京のほたる火 京都犯科帳 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062767675

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  • 京に暮らす庶民の姿を描いた人情譚8編を収録しています。

    第1話「けん玉売り」は、けん玉売りでありながら、巾着切りを働いている親方が、弟子の音吉を正しい道に導く話。第2話「綱道」は、借金に苦しみ夜逃げを決意した直吉とその母のことを思う町の人びとの人情がえがかれます。第3話「ぬすびと面」は、狂言に使う「ぬすびと面」の作成に苦しんでいる面打師の文吉のもとに、赤ん坊をかかえた盗人が押し入ってくる話。第4話「火つけ」は、仕事がなくて困っている大工の棟梁と、棟梁に世話になったことを感謝している千吉の父親の話。第5話「車師」は、からくり車を作って人びとを驚かしている宗五郎に憧れる、車大工見習いの万吉の話。第6話「送り火」は、死んだ父の後をついで上菓子「大文字」を作ろうと苦心する佐吉の話。第7話「二番糸」は、西陣織の奉公をしている平吉が偶然、腕がいいと評判の織り手・藤五郎が糸を盗み出しているところを目撃してしまう話。第8話「おけらまいり」は、駆け落ちをして村から出て行った父親と、残された息子を育てている祖父が、おけらまいりで出会う話。

    端正な文章が、江戸の下町の人情譚とはちがった雰囲気をかもし出しているように思います。

  • 京都を舞台にした、様々な人間模様を描いた
    短編集です。

    短編集は苦手なのですが、非常に楽しく読めました。
    この作者の話をもっと読んでみたいです。

    ただ京都っぽくはなかったような。

  • 京を舞台に、捕縛する者の側ではなく、捕らわれる者の側から描いた犯科帳。8編の短編を収録している。貧しく逆境にありながらも、懸命に働く名もない人たちの姿に、胸がジーンとくる。

    「けん玉売り」
    けん玉売りの親方とその弟子の音吉は、京の町にやってきた。二人には人には言えない、もう一つの仕事があった。危ない橋を渡ろうとした…。

    「綱道」
    父を事故で亡くした、高瀬川の舟曳き人足の直吉は借金のかたに、大坂に売られていくことが決まっていた。病気の母と引き裂かれることに耐えられない二人は、町から逃げることに…。

    「ぬすびと面」
    能面を彫る面打師の文吉の家に、盗人が入り、赤子を押しつけて「大切に育てろ」と包丁を抜いて脅す。文吉と女房のおふじは一緒になって七年になるが子どもはなかった…。

    「火つけ」
    大工の息子千吉は、盗人の疑いから仕事がなくなり、毎晩、酒を飲んで遅く帰ってくる父が、火付けをしているのではないかと、懸念を持ち、その後を追うが…。

    「車師」
    荷車の車輪ばかり作る単調な仕事に飽きた車大工の万吉は、家を飛び出して、京に上り、車師の家を訪ねるが…。

    「送り火」
    菓子作りの修業中の左吉は、父が献上の上菓子「大文字」を作っている途中に倒れて死んだことを知らされ、わが家へ戻った。しかし、父からはまだ、その「大文字」の作り方を受け継いでいなかった…。

    「二番糸」
    丹波から西陣に奉公に上がった平吉は、風邪の同僚の伊助の代わりに、藤五郎という腕がいいと評判の織り手の高機(下で織る者と上で糸を引く者の二人で動かす織り機)に初めて乗ることになった…。

    「おけらまいり」
    丹後の浜辺の村から京都の酒屋に出稼ぎできて、駆け落ちをして故郷に帰らぬ父を探しにやってきた、十二歳の新吉は、同じ酒屋で下働きとして働いていた…。

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著者プロフィール

吉橋通夫(よしはしみちお)1944年岡山県生まれ。法政大学文学部卒業。『京のかざぐるま』(岩崎書店)で第29回日本児童文学者協会賞、『なまくら』(講談社)で第43回野間児童文芸賞を受賞。おもな作品に『風の海峡(上・下)』『すし食いねえ』(共に講談社)『小説 鶴彬』『風雪のペン』(共に新日本出版社)『ずくなし半左事件簿』『早変わりで候』(共にKADOKAWA)など多数。

「2022年 『ことばっておもしろい!同音異義語・同訓異字/対義語・類義語(全3巻)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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