敗走記 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.72
  • (11)
  • (27)
  • (25)
  • (2)
  • (0)
  • 本棚登録 :235
  • レビュー :26
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062767385

感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • あとがきから察するに、ほぼ実話、少しフィクション、のようです。
    ほんとうはきっと耳を覆いたくなるようなひどい話、つらい話をいっぱい見聞きされてこられたのでしょうが、その中からこれらの話を選んで漫画にしてきた水木さんの思いのようなものを考えてしまいます。
    悲しい物語もどこかこっけいな描写があって、読むのがそんなに辛くなく、過酷な状況で忘れられがちな「人の誠実さ」「友情」「家族愛」が、決していつも損なわれてばかりではなかったことなどを教えてくれます。
    前にも思いましたが、漫画というメディアは、かつて日本が我を失い袋小路に迷い込んでしまった戦争の体験を伝えるのに非常に向いていると思います。
    特に水木さんの漫画は、少しトボけたような明るい雰囲気があって、「戦争のことを知ろう!」なんて気負うこともなく、読むことができます。それでいて戦争の本質みたいなものはしっかりと伝わってきて、心の奥に残ります。

  • 一言足りとも反戦云々言わずして戦争の不条理と滑稽さ、残酷さを書き連ねた傑作短編集。
    旗の話とか泣きたくなってくる。

  • 「生死の境に美談あり」人は死に直面すると、仏にもなるし、鬼にもなるんだろう。南方での兵士の日常の数々。多少フィクションもあるようだが、これは体験者でしか語れない内容。映像だと派手な戦闘シーンや美化されたものが多いが、こういう漫画は貴重な資料になる。

  • (01)
    標題の短編のほか5編が収録されている.いずれも太平洋戦争の南方戦線が舞台となっている.
    おそらく著者本人が描いたであろう背景の細密が印象的で,南や黒を感じるタッチであり,テーマ(*02)にも即している.その背景に比べると人物や表情は戯画化されシンプルであるが,飄々さ,戦場をさまよう亡霊といった感じがよく出ているように思う.
    擬音表現も興味深い.それは背景でもなく人物でもない,セリフでもないし,説明の地の文でもない,その擬音たちが細密な背景にうまくデザインされて配置され,漫画を芸術として昇華させている.

    (02)
    無論,反戦の立場から戦争の悲惨さを描いた作品として読んでよいと思うが,戦争礼賛まではいかないものの戦場の美談といったテーマも扱っているところに著者の冷静が表現されているように思う.また,戦場となった南方の現地人,風土風物への言及にも著者ならではの視線を感じる.

  • 2010年(底本1991年)刊行。戦時中の体験(第三者のそれを含む)・見聞した状況をマンガで描出した短編集。飄々とした人物(性格面のみならずビジュアル面でも)と、それと対比的なリアルな戦場場面・メカニック。これらが台詞回しの可笑しさや暖かい人間関係が限定空間に止まることを暗示しているのか。光人社文庫や学研M文庫にあるような情景とは異質の、そしてリアルな戦場が描かれている。著者自身によるあとがきも、本書の内容にうまくアクセントをつける。

  • 自身の体験だけでなく取材した話を元にした短編集。「総員玉砕せよ!」での非合理さは影を潜めるので、単にストーリーとして面白いと思えた。こういうところにも水木しげるの漫画家の才能の高さが伺える。

  • 水木しげる先生の短編集。
    最近、こういうマンガ読んでなかったから、面白かった。生々しい。そして、考えさせられる。
    マンガなのに読むのに時間がかかるけど、ぜひ一読をお勧めする。

  • 絵も好きです。
    このごろの漫画は顔近すぎ。。。

  • 詩人杉山平一さんの「わが敗走」(ノア)の負けっぷりがすげえ(3千人の工場倒産)。五輪の敗北などへのカッパ、人生のこやしだ。

  • 「ゲゲゲの女房」で近頃人気の水木しげる。書店に行くと、貸本時代の作品まで平積みで売られている。
    私はアニメの「ゲゲゲの鬼太郎」は好きだったが、水木しげるの漫画そのものを読んだ記憶がほとんどない。だって気味悪いんだもん。(笑)しかし、この「敗走記」と「総員玉砕せよ」はNHKのドキュメンタリーを見たこともあって、読みたくなり購入した。
    これほど悲惨でひどい話なのに、大変冷静に描かれていることに心をうたれた。感情を抑え、当時のことをできる限り間違いなく思い出そうという作者の意図が読み取れるからだ。作中のそこかしこに漂うペーソスとユーモアは水木ならでは。こういう人が生き残るのかと何となく納得してしまった。
    淡々と描かれているからこそ、戦争の残酷さや無意味さが実感として迫ってくる。

全26件中 1 - 10件を表示

水木しげるの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
武良 布枝
村上 春樹
吾妻 ひでお
宮部 みゆき
三浦 しをん
三島 由紀夫
有効な右矢印 無効な右矢印

敗走記 (講談社文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする