結婚失格 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062766968

作品紹介・あらすじ

男にとって別れはいつも「寝耳に水」。家の鍵は取り換えられ、妻の雇った弁護士から身に覚えのない非難の文書が。親権をめぐる裁判所での話し合いは、想像を絶する冷酷な展開に…。子どもたちに会いたい!男女の温度差が激しいとされる「離婚」を男の視点で描き、賛否両論を呼んだ衝撃の実録小説。

感想・レビュー・書評

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  • 筆者の実体験をもとにして離婚を描いた小説です。

    注目すべきは本文ではなく、歌人でエッセイストの穂村弘氏による寄稿と、映画評論家の町山智浩氏による解説かもしれません。

    寄稿や解説は作者へのエールになることが一般的ですが、本書では相当に辛辣なものとなっています。
    おふたりの指摘で共通するのは作者がこだわる「正しさ」の異様さであり、相手の気持ちに立てない幼稚さが浮き彫りにされます。

    穂村氏
    「僕が君ならそんなことはしない。そんなことって「そんなこと」だ。全部だよ。」

    町山氏
    「彼はせっかくのチャンスを逃した。自分を変えるチャンスを。成長するチャンスを。」

    タイトルから本書に興味を惹かれている方なら、上記のお二人の寄稿・解説文だけでも一読の価値があります。
    結論が作者によってではなく寄稿・解説によって鮮やか、かつ否定的に導かれる、特異な著書と言えます。

  • まず冒頭の、見たくもない中年男のマスターベーションを見せつけられているような一群の短歌にうへえ~となり、本文を読んでまたうへえ~となる。はっきり言って、ほかの誰にも愚痴を聞いてもらえない同類の男たち以外にとっては、かなりキモチワルイ本だ。
     なのになぜ☆2つかといえば、最後の町山智浩による解説がそのうへえ~を明確にきっぱりと言語化してくれているからである。自分の「正しさ」に執着し続けることから離れなければ、相手のことも自分のことも見えてこないよ、と。このように厳しく現実を突きつけてくれる批判者をもつことができる者は幸せである。これにくらべたら穂村宏など同じ短歌業界仲間の男たちの歯切れの悪い文章などゴミみたいなものだ。
     最後の解説にだけ読む価値がある文庫本というものがある。編集者はこういう解説をこそ書かせるべきなのである。

  • 自伝的小説、短歌、エッセイ。
    不思議な形態の本。
    漫画家の妻との離婚が男性の目線で生々しく書かれている。

    あとがきが説明口調でちょっと冗長的かなと感じたが町山智浩の解説が的確で面白い。

  • 読んでいて書く文章をよくコントロールして慎重に選んでいる人、という印象を受けたが、解説の中で穂村さんの文の中に「コントロール」という言葉が出てきて、ほうと思った。

  • 枡野さんの描く小説が好きで、
    短歌は、買って読もうと思う自分ではないので読まないだけで、
    何かの拍子に目にするものはおもしろいな、と思っていて、
    そういうわけで枡野さんの本を漁っていたときにこの本の存在を知った。
    うわ、そんなこと書いちゃうんだーと、読んでみたくなったのは、興味本位というか、噂好きのおばちゃんの域を出ない感じだった。

    短歌はもともと感情をストレートに表すものだけれど、
    書評部分と言い、解説といい、興味本位で覗いちゃいかん世界だった。濃いいです。

    いや読んでみて良かったよ、でも。
    そこに人が居る、という感じがした。
    男の人と、女の人では、感想が違いそう。

  • 本編よりも解説の方が真摯で好感が持てる不思議な本。解説が本編の違和感を解消し、作品としての体裁を保つ役割をしているように思える。

  • 未読かと思って文庫本買って読みすすめる内に、だいぶ前に単行本で読んだ記憶が蘇る。著者の自伝的小説200pほどつづく、全編、自分は正しい、妻が間違ってる、なぜわかってもらえない、なぜ自分だけこんな目にという嘆きを、解説の町山さんが全力でぶんなぐりに来てるのがすごい、と思った。最後は、もう自分が正しいと思わなくなるまで旅にでもでては?と/リトル・バイ・リトル、いしかわじゅん「鉄槌」、慰謝料法廷、岡本敬三「根府川へ」、あたりは読んでみたくなる。

  • 歌人枡野浩一さん自らの離婚にまつわる経験を元にした小説。
    僕は割とこの本の主人公(枡野さん)に感情移入して読んだのだけど、解説で町山智浩さんがその主人公(枡野さん)をボロクソに言っており、なんだか自分が責められているような気分になった。何事も様々な視点があるというのは当然だけど。

  • 離婚協議中の私が、離婚エッセイを読んでみました。
    枡野さんは昔から好きだし。

    離婚はつくづく十人十色。
    結婚よりずっとバリエーションが豊富だよね。「豊富」と言うと、自分でもなんだか悲しく響くけど、でも実際子ども有無からバリエーションは無数にあって、私と誰かの離婚が同じなんてあり得ないんだろうなー。

    お子さんと会えなくなった枡野さんは本当にかわいそうで、読んでいる私もその場にうずくまりそうになったくらいだったけど、こうして公の場に晒される元奥様やお子さん達にもやはり同情してしまう。

    そして、解説の映画評論家の町山さんが厳しい。鋭い。
    町山さんもおもしろい方だな。町山さんの著作もちゃんと読みたいと思いました。

  • 妻に離婚を迫られているAV監督速水の物語だが、中に挟まれる書評は実在の本について。
    どこまでホント?とか思いつつ読み進めると、後ろ三分の一は「あとがき」として枡野浩一の実際の状況と、枡野に加え、穂村弘と長嶋有の特別寄稿。そして枡野の短歌30首。最後に映画評論家、町山智浩の解説、という変わった本。
    最後の解説で、一気に読者のひっかかりがクリアになる感じ。穂村弘の指摘もするどい。
    枡野浩一について、本人が一番わかっていないっぽい。
    一言で言ってしまえば、だから奥さんがあのような形を取ってでも離婚したんだね、ってこと。
    この人の短歌は嫌いじゃないけど、人としてはね~。
    むしろ、発達障害系空気読めないサンプルの参考にはなるかも。
    気になる存在ではあり続けそう。

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著者プロフィール

一九六八年東京都生まれ。歌人。雑誌ライター、広告会社のコピーライターなどを経て一九九七年、短歌絵本を二冊同時刊行し歌人デビュー。短歌代表作は高校国語教科書に掲載された。短歌小説『ショートソング』、アンソロジー『ドラえもん短歌』、入門書『かんたん短歌の作り方』、『毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである 枡野浩一全短歌集』など著書多数。目黒雅也や内田かずひろの絵と組み、絵本・児童小説も手がけている。

「2023年 『おやすみ短歌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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