- 本 ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062767590
作品紹介・あらすじ
160万人が愛した女主人公(ヒロイン)乃里子が帰って来た! 乃里子、31歳。フリーのデザイナー、画家。自由な1人暮らし。金持ちの色男・剛、趣味人の渋い中年男・水野など、いい男たちに言い寄られ、恋も仕事も楽しんでいる。しかし、痛いくらい愛してる五郎にだけは、どうしても言い寄れない……。乃里子フリークが続出した、田辺恋愛小説の最高傑作。
感想・レビュー・書評
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結局、わたしは今「いい男というのはダメな男なんじゃない、誠実な男なんだ」っていうのを、必死にインプットしているところなんだ、と思う。
本、映画、日常生活。
その全てにおいて、必死でそれを受け入れようと、足掻いている。
だけど、現実がそうだからこそフィクションではみんな、ダメな男との恋愛にずぶずぶとはまって取り返しがつかなくなる、バッドエンドともハッピーエンドともつかないエンドを望んでいるのかもしれない。むしろフィクションでは、ダメだけど死ぬほど好きな男と結ばれることはハッピーエンドだ。
フィクションでリアル/まともな男を求めて足掻いているのは、まだまだ非・リアル/ダメな男から抜け出したくない、と心が叫んでいるからだろうか。
主人公・乃里子は、男にモテる。
一度乃里子と関わると、みんな乃里子に言い寄ってくる。
けれど、一番言い寄ってきてほしい五郎だけは、決して言い寄ってこない。
乃里子が言い寄っても、暖簾に腕押し状態。
大学生の頃、バイト先にいた「ゆーたさん」のことを思い出した。
わたしを音楽とバンドマンの虜にした男だ。
彼がライブをするとなれば、わたしは下北のライブハウスCLUB251へすっ飛んで行った。
そこがBUMPのゆかりの場所だと知って、もっともっとと、のめり込んだ。
「駅まで送るよ」
そう言って、遠くはない道のりをゆっくり歩いている時間は、誰にも邪魔されない2人だけの時間で、その時間はわたしにとって、とてつもなく大切で貴重な時間だった。
今でもあの時の気持ちを生々しく思い出す。喜びと幸福と、独占欲。
わたしはゆーたさんが、大好きだった。
バイト先で話すボソボソとした声も、
ライブハウスでは人が変わったように発せられる声も、
2人でいる時はまた、ボソボソとした声になるのも、
昼のシフトが被ると作ってくれるまかないも、
朝の仕込みの最中に2人で相談して有線を流すのも、
全部、ぜーんぶ、大好きだった。
彼はあの時言ったのだ、4年間付き合っている彼女がいると。
あれは、少しでも言い寄ったわたしに、これ以上言い寄られないようにするための優しい嘘だったのかもしれない。だって、別の人に「彼女はいない」とゆーたさんが話していたのを、わたしは知ってる。本当はどうだったかなんてどうでもいい。
とにかくわたしは、ゆーたさんが大好きだった。ただそれだけ。
彼は今、何をしているんだろう。楽しく生きていてほしい。
初出は昭和49年。
男女の捉え方も、今とは違う。そんな時代の男女の物語。
でも、捉え方が違ったところで、やってることは今も昔も変わらない。
出てくる人たちみんなどこかぶっ飛んでる。みんな愛すべきところがある、どうしようもない人たち。
関西弁で進む物語。関西弁に詳しくなければ、その言葉のニュアンスや絶妙なイントネーションが分からないかもしれない。
話し方から伝わる人柄ってあるし、ド関東人のわたしは、もしかしたらその字面から構築する男たちの魅力を、半分も受け取っていないんじゃないかという気がしてくる。
この作品のタイトル「言い寄る」
これは、関西人が言う「(~と)言いよる」という言葉遣いとも相まって、読了後にものすごい個性を持って本棚で主張をするようになった。言葉と、語感の相乗効果。
乃里子は、これからどうやって生きていくんだろう。
ここから先を想像で止めておくか。
それとも、続く「私的生活」「苺をつぶしながら」と、三部作を読んでみるか。
いずれにしても、わたしの誠実な男インプット作業の手助けになってくれると、よいのだけれど。 -
主人公は、フリーのデザイナー兼画家として活躍し、自由気ままな一人暮らしをしている乃里子31歳。
乃里子は金持ちの色男中谷剛や渋い中年男水野など、いい男たちには言い寄られるけれど、大本命の五郎にだけは言い寄られず、乃里子自身も五郎には言い寄れないまま、五郎は友人の美々と思わぬ方向へ…。
物語の舞台はもちろん関西で、大阪から六甲山や淡路島を飛び回り、関西弁ならではの威勢のいい言葉で女の本音をズバズバッと書いてあって、揺れ動く乙女を軽妙に、男女の間柄を赤裸々に、懐かしい昭和の時代(昭和49年頃)に圧倒されながら面白く読むことができました。
大好きな人と結婚することを夢見ていたはずなのに、世の中とは皮肉なもので、何だか知らないうちに思わぬ事態が発生して、切なさや悔しさが一緒くたになって押し寄せてきて、そんな恋愛の意外性を思う存分味わえる田辺聖子さんならではの楽しい恋愛小説です。 -
今回のタイトル「言い寄る」なかなか艶めかしい印象ではないか。
収録されている物語は田辺さんが昭和に執筆されたものだ、、
そうバブル経済に繋がる日本の成長期、男女の恋愛はこんな風に繰り広げられていたんだな、、と懐かしいやら、新鮮だったり。
そんなだから物語の中にはスマホなんて道具、登場する訳がない。
気持ちを伝える、相手の本当の心を知りたい、自分はこうしたいのに、、、そんな揺れ動きや上手く行かないじれったさを描くと田辺さんの物語はピカイチだ。
SNSを使って知りたい情報だけを都合良く入手できる時代じゃない。
近寄りたい人(本書の場合、言い寄りたい人)との心のすれ違いや、「そうじゃないんだってば~」のもどかしさが伝わってくる。
誰かが言っていた。
「東京ラブストリーのカンチとリカみたいだね。」
本当の気持ちはそうじゃないのに、「なんでそっち行っちゃうかな~」とじれったくなる。
そんな恋愛は現代はされていないかもしれない。
だからこそ、今の若者にも「これ、わかる?」って読んでみて頂きたい一冊である。 -
毎月一冊文庫本を買う!わたしのマイルールです。
フォローしている方のレビューを読んで、読みたいと思っていたこの本が今月の一冊です。
主人公乃里子はとても魅力的な女性です。
なので、男性に言い寄られるのですが、乃里子が愛している五郎にだけは自分からはどうしても言い寄れない!
そんな乃里子がとても可愛らしかったです。
これは3部作になっているようで、調べて見たところ表紙がどれもとても可愛いんです。
乃里子のその後も知りたいし、手元に欲しい!3部作揃えます。 -
田辺聖子、読んでみようかなと思うきっかけとなったのが、本書のレビューをとあるところで読んだとき。まずは短編やエッセイなど様々な著書を読み漁ったところでようやく!満を持して「恋愛小説の最高傑作」と呼び声高い本書に挑戦したのだが。
私の大好きな田辺エッセンスが詰まりまくりで、予想以上にドはまり。めちゃめちゃ大好きな作品となりました。
フリーのデザイナーであるアラサーの乃里子。セレブな俺様系年下男の剛や大人の魅力溢れる既婚者・水野との逢瀬を楽しむものの、片恋している友人の五郎には言い寄れないジレンマ。友人・美々の妊娠騒動も絡み、恋愛模様はあらぬ方向に転がりまくる。
多くの読者が思っていることをやはり私も言ってしまうのだが、これ、昭和48年に連載されていたなんて本当に驚き!!ヒロインの乃里子、自立していてモテて、適度に奔放だが肝心なときに臆病で、割りきってるようで嫉妬心メラメラで(お前が言うか!と乃里子にツッコミいれたくなるが、気持ちはわかる)。
テンポのよいラリーが楽しい会話、うっとりする官能シーン、ワクワクするような旅先の描写はディテール細かく…アァ、田辺作品だわ~と嬉しくなる。
傲慢で直情的な剛も、狡猾な水野も、つかみどころのない五郎も、身勝手なタァちゃんも…登場する男達を好きにはなれないのだが、かといって嫌いになりきれない心憎さ。(でも、水野は大人の分別あって好きな方かな、タァちゃんはクズだと思うが)乃里子も美々も含め、それぞれに自分のことを棚に上げて小狡いところもいいのかも。
そして、古びてないとはいえやはり今の価値観と照らし合わせると、引いてしまうところはあるかも。そこが好みの分かれ目かもしれない。それでも、私は今この年齢でこの作品に出会えてよかったと心から思う。年を重ねたことで、本作の魅力を全方位から楽しめるから。
新装版のかわいい表紙もかなりお気に入り!!装いを替えながら読み継がれるっていいですね。田辺作品の新装版は、どの版元も装丁が本当に素敵で集めたくなる。
早くこの乃里子三部作を読破したくてたまらない。 -
大阪で生まれ育った私としては、田辺聖子をあんまり読んでなかったことに気がつき、評判のこの3部作を読んでみたけど・・・
昔はこんな大阪弁使ったのかな?
読みにくかった。
主人公の気持ちはわからなくもない部分もあるけど、え?と思うところ多々あり。
友達の美々の言動も理解に苦しむ。
あまり感情移入できず。
残念!
でも続きも買ってるので、あまり気乗りしないけど、また時間を置いてから読むと思う。 -
“世の中には二種類の人間がある。
言い寄れる人と、言い寄れない人である。”
他の男に言い寄られて身体を重ねても、たったひとり、本当に愛している男に言い寄れなければ心は満たされない。恋の甘さと苦さを描くバランスが絶妙で、胸がぐちゃぐちゃにかき乱されてしまった。
男に身体を許すと心まで許した気になることも、本当に愛する男の前では狡い女になりたくないことも、田辺聖子さんには全て筒抜けであることがなんだかとても愉快だった。しょっぱい涙を舐め続けるぐらいなら、思い切って失敗してみて「くそが!」って地団駄踏みながら歩く方がよっぽど人生楽しく過ごせるのだろうな。失敗から始まる物語も、世の中にはたくさんあるのだから。 -
関西弁の恋愛小説。ひらりひらりと言い寄られながら、好きな男には言い寄れない乃里子。1974年(昭和49年)の小説だけれども、今でも通じる登場人物のその男はあかん感。
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色っぽくて、自分があって、恋と人に惹かれる様が独特で、だけど共感できる感情もあって、すごく良かった。関西弁が最初は馴染めなかったけど、どんどん引き込まれました。
著者プロフィール
田辺聖子の作品






私も前から読もう読もうと思っているところなんです。
ただ、3部作らしいんですけど、2部、3部はそんなに読んでみ...
私も前から読もう読もうと思っているところなんです。
ただ、3部作らしいんですけど、2部、3部はそんなに読んでみたいと思わないんだよなぁー。
読んだら、感想をぜひお願いします。
こんばんは!
コメントありがとうございます!!
これ、3部作だったんですね!知らなかったです(笑)
今日、ブックオフはしごし...
こんばんは!
コメントありがとうございます!!
これ、3部作だったんですね!知らなかったです(笑)
今日、ブックオフはしごしてやっとゲットしてきました!
読んだらレビューアップ致しますので、是非ご覧ください!
ネタバレになる場合は事前に告知しますね(笑)
こんにちは^^
コメントありがとうございます!
いえ、わたしが作品とズレた内容載せてるのでmariさんが謝ることではありま...
こんにちは^^
コメントありがとうございます!
いえ、わたしが作品とズレた内容載せてるのでmariさんが謝ることではありませんm(_ _)m
やっぱりそうですよね(/ω\*)
しあわせに向けてすすんでいきたいものですー
今日は映画観に行ってきます!
mariさんも、素敵な一日を✩*゚