4年のシュンに全ての憎しみをぶつけたトシの母。
    炭鉱事故の件や北都を見捨てる決断をした「倉田」を許せないトシ。
    愛娘を殺した犯人と不倫していた妻に対し、愛している気持ちと許せない気持ちで苦しむ川原。
    炭鉱事件の事で、祖父を許せないシュン。

    交通事故で相手をひいた事で、車の運転ができなくなったミウ。
    昔シュンと付き合っていて、流産したことを隠していたミッチョ。
    自分の好きな祖父が、トシの父親を死に追いやった事実を知らず、無邪気に遊んでいた事を知ったシュン。
    何も知らないままケンカをしてトシを半身不随にしてしまったこと、それを謝れなかった事。
    人の命を断ち切る決断をした祖父が憎かったのに、ミッチョの子供を産ませてあげる決断を出来なかったシュン。
    炭鉱事故の決断をした後、観音様を建てた倉田千太郎。

    こうして書くと、俊介が内に抱えていたものが、罪の意識がどれほど深かったのか伺える。
    そして千太郎も。
    どれだけ気にするなと言われても、仕方なかったと言われても、本人の中で許せなければ、許されないのだろう。
    本当に損な性分だ。
    最後に色んな記憶が混じった観音内で、ゆるしを乞う千太郎の姿を見て、俊介もやっと祖父を、そして祖父を憎んだ自分をゆるせた。

    ガン宣告、余命数ヶ月で過去と向き合って、背負ったまま死んでいくしかないと、つぶされそうになっているシュンに寄り添う、恵理さんと哲夫という家族。
    彼らのために生きたい、残された時間を大切に過ごしたい、ゆるされたい。
    シュンがゆるされたいと思う気持ちとは別に、家族が愛しいと思う気持ちがあふれていた。
    もっと別の幸せなシチュエーションで見たかった。けど、支え合う家族ってこうなのかな。とも思った。


    個人的に、一番弱くて、一番強いと思った雄司。
    ミッチョのこと好きだったんだね。
    でも自分で緩衝役となって、幼なじみを繋げていたんだね。
    彼の気持ちもいつか昇華できるといいな。

  • 小説の冒頭から主人公の余命宣告。これだけでわたしのハードルが上がる。
    人の生き死が関係する話は悲しいに決まってる、と。
    読み進むうちに気づく。主人公はシュンだけではなかった。特に病状が悪化したあとの語り手がユウちゃんに代わったところが1番キた。
    四人の友情、秘められた恋心を1番痛感させられた。
    ユウちゃんはいい男だ。初登場からどんどん見違えていく(笑)
    子どもの頃のミッチョがトシよりシュンよりユウちゃんを好きだったっていうのは意外だった。

    キーワードはゆるす、ゆるされるということ。
    死生観をまじえながらも、根底にあるのはゆるされたくて苦しんでいる人の話、だった。
    ゆるせないまま人生を終えることは寂しい。トシが実母について語った言葉が胸にしみた。

    クラセンさんの言葉をもっと聞きたかった。聞かなくてもわかるけど、やっぱり聞きたかった。シュンとの対話をもっと聞きたかった。周りの憶測ではなく、彼の言葉が聞きたかった。

    ミウさんは、正直苦手だ。上巻で星を一つ減らしたのは彼女の存在がだいぶめんどくさかったからだ(笑)
    話に必要だったんだろうか?
    巡り合わせが多すぎて、ちょっと蛇足かなと思えた。川原さんの一件だけで十分重かったから、下巻でふえーんって泣き出した時には場違いな腹立たしさすら覚えてしまった…ぐぐ。

    哲生がどんどん大人になっていくシーンも切なかった。車椅子生活のトシの立ちションを手伝い、友達になるシーンが好きだ。転校先で親友を作り、父の誕生日で等身大に戻って泣きじゃくり、そして父の葬儀ではちゃんとお父さんからのバトンを受け取って母を支える、その姿が眩しかった。

    シュンの意識が混濁してくるあたりで、彼の言葉や思考が平仮名で表記され出したあたりはほんと泣きそうだった。アルジャーノンに花束を を思い出してよけい泣きそうだった。

    ガンで死ぬということ。それについてもかんがえ、家族が欲しいと急におもってしまった。家族っていい。そして友達ってやっぱりいい。
    わたしが死ぬ時どれだけ周りの人に何かを残せるか。幸せだったと思えるか。悔いのない人生を、なんて考えるのはまだ早いと思ってたけど、シュンの発病した年齢とわたしの年齢、ふたつしか違わないって気づいてひやっとした。

    ゆるせない人がわたしにもいる。
    その人はゆるされたいとは思っていないとおもうし、わたしに憎まれていることすら分かっていないとおもう。
    順当に行けば向こうが先に逝く。
    わたしはゆるす準備をしなくてはいけないな、と少し焦る。
    亡くしてからでは遅いもんなあ。

  • 許されてもいい人は許されてほしいし、許されるに値しない人は許されなくていい。
    許す人に必要なのは、強さか、優しさか、時間か。

  • 2008年(第5回)。10位。
    北都で再開した幼馴染+その家族と、ミウさん、川原さん。
    許し、許されるがテーマの小説。
    ガン進行はほんとこわい。昼間の空に星は見えないけれど、いるんだよ。

  • 重くて苦しくなったけど、出会いは人生を変える。みんないつかは消えていくけど、その時にどんな顔が浮かぶのだろうか。後悔がないのは綺麗事だと思う。

  • 彼氏からこの本を貸してもらった。
    上下に分かれてる上に1冊が分厚くて読む気持ちにならず、ずっとしまっておいた本。
    読もうかな、と彼氏に話をした時、けどこれ癌の話なんだよね、と彼氏が戸惑った理由はちょうど私の母が癌の診断を受けた時だったから。
    それからまた読まずにしまっておいた本を、読み始めたのは母が死んで半年くらい経ってからでした。
    そうだ、喉に痰が絡んで苦しそうだったな、話す時も疲れていたよな。母も、自分の死が近づいてる事を気づいて最後に私たちに何を伝えようかたくさん考えていたのかな。
    シュンの様子と母の様子が重なって本当に苦しくて悲しい気持ちになった。けど、大きな声で泣くのもあの時ああすればよかったって後悔するのも全部良いんだって思える本だった。
    明日は母の日。母の事を今日の出来事のように思い出せる本を読んでよかった。

  • 後半の150ページぐらいは涙なしではよめない展開となっており、自分のなかではかなりツボだった。

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著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『カシオペアの丘で』『とんび』『ステップ』『きみ去りしのち』『峠うどん物語』など多数。

「2023年 『カモナマイハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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