水の中の犬 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 32
  • Amazon.co.jp ・本 (383ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062767408

感想・レビュー・書評

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  • 自分にとって、「本読み」と言えばI井さんとK恵さんですが、本作はK恵さんから薦められました。
    ほぼ1日で読了。
    風邪を引いて布団から出られなかったのもありますが、もう、圧倒的なスピード感で一気に最後のページに到達しました。
    何が面白いって、この主人公の探偵が完全に頭がイカれているということ。
    依頼人の事件を自らの事件として引き受け、敢えて「火中の栗」を拾いに行きます。
    でも、スーパーマンじゃないんです。
    それどころか、痛い目を見ることの方が多く、瀕死の重傷を負ったりするから目も当てられない。
    それでも、懲りずに敵と見定めた相手の元へ向かいます。
    その執拗なことったらもう。
    なぜ、依頼人のためにそこまでするのでしょうか。
    必ずしも義侠心からってわけじゃない、どちらかというと生まれ持った悲しい性といった感じ。
    そこに、とても惹かれました。
    にしても、よくまあ、次から次へと事件が起きるもんです。
    さすがに、たまたま探していた人を追って入ったアソコが、アノ現場というのは、ちょっとご都合主義が過ぎると感じましたが、木内さんだと許せちゃう。
    もっとも、私は木内さんの小説作品を読むのは初めて。
    ただ、漫画家のきうちかずひろさんには中学、高校時代を通じてずいぶんとお世話になりました。
    そう、不良漫画の金字塔「ビーバップハイスクール」です。
    あれを読んで、どれだけしなくてもいいケンカをしたことか。
    木内さんは映画監督としても活躍しています。
    マルチな才能ですね。

  • えぐいのだけど、なぜか惹かれてしまう不思議。
    視点が変わりながら語られる物語は、臨場感があって、場面を脳内でイメージとして確立しやすい。…だからこそそのえぐさが際立って、途中でやめようかと何度も思ったのだけれど。
    結局最後まで読みきってしまった。
    探偵の、強いのか弱いのかわからないその生きざまが、強いインパクトを与える。三件の依頼による三編のストーリー構成だけど、一本の繋がりある映画のよう。特に、探偵の傷や怪我がその繋がりを象徴してるようなところが面白かった。あと、ヤクザのくせして矢能という男がなんとも魅力的に思えるのはわたしだけ?エピローグもよかった。「アウト&アウト」が続編ということなので、読もうか迷いどころ。

  • 著者木内氏は、『ビーバップハイスクール』が有名な漫画家でもあります、今作の存在は漫画家木内氏の手による、ということでちょっと気にしてました。そのような中、マイミクさんが高い評価をつけてらしたので手にしました。

    3つの短編からなっています。主人公は元警官の探偵、彼の名前はとうとう最後まで語られることがなかった。よせばいいのに面倒なことに自ら進んで首を突っ込んでしまう、おせっかいなのか?親切すぎるのか?はたまた危険に己を追い込む被虐性嗜好があるのか?腕っ節がそれほど強いわけじゃないのに、とにかく食って掛かる。のっけからコテンパンにやられます、これほど読者の痛覚に訴える主人公もいないだろうと思う。彼が被る傷を含め、暴力の描写は読者の胸に強く突き刺さる。そしてやりきれない結末が、名前のない探偵の虚無感をさらに煽る。

    というように序盤は陰にこもる探偵の痛々しさにやりきれなくなるのですが、中盤に入り、探偵の命も、殺し屋に狙われあとわずか!という時彼に絡んでくるやくざ、矢能の存在が物語りの色彩をガラッと変えます。彼のセリフはこの作品の全てであると自分は確信しました。

    「お前がくたばったら…後は俺に任せろ」

    たったこれだけのくさいセリフが、眩いばかりの光でゾンビのごとく意味もなくただ傷を負う探偵に血を通わせた気がしました。最近では一番痺れたセリフでした。しかしながらさらにやりきれない結末が…

    終盤ではハードボイルドの正統である、主人公探偵の一人称で物語が語られます。ここは構成として非常に巧い、前の二つは神の目視点で語られていたので血の通った主人公を感じる効果が生まれています。探偵の過去、心の傷も明らかとなるのですが、さらに大きなトラブルと危険な相手に破滅的な予感がします。予感通りの終末となり、名前のない探偵の物語は終わり、その凄絶な最期は己の眼を熱くさせたのでした。

    エピローグでは探偵事務所をやくざ矢能が引き継ぐこととなっており、続篇『アウト&アウト』へと流れていきます。

  • 己の信念に基づいて行動するのが男であり、そんな愚か者を主人公にするのがハードボイルド小説である。
    とにかくかっこいい。探偵もやくざの矢能も男の中の男であり、男が男に惚れるとは、この二人の関係をいうのだろう。情報屋や木野、ヤンの存在感も圧倒的である。
    そして唯一のマドンナ・美容院の女の子は、最近現れない探偵のことをどう思っているのだろう。

  • 何回読んでも 素敵。
    探偵に惚れるし 矢能にも惚れる!
    かっこいいし 他人のために一生懸命に生きるって素敵なことだなあって思う。
    命をかけられるくらい 人のことを想えるような人になりたいって思わせてくれる小説

  • 本当に偶然目について買った本。タイトルから、もがき苦しむ主人公が出て来るのだろうと共感を得られる内容を期待して買ったら、いい意味で予想を裏切ってくれた。
    途中は、作者の代表作を全く知らなかったので、暴力やら何やらの描写と展開の早さに圧倒されたが、最後がいい。
    人の不器用な生き様が、他人の人生に思いがけない影響を与えることもあるのだと思う。
    決して、何か影響を与えてやろうなんて計算ではできないことだ。

  • 探偵の元にやってきた一人の女性の望みは恋人の弟が「死ぬこと」。誰かが死ななければ解決しない問題は確かにある。だがそれは願えば叶うものではなかった。追いつめられた女性を救うため、解決しようのない依頼を引き受けた探偵を襲う連鎖する悪意と暴力。それらはやがて自身の封印された記憶を解き放つ。

  • 木内作品の主人公は一様に目が離せない.向こう見ずで儚げで幸薄い姿が印象的.今作も最初から最後までハラハラドキドキの面白くてとても切ない作品でした.
    以下あらすじ(裏表紙より)
    探偵の元にやってきた一人の女性の望みは恋人の弟が「死ぬこと」。誰かが死ななければ解決しない問題は確かにある。だがそれは願えば叶うものではなかった。追いつめられた女性を救うため、解決しようのない依頼を引き受けた探偵を襲う連鎖する悪意と暴力。それらはやがて自身の封印された記憶を解き放つ。

  • 初めは主人公の探偵がカッコつけなのに弱くて、ギャグなのか真面目にやってるのか良く分からなかったですが、個々の事件が一つに繋がっていくストーリー展開はとても面白かったです。
    全体的に主人公の暗さが苦手でしたが、脇役の矢能がカッコよかったです。と思ったら、続編の「アウト&アウト」は矢能が主人公のようなので、こちらも読んでみたいと思います。

  • 元刑事の探偵が主人公のハードボイルドで、暴力や銃撃戦がてんこ盛り。というといかにもありがちな話な感じだけど、一味違う面白さがあった。クールでミステリアスな探偵さん(名前が明かされないのがまたヨシ)、脇を支える二人も魅力的だった。続編が楽しみ〜!

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著者プロフィール

1960年、福岡生まれ。2004年、『藁の楯』(2013年映画化)でデビュー。他著に『水の中の犬』『アウト&アウト』『キッド』『デッドボール』『神様の贈り物』『喧嘩猿』『バードドッグ』『不愉快犯』『嘘ですけど、なにか?』がある。

「2018年 『ドッグレース』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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