エネルギー(下) (講談社文庫)

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  • 講談社
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レビュー : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062767576

感想・レビュー・書評

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  • 黒木亮氏による総合商社を舞台とした小説。ノンフィクション小説ではあるが、実際の企業を思わせるような内容が多くあり、商社志望の就活生や商社のビジネスモデルに関心がある人にとっては、本書の情報は、商社業界を概観できる良書であると思う。
    また、黒木亮氏の作品は、とにかく描写が細かい。登場人物が何気ない会話をするバーや機内の様子など、徹底的に取材していることがうかがえる。
    以下に本書で興味深かった点を述べる。

    ①マークトゥマーケット方式であれば、オプション取引の含み損を明らかにできる。
    オプション取引の利益を市場の実勢価格で表すことで、保有する資産の含み損を明らかにできる。逆に言えば、マークトゥマーケット方式を使用しなければ、会計帳簿からオプション取引の含み損を隠蔽することができ、不適切会計の温床となりうる。

    ②国際協力銀行が積極的に対外投資を進めるのは、行政改革の波が大きく関係している。
    国際協力銀行といえど、政府の補助金を資金源とする政府の外郭団体のため、効率的な組織運営や目立った成果がなければ、組織としての存続が危ぶまれてしまう。加えて、大手総合商社を貴重な天下り先とするためにも、国際協力銀行は積極的に海外投資を促進している。

    ③カントリー・リスクによって総合商社のプロジェクトは大きく影響を受ける。
    本書では、サハリンにLNGプラントを建設する話が展開されているが、プラント建設の大きな障害となるのがプーチン大統領の存在である。外資系企業と生産協定を提携してしまうと、ロシアが得る権益が減じてしまうことを懸念するプーチン大統領は、プロジェクトの株式保有率を変更するように提案する。こうした、一国の政治事情や資源ナショナリズムが、総合商社のビジネスに大きな影響を与えている。

    ④ガスプロムはロシアの政府税収の25%を占める国有企業であり、その売り上げはGDPの8%を占める。
    本書では、プーチン大統領は、サハリンで実施されているプロジェクトの株式保有割合をガスプロムに譲渡するように提案するシーンがある。この提案に対して、落とし所を見つけようとする日本の商社マンは、プーチン大統領との交渉を試みる。実際の総合商社マンがプーチン大統領との交渉テーブルに着くことができるのかはわからないが、相手国政府と交渉する商社マンの姿は、まさに企業戦士で、とても勇敢である。

    ⑤EBRDとロシアの関係性は良くない。
    欧州開発銀行(EBRD)は欧州諸国の経済開発に寄与するための国際銀行であるため、ロシア政府の国有企業が先導するプロジェクトへの投資は躊躇しやすい。本書では、主人公がサハリンでのLNGプラント建設にあたって、EBRDからの融資を依頼する場面があるが、この時も欧州VSロシアという構図によって、融資がなかなか進まない。欧州諸国やロシアなどの政治情勢など日本にいる我々にとっては、対岸の火事かもしれないが、世界を股にかけて仕事をする商社マンとしては、死活問題である。

  • 201602
    サハリン2
    環境問題
    プロジェクト
    アザデガン
    経産省

  • サハリン2のお話。
    上・中・下巻と長編だが、エネルギー業界の臨場感あるストーリーが展開されています。
    今回は商社からの視点でプロジェクトを見ており、金融業界に身を置いてる自分からすると新鮮かつ商社の視点の勉強になった。

  • いよいよ下巻。
    エネルギービジネスに関わるさまざまな人の思いが交錯する。
    あるものはエネルギー市場から退場し、あるものは国会議員へ成り上がる。
    はじめのころの十文字は生けすかないやつだったけど、
    ここに来ると何となく応援したくなるから不思議だ(笑)

  • 正月休みに読了。
    イラン・イラクの違い、新規原油のプロジェクトファイナンスやPSAとバイバックの違いを初めてきちんと理解した。

    石油関連のデリバティブをもっと学びたくなった。

    サハリンの話しは、今イチ実感沸かず。カントリーリスクの怖さ。中国も同様か?私企業の対応範疇を超えている。

  • イラク油田の利権、サハリンBの環境問題などの結末。
    それぞれの問題に関わる人たちの想いが伝わってくる。求めるものややり方は違うがそれぞれが熱い想いを持っており、そこに心が動かされた。

  • 話が非常にリアル。商社、投資銀行の職業のイメージがつかめると思う。

  • 秋月修二は日本人の顔をしたアングロサクソン。狩猟民族だ。

    こういう人が日本に出てこないとね。

    とても魅力のある人物として描写されてたと思います。

  • 資源をめぐる商社や官僚のやりとり。
    国と国の攻防。
    環境団体と商社の攻防。
    金融機関と環境団体の攻防。
    原油スワップで一攫千金を狙う投資会社と商社の攻防。

    かなり多くの登場人物がいて、誰が主人公か分からない。
    でも、強烈なキャラで優秀な人間たちがこれだけ凌ぎを削って争うこの資源の世界で、それでも日本が勝ちきれないというのはなんとも虚しい気持ちになる。

    資源がないと言われる日本。尖閣諸島を巡ってもどうも中国に遅れがち。
    国益、それは非常に定義が難しいけれども、みんなで興味を持ってそれを獲りにいこう!

    この本は中立的に資源の世界が描かれていて、非常に勉強になった!
    やはり黒木さんの緻密さは本当に素晴らしい!

  • borrowed sep 4'11

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著者プロフィール

1957年、北海道生まれ。カイロ・アメリカン大学大学院修士(中東研究科)。都市銀行、証券会社、総合商社を経て2000年、大型シンジケートローンを巡る攻防を描いた『トップ・レフト』でデビュー。著書に『エネルギー』『冬の喝采』『貸し込み』『カラ売り屋』など。英国在住。

「2018年 『鉄のあけぼの 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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