憂鬱なハスビーン (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062766685

作品紹介・あらすじ

東大卒、有名企業に就職し、弁護士の夫を持つ29歳の私。結婚して仕事は辞めたけれど、優しい夫と安定した生活がある。なのになぜこんなに腹が立つんだろう?ある日再会した、かつて神童と呼ばれた同級生。その話に動揺した私は、まだ自分に何かを期待しているのだろうか。第49回群像新人文学賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 単行本で既読だったが、なんとなく手に取る。朝比奈あすかさんのデビュー作。

    読みながら「ああ、そういえばこういう話だった」と思う、凛子のイライラする日々。単行本の時もそうだったが、表紙の見た目の爽やかさに反して、内容は非常に重い。私自身はこんなエリートではないが、家族への感情のぶつけ方とか自分の中にもある感情だと思って読んだ。ラストはやや光の射す話だが、全体的な鬱屈感の方が勝っていて、やはり読むのは重いと思うこともある。でも読んでしまう。

    前回どう読んだかをもう一つ思いだせないのだが、今回読んだほどにはあまり「わかるな」という感じはなかったような気がする。それはどういうことなのだろう。鬱屈した思いを昔は抱えすぎていて、渦中にありすぎて響かなかったのか。そんなことあるのか。本の感想を書くようになってから自身の本の読み方もだいぶ変化しているような気もするが。

    これは自分にとっては、積極的には読みたくないのだがなんとなくまつわりついてくる本である(不思議だ)。自分の心の持ち方が安定しているかどうかを確かめるためにまた読む機会が訪れるのかもしれない。

  • 育ちが良い人 って本当に羨ましいよな。けど主人公はいろいろ手にしているんだからそこまでひねくれなくても。

  • 朝比奈あすかさんのデビュー作で群像新人文学賞受賞作です。ハスビーンの意味は一発屋の事ですが、私は本書を読んで少し憂鬱でした。その理由は著者にも作品にもなく詳細すぎるパーフェクト解説だったのですね。これから読む方には出だしから結末を含めて本文のダイジェスト版みたいな要約が為されていますので、くれぐれも解説を先に読まない事をご注意申し上げますね。エリート塾TOPの小学生時代から順調な学歴を経て東大から有名企業に入ったのに歯車が狂い不満だらけのヒロインの凛子は人生のハスビーンから脱出すべく漸く進み始めましたね。

  • 何気なく手に取って何気なく読み始め、あっという間に読み終わった。読みやすいというのもあるけど、どこか自分にシンクロするところもあったのがあっという間に読めたわけなのかも。
    東大を出て、同じ東大卒で弁護士の夫との結婚を機に仕事をやめ、再就職の気もなく失業保険をもらっている凛子。不自由だと言えば非難されそうな状況にあるのに、無頼で不遜な言動はこじらせ女子的。特に、夫の雄介に対するつれなさ、わがままさときたら……。雄介ときたら、よくもまあこんな凛子を妻にし、今も機嫌をとったりなだめたりしながらそれでも好きでいられるもんだと思ってしまう。そのくらい雄介は屈託なくいいやつで、自分の知っている雄介を彷彿とさせる。だからこそ、こじらせ凛子に自分を重ねてしまう(っていうか、自分は別に東大卒じゃないけどね)。
    後半で凛子が抱える心の傷が明らかになってくる。そのあたりから凛子に対するシンクロ性は薄れるぶん、同情的になる自分。「ハスビーン」とはhas beenであり、かつては何者かだったけど今はもう終わってしまった残念なやつを指すのだとか。
    著者はこの作品で群像新人賞を受賞。それを知れば初々しい感じもするけれど、小説としての構成や舞台設定はなかなか。かつての同塾生・熊沢くんや姑・れい子さん、さえない(と凛子が思っている)両親やハローワークの職員など人物設定も生きている。解説(吉田伸子)も解説らしくてよかった。

  • この切り取り方は長めの短編なんだろうな。村上春樹の『風の歌を聞け』の似たような長さの作品が群像の新人賞デビューだったのを思い出す。
    言葉の選び方など、すでに作家として十分完成されているのを感じ、その後の活躍を予感させる作品であるのと同時に、「憂鬱な」という題名そのものの、痛いくらいの追い詰められ感のある作品でもあった。

    作者はどんな思いでこの作品を書いたのだろうと思って、インタビューを探すと『作家の読書道』で彼女がそれまでの人生を読書経験とともに語っている文章を見つけた。

    夫の仕事でアメリカ・シカゴに渡り、しばらく自分自身の仕事や小説を書くことからも離れていて、日本に戻った時に再就職。でも次の子の妊娠で再び仕事を辞めるということになって、というタイミングだったらしい。そのもやもやした気持ちを小説にぶつけて、ご自身はそれが癒しになってすっきりしたと書かれていた。

    なるほど。

    自分で自分にあたえてきた強いプレッシャーを自己分析し、主人公が親の前で泣くことで自分の心を解放する、そんな物語だったんだろうなと思う。
    ただそこまで読者にすっきりさせるような作品ではなく、もやもやをまだ抱えながらもう一押しがんばらなきゃというところで、あえて終わる作品だったのだろうと感じた。

  • 乾いた文体と答えのないモヤモヤしたラストを、とても美しいと思った

  • 主人公の凛子が怒るときの喋り方が腹立つ。旦那さんは優しい人なんだからそんなにキレなくてもいいのに。でも、イライラして誰かに当たってしまい、憂鬱になって悲しくなる感じは少しわかる。めんどくさいけど。「Mr.Has been. かつては何者かだったヤツ。そして、もう終わってしまったヤツ」なんか嫌な言葉。

  • 東大卒、有名企業に就職、同じく東大卒弁護士の優しい夫、理解ある姑…
    恵まれ過ぎているのに、凛子はイライラしている
    ずっとイライラしていて
    読んでいて疲れてしまった

  • 「ハスビーン」の意味が気になり手に取った本。「ハスビーン」とは「一発屋」という意味らしい。かつて、凛子が塾で憧れた「塾で最高に認められたクラス」だった彼が人生で一瞬だけ光輝いた「一発屋」な時期を経験し、自分のせいでもないのにそこから切り離された。やさぐれてしまった彼と再会し、凛子は自分の幸せにに気付かなかったのだろうか。この話の主人公の凛子は、ちょっと自己評価が高すぎる女性なのかもしれない。優しく接してくれる姑、弁護士で家庭的な旦那さん。そして、素朴だけど何のトラブルも抱えていない実家の父母を上から目線で見下すのは、凛子が東大卒でいい会社に勤めていた意地から出てくるのだろうか。その会社の中で階段を踏み外してしまったのは、不運な事だったけれど、人生長年過ごしてきたらそういう事って必ずある。凛子には「自分が幸せ」なのに気付いて欲しい。

  • 主人公の気持ちもわからなくはないけど、捻くれ過ぎていて不快だった。

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著者プロフィール

1976年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。2000年、ノンフィクション『光さす故郷へ』を刊行。06年、群像新人文学賞受賞作を表題作とした『憂鬱なハスビーン』で小説家としてデビュー。その他の著書に『彼女のしあわせ』『憧れの女の子』『不自由な絆』『あの子が欲しい』『自画像』『少女は花の肌をむく』『人生のピース』『さよなら獣』『人間タワー』など多数。

「2021年 『君たちは今が世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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